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SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

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白波通り



  イーンウェン・白波通り

ゾフィーはライチの案内で、『モザイクガーデン』へと向かった。
雨はやさしく降り続いていたが、しっかりと固められた土の道に水たまりを作るほどではない。
が、秋の澄んだ空気がより冷たく感じられる。
■ライチ To:ゾフィー
大通りに出て、少し歩いてから裏通りに入るの。
ついでだから公園の横を通っていこっか。
ミガクが作った壁画が置いてあるんだ〜。

■ゾフィー To:ライチ
あら、その壁画は拝見しておかねばなりませんわね。

■ライチ To:ゾフィー
うん。ミガクが言うには、「ベルダインを超えた」傑作らしいよ〜。

「白波通り」とプレートが貼られた大通りは、それなりに賑わっていた。
町人たちは皆、蝋をひいたマントをかぶって雨を避けつつも活動的だ。
露天商で値引き交渉をする男たちや、立ち話をする中年女性たち、雨にはしゃいで走り回る子どもたち。
■ライチ To:ゾフィー
ほら、あのアーチがそう。あ……そっか! 忘れてた。
もうすぐ海竜祭なんだ。

ライチが指を指した先には、見事なモザイクに包まれた石造りのアーチ。
その向こうには、色とりどりのテントが並んでいる。
公園の中央と思われる広場には、ひときわ大きなテント。
何かの催し物の準備がなされているようだ。
■ゾフィー To:ライチ
お祭り……ですか。
時期からして海鎮め?それとも豊饒かしら。
この土地は歴史があると伺いましたが、昔から伝わるものだったりいたしまして?

■ライチ To:ゾフィー
もともとは海鎮めのための祭事だったみたいだよ。
大昔に、ひどい嵐と津波を起こしてイーンウェンの土地を沈めようとした怪物がいて、それを退治したっていう逸話が起源なんだって。その怪物に「やっつけてごめんなさい〜」「もう二度と来ないでください〜」って、祈るわけね。

両手を組み合わせ、祈りのジェスチャーをしながら。
■ライチ To:ゾフィー
今ではそんな意味も薄れて……、ただのどんちゃん騒ぎのお祭りに取って代わっちゃってるみたいだけど。

■ゾフィー To:ライチ
あやまったり、二度と来ないでと祈ったりするということは、怪物は厳密には「退治」されたとは言えないような気もいたしますけれども……だからこそ「逸話」なのかしらね。
意味が薄れるほどというと、どのくらい昔の話なのかご存じですか。

■ライチ To:ゾフィー
うーん……いつだろ?
私の母が「昔話」として言っていたくらいだから、古代王国時代の末期か、新王国時代になってからまもなく、じゃないかな?

アーチの裾がそのまま低い壁となり、公園をぐるりと囲んでいるようだ。
海を思わせる青を基調にしたモザイク壁画が表面を彩っている。
壁越しに見えるテントの周りは準備で忙しそうだ。
■ライチ To:ゾフィー
それにしても、何のイベントだろうね?

テント入口に掲げられた看板には、
『No.1は誰だ! 第2回イーンウェン熱闘武道会』
 優勝賞金は2000ガメルと幸運のお守り!』
とある。
ライチは遠くて読めないのだろう。
■ゾフィー To:ライチ
『第2回イーンウェン熱闘武道会』だそうですけれど。
1回目は、いつ行われたのかしらね。
とりあえず、アーチの部分はきちんとと見ておこうと思いますの。
そこまで行ってもよろしくて?

■ライチ To:ゾフィー
海竜祭は1年に1回だから、去年の今頃から始まったんだね、きっと。
そのころ私、イーンウェンにいなかったからなぁ。
うん、いいよ。行ってみよう。

■ゾフィー To:ライチ
……以前、帰るのは1年ぶりというようなことをおっしゃっておられませんでした?
その時立ち寄られたのは、この祭りの前だったのかしら。

■ライチ To:ゾフィー
うん、去年の今頃は、海の上だったよ。
ちょうど祭りの前くらいにイーンウェンを出たから。
……久しぶりに帰ってくると、故郷なのに、なんだかちょっとよそ者の気分。

■ゾフィー To:ライチ
そういうものですかしらね。
望もうと望むまいと、故郷は故郷、土地の息吹が物心に焼き付いていることに変わりはないと考えておりましたわ。
そうなるとしたら、疎外感の原因は里にあるのかしら……それとも離れた側にあるのかしら……。

■ライチ To:ゾフィー
…………。

あっ、ほら見て、すごい行列〜。

アーチのそばまでやってくる。
広場を取り囲む小さなテントは、飲み物や軽食を扱う露店のようだ。
ライチが指差す先、中央の大きなテントの入口には、長蛇の列ができていた。
屈強なタイプと細身なタイプ、2種類のひとびとが並んでいる。
■ゾフィー To:ライチ
あらあら、随分と盛況ですこと。
あなたのお知り合いにも、参加なさりそうな方はいらっしゃいまして。

■ライチ To:ゾフィー
あははっ、ハノクやティガあたりが調子に乗って、参加しそうだけどね〜。
去年、したのかな?

ライチも目を凝らしながら、行列を眺めてみる。しかし知った顔は無いようだ。
■ゾフィー To:ライチ
船乗りの方も多いようですし、手が空いたら、並ばれるのかもしれませんわね。

そう応じるゾフィーの視線は、すでにモザイク絵画に向けられていた。
アーチ部分に施された絵は、イーンウェンの港から眺める海をかなりデフォルメした形で表現しているようだ。
日が射していれば、きらきらと輝いて見えたであろうモザイクたち。
丁寧ですばらしい仕事の成果であることは伝わってきた。
■ゾフィー To:ライチ>???
しかしあなた、こちらのモザイクは噂に違わず見事な技術ですわ。
細密な作業をきっちりとこなす方のようですね、お会いするのが……。
……???

■実行委員 To:ゾフィー&ライチ
あああっ、そこのドワーフのご婦人とエルフのお姉さん!!
明日から始まる、この熱闘武道会に参加してみません!? 賞金はなんと──

実行委員らしきおじさんが近づいてきて、早口に賞金と賞品を説明しつつ誘ってくる。イベントを盛り上げようと一生懸命のようだ。
■ライチ To:実行委員
いやぁ、私は……眼鏡ないと。あはは、ごめんね〜。
ゾフィーさんは興味ある?

■ゾフィー To:ライチ>実行委員
残念ながらわたくしも、もう若くはございませんしね。

とはいえ、旅人でよろしければ宿に戻れば知った顔もおりますので、興味がある者がいるかどうか、声をかけてみることはできますわ。
受付はいつまでやっておりますの?あと参加条件はございまして。

■実行委員 To:ゾフィー
受付は今日、日が落ちるまで──って言ってもお天道様は見えませんね、まぁ夕餉の前くらいまでには、ということで!
条件は1人もしくはペアでの参加、健康で体力・魔法に自身のある方なら誰でもOK!!
ただし、魔法は味方にしかかけちゃ〜いけませんよ?

明日にはもっと立派な看板を立てる予定ですから。
お待ちしてますよ!!

実行委員は満面の笑みを見せながら、新たな参加者を求めて去っていった。
■ライチ To:ゾフィー
やれやれ、変なのにつかまっちゃったね?
それじゃ、行こっか?

■ゾフィー To:ライチ
ええ、まいりましょう。



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かわいい絵筆

GM:ともまり