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SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

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画材屋レモネィ再び



  画材屋レモネィ

ライチと別れ、来た道を戻って来るリコリス。
ドアをそっと開けると、例の厳格そうな大柄な男性はまだカウンターにいた。
ふたりの話し声が聞こえてくる。
■店主 To:大柄な男性
……まぁ、そんなに心配ばっかりしなさんなって。
もしかしたら、騙されることだって社会勉強かもしれないぜ?

店主が大柄な男性の肩をぽんぽんと叩きながら、諭すような口調で話し掛けている。対して大柄な男性は、大きな身体に似合わず肩を落とし、首を力なく横に振っていた。
■店主 To:大柄な男性
やれやれ。ほら、黄色の絵の具、オマケしとくからな!
早く帰って喜ばせてやりな!

■大柄な男性 To:店主
……かたじけない。

店主は大柄な男性の背中をばしっと叩くと、そのままドアに送り出す。
彼は入口のリコリスに気付くと、入りやすいように身体を避けてあげながら出て行った──両手にはいっぱいの絵の具が入った布袋を抱えて。
■リコリス To:大柄な男性
あ、ありがとう。
ばいば〜い。

■大柄な男性 To:リコリス
……さようなら、お嬢さん。

すれ違う時の気遣いにお礼を行って、見送るリコリス。
「怖い人いなくなった〜」とほっと一安心。
■店主 To:リコリス
おーう、お嬢さん、おかえり!
さっきは油の匂いに酔っちまったのかな?
まだちょっと時間があるから、気にせず店内を見ていってくれよ!

■リコリス To:店主
ありがと。
あの、でも、リコお買い物に来たんじゃないの。ごめんなさい。

申し訳なさそうに謝る。
■店主 To:リコリス
ん? どうした、やぶからぼうに??

■リコリス To:店主
リコはリコリスって言うの。
「銀の網」ってとこの冒険者で、孤児院の子達の依頼を受けて「魔法の絵筆」を探してるの。

■店主 To:リコリス
……なんと。お嬢さんがフェンデ孤児院の……。
いやぁ、ははは。こりゃあフェンデの心配も杞憂に終わりそうだ。
どう見ても人を騙せそうにないしねぇ。

ああ、さっき居た人がフェンデ孤児院の院長さんなんだよ。

店主は何かに納得し、安心したような笑顔で言った。
■リコリス To:店主
そうなんだ。エプロンに書いてある字からそうかな〜とは思ってたんだけど……。
いい人そうだから、子ども達も幸せだね。
あ、それでね、「魔法の絵筆」が出てきた絵本の「イーエンにかかる虹」っていうのが、ここから孤児院に譲られたってきいて…絵本のことを教えてもらいにきたの。
絵本の「こじらいれき」(であってたっけ?)、教えてください。

ぺこりんと丁寧に頭を下げた。
■店主 To:リコリス
こ……コジラ? ああ、故事来歴か。ええと、あれは確か……
おっと、立ち話もなんだね。狭いけどこちらへどうぞ。

■リコリス To:店主
ありがと〜♪
おじゃましま〜す。

店主は、カウンターのそばにある小さな丸テーブルへとリコリスを促した。
どうやら作業用もしくは実演用の机らしい。
あちこち絵の具で汚れており、粘土が山のように積まれている。
■店主 To:リコリス
ええっと、あれは確か1年前だったかな?
オラン中央広場の市場で、西方から旅をしてきたという行商人から買い取ったんだ。
その行商人は、イーンウェンという港町にある私設図書館で、絵本を買い取ったんだと言っていたよ。

粘土のかけらを手に取り、慣れた手つきでこねこねし始めながら話す。
■リコリス To:店主
「いーんうぇん」?
行商人さん、この本のことについて何か言ってたことある?
由来とか、なんで売られたのか、とか。

■店主 To:リコリス
その図書館では、ボロボロになった本や、利用が少なくなった本を、町の人たちに売りに出すことがあるんだそうだよ。
あの絵本はよくわからない言語で書かれていたから、面白半分で買ったんだそうだ。私みたいな物好きに高く売れると思ったんだろうな(笑)
特別由来とかは語ってなかったねぇ。

■リコリス To:店主
なるほど〜。
その行商人さんってどんな人だったか覚えてる?
お店の雰囲気とか、名前とかわかれば教えて欲しいんだけど…。

■店主 To:リコリス
市場が終わったら東方へ旅を続けるって言ってたなぁ。
買ったのは1年前だから、もう居ないんじゃないかな?

■リコリス To:店主
そっか〜、残念。
あと、こんなこと聞いていいのか解らないけど…いくらぐらいだったの?

■店主 To:リコリス
ああ、かまわんよ。
彼が図書館からいくらで買い取ったのかは知らないけど、
私は300ガメルで買い取ったよ。もちろん、さんざん値引き交渉した後でね(笑)

■リコリス To:店主
このお店から孤児院に本が渡ったのはどうして?

■店主 To:リコリス
ああ、それは、フェンデの奴が、読み聞かせに使える絵本がもう無くなってきて……とぼやいていたからな。いつもひいきにしてもらってるし、もうすぐ子どもたちの誕生日だって聞いてたから、ゆずってやったのさ。

■リコリス To:店主
おじさん、いい人だね。
おじさんは「魔法の絵筆」ってあると思う?

■店主 To:リコリス
もちろんあると思ってるさ!
私は、世の中のわけのわからないがらくたを集めるのが趣味でね。
こんなもの無いだろうとか、持っていてどうするんだとか、そんな風に考えたとたん、モノは命を無くしてしまう。
ひょっとしたら絵筆という形ではないにせよ、何かの形で存在している、私にはそんな気がするよ。おっと、熱っぽく語り過ぎてしまったな。

照れたように口ひげを撫でた。
■リコリス To:店主
ううん、おじさんもそう思ってくれてるなら、探すかいあるよ。
リコもあると思うし。
あとね、リコ、孤児院の院長先生は冒険者が嫌いって聞いたの。
なんでか知ってる?

■店主 To:リコリス
「嫌い」って聞いたのかい? 嫌いというより、トラウマって感じだなぁ、あれは。
フェンデがまだ若い頃、裏切られたことがあったからだよ。

彼がヴェーナー神殿に勤めていた頃、オラン辺境の村の礼拝所にモンスターが住み着いたという噂を聞き、調査と討伐を冒険者に依頼したことがあってね。
かなり多めの前金を受け取った冒険者たちは、1週間帰ってこなかった。
やきもきしていた頃にふらりと帰ってきた彼らは、さしたる感想も述べずに一言、「モンスターは居なかった」と報告して去っていったんだ。
その後、礼拝所で村人がモンスターに襲われる事件が起きてね……。
さらにその後、例の冒険者たちが留守にしていた1週間、別の街で派手に遊び歩いていたことがわかったんだ。

そこまで言うと、店主はふぅとため息をついた。
■リコリス To:店主
ひどい……。
そんなひどい冒険者もいるんだ……。

リコリスは自分が裏切られたかのように悲しそうに顔を曇らせた。
■リコリス To:店主
リコたちは…銀の網の冒険者はそんなことしないから、安心してね。
それでも、もし問題があったらお店の方に行けばおやじさんやおかみさんがきちんと対応してくれるから。

■店主 To:リコリス
ははは、それを言う相手は私じゃなくて、院長先生のほうじゃないかい?

■リコリス To:店主
そうだね。直接会えたら伝えてみるね。
ところで、何作ってるの?

店主の手元でこねこねされている粘土が気になるらしい。
■店主 To:リコリス
ん? これは「まねきねこ」と言って、遥か異国では商売繁盛のお守りとされているんだ。どうだい? かわいいだろう?

店主が手のひらを広げると、そこには片手で顔をかいかいしているような仕草の猫がちょこんとおすわりをしていた。
■リコリス To:店主
うっわぁ〜、ネコだ〜♪かわいい〜。

リコリスは粘土細工のネコに目を輝かせた。
■店主 To:リコリス
我ながら上手くできたよ(笑)
特にこの、丸まったしっぽのあたり。
お嬢さんは、猫好きかい?

■リコリス To:店主
うん、大好き♪
ここってもしかして、ネコの小物とかも扱ってるの?

■店主 To:リコリス
猫だけじゃないがね、この店にはまだ名の売れていない駆け出し作家さんたちの作品も展示してあるから、気に入ったのがあったら手に取ってみてごらん。

丸テーブルの隣にはちょうど展示スペースがあって、様々な動物をモチーフにしたアクセサリーや絵付きの皿、画材などが置かれていた。
■リコリス To:ねこ小物
うっわぁ〜、かわいい〜♪

目を輝かせてネコ小物を見つめ、何点か手に取ったりしているリコリス。
さんざん迷った挙句に店主の元に持っていった。
■リコリス To:店主
これとこれとこれ、くださいな。
いくらになりますか?

リコリスが選んだのは剣の柄に結わえ付ける、もふもふ玉付き組紐。
桜色、水色、灰色、茶色の4つを選んでいる。兄たちへの土産のつもりなのだろう。
そして、柄の先が猫の形になってるペン
マント留めに使えそうなネコモチーフのついたピン止めだ。
■店主 To:リコリス
ええと、ねこ玉組紐が4つ、色はこれでいいかい?
で、ペンとピン留め……と。ぜんぶで30ガメルだね。
ありがとう、作家さんも喜ぶと思うよ!

■リコリス To:店主
うん、これでOKだよ。
作家さんにも宜しくね。
あ、じゃあ、リコ、もう帰らないといけないからまたね〜。
イロイロ教えてくれて、ありがとうございました。

■店主 To:リコリス
ああ、ぜひまた来てくれよ! 仕事、がんばってな!

ネコグッツを受け取ると、ペコリンとおじぎをして、リコリスは銀の網亭に向かって帰っていった。


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GM:ともまり