小さなアトリエ
ミガクの案内で、工房のさらに奥まで足を進めるゾフィー。
薄暗い室内──もちろんふたりには苦もなく見通せる──には、あらゆるところに羊皮紙が散らばり落ちていた。
四方の石壁には、窓の代わりだろうか、一定間隔で四角く削られた凹みがあり、植物やキャンドル、モザイク作品がセンス良く飾られていた。
ミガクは層のようになっている羊皮紙を踏まないように一歩進むと、床に落ちていたものから一枚、机の上から一枚絵を拾い上げ、ゾフィーに見せた。
そう尋ねながら身をかがめたゾフィーは、精密に描かれている他の羊皮紙を一枚拾い上げた。
ゾフィーが拾い上げた絵には、短パンをはいたおとなしそうな男の子──どことなくハノクの面影がある──と、三角帽子とローブを身に着けた無表情な少女、そしてその少女が肩に乗せている三毛猫とが描かれていた。
ミガクはその言葉にほっこりとした笑みを浮かべたあと、ふと真顔になった。
妙に改まった口調で、ヒゲを撫でつけながら――それを尋ねることが口の中で何度も躊躇われていたかのように話し出す。
そう説明しつつ、ミガクは近くの羊皮紙に木炭で絵を描いて見せた。
安心したような残念なような、微妙な表情を浮かべつつ鼻の頭を掻く。
早口でそこまで話すと、ふぅっと大きくため息をついた。
鼻の頭を掻きながら、困ったようにため息ひとつ。
ミガクが石を描いた羊皮紙をそっと手に取りつつ、ゾフィーは尋ねかけた。
ミガクの案内で、再び1階に戻ってきたゾフィー。
そしてゾフィーは、ミガクに見送られながら「モザイクガーデン」を後にした。
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