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SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

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ハザード河のほとり



  ハザード河沿い・風見通り

リコリスはハザード河沿いにあるという「画材屋レモネィ」へと向かった。
教えてもらった道順のとおりに歩いていくと、やがてハザード河沿いの通り、「風見通り」に出た。
ここを真っ直ぐ行けば、やがてレモネィの看板が見えるそうだ。
右手にハザード河、左手に石畳の街並を眺めながら、歩く。
街路樹も徐々に秋の空気によって赤や黄色に染まり、ちょっと肌寒い秋風が、リコリスの長い髪を揺らした。
■黒ずくめなひと To:ひとりごと
……あ〜、やばいよ、もぉっ……
ど、どこ〜。

ふと前方に、座り込んで石畳の路上をぺたぺたと触っている人物がいた。
すらりと細長いシルエットと、長くつややかな黒髪。
全身真っ黒なマントとブーツを身につけているせいか、さらに線が細く見える。
■リコリス To:心の声
(あれ? あの人なにしてるのかな?)

■黒ずくめなひと To:ひとりごと
あっ……ぃてっ……!

ぺたぺたやっていた手を急にひっこめる。
見ると、地面には眼鏡が粉々になって落ちていた。
■リコリス To:黒ずくめなひと
あの、大丈夫?
そこ、なんか眼鏡がこなごなになっちゃってるみたいなんだけど。

黒ずくめなひとのとなりにそっとしゃがみこんで、話しかける。
またその人が触ろうとしたらその前に止めようと、手は粉々の眼鏡の少し上に待機させている。
■黒ずくめなひと To:リコリス
げ。やっぱり?
さっき、強風に煽られて落としちゃって……あはは。
ついてないな〜。こりゃ、旅に出るなって思し召し?

苦笑いを浮かべながら、破片で傷つけたらしい人さし指を口にくわえている。
長い黒髪から覗く肌は透けるほどに白く、碧眼。ぴんと立った耳はエルフのものだ。
エルフの例にもれず、かなりスレンダーな女性のようだ。
■黒ずくめなエルフ To:リコリス
ごめんね、眼鏡無しだとあなたの顔もよく見えてないんだけど。
思い出の品だから、フレームだけでも持っときたいんだ。
その辺に落ちてる? とってもらっても良いかな?

どうやら本当によく見えないらしく、そう訴えるエルフの目線はリコリスをまっすぐ見ては居なかった。
■リコリス To:黒ずくめなエルフ
うん、いいよ。ちょっと待ってね。

リコリスは杖を一旦地面におくと、眼鏡のフレームを持ち上げ、ハンカチで残っている欠片を取り除いた。
そして、ハンカチに、今度は道に落ちた欠片を誰かが怪我をしたりしないように拾い集める。
■リコリス To:黒ずくめなエルフ
はい、どうぞ。
粉ごねになっちゃった欠片はいるの?

フレームだけを彼女の手に押し付け、欠片は飛び出さないようにハンカチで包み込んだ。
■黒ずくめなエルフ To:リコリス
ありがと♪

にっこりと屈託のない笑顔を向けると、リコリスのほっぺに軽くキス。
■リコリス To:黒ずくめなエルフ
うひゃぁ!
(な、なにいまの、なにいまの!)

突然のくすぐったい感触に悲鳴を上げる。
そして手をほっぺに当てると自分がいまされたことに思い至り……ドキドキしながら真っ赤になった。
■リコリス To:心の声
(お、おちつけ、おちつけ、おちつくの〜っ!
たしかこれはあいさつとかあいさつとかあいさつとかであいさつなの〜!)

リコリスは混乱している!
■黒ずくめなエルフ To:リコリス
あれ? あははっ、もしかしてびっくりさせちゃった?
私の育った地方ではこれ、心を込めた挨拶なんだ。
あと、「あなたを信頼しました」っていうしるしね。
脅かしちゃって、ごめんね♪

リコリスの様子に思わず優しい苦笑を浮かべると、落ち着くまで(まるで子犬にするように)頭をぽんぽんと撫でた。
■リコリス To:黒ずくめなエルフ
あ、あいさつだよね、そうだよね。そうだよね。
……………。(深呼吸)大げさに驚いちゃってごめんなさい。
リコ、こういう挨拶初めてだったから。

もじもじと恥ずかしそうに俯いてぺこりんと頭を下げる。
■黒ずくめなエルフ To:リコリス
ああっ、そんな、頭なんて下げちゃダメだよ、ね?
私も地元以外では、気をつけるようにするからさ。
ほら、か〜お〜あ〜げ〜て〜〜。

困ったように苦笑しながら、リコリスの肩をそっと掴んで覗き込んだ。
■リコリス To:黒ずくめなエルフ
あ、うん。わかった。
…………!
(ちかい、ちかいよ、やっぱりはずかしいよぉ〜)

顔上げて、黒ずくめなエルフが結構側に居ることに気づき、また少し顔を赤らめながら距離をとろうとする。
■黒ずくめなエルフ To:リコリス
あ、破片も貰っておくね。
危ないし、少しでも欠けてたら母が泣いちゃうからさ〜。
ここに置ける? 手、怪我しないようにね。

黒革のベルトポーチから黒いハンカチを取り出すと、手のひらの上で受け皿のようにして広げた。
■リコリス To:黒ずくめなエルフ
じゃあ、はい。
リコのハンカチに包んだままもってってね。
こぼれたり、ささったりしにくいと思うから。

欠片の包みを黒いハンカチの上にそっと乗せた。
■黒ずくめなエルフ To:リコリス
いいの? あなたのハンカチが汚れないといいんだけど。
じゃあ、あとで別の入れ物に移すまで借りておくね。
傷つけちゃったら、新しいのプレゼントしなきゃ。

■リコリス To:黒ずくめなエルフ
あ、いいよ、気にしなくても。
ハンカチは傷ついてもつくろえばいいんだし。

リコリスが繕えるかは別問題。
■黒ずくめエルフ To:リコリス
そう? そうだね、物は大事にしなくちゃ。
じゃあ繕って返そっか。

もちろん、彼女ができるかどうかも別問題。
■リコリス To:黒ずくめなエルフ
ところで、そんなに見えにくくて大丈夫?
もしよければだけど、どこかにいくなら、リコ一緒に行く?
街中だったらいいよ。
あ、リコはリコリスっていうの。ラーダ神官だよ。

彼女の空いている手に、そっと自分の聖印を触れさせる。
■黒ずくめなエルフ To:リコリス
ん? コレ何? あ、カミサマにつかえるひとが持ってる、聖印とかいうやつだっけ。
私たちエルフは“世界樹”から生まれたから、カミサマってのがよくわかんないんだけどね。
あ、でも……半分はエルフなんだね。

どうやらぼんやりとシルエットなら分かるらしく、リコリスの耳のあたりを見つめている。
■リコリス To:黒ずくめなエルフ
うん、そうだよ。ハーフエルフ。
でも、人の街で育ててもらったから、エルフの事はよく知らないの。

■黒ずくめなエルフ To:リコリス
そっかー。私も育ったのは人間の街なんだ。
しかも、海辺の田舎町でね。エルフのくせに森をよく知らないの。
不良エルフなんだよ、私♪

■リコリス To:黒ずくめなエルフ
海辺の町?
どんなとこなの?
あ、リコね。こんどイーエンって海の近くの町に行くの〜♪

■黒ずくめなエルフ To:リコリス
いーえん? ……?? あ、そういえば。

リコリスと話すのが楽しいらしく、しゃがみこんだまま膝に頬杖をつき、おしゃべりを続けていたエルフの女性。
そしてふと、名乗っていないことに気がついたらしく言葉を切る。
■黒ずくめなエルフ(ライチ) To:リコリス
まだ名乗ってなかったね。
私はライチって呼ばれてる。美味しそうな良い名前でしょ?
自分で勝手につけたんだけどね〜。あははっ。

明るい調子で笑うと、ライチは立ち上がった。リコリスとはかなりの身長差がある。
ウーサーほどはなくとも、イェンスくらいはありそうだ。
荷物はベルトポーチだけで、武器も腰に差している短剣のみという軽装ぶりだ。
■リコリス To:ライチ
ライさんだね、よろしく。
ライさんも冒険者なの?

■ライチ To:リコリス
違うよ〜。よく間違われるけどね。私は、船乗り。
正確に言うと、船旅専門の用心棒ってところかな。
……けど、眼鏡割れちゃったから、しばらくは役立たずかも、ね。

眼鏡のフレームと破片を包んだハンカチを、大切そうにベルトポーチにしまい込みながら、さほど深刻さを感じさせない、おどけた苦笑を浮かべた。
■リコリス To:ライチ
船乗りさんなんだ〜。しかも用心棒!
ライさんってすごいんだね〜♪
って眼鏡ないと困っちゃうんだよね…そういうのってどこで売ってるの?

■ライチ To:リコリス
う〜ん、私ものすごく目が悪いから、腕のいい眼鏡職人じゃないとダメなんだ。
ま、帰るまでの辛抱だね〜。

■リコリス To:ライチ
そうなんだ〜。
オランの家か宿に帰ればなんとかなるの?
それとも故郷?
見えないと大変だよね……リコがついていってあげられればいいんだけど…今はそうもいかないんだよね〜。

■ライチ To:リコリス
故郷に帰れば、ね。
まぁなんとかなるよ、ひとりで船旅するわけじゃないしね。

軽い調子で答える。リコリスの小声は聞き取れなかったようだ。
■ライチ To:リコリス
リコって呼んでもいいかな? リコは、これからどこかに行くの?
リコの用事の邪魔にならないなら、一緒に行ってもらおうかなぁ。
私は、この通り沿いにある画材屋さんに行くところだったんだ。
「レモネィ」って言うんだけど、知ってる?

■リコリス To:ライチ
うん、もちろんいいよ♪
その「れもれも」って画材やさんなら、リコもこれから行こうとしてたとこだよ。
初めていくとこだけど場所は聞いてきたから、一緒に行こっ。
えと、手をつないでったほうがいいの?

■ライチ To:リコリス
そうなんだ。すごいね、なんて偶然!
じゃあ、遠慮無く手を借りるね♪ えーっと、切ってないほうの手……
リコ、右手を出してくれる?

■リコリス To:ライチ
うん、いいよ♪

リコリスの右手に自分の左手を重ねると、リコリスの歩幅に合わせるようにゆっくりと歩き出した。
■ライチ To:リコリス
そういえば、さっき「も」って言ってたけど…リコは冒険者なんだ?
そんな格好してるから、いいとこのお嬢様かと思ったよ。
レモネィには画材を買いに行くの?

■リコリス To:ライチ
うん、リコは冒険者だよ〜。
銀の網亭ってとこにいるの。
「れもれも」にはね、絵筆探しに行くんだ〜♪

■ライチ To:リコリス
絵筆かぁ、リコは絵を描くのが好きなんだ?
あそこにはいろんな種類の絵筆があるから、選び甲斐がありそうだよね〜。
私にはぜんっぜん、絵のことなんてわかんないけど、ね。あははっ。

■リコリス To:ライチ
リコは頼まれ物だから、自分で使うんじゃないんだ〜。
でも、イロイロな絵筆かぁ〜、見てみたいかも。

興味はあるらしい。
しばらく歩いていくと、通りの少し先に、レモンの形をした木製の看板が見えてきた。
「画材屋レモネィ」と刻まれているようだ。
ライチはよく見えていないらしく、正面を向いてはいるが無反応である。
■リコリス To:ライチ
あ、ここ?
レモンの看板に、「れもにぃ」って書いてある。

■ライチ To:リコリス
れもに……ん? れも「に」ぃ?
あはははっ、リコ、「レモネィ」だよ。れも「ね」ぃ!
リコってもしかして、何かの名前覚えるの苦手? あははっ。

お腹を押さえて笑いながら、手探りでドアにふれ、ノブを回した。
カランカラン♪と音がする。
■リコリス To:ライチ
え? あれ? あ、ほんとだ。「れもねぃ」だ。
うん、リコ、人の名前とか、イロイロ覚えるのすごく苦手なの。
なんか、ライさんには恥ずかしいとこばっかり見られてる気がする(>_<)

恥ずかしそうに俯きながらも、ライチと手をつないだままレモネィの店内に入る。


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