銀の網亭で再集合
秋の空の変化は早い。西の空がうっすらとオレンジ色に染まり始め、影も細長く伸びはじめた頃、リコリスは用事を終えて銀の網亭に戻ってきた。
おかみは夜の仕込み用だろうか、大量の白菜をざっくざっくと刻んでいた。
気に入ったらしい。
仕込みの手を止めて、いそいそとお茶とタルトの準備を始めるおかみ。
先程まで閑散としていた店に活気が戻ったかと嬉しそうだ。
そう言いつつ「もちもちもっちり茶」とかぼちゃのタルト(生クリーム付き)をリコリスの前に置いた。
新米冒険者たちは、おやじに肩を叩かれ、何やら励まされている。 しばらくして、再び開く扉の音。
あまり丁寧とはいえないやり方で、肩の上から卓上に緑の蛙を払いおとすゾフィー。
緑蛙の鳴き声に対し、何を言っているのかわかりませんわとでもいうような表情で、ゾフィーは知らん顔を決め込んだ。
そう言いながらゾフィーは緑蛙の横に粘土カエルと文字盤とを並べて置いた。
厨房に戻っていたおかみが、ひょっこり顔を出して応じる。
手元にある依頼書の写しを見つつ、応じるおかみ。
肩をすくめたゾフィーは港湾地区へと向かう為、足早に出ていった。
テーブルの上に拳をテトテトと打ちつけて怒りをアピール。
思わず漢泣きに泣き崩れる、ウサカエル。
言葉が通じていないことを思い出したウーサーは、ゾフィーに広げておいてもらった文字盤の上を
指をおとがいに当ててしばし考える。
リコリスのコマンドにより、魔法が解けていく。
そしてウーサーは、思わずとんでもない事を口走りながら、リコリスを真正面から抱きしめた。
子どものように無邪気に喜ぶリコリス。
途端にめちゃくちゃ不機嫌になって、ぽいすと手を離す。
受身など出来ないリコリス。 そしてさらに数時間後。
おかみの作る煮込み料理のいいにおいが、店内を満たしている。
それは内緒じゃなかったのか!?
店内には冒険者だけでなく一般客もおり、それなりに賑わっている。
こちらも気に入ったらしい。
おかみはフル回転の厨房に引っ込んでいった。
港町イーンウェンと「ハホリーナの葉隠れ屋」「ギャラリー・ハプルマフル」について、その他知っている話を披露するゾフィー。
暗い夜道をひとりで歩かせるのは心配だから、とは口が裂けても言わないウーサーだったりする。
おかみが慣れた手さばきで次々とお皿をテーブルに並べていく。 そして夜も更けてきたころ、「七つのさざなみ亭」からリコリスが戻ってきた。
会えなかったのは残念なものの、一緒の船旅ができるかと思うと楽しみで仕方がないらしい。
食事を終えたあと、ウーサーは粘土カエルをネホリーナに返すために再び「穴」を訪れた。
こうして、冒険者たちのオランでの調査の一日は終わりを告げる……
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