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SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

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依頼のおはなし



  フェンデ孤児院

冒険者たちは広い遊戯室に案内された。
もちろん、すっかりご機嫌の子どもたちもくっついて来ている。

白い石作りの床に、簡素なじゅうたんが敷かれているだけの部屋。
あちこちに布製のボールやくたびれたぬいぐるみが散乱しており、それをやせっぽちの男性がのんびりと片付けていた。
■ユーミル To:やせっぽちさん(ポフト)
ポフトさん、お疲れさまです。
冒険者の方たちがいらしたので、ここ、お借りしますね。

■ポフト To:ユーミル&冒険者たち
ああ、はいはい。どうぞどうぞ。
スタッフのポフトです。散らかっててすみませんねぇ。
今、リエッタがお茶を持ってきますからねぇ。

にこやかにお辞儀する男性。身につけたエプロンには、『soul of Art』と刺繍されていた。
ポフトはじゅうたんのしわを伸ばしたりして、冒険者たちを促す。
子どもたちも思い思いに、座り込んで手遊びを始めたり、寝転がったりしはじめた。
■シグナス To:ポフト
どうも、こんにちわ。お邪魔させて頂きます。

■ユーミル To:冒険者たち>赤毛おかっぱの女の子(ネイビー)
すみません、ちゃんとした応接室がないので……ここでお願いしますね。
ネイビーちゃん、絵筆の絵本、持ってきて〜。

■ネイビー To:ゆーみる
がってんだ〜♪

ネイビーと呼ばれた子はてってってと部屋の片隅にある本棚へ。
そこから古ぼけた大きな絵本を抱えるように持って戻ってきた。
それを車座の中央にぽんと置く。
■ゾフィー To:ネイビー
ネイビーさん、ありがとうございます。

■ネイビー To:ぞふぃー
むらさきばあちゃん、どういたまして〜♪

得意げな表情でにこにこ。
■ゾフィー To:ネイビー
わたくしはゾフィーというなまえですのよ。
ネイビーさんは、きちんとごあいさつができますのね。

■ネイビー To:ぞふぃー
せんせいがね、ごあいさつすると、ともだちになれますよって。
ぞふぃーさんとわたしは、もう、おともだちだね♪

■ゾフィー To:ネイビー
あなたとわたくしだけではないですよ。
みんな、みんなおともだちでいなければね。
だから、これからもきちんとあいさつしましょうね。

■ネイビー To:ぞふぃー
はーい!

■ユーミル To:ネイビー
ネイビーちゃん、よかったね♪

ユーミルはネイビーの頭を撫でながら、目線でゾフィーに礼を送った。
僅かな間をおいた後、ゾフィーはごく小さな頷きでそれに応える。
■ユーミル To:ALL
それじゃ、依頼のお話をさせてもらいますね。
探してほしいのは、この絵本に出てくる「魔法の絵筆」です。

ぼろぼろの表紙には、かすれて消えかかった下位古代語で『イーエンにかかる虹』とタイトルが入っていた。
絵筆を持ったドワーフの男性が、空を見上げている絵が入っている。
■ウーサー
…………(汗)

難しい顔をして誤魔化そうとしてはいるものの、本のタイトルが読めないのがどうやら自分だけらしいと悟り、慌てまくっていたりする。
■シグナス To:ウーサー
ん、どした?……ああ、下位古代語か。絵本にしちゃ珍しい……いやホント珍しいなオイ。

■イェンス To:ALL
イーエン、イーエン…と言うと、古代王国時代、オランの西、海に突き出した岬のある地域がそんな呼ばれ方をしていた記憶がかすかに…。

■シグナス To:ALL
ああ、たしか海辺だったな。他の事はちょいと、聞き覚えがねえけど……。

■ゾフィー To:イェンス>ユーミル
そんな近くにですか、おとぎ話というより伝説なのかしら……。

いえ、まずは様々な先入観ぬきで物語を伺ってみましょう。
その絵本には、どう描かれておりますの?

■リコリス To:ユーミル
読んで読んで〜♪

■ユーミル To:ALL
はい。それじゃ、ひととおり読みますので、聞いてくださいね。

♪『イーエンにかかる虹』……

ユーミルはリュートを構えると、静かに弦を爪弾いた。
それまで思い思いに遊んでいた子どもたちはぴたっと動きを止めて、これから始まるお話に耳をそばだてる。
ネイビーが、ユーミルの語りに合わせるようにして、そっと表紙をめくる。

まるでそよ風のような美しい、けれど控えめで優しい旋律に乗せて、吟遊詩人は朗々と歌うように語りだした。
■ユーミル To:ALL
♪その ドワーフは 満足していました。
♪望まれるものは 何でも 描けたし、
♪描けないものは なかったからです……

あるところに売れない絵描きのドワーフがいた。
彼はお金がもらえなくても、望まれるものを描いて喜ばれていれば幸せ。
病気で寝たきりの女の子のために花の絵を描いたり。
お母さんに生まれたばかりの子どもの肖像画を描いてあげたり。
旅立つ青年のために故郷の街並を描いてあげたり……。
■ユーミル To:ALL
♪ある朝 彼は頼まれます。
♪飢え死にしそうな 少年から。「パンを描いて」

ドワーフはたくさんの美味しそうなパンを描いたが、
少年はそれを食べられずにやせ細るばかり。
自分が描く意味について思い悩んでいたある夜、彼の元へ魔法使いがやってきた。
■ユーミル To:ALL
♪「描いたものが 本当になる 絵筆をあげよう」
♪「ただし 野心のために 使ってはいけない」
♪「誰かを 思いやるためだけに 使うこと」

ドワーフは固く誓って絵筆を受け取り、美味しそうなパンを描くと、それは本物になって画面から飛び出した。
その絵筆の噂はたちまち広まった。
ある日、目つきの悪い男が言った。「抱えきれないほどの黄金を描け」
ドワーフが断ると、男は「できないならこの街を大洪水が襲うだろう」
たちまち暗雲が街を覆い、雷雨とともに大雨が街を襲った。
道は川のようになり、海は荒れ狂って家を飲み込み出した。
ドワーフは絵筆に持てるだけの色を乗せて空に一筆描いた。
それはきれいな虹となった。雲の切れ間からきれいな太陽が覗いた。
男は霧のように消えた。
■ユーミル To:ALL
♪彼の心の迷いも 同じように消えていったのです。
♪そうして、雨はやんだのでした。


おしまい。

お話に合わせてページをめくっていたネイビーの手が、本を閉じる。
裏表紙には、小さく虹のかかった青い空の絵が入っていた。
物語の文字はすべて下位古代語。挿絵も文字も、本の痛みのせいでところどころかすれてしまっていた。
■ゾフィー To:ユーミル
もうし、その絵本、ちょっと拝見させていただいてもよろしいかしら。
ちょっと気になる文字が見えましたものですから。

■ユーミル To:ゾフィー
はい、ぜひ手に取って調べて見てください。

■ゾフィー To:ネイビー
ネイビーさん、そのほんをかしてくださいな。

■ネイビー To:ぞふぃー
はい、どうぞ〜♪

大切そうに両手で持って、差し出す。
■ゾフィー To:ネイビー
どうもありがとう。

本を受け取ったゾフィーは、しばらくページを繰っていたがやがて首を傾げつつ顔を上げた。
■ゾフィー To:ALL
今、読まれなかった部分、前書きと後書きのようなものがありますわ。
ほらこことここ、これはドワーフ語ですの。

1ページ目には
「愛する家族へ
 そして、
 家族同然のともだち、ハプルマフルへ」

最後のページには
「この物語は虚偽も真実も含んでいる。
 こんなに聞き分けの良い絵筆だったなら……。」

まさか、自伝ということでもないでしょうが、どういうことなのかしらね。

■サラ To:こどもたち
はぷ、るま?

■ジェスト To:こどもたち
きょぎ、ってなに?

きょとんとして顔を見合わせる子どもたち。
ゾフィーはそんな子どもたちに手にした絵本のふたつのページを開いて見せた。
■ゾフィー To:こどもたち
わかりやすくいいますと、ここにはね、
「かぞくとおなじくらいすてきなおともだちのためにかきました」
あとおしまいには、
「このふでをつかうのはむずかしいですよ」
とかいてありますの。
もしかすると、このおはなしはおとなむけのなぞなぞなのかもしれませんね。

■ネイビー To:ぞふぃー
ぞふぃーさん、おしえてくれてありがと〜

■ゾフィー To:ネイビー
いいえ、どういたしまして。

■ネイビー To:こどもたち
むずかしいの? どうしてかなぁ?

■サラ To:こどもたち
えがうまくないと、だめ?
いんちょーせんせいくらい、うまくならないとだめ?

■ジェスト To:こどもたち
すてきなおともだちって、どんなこ?

思い思いの感想が、子どもたちの間から漏れる。
■ウーサー To:ゾフィー、ALL
実際に起きたことを元に描いた本に、当事者が……元「売れない絵描きのドワーフ」ってのが前書きと後書きを入れたのか。
さもなきゃあ、絵本が書かれたあとで「絵筆」を手に入れた奴が、実際に使ってみた感想を後書きとして入れたのか……ってことか?

■イェンス To:ウーサー
そうですねぇ〜。まるで『自分が使っていた筆は聞き分けが悪かった』と言いたげな…。

■ゾフィー To:ウーサー&ALL
誰が、誰のためにこの本を作ったのかということも気になりますわね。
絵本そのものが描かれた時期と、前書きや後書きが書かれた時期は同じなのかしら。
どなたか、目利きな方はおられません?

■リコリス To:ゾフィー
あ、リコも見てみたい。

■ゾフィー To:リコリス
では、お願いしますわ。

ソフィーから本を大切そうに受け取り、ページをめくっていく。
■リコリス To:ALL
リコにはドワーフ語は読めないけど、まえがきとあとがき書いた人と、本文書いた人は同じっぽいよ。
あと、古代王国の後期にかかれたものじゃないかな?
前に見たそのへんの時代の本と似ている感じがするし。
あ。
ここになんか刻印みたいのがあるよ。

リコリスは最終ページの隅に、掠れて消えかかった刻印らしきものがあるのを見つけた。
2重の円の中にカエルのシルエットが配置された形をしている。
■ウーサー To:リコリス、ALL
……カエル、だよなコレ?
なんか今日は、妙にカエルづいてんなぁ?

■シグナス To:ALL
……妙、だな。カエルじゃちょっと海辺とイメージが合わないな……。深い意味在るか解らんけど、調べる手掛かりにはなるかも知れないな。ちょっと書き写しとくか。

■ゾフィー To:リコリス>ALL
……こんなところに刻印ですか、リコリスさんはやはり良い目をお持ちのようね。

さて、このしるしが製作者のものにせよ、所有者のものにせよ、あるいは他に何かの意味があるにせよ、蛙を印に使うのは珍しい気もいたしますが、どうなのでしょうね。
ネホリーナの穴の御婆はカエル好きで知られておりますので……なにか御存じかしら。
この「忘れ物」も、妙な話に思えてまいりますけれども。

■シグナス To:ALL
後書きに若干恨み節入ってるの、気になるところだがなあ……。

■ゾフィー To:ユーミル
この本はいつからここにありますの?
これまで、この本が辿った経緯についてなにかご存じですか。
あと、この物語について、この本以外のところで聞いたことはございませんか。

■ユーミル To:ゾフィー
この本は、孤児院の書庫にしまい込まれていたんです。
リエッタさんが書庫のお掃除をしていたとき、偶然見つけて私に「読み聞かせにどうか」って教えてくれたの。
だから、私は詳しいことは……。
あ、私自身は、この物語は初めて知りました。

■ポフト To:ゾフィー
私もこんな本があったとは知りませんでしたねぇ。
なにしろ、この孤児院に手伝いに入ったのも最近のことでして。
リエッタはもうちょっと長いんですが。

■ゾフィー To:ユーミル&ポフト
書庫ですか、この院自体はどのくらい前からありますの。
そして書庫の中身はいつから……。
このあたりの話はリエッタさんに伺った方がよろしいのかしらね。

■ポフト To:ゾフィー
そうですね、リエッタならもう少し詳しいことを知ってるかもしれませんねぇ。
この孤児院は叔父さんが10年前につくったのですが、リエッタは確か、5〜6年前くらいから手伝いに入ってますからねぇ。

■ゾフィー To:ポフト
わかりました、ではリエッタさんに尋ねてみるといたしましょう。



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GM:ともまり