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SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

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ギャラリー再び



  イーンウェン・ギャラリー・ハプルマフル

相変わらずパラパラと降り続ける雨の中を、ふたりは空のバスケットと空の缶4つを持って、ギャラリーまで戻ってきた。
先ほどより雨雲が濃く、厚くなってきたせいか、室内は先ほどより暗い。
リュナは缶を作業場の隅に重ねて置くと、棚からキャンドルを持ってきた。
■リュナ To:ウーサー>ろうそく
暗いから、火、つける。

(上位古代語)
マナよ、灯火をここに

持っていた杖をろうそくの上でかざし、円を描くようにしながら唱えると、ぽっと小さな炎が灯された。
心を落ちつかせる温かいオレンジ色が、ギャラリー内をやさしく照らす。
■ウーサー To:リュナ
……ああ、そうか。使い魔って言やあ、古代語魔法だよな?

■リュナ To:ウーサー
鎧、あのまま持って帰るか?
油で洗えば落ちると思う。

キッチンでがさごそとお茶の準備をしながら、リュナが尋ねてくる。
スクワイヤはテーブルの上で気持ち良さそうに丸くなり、リラックスした様子で毛づくろいにいそしみはじめた。
■ウーサー To:リュナ
落とせそうなのか!? そいつぁ、お願いしときたいモンだが……時間、どれくらいかかりそうだ?
どっちみち明日は使う予定無ぇから、別に今日でなくてもいいぜ?
むしろアレだ、髪だの肌だのに付いた分を、なんとかしておきてぇモンだぜ。

苦笑して返しながら、ろうそくの明かりに揺れるリュナの横顔を見つめる。
■リュナ To:ウーサー
明日の朝、やっとく。
あとで油、渡すから。
顔と髪も拭くといい。

ウーサーの視線には気付かず、ごく自然なムーブメントで砂糖壷のふたを開け、木製のスプーンをぐさりと差し込んだ。
■ウーサー To:リュナ
あーちょっと待て、オレ様の分は砂糖入れなくていい! お願いだから!!
ったく、どんだけ砂糖好きなんだよ……舐めると甘かったりとか、するんじゃ無ぇだろうなぁ?

砂糖をどっさり注ぎ込もうとしたリュナに慌てて声をかけたウーサーは、「やれやれ」と呟きながら、つい無意識のままにテーブルの上のスクワイヤに手を伸ばした。
そして柔らかな猫の毛並みを、ゆっくりと優しく撫でさする。
■スクワイヤ To:ウーサー
……ミャゥ〜(ごろごろ……すりすり)

■リュナ
ぅにゃっ!!?

ガバッ。と、粉状のものが液状のものの中にぶちまけられる音が聞こえた。
■リュナ To:ウーサー
…………また、うさぎのせい。
責任とれ。

背中まで長い赤褐色の髪を若干乱したまま、むくれ顔で現れるリュナ。
溶けきれず砂糖が底に沈んだままの紅茶を、ウーサーの前にどん、と置いた。
■ウーサー To:リュナ
ああ…………飲むのは、無理そうだなこりゃ。
わかったわかった。責任取るからちょいとまた、厨房借りるぜ?

「凄惨な混合液」と化してしまった紅茶のカップを受け取り、ウーサーは席を立った。
巨体からは想像もつかないような繊細さの指先で、リュナの乱れた髪を優しく撫で梳かす。
■リュナ To:ウーサー
……。

ば、ばか。さわるなっ。

ウーサの指が触れたほんの一瞬、「ふにゃん」とした表情を浮かべるが、すぐさまぶんぶんと両手を振り回して暴れ出すリュナ。
心無しかほんのりと頬が赤く染まっていた。
■ウーサー To:リュナ
とはいえ、合流までの残り時間は、そうそう無さそうだな……仕方無ぇ。紅茶風味のバンベルデュ、とでも洒落てみるか?

■リュナ To:ウーサー
ばんべる、でゆ? 強そうな名前。

キッチンに立ったウーサーは、自前の調理道具と調味料を取り出した。
今度は卵とミルクと砂糖、そして残り物のパンを拝借することにする。
■ウーサー To:リュナ
やれやれ……あ、そうだ。幾つか聞いておきてぇ事があるんだが、いいか?
いや、大した事じゃ無ぇ。明日の作戦のために、リュナがどんな魔法を、どのくらいの技まで使えるかってのを確認しておきてぇのさ。

■リュナ To:ウーサー
古代語魔法。使い魔使えるレベル。
うさぎをもっと鈍足にすることもできる。

それなりに使い込まれている様子のメイジスタッフで、空中にくるくると円を描く。
■ウーサー To:リュナ
遅くすんな! せめて器用にするか、機敏にするかしてくれ!
それから……あとは、この島の噂話とかについてだ。
オレ様は「シンメ」っていう白い馬と、「ウズマキ」っていう捩れた樹を探してるんだが……なんか心当たり、ありそうか?
ああいや、「シンメ」に関しちゃあなんとなく、例の大会の賞品でビンゴっぽい気がしてるんだがよ?

■リュナ To:ウーサー
……しんめもうずまきも知らない。
でも、捩れた樹なら知ってる。
リンゴ畑にあるらしいって、仲間が。

ウーサーの問いかけに小首をかしげたあと、ふと思い出したように言った。
■ウーサー To:リュナ
リンゴ畑、か! そうか、此処はリンゴが名物だって言ってたもんなぁ……?

■リュナ To:ウーサー
そう。ちょっとすっぱいからお菓子向き。

手早く調理を進めながら、ウーサーはリュナの方を見ないままに問うた。
ミルクと合わせた砂糖入りの紅茶(紅茶入りの砂糖?)をパンに吸わせたものを、バターを落としたフライパンで焼き上げていく。
焼き上がりの直前には、リンゴを握り潰して絞ったジュースをかけまわし、フランベさせて香り付けも施す。
■スクワイヤ To:うーさー
ミャァアゥ〜(ごろごろ)

良い香りに反応して、スクワイヤが喉を鳴らしている。
リュナは椅子に座って、両足をぶらぶらさせていた。
■ウーサー To:リュナ
そういやあ、よ……っ、と。
そのリュナの仲間ってえのは、今は何処に居るんだ?

ウーサーは焼きあがった甘口のパンを、手早く皿に移した。
更に、パンを焼くのと同時進行で煮詰めておいた砂糖紅茶の残りの味を調整し、熱々のシロップに仕立てて、パンにかけまわす。
自分自身の基準としては「甘すぎ」の部類に余裕でランクインする、激甘パン料理の出来上がりだ。
■リュナ To:ウーサー
「不知火亭」にいる。
イーンウェンで唯一の、冒険者の店。
リュナは、こっちの仕事が忙しいから、最近行ってない。

行き方を説明するリュナ。「海鳥と潮騒亭」や港からもほど近い場所だ。
■リュナ To:ウーサー
うさぎ、どうしてそれを探してる?

■ウーサー To:リュナ
オレ様が此処に来た依頼に、おもいっきり関わってそうなんでな。
オランにある、「フェンデ孤児院」って所の子供らにな、依頼を出されたんだよ――昔、この街にあったっていう、「魔法の絵筆」ってのを探して来てくれってな。
なんでも、描いたものが本物になるなんていうモノらしいんだが、オレ様の仲間が色々と調べてくれた所によるとだ……『力を使い過ぎて折れた』らしい。
だが、『穂先はシンメと言う白馬に、柄はウズマキと言う捩れた樹になって、今でも後継者を待っている』なんていう伝承も残ってたってハナシでな。

パンの皿をテーブルに置き、ウーサーはキッチンに戻った。
自分の紅茶をカップに注ぎなおし、その場で一口飲み下す。
■リュナ
……。

ぶらぶらと動いていたリュナの足がふいに止まった。
■ウーサー To:リュナ
孤児院のガキどもにな、「魔法の絵筆」でなにが描きたいんだ、って聞いてみたんだ……メシだの寝床だのっていう、まあ、どうだっていいモノ言うヤツも居たんだがよ……。
「みんなのおとうさんとおかあさん」なんて、言いやがるヤツもいてよ……そんなの聞いちまったら、少しは付き合ってやりたいって、つい思っちまってな?
たとえ本物の「絵筆」が手に入らなくても、やれるところまではやって、その結果を聞かせてやるって。そう約束しちまった……だから、探してるんだよ。

温かな液体に胃の腑から温まっていく感覚に、すこし心が緩んだようだ。
■ウーサー To:リュナ
……子供は「夢」を食べなきゃ、大人にはなれないだろ?

自分はまだ「夢」を食べ足りていないのだろうな、と心の中で自嘲しつつ、笑みを忘れかけた表情を作りなおして卓に戻る。
■リュナ To:ウーサー
……うさぎ。

リュナの手が不意にウーサーの頭を撫でようと伸びるが、途中で引っ込んでしまう。
■ウーサー To:リュナ
ん? どうした?

■リュナ To:ウーサー
フェンデのおっちゃん、元気か?
リュナは小さいころ、フェンデ孤児院に世話になった。
絵の描き方も、教えてもらった。恩人。

両手で自分の紅茶のカップを包み込むようにしながらつぶやく。
棒読みなリュナの声に、初めて懐かしさを愛おしむ感情や、寂しさといったものが混じったような気がした。
■ウーサー To:リュナ
……そうか。
とはいえ、「魔法の絵筆」ってのがあったのも、力を失って折れたのも……この街がまだ「イーエン」って呼ばれてた、随分と昔の頃の事らしいからな。
まあ伝説だか与太だか理解らねぇが、繋がりがありそうなことは、できるかぎり調べておきてぇのさ。

■リュナ To:ウーサー
「しんめ」が武道会の賞品なら、あと「うずまき」見つければ良い?
リュナも協力する、フェンデ孤児院に恩返ししたい。
武道会、ぜったい優勝しよう。

ウーサーに向かってぶいっとVサイン。
今度は無表情ではなく、意思の強さを大きな瞳に宿して。
■ウーサー To:リュナ
おお、当然だ! オレ様が、誰だと思ってるんだ? 未来の剣聖、ウーサー・ザンバード様だぜ!
オレ様とリュナで、必ず優勝かっさらってやろうな!!

リュナの瞳の輝きに、たまらなく心地よいものを――あの戦乙女と相対していたときと同じものを感じながら、ウーサーもぐいっとサムズアップした拳を突き出して応えた。
■リュナ To:ウーサー
少し、ちがう。
未来の剣聖、うさぎさん。

Vサインしたまま、にまっと悪戯っぽい笑みを浮かべる。
■ウーサー To:リュナ
だ〜か〜ら〜、うさぎはやめろって!(苦笑)
おおっと、いけねぇ。せっかくの皿が、冷めちまうぜ!
ちょっと多目に焼かせてもらったからな、好きなだけ食え! そしたら明日の相談して……。

■リュナ To:ウーサー
うん。
いただきまーす。

言うが早いか、ひょいと口に持っていくリュナ。
先ほどの公園でのおやつタイム以上の、とろけるような表情でしばし硬直。
■リュナ To:ウーサー
うさぎ。
冒険者やめて、お菓子屋さんやるといい。

断言した(無表情で)。
■ウーサー To:リュナ
いや、だからな? オレ様は最強の剣士になりたいんであって、最強のパティシェになりたいワケじゃねえ!

……あ、そうだ。オレ様はいったん、宿に戻るぜ。仲間と待ち合わせてるからな。
お嬢ちゃんは今日の午後、なんか予定あるか? もし良ければ、「不知火亭」でお仲間に、引き合わせてほしいんだが。
それと、どっかでリングメイルかハードレザーを買っておきてぇんだが、どっかオススメな店ってあるか?

■リュナ To:ウーサー
あんまりギャラリー、空けておけない。リュナは午後、ずっと店番。
バイト、夕方までだから。
「不知火亭」の仲間には、リュナの名前出せば大丈夫と思う。
精霊吟遊剣士のロシュと、野伏盗賊のヤツメ。

そう言って「不知火亭」までの行き方を教えるリュナ。
「海鳥と潮騒亭」からほど近い場所にあるようだ。
■リュナ To:ウーサー
武器防具屋は、この町に一軒しか無い。
若いドワーフがやってる、『Tog Tog factory(トグトグファクトリー)』。

こちらも、場所は宿から近いようだ。あらゆる店が港近くに集中しているのだろう。
■ウーサー To:リュナ
じゃあ合流して情報交換したあとにでも、行ってみるとするか……。

リュナに食後のお茶を淹れなおしたウーサーは、キッチンの後片付けを済ませながら、明日の作戦の内容を考えてみた。
とはいえ1日で行われるトーナメント、魔法は直接攻撃無し、となると、魔法使いに頼めそうな手数の案など大して思いつかない。
■ウーサー To:リュナ
とりあえず、作戦のベースを考えてみたんだがよ?
基本はクイックネスで「当てる」確立を上げていくってのが理想的なんだが……お嬢ちゃんは、1日に何回までなら「シャープネス」を使える? MAXまで使ったら、あとは他に、どんな魔法までならかけられるんだ?

■リュナ To:ウーサー
「シャープネス」なら、4回。
そのあとは「プロテクション」1回。それ以上使ったら、ブラックアウト。

■ウーサー To:リュナ
オーケイ、そいつぁ贅沢すぎるくらいに充分な量だぜ。
対戦直前に相手を見るチャンスがあったら、初手でかけてもらう魔法を相談。そのチャンスが無かったり、二人の意見が分かれたら、お嬢ちゃんが自分の判断で決めてもらう。
で、試合が始まっちまったら、呪文に関しては、お嬢ちゃんが状況を見て判断する。
防御の魔法ってのも良いとは思うが、今回のルールだと「かすり傷」程度の浅い入り方でも、即1本扱いにされる……となりゃあ、多少の装甲が付与されたからって、防ぎきれるって確立は極端に薄くなっちまう。たとえ僅かでも、使える魔力は温存しといた方がいいかもしれねぇがな?

■リュナ To:ウーサー
かすり傷で泣かないためにも、防御は大事。
リュナはそんなに疲れやすくない、大丈夫。

■ウーサー To:リュナ
相手が「グラスランナーのファイター&男のソーサラー・シャーマン」とかだと、マジで厳しいレギュレーションなんだが……まあ、そんなのに当たらないことを祈るしか無ぇな。
とまあ、オレ様が思いつく作戦なんてぇのは、この程度しか無ぇんだが……リュナはどうだ? 何か、いいアイデア無いか?

■リュナ To:ウーサー
うさぎの案でいい。あとは相手見てから決める。
嫌な予感が当たりそうな、予感はする。

半目になりながらスクワイヤの背中を撫でている。
■ウーサー To:リュナ
…………。
そういう手合いは鳥人間の第14煉獄に堕ちるといいと思うんだよ、マジでな。
あ、鎧の途中変更はアリかどうか聞くの忘れてた……まあ、明日確認すりゃあいいか。

なんとなく、散々心労をかけさせられた「枢機卿」の片割れを思い出しつつ。
最後のカップを片付け、キッチンの水気も拭き終えたウーサーは、部屋の隅に纏めなおしておいた荷物を手に取った。
■ウーサー To:リュナ
さて、と。
オレ様はそろそろ、戻るとするぜ。
夕方までに時間ができたら、またこの店に寄るからよ。
もし夕方までに来れなかったら、オレ様がお嬢ちゃんが今住んでる所に……ってワケにも、いかねぇか。
そうだなぁ? お嬢ちゃんのバイトが終わって、時間が取れるようだったら、すまねぇが「海鳥と潮騒亭」にでも、顔を出してみてくれねぇか?
それでも連絡が取れなかったり、落ち合えなかったりしたら、済まねぇが明日、会場で落ち合わせてくれ。

■リュナ To:ウーサー
うん。
そのときは、看板の下で待ってる。
……うさぎ、気をつけて帰れ。

スクワイヤがつつとウーサーに歩み寄り、ごろごろと背中をすりつけた。
■ウーサー To:リュナ
あいよ。
せいぜい明日の試合に支障が出ない程度にしか、無茶はしねぇように気をつけるぜ?

荷物を肩に担いだウーサーは、スクワイヤを両手でひょいと抱き上げ、ちゅっと口づけた。
もちろん「ファミリアー」だということなど、すっかり忘れていたりする。
スクワイヤを優しく下ろしたウーサーは、くるりと踵を返し、雨の降り続くギャラリーの外へと出た。
■ウーサー To:リュナ
お嬢ちゃんも、風邪なんか引くなよ? じゃあ、またあとでな!

■リュナ To:ウーサー
………………ば、ばか……。

真っ赤になってうつむいたリュナの足元で、スクワイヤがお腹を見せて転がっていた。


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GM:ともまり