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SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

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銀杏通り



  イーンウェン・銀杏通り

リコリスは町の端に向かったシグナスと別れ、港の大通りを東の方へ折れた。
しばらく賑やかな通りが続き、背の低いリコリスに取っては視界が時折塞がれてしまうほどだ。
まだ小雨なせいか、そこかしこで客を呼び込む露天商などの声が元気よく聞こえてくる。
■リコリス To:ひとりごと
うわぁ〜、にぎやかで楽しそう〜♪
あとでなにか、買いに来ようかな〜。

やがて大通りは細い道へと続き、いくつかの角を曲がるとあっという間に人通りが途絶えてしまった。
教えられた最後の角を曲がり、「銀杏通り」とプレートが貼られた道に出ると、目の前に黒い柵に囲まれた広い敷地が見えた。
黄色く色づき、雨に濡れそぼったたくさんのイチョウの木に包まれた空間に、ただ静かに佇むいくつもの墓が見える。
気のせいか、肌に触れる空気の温度がひんやりと冷たくなったように感じた。
■リコリス 
ここかな? おじゃましま〜す。

墓地の入口の門は開いていた。
あたりを見回してみるが、それらしい馬車の姿は無い。
■墓守のおじさん To:リコリス
どうしたんだい、お嬢さん。キョロキョロして。
お墓参りならいつでもできるよ?

竹箒を手に、イチョウの葉を掃いていた墓守らしきおじさんが声をかけてきた。
■リコリス To:墓守のおじさん
あ、こんにちは。リコはリコリスっていうの。
昨日この町についた冒険者だよ。
んとね、はがくれやっていう移動図書館探してるの。
おじさん、どこにあるか知ってる?

■墓守のおじさん To:リコリス
おお、ハホリーナさんの。
何度かこの「銀杏通り」で見たと言う話は聞いたことがあるけれどね。
残念ながら、おじさんは見たことが無いんだよ。

■リコリス To:墓守のおじさん
そっか〜。残念。
あ、あとね、リコ、オランの町でライさん…ライチさんとお友達になったの。
もしここにライさんのママのお墓があるんなら手を合わせて行きたいんだけど。

■墓守のおじさん To:リコリス
おや、ライチさんのお友だちかね。
彼女のお母さんのお墓は、入口を入って目の前の列の、一番東側のものがそうだよ。
オランから、ということは、彼女も帰ってきているのかい?

にこにこと穏やかな笑みでそう言いながら、集めたイチョウの葉を隅へ掃き集める。
■リコリス To:墓守のおじさん
うん。でも、船がエレミアに向かって出港するときには一緒にいっちゃうみたいだけど。

■墓守のおじさん To:リコリス
そうかい、相変わらず忙しいんだなぁ。
いつも、帰ってきたらすぐにお墓参りに来ていたんだけどね。

ああ、お墓の門は夕方まで開いているからね。
何かあったら呼んでおくれ。

そう言うと掃除用具を片付けるためだろうか、遠くに見える小さな小屋のほうへ去っていった。
■リコリス To:墓守のおじさん
おじさん、ありがと〜。

リコリス一人だけが残された墓地の入口。
雨がイチョウの葉を叩く物寂しい音だけが聞こえてくる。
ふと、雨音に紛れて、「銀杏通り」の奥からかぽ、かぽ……という蹄の音が響いてきた。
■リコリス
あれ? この音って、もしかして馬車?

音の方を振り返ると、霧がかかったような靄の中から、紫と黄色の丸い一頭立て馬車がぬっと姿を現していた。
その馬車はかぽ、かぽ、かぽと徐々にスピードを速め、やがて猛スピードでリコリスに向かって突進してきた。
■リコリス
あ、もしかしてこれがはがくれやさんって……。うきゃぁぁぁあ!

リコリスはとっさに右に身を投げ出し、馬車を避けようとした。
■女性の声
と、とまっててえええ〜

間延びした女性の声とともに、リコリスのすぐ脇をすり抜けていく馬車。
ヒヒヒンと馬が嘶く声が聞こえ、手綱を強く引かれた茶色の馬は後ろ足で立ち上がりながらなんとか止まった。
■ハーフエルフの女性 To:リコリス
はぁ、ふぅ……。
あの、大丈夫ですか……?

馬車の正面からそっと顔を出したのは、流れるような銀髪と、儚げで神秘的なグレイッシュブルーの瞳を持ったハーフエルフだった。
■リコリス To:ハーフエルフの女性
う、うん…だいじょうぶ。

突っ込んでくる馬車のあまりの迫力に涙目になりながら、リコリスは立ち上がった。
■リコリス To:ハーフエルフの女性
あ、リコはリコリスっていうの。お姉さんはだあれ?

■ハーフエルフの女性(ハホリーナ) To:リコリス
ハホリーナ、と申します……。
ああ、お怪我がなくて良かったですわ……。

御者台に座り直したハホリーナは、心底ほっとしたように胸に手を当てた。
わずかな風にもふわりと揺れる、軽くて透けた素材のワンピースを着ている。
■リコリス To:ハーフエルフの女性
リコね、はがくれやさんっていう移動図書館探してるの。

■ハホリーナ To:リコリス
まあ……葉隠れ屋でしたら、ここですわ。
ようこそ移動図書館へ、リコリスさん。
どんな本をお探しかしら……?

にっこりと微笑みを浮かべると、本を求めてやってきた子どもを迎えるかのように、優しいまなざしでリコリスに問いかけてきた。
■リコリス To:ハホリーナ
お姉さんがハホハホさんなの!? やった〜♪
あのね、リコ、オランで孤児院の子に頼まれて、昔ここにあった「いーえんにかかるにじ」に出てくる魔法の絵筆探してるの。
絵本の由来とか、元になった逸話とか知ってたら教えてください。

ハホリーナに飛びつかんばかりの勢いで喜んだ後、背筋をシャンと伸ばして真摯な表情でたずねた。
■ハホリーナ To:リコリス
まぁ……ハホハホさんだなんて、うふふ。

ハホリーナは照れたように両手で頬を押さえた。
■ハホリーナ To:リコリス
『イーエンにかかる虹』でしたら、確かにオランへ向かうと言う行商人の方にお売りしましたわ。
あの絵本は、オランの孤児院へと旅立ったのですね……。
大切にされていましたか……?

まるで旅立った我が子の消息を案ずるかのように、こちらも真摯なまなざしでリコリスに優しく問いかけてくる。
■リコリス To;ハホリーナ
うん、すっごく大切にされてたよ。
一番のお気に入りの絵本みたい。
みんな大好きな話だっていってた。

■ハホリーナ To:リコリス
そうですか……。良かったですわ……。
誰かの心の中で息づいてこそ、物語は命を持つのですから……。

そう言うと、まだ鼻息の荒い茶色の馬をなだめるようにそっと撫でながら、リコリスに向き直った。
■ハホリーナ To:リコリス
絵本に出てくる絵筆を探している……とおっしゃいましたね。
残念ながら、わたくしにも「絵筆」がどこにあるのかは知らないのです。
ですが、あの絵本に書かれている物語は、昔……この土地がイーエンと呼ばれていた時代に、本当にあった出来事です。
実際にはもう少し、苦労したお話なのですが……。

■リコリス To:ハホリーナ
そうなの?
絵本のようにいいことばかりじゃないんだ……。
実際はどうだったのか、教えてもらえる?

■ハホリーナ To:リコリス
はい。
絵本にあったように、イーエンが「大雨に襲われ、道は川のようになり、荒れ狂った海に飲み込まれそうになった」のは本当です。
それは、当時海に住んでいた“ヴィルコ”と呼ばれる怪物のしわざでした。
“ヴィルコ”は本来ならばむやみに暴れたりしないのですが、わざと怒らせた者がいたのです。それが絵本に書かれていた「男」です。

■リコリス To:ハホリーナ
うんうん、「ヴィルコ」って怪物と操ってた男ね。
その「ヴィルコ」っていうのは、どんな怪物だったの?

■ハホリーナ To:リコリス
雨と嵐、津波を呼ぶ力を持ち、それが陸をそっと撫でただけで大陸が海水の中に没する……と言われています。
巨大な波の形をしているとか……。
ですが、雨が降っていないと地上では弱ってしまうという弱点がありますわ。

■リコリス To:ハホリーナ
ふぅ〜ん、随分と強そうな怪物なんだね〜。
って、まさか今雨降り続いてるのって……関係ないよね? ね?

リコリスは不安そうに空を見上げた。
■ハホリーナ To:リコリス
ここ数カ月の間は、たしかに雨の日が多くありましたね……。
ウンディーネの気まぐれで、そんな時期があってもおかしくはありませんが……。

つられてハホリーナも空を見上げる。
雨雲はさらに厚く、濃くなってきているようにも見える。
■ハホリーナ To:リコリス
「男」は町を滅ぼし、すべてを無に帰すことを欲していたのですが、その企みは絵筆の持ち主、ドワーフの絵描きさん──ゴーギッシュによって防がれました。
彼は虹を描き雨を止めることで、“ヴィルコ”を弱らせました。
弱ったヴィルコは力を失って、海に沈んでいきました……。
と、ここまでなら絵本の通りなのですが、実際は……
虹を描くことを絵筆が嫌がったのです。

■リコリス To:ハホリーナ
え? 絵筆が嫌がるの?

■ハホリーナ To:リコリス
絵筆は「心」を持っていました。
嫌だとか、苦しいとか、飽きたとか。
興味のないものは描きたくないとか……そういった「気持ち」を持っていました。
──そして、絵筆はすべての色を使い果たすと、折れてしまうことを知っていました。
虹はすべての色を持っています……虹を描けば、自分がバラバラになってしまうことを知っていたのです。
絵筆はさんざん嫌がった後、最後には聞き分けて虹を描いたのですが……ゴーギッシュはその後、「3つ」に分かれてしまった絵筆を思って泣いたのです。

■リコリス To:ハホリーナ
え、絵筆さん……。・°°・(>_<)・°°・。 ウエーン
折れることがわかってたのに、虹かいてくれたなんて……。
三つにわかれちゃったなんて……。

■ハホリーナ To:リコリス
……絵筆に「こころ」があったから、ゴーギッシュも悩み苦しみました。
絵筆と彼は、たくさんケンカもしましたが……そのおかげで、彼は自由奔放な絵筆をとても好きになり、心の奥底では可愛がっていたのです。
「ハプルマフル」と呼ぶくらいに……。

泣き出してしまったリコリスの頭を優しく撫でる。
■リコリス To:ハホリーナ
「ぱふるまふりゅ」?
もしかしてギャラリーの「ぱるふまふる」って、その絵筆さんの謂れのある場所なの?

ぽろぽろとこぼれる涙をハンカチで拭いながら、涙声でリコリスは質問を続けた。
■ハホリーナ To:リコリス
は……はぷるまふる、ですわ……。
ええと、イーエンの古い言葉で……「ちいさくてかわいい子」という意味ですの。
イーエンの時代には、我が子に贈る名前としてよく使われていて……さほど珍しくない言葉でしたのよ。

■リコリス To:ハホリーナ
「ちいさくてかわいい子」かぁ。
ゴギゴギさん、絵筆さんのこと、とってもかわいがってたんだろうね〜。
あ、絵筆さんとの出会いは、絵本に書かれてるように、「男」が持ってきたので合ってるの?

■ハホリーナ To:リコリス
……? いいえ、「魔法使いが持ってきた」と書いてあったはずですわ?
その魔法使いについては、わたくしにはわからないのです……。
古代王国時代には魔法使いはたくさんいましたし、きっと、ゴーギッシュのおともだちの方だったのでしょうね。

■リコリス To:ハホリーナ
そっか〜。リコ、誤解してたみたい。
ゴギゴギさんのお友達の魔法使いかぁ〜。心を持ってる絵筆、プレゼントしてくれるなんて、ステキな人だね。

■リコリス To:ハホリーナ
三つに分かれた絵筆はどうなっちゃったの?
今は、三つとも平穏で幸せでいられてるの?

■ハホリーナ To:リコリス
いいえ、どこに行ったのか、今どうしているのかわたくしにもわからないのです。
「穂」と「柄」と「こころ」に分かれた、と言われていますが……。

すまなそうに言いながら、おとなしくなった茶色の馬のたてがみを細い指先で梳いている。
■リコリス To:ハホリーナ
「穂」と「柄」と「こころ」…かぁ。
ゴギゴギさんは凄い人だったんだね。「こころ」だけになっても、解ってあげられたんだ。

■ハホリーナ To:リコリス
だから彼は、家族のために……そして「絵筆ハプルマフル」のために、あの絵本を描いたのだと思いますわ。
ケンカばかりしていたことは、描けなかったようですけれど……ね。

■リコリス To:ハホリーナ
ドワーフの絵描きさんのゴギゴギさんは、その後どうしたの?
他の筆で絵を描いたりしてたの?
今も生きてたりするの?

■ハホリーナ To:リコリス
いいえ、古代王国時代の出来事……600年以上も前のことですから……。
その後……今から400〜300年ほど前に、彼の子孫であるゴルボロッソという絵描きさんが、「こころ」を見つけ出し、再び絵筆を作ろうとしたのですが……
なぜか失敗したそうなのですわ……。

■リコリス To:ハホリーナ
「こころ」見つかったの!?
ねぇ、そのゴルゴルさんのことも詳しく教えて!
どんなふうに、伝わっているの?

■ハホリーナ To:リコリス
彼はまず絵本を見つけ、その内容に感動し……そばにあった「こころ」に呼び掛けたのだそうです。
「ハプルマフル」……と。

すると「こころ」は動き出して、ゴルボロッソに絵筆のことを教えてくれました。
その助言を元に、彼は「穂」と「柄」を探したのですが……。
なぜか絵筆を得ることはできなかったのです。

それ以上のことはわからない……とばかりに首を横に振るハホリーナ。
■リコリス To:ハホリーナ
そうなんだ〜。残念。
「こころ」ってどんな形してたんだろうね〜。

■ハホリーナ To:リコリス
言葉どおり、「ちいさくてかわいい」姿をしていたら……すてきですわね。

■リコリス To:ハホリーナ
あ、あのね。絵筆と関係あるかどうか解らないんだけど、海にね、倒すと絵の具になっちゃう魔物がでるの。
3つに分かれた絵筆、誰かに酷いことさせられてないか心配なんだけど……。
何か心当たりある?

■ハホリーナ To:リコリス
絵の具に……?
いいえ、初耳ですわ……。
魔法の絵筆で描かれたものは、完全に本物になるはず……元の絵の具に戻るというのは、聞いたことがありません。
それに、誰かに害をなすようなものは生み出せないはず……いえ、正確には、「こころ」がそういったものを描くことを許さないので、描けないはずなのです。

どういうことなのでしょう……?

■リコリス To:ハホリーナ
ん〜? 絵筆が3つ揃ってない不完全品だから、なのかなぁ?
でも、誰かが悪用して、「こころ」が止められる状態にないなら…絵筆さん、可哀想だよ。
なんとかできないのかなぁ?

■ハホリーナ To:リコリス
すみません、そんな事態は……いえ、わたくしが知る「史実」の中には、そのような事例がないので……わかりかねますわ……。

すまなそうに、そして不安げに胸に手を当てながら言った。
■リコリス To:ハホリーナ
あ、あと、悪い「男」っていうのは、いったい誰だったの?
なにか伝わってない?

■ハホリーナ To:リコリス
……破壊を司る神、カーディスに使えている「悪魔」だったと言われています。
ヴィルコを利用したことからもわかるとおり、自ら手を下すよりも、ひとを騙して同士討ちさせたり、混乱の種をまいて自滅へと導くことを好んだとか……。

そこまで言って、あたりの空気がよりいっそう冷たく感じられたのか、自分の肩を抱いた。
■リコリス To:ハホリーナ
「悪魔」? なんだか怖いね。

リコリスは、ふるふるっと怯えたように身を震わせた。
■ハホリーナ To:リコリス
……でも、大丈夫ですよ……。
その「悪魔」は、わたくしの……わたくしたち姉妹の遠い遠いご先祖様が、地中深く封印したのですから。
あまりにも力が強かったので、カエルの姿に変えて封印したのです……。
ああ、わたくしにはカエルの方がおぞましいのに……。

そういって本気で嫌そうにふるふると首を振った。
■リコリス To:ハホリーナ
あれ? ハホハホさん、カエル嫌いなの?
あ、オランの占い師のネホネホさんとは姉妹だって聞いたけど、ネホネホさんはカエルアイテム大好きって聞いたよ。
リコの仲間もカエルになっちゃって困ってたけど…その悪魔って、よみがえってくる可能性ってあるの?

■ハホリーナ To:リコリス
妹の趣味は……わたくしには理解できませんわ。
か、かか、かえるなど……あんなぬめぬめ……みんなほろんでしま(はっ)
あら、いやですわ……なんでもありませんのよ、うふふ……。

一瞬とてつもなく暗い影を瞳に宿して低い声でつぶやくが、すぐに顔を上げて柔和すぎる笑顔で応える。
■ハホリーナ To:リコリス
ご先祖様の封印は永続だと聞いていますから……破られることはあり得ないと思いますわ。
もっとも、わたくしはかえるをみるのもいやですので、その封印の場所に近づいたことはありませんが……。

■リコリス To:ハホリーナ
ん〜、じゃあ、リコが代わりに見に行ってきてもいい?
場所、教えてくれる?

■ハホリーナ To:リコリス
くわしい場所は、伝わっていないのですわ……「墓地の地下」……としか。
重要な封印ですから、簡単に見つけられるような場所には無い……と思います。

そしてふと厳しい顔つきになり、リコリスをまっすぐ見つめる。
■ハホリーナ To:リコリス
……リコリスさん。
探すのは構いませんが……相手は古代王国時代の高位の魔法使いでも敵わなかった「悪魔」です。
安易に手を出して、とりかえしのつかないことにならないように……十分にお気をつけて……。

ハホリーナの言葉が終わり切る前に、ふたりを包んでいた冷たい空気が急激に拡散していくような気がした。
■リコリス To:ハホリーナ
うん、リコ、何か探したりする心得とかはないから、さっと見てくるだけにするよ。
怪しそうなら、後で仲間に見てもらえばいいし。

■ハホリーナ To:リコリス
……そろそろ、お別れですわね……。
またお会いできるかどうかは、わかりませんが……もし、空の色の導きがあるなら……リコリスさん、その時まで……ごきげんよう。

■リコリス To:ハホリーナ
え? もう?
また、会えるよね?
そのときには、他の絵本、見せてね、バイバ〜イ♪

ハホリーナが、にっこり笑って手を振る。
と同時に、リコリスの視界が、不意に真っ白な霧のような空気に包まれた。
思わずつぶってしまった目を開けてみると、そこには「葉隠れ屋」の姿はなかった。
雨に濡れそぼる「銀杏通り」が、何事も無かったかのようにあるだけ。
■リコリス
…………行っちゃった。
不思議な図書館とお姉さんだったな〜。
さ、リコもまずはお花つんで、ライさんママのお墓参りしちゃおっと。



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GM:ともまり