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SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

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画材屋レモネィ



  画材屋レモネィ

中に入ると、ペンキと油が混じったような、あまり嗅いだことの無い匂いがリコリスの鼻を刺激した。
■リコリス
うっわぁ〜。なんかすごい〜♪

リコリスは物珍しそうに周りを見回した。
店内はかなり狭く、古ぼけた棚がまるで迷路のように空間を仕切っている。
絵筆、油、ペンキ、絵の具、羊皮紙の束、カンバス、彫刻用のナイフ、人体模型などなど、さまざまな道具がところ狭しと並べられていた。
店内には客はおらず、カウンターで話し込む2人の人影があるのみだ。
ひとりは、絵の具で汚れたエプロンを身につけた、店主らしい中年のおじさん。
もうひとりは、「soul of Art」と刺繍されたエプロンを身に着けた、やたらガタイの良い男性だった。
■リコリス To:店長&大柄な男性
こんにちは〜♪

■大柄な男性 To:リコリス
……こんにちは、お嬢さん。

振り返った大柄な男性は、ものすごく気難しそうな目と眉をもった、厳格そうな顔だちをしていた。
■店主 To:リコリス&ライチ
いらっしゃーい。
よぉ、ライチさん。ん、何か物足りないな?

ふたりに気付いた店主が、大柄な男性との会話を中断して話しかけてくる。
■ライチ To:店主
こんちわ〜。眼鏡壊しちゃってさ、あはは。
あ、頼んでた海図ある?

■店主 To:ライチ
おぅ、まだ選り分けてないんだよ、この中からお目当てを探してくれよ!

店主はカウンターにどさりと羊皮紙の束を置くと、得意げに自らの口ひげを撫でた。
■ライチ To:店主>リコリス
サンキュ♪
リコ、私の用事はもうちょっとかかるから、気にせずに絵筆見ておいでよ。

そう言うと鼻歌を歌いながら、羊皮紙の一枚一枚をものすごく顔に近づけながら、何かを選定し始めた。
■リコリス To:ライチ
う、うん…でも……ライさん、見えるの? 大丈夫?
リコ、手伝う?
これでも、一応賢者の学院でお勉強もしてるんだよ。

■ライチ To:リコリス
ああ、大丈夫大丈夫。こうして顔を近づければ、細かい文字も読めないこと無いから。
それに、これはたぶん、「がっこうではおしえてくれないこと」だよ♪

悪戯っぽく笑って、リコリスの前に海図の一枚を差し出して見せる。
それはかなり古いものらしく、記号や書き込み、虫食いだらけで、確かに読み解くのはかなり難解そうだった。
■リコリス To:ライチ
あ、本当だ…なんか難しそう……。
でも、目印になるようなものとか教えてもらえれば、それを探すぐらいはできるんじゃないかな?

■ライチ To:リコリス
目印か……そうだね、じゃあ……。
リコは、オラン周辺の地図を見たことはある?
海岸線がこういう形をしているでしょ?

そう説明しながら、机の上に指先で海岸線を描いてみせる。
■ライチ To:リコリス
その海岸線に似た地形を表している地図を探して欲しいんだ。
もちろん、ここにあるのは昔の地図だから、今の地図ほどの精度はないと思うよ。そのあたりも予測しつつ、探してみてね。

そう言うと、ライチはリコリスに羊皮紙の束の半分を差し出した。
■リコリス To:ライチ
うん、わかった。探してみる。

羊皮紙を受け取り、ライチの描いた線っぽいものを探すリコリス。
■リコリス
ん〜? ん〜? ん〜?
????

まったくわからないようだ。
■リコリス
あ、そうだ。昔の地名探してみよう。

リコリスは自分が知っている古代王国期の地名「イーエン」と「レックス」を探してみる。
しかし、いずれも見つからなかった。
■ライチ To:リコリス
ん〜……
リコ、そっちはどう?

ライチは目の前に近づけていた羊皮紙をいったんどけて、リコリスの様子をうかがう。
■リコリス To:ライチ
難しいねぇ〜。
ねぇ、ライさんはなんでこんな昔の地図調べてるの?
今の海図じゃダメなの?

■ライチ To:リコリス
まぁ、半分は趣味みたいなものだけどね。
私は用心棒だから、海のこと……海路についてよく知ってないといけないでしょ?
特に、海で遭遇する危険についてはね。
こういう古い海図には、モンスターの出現ポイントとか、渦潮の発生箇所とか、当時調べられていたことが記されていることがあって、それが今でも参考になることがあるんだ〜。

■リコリス To:ライチ
そうなんだ〜。

そして内緒話をするように声を潜めて、
■ライチ To:リコリス
それと……たとえば、大昔に船が沈んじゃった地点とか。
もしかしたら、そこでは……幽霊船に出会えるかもよ?

なーんて、あははっ。

悪戯っぽく笑いながら、自分でよりわけていた羊皮紙のうち、一枚を手に取る。
■ライチ To:リコリス
ほらこれ。オランの西の海図だよ。これが参考になりそうだ。
さて、それじゃあ私は帰ろうかな〜。

■リコリス To:ライチ
幽霊船……って面白いの? 怖い幽霊さんが乗ってるんでしょ?
ってえ〜〜〜!Σ( ̄ロ ̄lll)
ライさん帰っちゃうの〜?

心細そうに目に涙を溜めてライチを見上げるリコリス。
とっさにがっしりとライチの腕にしがみつく。
■ライチ To:リコリス
だってほら、幽霊船と言えばお宝ざっくざ……え? え??
ど、どうしたのリコ!?

■リコリス To:ライチ
あ、あの…リコ、送っていこうか?
りこのようじはいまじゃなくてもだいじょうぶだから。(棒読み)

■ライチ To:リコリス
……リコ、もしかして初めて来るお店で、緊張してる?
だ〜いじょうぶだって。ここの店長さんはいい歳のおっさんだけど、優しい人だよ?

なだめるような優しい笑顔で、空いている方の手でリコリスの頭をぽんぽんと撫でる。
■リコリス To:ライチ
う、うん………。

ちらりと店主&厳格そうな男性を見る。
そしてすぐに目を逸らした。
■ライチ To:リコリス
でもまぁ、ここはけっこう油の匂いとか強烈だから、一度外に出るのも悪くないか。
じゃあ、この通りの角まで送ってもらおうかな?
そこから先は、勝手知ったる道のりだから、ひとりでも平気だからさ。

■リコリス To:ライチ
う、うん、そうだね。そうだよね……。
うん、一回外に出るよ。

■ライチ To:リコリス
じゃ、いこっか♪

ライチはにっこりと頷くと立ち上がり、お目当ての海図を丸めてベルトポーチにしまった。そして店主に礼を言いつつ、代金をいくらか手渡す。
■リコリス To:店主
あの…また後で来ます。

ぺこりと頭を下げる。
■店主 To:リコリス&ライチ
ん? そうか、店は日が沈んだら閉めちまうから、それまでに来てくれよ!
待ってるからな!

■リコリス To:店主
ありがと、おじさん♪
じゃあ、また後でね〜。

人の良さそうな店主の態度に緊張がほぐれたのか、うれしそうな笑顔で手を振って店を出た。

  風見通り

店を出たふたりは、再び手をつないで歩き出した。
まったく背の高さの違うふたつの影が、石畳に伸びる。日も傾いてきたようだ。
3ブロックほど進んだ先に、狭い通りと交差する角があり、そこでライチは足を止めた。
■ライチ To:リコリス
ここで良いよ、ありがとう〜。
すっかり世話になっちゃって、ごめんね。
……あ、そうだ。さっき借りたハンカチ、後で返さなきゃね。
「銀の網亭」って言ったっけ? 場所を教えてくれる?

■リコリス To:ライチ
ここ? ライさんが泊まってるとこってこの辺なの?
あ、銀の網亭はね………地図書いて……口で説明したほうがいい?

ライチの目を思いやり、地図はやめたほうがいいかな〜と思いつつも、口での説明には自信がないらしいリコリス。
■ライチ To:リコリス
うん、湾岸地区の……もうちょっと港に近いとこね。
あ、じゃあ……そうだ、手のひらに線を引きながら教えてくれる?
感触で確かめながら聞いていれば、覚えやすいし。

やりやすいようにしゃがみこんで、リコリスの前に左の手のひらを差し出す。
■リコリス To:ライチ
うん、えっとね、ここの道通って、角の三毛猫のプチの雑貨屋さんを曲がってね。
しばらくいったとこにある白いもふもふ犬のジョンのお花屋さんとこをまがって―――

リコリスはライチの手のひらに線を書きながら説明していく。
ただし、目印は店の種類(店名にあらず)と「ねこ」「いぬ」だ。
さしずめオラン街イヌネコマップ〜銀の網亭界隈〜といったようなものが展開されていく。
■ライチ To:リコリス
……うくく……じ、自分で頼んでおいてなんだけど、くすぐったいねコレ。

手のひらをなぞる感触にちょっぴり身をよじりながら、リコリスの説明を頷きながら聞いている。
■リコリス To:ライチ
でね、ここが銀の網亭だよ。
わかった?

ちゃんと伝わったか、少し不安そう。
■ライチ To:リコリス
えっと、プチの次がジョンで、その次が……
……で、銀の網亭、と。うん、バッチリ覚えたよ♪
子猫やもふもふ犬たちが、きまぐれで散歩に行ってたりしたら……
目印を勘違いして迷っちゃったりして。あははっ。

イヌネコマップを気に入ったらしく、楽しそうに笑いながら言った。
■リコリス To:ライチ
あれ? 迷っちゃう?
ごめんなさい、リコ、お散歩行ってる時のことは考えてなかった……。
どうしよう……?
あ、でもその辺までいけば道歩く冒険者とかも多いから聞けばわかると思うよ。
リコも初めて行ったときに教えてもらったし。

■ライチ To:リコリス
あはは、冗談だよリコ。店名がわかってるんだからなんとかなるって。
迷ってみるのも楽しそうだしね♪

どうやら街をぶらぶら歩くのが、嫌いではないタイプのようだ。
■リコリス To:ライチ
あの……リコ、ライさんにお願いがあるんだけど………。
その………リコのお友達になってくれない?
リコ、ライさんともっとイロイロなことお話したりしたいの。

緊張した面持ちで返事を待つリコリス。
「人」に友達になって欲しい、頼むのはこれが初めてだ。
■ライチ To:リコリス
……リコ?

少し驚いたように数回まばたきして、リコリスの顔を見つめるライチ。
やがてふっと優しい笑みを浮かべると、リコリスの肩にぽんと手を置いた。
■ライチ To:リコリス
改まって何を言うのかと思ったら……
リコ、私はもう友だちのつもりだよ。一緒に居てとーっても楽しかったし。
……ん、でも嬉しいな、私だけじゃなくリコもそう思ってくれたってことだよね。
ありがとーっ♪

いきなり両手を広げ、ぎゅっとリコリスの身体を抱きしめる。
リコリスの小さな背中をすっぽりと包み込んで、ちょっと苦しいくらいに。
リコリスは少しだけ顔をしかめながらも嬉しそうにライチの背中に手をまわした。
■リコリス To:ライチ
ありがとっ♪ リコ、嬉しい。
これからもよろしくね。

■ライチ To:リコリス
それじゃ、またね。近いうちに銀の網亭に遊びに行くから。
リコも、帰り道気をつけるんだよ?

■リコリス To:ライチ
うん。待ってる。
リコからも遊びにいっていい?
ライさんが泊まってるとこ教えて。

■ライチ To:リコリス
私は、オランにいることの方が少ないんだ。大抵海の上にいるから……そうでないときは、仕事にあぶれてるか休暇中。だから遠慮なく遊びに来て。
今は、湾岸地区の「七つのさざなみ亭」にいるよ。
海の男御用達の宿だから、強面が多くてびっくりするかもしれないけど、皆良い奴らばっかりだからさ。

リコリスが怖がらないかと心配しているらしい(笑)
■リコリス To:ライチ
「ななつのさざなみてい」だね、うん、わかった。
いい人いっぱいなら安心だね。

「強面」っていう言葉でガタイのいい「ウーサー」を想像しているリコリス。
実際に行ったら「ビビリ」そうだ(笑)
■リコリス To:ライチ
……………?
あ、あれ? そういえばリコ、最近は銀の網よりも学院とかに居ることのほうが多いような……。
っていうか、顔出さない日の方が多いかも。
今は依頼受けてるから毎日顔出すけど……。
あのね、ライさん、リコ普段は魔法学院でお勉強して、おにいちゃん家に帰ってるの。
お昼ごはんは学院の食堂で食べてることが多いから、そっちの方が確実に会えると思う。

申し訳無さそうに言いながらも、お昼の学院にライチが来てくれるなら、いつも一緒に昼食を食べている兄(のうちの誰か)に紹介できるかな〜と期待のこもった眼差しで見上げる。
■ライチ To:リコリス
兄ちゃんがいるんだ、いいね〜。
私も学院の図書館はよく利用するよ。学生じゃないけどね。
それじゃ、銀の網亭に行って会えなかったら、そっちに行ってみるね。

■リコリス To:ライチ
うん♪
楽しみにしてるね。
じゃあ、ライさん、またね〜。

■ライチ To:リコリス
うん、またね♪

リコリスはぶんぶんと手を振って、ライチを見送った。
角を曲がり、細い路地を歩いていきながら、何度も振り返って手を振るライチ。
そしてその先の角を曲がると、黒ずくめな姿は見えなくなった。
■リコリス To:ひとりごと
………行っちゃた……。
あ、「れもれも」に戻らないと。

胸によぎった寂しさを振り払うかのように、リコリスは勢い良くレモネィへの道を戻っていった。


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GM:ともまり