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SW-PBM Scenario#158
銀のしおり

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「跳ね橋通り」での出来事



  跳ね橋通り

アールは仲間に告げたとおり、ひとりこっそりと「知り合いの女」に会うために、夕闇の迫るオランを歩いた――と言っても、行き先はギルドだった。

情報収集の意欲とほんの少しの下心(?)を胸に抱いて訪れたものの、出てきたのは他の連絡員。お目当ての彼女は、ちょうど野暮用で留守にしているとのことだった。

さらにジャックナイフについても尋ねてみたが、
「あんたの知ってること以上のことは自分もしらない」――と、不敵な笑みとともににはぐらかされて終わってしまったのだ。
いろいろな意味で収穫のなかったギルド訪問。
地上に戻った頃には、すでに日は落ち、あたりは僅かな街灯のみに照らされた夜の通りと化していた。
常闇通りを抜け、ハザード河にかかる橋を横目に見ながら、「跳ね橋通り」と呼ばれる川沿いの道をを歩いていると、突然、叫び声が聞こえた。
■おばさんの声
きゃああああ!! だ、誰かー!

■青年の声
大変だ! 女の子が川に!

こんな時間に川に落ちるなんて…と思いつつ、駆け出す。
手元に発動体である杖を確認しながら、急いで声のあった方に向かう。
全力で50メートルほど走ると、通行人が川岸に3人ほど集まっていた。
それぞれ慌てたように何か叫びながら、川の暗い水面を指さしている。
■青年 To:ALL
は、早く、衛視の人に! い、いやそれじゃ間に合わないか!?

■おばさん To:ALL
ロープかなにか無いの!? あたしゃ泳げないよ!!

川面を目を凝らして見てみると、わずかに揺れた水面の隙間から、小さな手が覗いたように見えた──しかし、すぐに力なく沈んで行ってしまう。
あらかじめ予測していた通りに、マントの留め金をはずし、自分の腕輪に呪文を唱える…
すぐさま腕輪が光を放ち…はじめる…ハズだった…が?
■アール
なんだって!?

最近、術の鍛錬を怠っていたとはいえ、このタイミングでの“失敗”は予想外だった。
とはいえ、失敗には慣れている(笑)
すかさず新たに呪文を唱え、今度は成功したようだ。
安心する間もなく、「小さな手」の沈んで行った場所へ飛び込む!
アールの腕輪から放たれる光が、水面に時折隠れながら夜のハザード河を照らす。
飛び込む直前に装備をすべて投げうってきたとはいえ、水の重さが皮鎧にまとわりついて動きを鈍らせる。
水の底に落ちて行く小さな体を目指して懸命に水を掻くが、後一歩のところで手が届かない。
もう一度力を振り絞って水を蹴り、手を伸ばすと、ようやく少女の腕に手が届いた。
ぐったりした体を抱えたまま、なんとか水面に上昇し、勢い良く顔を出した。
■少女
……

長い金髪を顔と額に張り付かせてぐったりしている少女は、10歳程度に見えた。
旅装を身につけており、そのせいか水の中で支えているのはかなり辛い。
■通行人たち
おお! やったぞ! 助かった!

川の岸では、数人にふくれあがった野次馬たちが、こちらを見て歓声を上げているのが見えた。
岸に上がって少女の息があるのを確認すると、とりあえず一息つく。
しかし、行動するのは意に介しないが、その後の処理は苦手だった。(笑)

野次馬に囲まれながら、衛視や家族が来るのを待つ。さすがに放っておくこともできないし…
■おばさん To:アール
あんた、大丈夫かい?
しかし見事な飛び込みっぷりだったね、冒険者ってのはまるでヒーローだね!

興奮した様子の野次馬が、色めき立ってアールを見ている。
まさに見せ物状態だ。
■青年 To:ALL
お、おい! この子、息をしてないぞ!?

岸に横たえられた女の子の様子を見ていた青年が、突然大声を上げた。
急に呼吸が止まってしまったらしい。
焦りとどよめきに包まれる人垣。衛視が駆けつける様子はまだない。
そして野次馬たちの期待の視線は、ここにいる唯一の「冒険者」であるアールに、自然に集中していくのだった。
周囲の異様な期待感を感じ、身震いを覚えながら少女の下へ…
頭の中へよぎるのは神のお告げか、気の迷いか…(笑)

>コマンド?
 ようすをみる
 じゅもんつかう
 にげる
→おやくそくをする(何
頭の中でなにか答えを出すと、ふぅ、とため息混じりに少女を抱きかかえて急いで自分の荷物の場所まで移り、放っておいた外套を敷いて少女を横たえ、少女の胸元を楽にして…
(お子さまとはいえ、ちょっと気がひけるw)
野次馬を、瞬間にらんで牽制すると、外套のはしを掴んで「その場」は見えないように…
そして、さすがに一瞬ためらったのちに顔と顔を近づけ…

■野次馬たち To:アール&少女
おお……!(どよめき)

アールの牽制に「だるまさんがころんだ」状態で固まっている野次馬たちから、静かな歓声が上がる。
アールの腕輪が放つ光で、外套越しにふたりのシルエットが丸見えだったからだ。
■野次馬たち To:アール&少女
……(ざわざわ)……(どよどよ)……(わくわく)……

さまざまな声色が背中から突き刺さって来るのを感じながら、少女の様子を見ていると、なんとか呼吸を取り戻しつつ、弱々しく目が開かれていくのがわかった。
■少女 To:アール
……う……けほ、けほっ……
…………誰……? …お手紙……は?

朦朧としながらアールの顔をじっと見つめたあと、何かを探すような視線を巡らせる。
唇が小刻みに震えていて、かなり寒そうだ。
さすがにそのまま…というわけにはいかない…。
この娘の連れはいないか、連れて宿に戻るべきか…衛視に引き渡すか?
■アール To:少女
とりあえず、君の名前…言えるか?
それと、他に誰かいっしょじゃなかったのか?

■少女 To:アール
名前……ハンナ……。

……ひとりで……おねえちゃんに……会いに……
手紙……飛ばされ…て……うっ……。ふぇ〜……。

いきなり両手で顔を覆って泣き出した。
アールは「よしよし」と少女の頭を撫でながら、頭の中で考えをまとめる。
まず、濡れた服をなんとかしないと。次に衛視隊の詰所…はここから遠いな。銀の網亭にいけば、少なくとも「あいつら」の誰かがいるだろう。
衛視隊が来るようなら、銀の網亭に来てもらえばいい。
そして…とりあえず、この見世物状態から抜け出そう(汗)
■アール To:ハンナ
じゃあ、ハンナ。
今からどうするか決めておくれ。
必要なら、街の衛視の詰所まで送るが?
そうでなければ…(言葉に詰まる)

■ハンナ To:アール
……おねえちゃんのとこ……。
冒険者の……お店なの……。

しばらく立ち上がらない2人に、周囲のざわめきが増していくなか、アールがやっと立ち上がると…
■野次馬たち To:アール&ハンナ
……ざわざわ……(立ったぞ……)……(大丈夫なのか?)……(お持ち帰りか?)……

野次馬の声を気にしないように努めながら、少女を外套にくるむと抱きかかえ、あたりを見渡す。(着る物を扱ってそうな店を探す…が見あたらない)そして立ち去る前に一言。
■アール To:野次馬たち
衛視に連絡してあるなら、必要なら「銀の網亭にいる」と伝えてくれ。
頼んだぞ。

色めき立ってふたりを見つめていた野次馬たちの何人かが、こくこく頷く。
■アール To:ハンナ
さて、とにかく着替えを買いに行こう。

■ハンナ To:アール
……うん。

暗い水の中に落ちた恐怖が消えないのか、心細そうにアールにしがみつく。
■野次馬たち To:アール&ハンナ
がんばれよ!
気をつけてな!
無茶はするなよ!(ぱちぱちぱち)

なにやらよく分からない歓声を受けて去っていく。(苦笑)
しばらく歩き…
野次馬を避けて一本奥の通りに入ると、すぐに洋服屋が見つかった。
すでに夜も更けたとあって扉は閉まっていたが、窓から灯りが漏れているところを見ると、まだ店員がいるのだろう。
看板には「ストロベリー・ウェイ」とある。どうやら女の子専門の高級洋服店らしい。
■アール 
ここで見つくろってもらうか…。
しかし…高級って、どれくらいだ?

相場などアールが知るハズもない(笑)店先の値札を見て…眉を動かすが…背に腹は替えられない。
■アール To:店員
すまないが、これでこの子に買える服を見て欲しい。
女の子の服なんて分からないんでな。
(ゴソゴソ)あと、すまないが手持ちはこれしかないんだ。

店に入るとお金の入った袋(400ガメル分)をそのまま差し出す。
■マダムな店員 To:アール
あら、いらっしゃいませ……当店はもう閉店時間で……
んまぁ、ずぶぬれじゃございませんか。
さぁ、早くこちらへ。今、タオルを持ってきますからね。

■アール To:マダムな店員 
気をつかわせて悪いな。

全身宝飾品だらけのマダムな店員が、腰をくねらせながらふたりにタオルを差し出す。
■マダムな店員 To:アール
こんな時間に、年若い娘さんと、あなたのような冒険者の方がずぶ濡れだなんて。
いったい何が……あら、失礼。お客様のプライバシーに関することですわね、おほほ。
さて、この子のサイズに合うお洋服といったら、今はこれしか在庫がございませんわ。

いつのまにか着替えさせられていたハンナが、試着室から出てくる。
レースで裾や襟元が縁取られた、純白のふりふりワンピースだ。
■ハンナ To:アール
……。

ハンナは とても恥ずかしそうにうつむいている。
■アール To:ハンナ
いいんじゃないか?。旅姿より姉さんも喜ぶだろうよ。

ちょっと励ましもこめて。
■ハンナ To:アール
……うん。

ハンナはちょっとだけ笑みをこぼして頷いた。
笑顔を見て、ちょっとほっとする。
■アール To:マダムな店員
また次があれば、ひいきにさせてもらうよ。

■マダムな店員 To:アール
ええ、ぜひぜひ。お待ちしておりますわ。

ハンナに金額が聞こえないようにやりとりしながら、2割増の値段を払う。
濡れた服を受け取って、そのまま店を出ると銀の網亭に向かう。
他のメンバーの反応を想像すると…なんとも言えない気持ちになるが仕方ない。
ただ、今回の依頼の内容が分かっていないコトが少女を危険に晒さないか、という事の方がよっぽど不安だったが。
■アール To:ハンナ
とりあえず、僕の行く「冒険者の店」に連れて行くよ。
「銀の網亭」というところだ。
キミの姉さんの店…が、どこか分からないけど、おやじに聞けば横のつながりで何か聞けるかもしれない。

■ハンナ To:アール
うん……。
……あの……お洋服ありがと……。

不安げにアールの服の裾を掴んで、俯いたままぽつりと言う。
また俯く少女の頭に、ぽんと手を置くと、歩きながら少女に語りかける
■アール To:ハンナ
まだ小さいから良くわからないだろうけど、男の子っていうのは女の子に色々としてあげなきゃいけないって決まってるのさ。
例えば服を買ってあげたり、食事に連れて行ったり…。
そーいうときに、女の子は相手の顔を見て“笑顔でありがとう”を言わなきゃいけないよ。
それが「男の子と女の子の“決まり”」だからね。

立ち止まると、「分かったかい?」と、顔をのぞき込む。
■ハンナ To:アール
……うん。
ありがとう、おにいちゃん。

心から安心したような笑顔を浮かべて、アールにもう一度お礼を言った。
■ハンナ To:アール
あの……おにいちゃんのお名前……教えて?

■アール To:ハンナ
そうか、自分の名前を言わずにいたなんて…悪かったね。
「アール」っていうんだよ。

■ハンナ To:アール
アールおにいちゃん……だね。

ハンナは嬉しそうにまた笑った。

妹ってのはこんなものかな…と思いながら、「姉」の情報を聞いていないのを思い出す。
■アール To:ハンナ
ところでハンナ、お姉ちゃんの名前はなんて言うんだい?
あと、う〜ん、特徴っていうのかな。何か覚えてるか?

■ハンナ To:アール
名前は……リナリアって言うの。
マーファさまの神官で、魔法もちょっと使えるの。
わたしと、よく似てるって言われるよ。
髪の色も、同じ金色なの。わたしより5つ上で……

急に生き生きと、嬉しそうに姉のことを話し出す。
それからちょっと考えるような表情をして、付け加えた。
■ハンナ To:アール
「暁の…」なんとかっていう、冒険者のお店にいるんだって。
しばらくお手紙の返事がこなかったから、心配になって、商人さんの馬車に乗せてもらって、会いに来ちゃった……。

ふたりは歩きながら、少女のいた町(村?)や家族のことを話した。

ハンナの故郷はオラン近郊の村──ムスカリ村というところで、病気がちな両親と4人暮らしだったそうだ。
決して裕福とは言えない実家への仕送りのために、姉はオランへ単身出てきて、冒険者になったらしい。
マーファへの信仰は両親の影響、魔法は村の私塾で学んだものだそうだ。
ハンナは優しく強い姉が大好きで、姉が旅立つ時は一晩泣き続けた……
今回の旅は、姉に手紙を渡したいというハンナの強い願いに、両親が折れる形で実現した。帰りは、往路と同じ商人の馬車に便乗させてもらうのだという。

  銀の網亭・1階

しばらく歩くと、いつもの馴染みの「銀の網亭」に着いた。
窓から明るい光が漏れているが、1階にはすでに客はいないようだ。
■おやじ To:アール
いらっしゃ……ん? アールじゃないか。
ど、どうした、ずぶ濡れじゃないか?
………………そ、その子は何だ!?

髪の毛だけ濡れているふりふりワンピースの少女を見て、手に持っていたグラスを思わず落としそうになるほど動揺するおやじ。
■アール To:おやじ
ちょっと、拾いモノをしてね。
…という、冗談はさておき、この娘の…

少女からの情報を伝え。姉の手がかりをおやじに求める。
■おやじ To:アール
……本当に冗談なんだろうな……?

ん、「暁の」……「暁の七変化亭」のことか?
中堅どころの多い、まっとうな冒険者の店だが……ここからだと、歩いて1時間近くかかるな。
リナリアっていう冒険者がいるかどうかは、さすがにわからんが……

■アール 
(「暁の七変化亭」…「七」…「七風」と引っ掛かるのは偶然か?)

■ハンナ
……くしゅっ。

「暁の七変化亭」と聞いて、ぱっと顔を輝かせたハンナだったが、次の瞬間くしゃみをして体を震わせた。
■おやじ To:アール
おいおい。その子、とりあえず風呂に入れた方がいいんじゃないか?
今日はもう遅いし、急ぎじゃなければ明日訪ねてもいいだろう?
お前だって、そのなりのまんまじゃ風邪を引くぞ。

タオルでとりあえず拭き取ったとはいえ、ずぶぬれだったふたりの体は、夜風に当たったせいでかなり冷えていた。
さすがに、ひとりにするのが心配とはいえ…風呂ねぇ。
■アール To:おやじ
ふむ…。じゃあ、おやじ…おかみを貸してくれ!
…いや、なんかおかしいな…。
「おかみの手を貸してくれ」だな。
まだ小さいとはいえ、“レディ”と一緒に入るわけにはいかないんでな。
それに…
「あのメンツ」に、この状態で頼むってのは不安なの…わかるだろう?

(色んな意味で)申し訳無さそうに頼む。
■おやじ To:アール
ああ、わかったよ。
確かに、あること無いことでっちあげて、大盛り上がりになっている様子が目に浮かぶようだよ……

■アール To:おやじ
それと、みんなと離れたところに1部屋頼むよ。
部屋代は普通に払うから。

■おやじ To:アール
わかった。しかしお前って奴は、意外と面倒見がいいんだな?
まぁ、詳しい事情は聞かないでおいてやるがな。

おやじの言葉に苦笑で返す。
■アール To:ハンナ
そーいうコトで、温まったら部屋に案内してもらうといい。
心配なら後から顔を出すよ。

■ハンナ To:アール
うん……。
おにいちゃん、どこかに行っちゃったりしない?

■アール To:ハンナ
僕もお風呂に行くけどね。(笑)
あとでなにか食事を頼もう。
好き嫌いはないな?

■ハンナ To:アール
ん……たまねぎ、ちょっと嫌い……。

笑顔だけ向けて、まだ濡れてるハンナの頭をくしゃっとする。
ハンナをおかみに預けて、おやじに軽い食事をハンナの部屋に届けるように頼む。
(さて、みんなにはどう説明したものやら…)真面目に説明しても返ってくる反応が想像できる…いやむしろ、想像がつかないだけに、頭が痛いアールであった。


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銀のしおり

GM:ともまり