ある秋の昼下がり
〜 1 〜
『魔法の絵筆を探して』──。
こんな雲を掴むような奇妙な依頼書に興味をひかれ、集まった冒険者たち。
ちょうどお昼どきということもあり、徐々ににぎわいをみせてきた1階を追いやられ、おかみの案内で個室へとやってきた。
ちょうどお掃除が終わったばかりらしく、きれいに拭かれたテーブルには、コスモスの花が一輪生けられていた。
開け放たれた窓からは、うろこ雲が浮かぶ晴れ渡った秋空が見える。さわやかな秋晴れの日だ。
■リコリス To:ALL
|
あ、コスモスだ。かわいい〜♪
こういうの見ると、もう秋だなって思うよね〜。
………秋ってなにがおいしいんだっけ?
|
食欲の秋到来。
■シグナス To:リコリス
|
そうさなあ、この時期は大抵のモンは美味くなってるもんだけど。
獲物によっちゃ冬眠前で狩るのが一苦労。ってのもあるし、やっぱ果物辺りがお前にゃ良いんじゃねえの。
|
■リコリス To:シグナス
|
狩る……オランの近くでも狩れるの?
果物かぁ〜、梨とか葡萄とか美味しそうだよね〜。
|
■シグナス To:リコリス
|
俺は直接狩りに出た事は無いけどね、まあ獲れん事は無いだろうさ。多分。
|
■リコリス To:ひとりごと
|
……オランでシグ先輩が狩るもの………。
あ、「がーるはんと」ってのも「狩り」にはいるのかな?
|
■シグナス To:リコリス
|
ば、馬鹿だなあ。そんな事しに出てる訳が無いじゃございませんのよぜぇ?
|
■ウーサー To:シグナス
|
……成る程なぁ。それも含めて「テンハンド」ってことか?
まあ精々、後ろから刺されたりしないように気をつけろよ?
|
■シグナス To:ウーサー
|
問題無い。奴等は正面からでも刺してくる。刺して捻る。間違いなく。(真顔)
|
■おかみ To:ALL
|
待たせちゃってごめんなさいね(^^;
みんな、ユーミルさんからの依頼に興味があるんだったわよね。
ランチタイムが落ちついたら、うちの人が依頼について説明に来ると思うから、もうちょっと待っててね。
何か腹ごしらえしておく? 注文があれば聞いていくわよ(^^
|
■ウーサー To:おかみ
|
いや、オレ様はさっき軽く腹拵えしといたから、とりあえず今はいいぜ……あ、待てよ?
依頼人ってぇのは、もう来てるのか? それとも、あとでこっちに来たりとか、オレ様たちが依頼受けたら、依頼人のところに赴くことになってたりするのかい?
おやじのハナシ聞いてから時間が空くようだったら、ちょいと食べておいたほうが良いかもしれねぇからよ。
|
■おかみ To:ウーサー
|
子どもたちの世話で、手が空くのが夜しかないそうなの。
夜は夜で、仕事が忙しいらしいから、できれば昼のうちに孤児院に直接来て欲しいらしいわよ。
なんでも、子どもたちが「ぼうけんしゃ」に会うのを楽しみにしてるんですって(^^
|
■ウーサー To:おかみ
|
おいおい、「冒険者」なんてなぁ、会って嬉しいようなロクなヤツなんて滅多にいねぇぞ?
ま、オレ様がいて良かったってところだな!!
|
得体の知れない自身満々で応える。
■シグナス To:ウーサー>おかみ
|
魔除けになりそうな芸人的にコアな期待されてたらお前の出番だな。
俺は……あ、そうだ。おかみさん、小麦一袋くらい余裕ない?
ちょっと今日は食材買って帰ろうかと思ったんで。
|
■ウーサー To:シグナス
|
小麦ぃ?
おいおい、どうしたよ? いよいよ食費切り詰めのために、パンから手作りに励もうとかってんじゃねえだろうなぁ?
|
■シグナス To:ウーサー
|
やかましいよ菓子屋。小麦粉よか長持ちするし、切り詰めるときゃパンより粥にするっての。
パンにして焼くにも、パスタでもして茹でるにも、数人分纏めてじゃねえと勿体無いし。
|
■おかみ To:シグナス
|
いいけど、どうするの? ウーサーと一緒にお菓子でも焼くの?(^^
1kgの袋しかないけど、いいかしら?
|
■ウーサー To:シグナス
|
お、おいおい、おかみ……オ、オレ様がなんでシグナスと一緒に、菓子なんか焼かなきゃならねえんだかよぉ?
|
■おかみ To:ウーサー
|
だって、あなたたち仲が良かったみたいだから(^^
|
まるで仲良し兄弟を見るような目線で(笑)
■ウーサー To:おかみ
|
くっ……。
まぁ悪いってワケじゃねえがよ? ていうかなんだその生暖かい眼差しは(苦笑)
|
■シグナス To:おかみ、ウーサー
|
そーだなー。小麦粉と砂糖とバターはウーサーが買うとして。
俺の方は神殿の方ですよ。現金で寄進するより、現物主義なモンで。
……やっぱ、市場に寄る方が良いかなあ……
|
■ウーサー To:シグナス
|
オレ様はもう買い物なんざぁ、とっくに済ませてるよ。
小麦粉はともかく、バターは無塩バターだったら分けられる余裕無ぇぞ?
|
■シグナス To:ウーサー
|
お前はまたそう言う無闇に凝ったモンを……発酵バターとかも持ってそうだなオイ。
|
■おかみ To:シグナス
|
うちの小麦も市場でまとめ買いしているものだから、同じよ(^^;
小分けで買うよりは、安くしておいてあげるから。
|
■シグナス To:おかみ
|
やあ、すんません。俺も何時もは、仕入れ並に買い込んでるモンで。
それじゃ、後でちょっと見繕わせて貰いますね。
|
■リコリス To:シグナス
|
シグ先輩市場いくの?
リコも一緒にいってもいい?
果物とか買いたいの。
|
そんな話題に割ってはいる女声があった。紫色に包まれた初老のドワーフが、外見に比べて高めな声を振り立てながら、男性ふたりをじろりと見上げ、次に自分と大して背が変わらない少女に視線を移す。
■ゾフィー To:シグナス&ウーサー>リコリス
|
あなた方。
寄進だの慰問だの……は個人の自由ではございますけれどね。
いきなり殿方ふたりで盛り上がらないでいただけません?
お嬢さんもよ、買い物の話は後でもできますでしょう。
おかげで注文が出しづらいではないですか。
|
■リコリス To:ゾフィー
|
あ、フィーさんごめんなさい。
|
■ウーサー To:ゾフィー>おかみ
|
むぅ……すまねぇな、その通りだ。
おかみ、邪魔して悪かったな。
|
■おかみ To:ウーサー&ALL
|
あらいいのよ、みんなの元気そうな姿を見られるのは嬉しいもの(^^
|
■ゾフィー To:おかみ
|
誰もが気安く口を開けるということでもないでしょうに。
そうでないと、冒険者として生き残れないというならともかく……
……ま、それがこの店の接客スタイルだというならこれ以上なにも申しあげませんけれどね。
注文に話を戻しましょう。
差し当たって、紅茶をポットで二つ。
人数分のカップとスプーンを付けて頂戴ね。
新鮮なミルクのピッチャーと砂糖壺もお願いしますわ。
それから、季節の果物の盛り合わせをくださいな。
|
■おかみ To:ゾフィー&ALL
|
人数分の紅茶と、果物ね。わかったわ。
紅茶は、うちの人の特製ブレンド『シルバー・ウェブ・ティー』と、私の特製ブレンド『もちもちもっちり茶』がおすすめだけど、どちらがいいかしら?
前者はすっきりミント系、後者は甘くてお肌にいいのよ(^^b
|
もちろん普通の紅茶もあるのだろうが、どうしても特製ブレンドを飲ませたいらしい(笑)
■シグナス To:おかみ
|
それ、液体に使う形容詞じゃないですよ!?
|
■おかみ To:ウーサー&シグナス
|
違うわよ、お肌が「もっちり肌」になる、っていう意味よ(^^*
|
ハーフエルフなせいもあるが、おかみのお肌はつやつやぴかぴか(笑)
■ウーサー To:おかみ
|
そ、そうか……ゼラチンか葛でも入ってるのかと思ったぜ……。
|
■シグナス To:おかみ
|
な、成る程……けどカロリーありそうだなあ、なんか。いや、俺は普通のお茶で良いです。
|
■ゾフィー To:おかみ
|
そうなると、果物にもよりますかしらね。
林檎や葡萄と合わせるならミント系で、梨…砂梨や柿が中心なら甘味系でお願いしたいところですが。
でもいいわ。せっかくですから、ポット二つ、それぞれのブレンドで持ってきてくださいな。
皆でおすすめとやらを飲み比べさせていただくことにしましょう。
|
■リコリス To:ゾフィー
|
さんせ〜い、リコ両方とも飲んでみたい〜♪
|
■ゾフィー To:おかみ
|
というわけで、テイスティングもいたしますから、ソーサーを忘れずにつけて頂戴ね。
|
■おかみ To:ゾフィー
|
わかったわ。あまり高価な食器はないけど、がまんしてね。
|
■ゾフィー To:おかみ
|
高級さは期待しておりませんけれど、清潔さだけは頼みますわよ。
|
■おかみ To:ゾフィー
|
その点は安心してね、うちの人はああ見えて、仕事は丁寧だから(^^b
|
■シグナス To:ゾフィー、ALL>リコリス
|
っと、悪い。俺にとっちゃそっちも仕事みたいなモンでね。孤児院て聞いてつい気ぃ取られちまったぜ。
皆は昼飯済ませてるのかい?俺はちょっと食ってるし、姐さんと同じくお茶で済ませとくよ。
って訳でネコ、じゃねえやリコ。買い物は……仕事前に時間の余裕があったら、って所だな。
|
■リコリス To:シグナス
|
うん、いつでもいいよ。
依頼終わってから持っていってもいいんだし。
でも、もうあまりねこになってないのに……シグ先輩にとってはリコはネコなんだ……
|
ねこになっていないとは言わない。
■シグナス To:リコリス
|
安心しろ、解ってからかってるだけだ。
|
■リコリス To:シグナス
|
ぷきーo(゜^ ゜)○
い、いいもん、もうリコ、ねこになるもん。
|
懐から緑の小瓶(猫化薬)を取り出す。
■ウーサー To:リコリス
|
ん? 小リスから仔猫に転向したのか?
それとも「ぷきー」ってことは、子豚かよ?
|
■リコリス To:ウーサー
|
うきーo(゜^ ゜)○
リコ、ブタさんじゃないもん!
|
■シグナス To:リコリス
|
あっはっは、折角の薬なんだから無駄遣いは止めろ!?
|
■リコリス To:シグナス
|
うっ……。
うう……がまんがまん……。
|
なんとか理性が勝り、薬を大切そうに懐に仕舞いこんだ。
■イェンス To:コリコス
|
その薬はなんなんですか?
|
それなりに魔術師としての興味がある様だ。
■リコリス To:イェンス
|
これ? これはね、ねこさんからもらった「ねこになれる薬」だよ。
ちょびっと舐めるとねこと話ができるようになって、2口飲むとねこになれるの。
|
■ウーサー To:リコリス
|
……なんだその浪漫チックな薬は。
|
■シグナス To:ALL
|
前の仕事で貰った薬でな、俺と姐さんも何ぼか薬残ってる……筈だけど、今回の仕事じゃ必要無さそうだな。この薬に関しちゃ、貴重なんで虎の子って事で使い惜しませて貰うよ。
|
■ゾフィー To:シグナス
|
あなた、ご自分の手の内はいかようにさらされても結構ですけれど。
「虎の子」の自覚があるなら、人の分まで声高に宣伝なさらないでいただけません?
|
■シグナス To:ゾフィー、リコリス
|
はは、悪い悪い。まあほら、ぶっちゃけリコリスと俺じゃ隠し事難しいし。
それに話しとく方が、いざって時の使い道選べるしな。勘弁しといてくれ。
|
■おかみ To:イェンス&ソル
|
イェンスとソルも紅茶だけでいいのかしら?
ちゃんと食べておかないと、あとでふらふらになっちゃうわよ。
|
■イェンス To:おかみ
|
それでしたら今のうちに食事しておいた方が良さそうですね。
それではヘヴィーメタボラーな感じの食事をひとつお願いします。
あ、お茶はその『もちもちなんたら』で。
|
■おかみ To:イェンス
|
それじゃ、鳥の唐揚げマヨネーズ和えと、ソーセージ&たっぷりチーズのピザと、フライドポテト山盛りとコンビーフ、おまけにくるみのタルトでどうかしら。
あ、それだけだと身体によくないから、ドレッシングたっぷりのサラダもつけてあげるわね(^^
|
もちろんドレッシングにも、油たっぷり。
■ソル To:イェンス>おかみ
|
それ、全部食べれるんだろうなぁ。
残したやつこっちに回すなよ。
おかみさん、オレはさっき烏賊のパスタ食べたから軽く紅茶だけで良いよ。
|
■イェンス To:ソル>おかみ
|
そうですか。せっかくソル様にも分けて差し上げようと思ったのに…。
それでは…おかみ、ソーセージ以下のものは削除でお願いします。
あぁ、サラダだけはもらいましょうか。
|
■おかみ To:イェンス
|
あら、遠慮しなくても良いのに。
食の細いソルのぶんも、イェンスがしっかり食べなくちゃ。
それに、サラダまででひとつのめたぼらー定食なのよ?
|
どうしても全部食べさせたい……らしい……。
最終的にソルに食べさせてしまえと思っていたりして。
■ウーサー To:おかみ
|
移動するんなら、オレ様も軽くつまんどくかな?
じゃあ肉系のサンドイッチでも……そうさなぁ、レバーカツかステーキのサンドを、3人前ほど頼んどくぜ。
あ、あとオレ様は紅茶だけじゃあ、ちょいと消化が進まないからよ。悪いがスコッチも1瓶、追加しといてくれ。
|
もちろん、ウーサー1人分の「軽い腹ごなし」用の量である。
■シグナス To:ウーサー
|
ドンだけ燃費悪いんだ!?
|
■おかみ To:ウーサー&シグナス
|
あら、昔はもっと燃費の悪い……それこそ底なしのパーティもいたんだもの。このくらいじゃ驚かないわよ(^^
|
■ゾフィー To:ウーサー
|
あなた、飲まれない自信はおありのようですけれど。
これからの行き先がどこであるかを考えて、臭いの対策はちゃんとなさってくださいませね。
|
■ウーサー To:ゾフィー
|
な〜に、あとで臭い消しにセロリでも齧っとくぜ。それにオレ様の仕事着は、プレートメイルなんでな。
酒も油も臭いなんざぁ、金臭さと染み付いた返り血の臭いで、軽〜く消し飛んじまうってモンよ。
|
■ゾフィー To:ウーサー
|
金臭さは仕方ないとしても、血臭に関しては日頃から手を打っておいていただきたいところですわ。
しかしまあ、板金鎧で大勢の子ども達の相手をなさるおつもり?
あなたの体力とやらをとくと拝見できそうですわね。
|
■シグナス To:ウーサー、ゾフィー
|
ま、仕事に入るまでは板金鎧は子供の見世物だろうな。
|
■おかみ To:ALL
|
それじゃ、ちょっと待っててね(^^
|
たくさんの注文を聞き終えたおかみは、ほくほく顔で1階へ降りていった。
■シグナス
|
……結局人数分位は注文した事になったなあ。
|
|