アダマス寮 |
深夜、明かりもついていないアダマス寮の近くに潜むゾフィー以下のメンバー。
ドワーフのゾフィーには、昼間と変わらず夜の闇を見通す事が出来、全く行動に支障はない。
やがて、疲れた脚を引きずって寮に戻ってくる鉱夫達の足音が聞こえてきた。
ゾフィーは身を潜めたまま、近づいてくる鉱夫達の様子を観察する。
鉱夫達の何人かはカンテラを持って足下を照らしている。
どうやら、今戻ってきているグループにドワーフは居ないようだ。
そうこうしているうちに、鉱夫達の話し声が近づいてきた。
■鉱夫A To: |
今日も疲れたなあ……。 何でこんなことになっちまったんだろう。 |
■鉱夫B To:鉱夫A |
ぼやくなぼやくな。 さっさと借金返せば、こんなきつい仕事から解放されるんだから、諦めて働こうぜ……。 |
潜んだ場所から姿をあらわしざまに、ゾフィーは鉱夫達に声をかけた。
■ゾフィー To:鉱夫達 |
こんな時間まで、お疲れさまですわね。 消灯時間はとっくにすぎておりますが、許可はお取りになっていらっしゃいまして? |
■鉱夫A To:ゾフィー |
うおっ! びっくりした。 ……一応上からやるように言われた仕事だから、許可は貰ってるぞ。 |
■ゾフィー To:鉱夫A&鉱夫達 |
上というと、どちらからでしょう。 なにか証明するものをお持ちかしら。 |
■鉱夫A To:ゾフィー |
あんた、新任の寮母さんか? 俺たちは班長の命令で、消灯後にヤマで別の石を掘ることになってるんだ。 既に寮の人には話は付けてあるって班長に聞いてるんだけどな……。 すまんが、書き付けも何も俺たちは持ってないよ。 |
■ゾフィー To:鉱夫A&鉱夫達 |
あら、それはごめんなさいね。 わたくしは話を聞かされていなかったものですから。 こんな遅くまで作業なさっている班があるとは、思いもしませんでしたわ。 大変ですわね、いったいどういう条件になっておりますの。 |
■鉱夫B To:ゾフィー |
……んー。俺たちは商会に借金をこさえちまってよ。 ある程度簡単に貸してくれるからほいほい信じてしまって、昼間の仕事じゃ返せない位の金を借りちまった。 まあ、それで美味い飯を食ったり、酒を飲みまくったりしちまったから、自業自得なんだけども。 んで、昼間の仕事の給料じゃ全然返済が追いつかないから、 こうして「割の良いバイト」としてみんなが眠った後に、 こっそり宝石を掘ってるんだ。 何でも、鉄しか出ないと思っていたヤマから宝石が出たんだとさ。 で、この仕事は昼間の仕事より五割増しで給料貰えるんだ。 ……まあそれでもやっとかっと生活してる位なんだけどよ。 |
■ゾフィー To:鉱夫B&鉱夫達 |
その借金は返しきれそうですの? 掘りだして、運び出すまでがお仕事でしょうか。 だとしたら、どこまで運んでいるのかしら。 あまり無理をしてはいけませんわよ。 |
■鉱夫B To:ゾフィー |
ありがとう。多分あと一月もすれば何とか出来ると思う。 あと、運ぶのは別の連中の仕事さ。 俺たちは、ヤマで掘った物を所定の場所に持って行くまでが仕事なのよ。 |
■ゾフィー To:鉱夫B&鉱夫達 |
所定の場所というのはどちらなの、ここからは遠かったりしませんか。 持っていくと言っても、こんな時間では大変でしょうに。 |
■鉱夫B To:ゾフィー |
いや、ヤマの所に置いてるだけ。 何でも、別の人間が朝早く持っていくらしい。 それに、鉄みたいに沢山取れる訳じゃないし。 みんなで3時間やって、やっと樽一つ分くらいだよ。 |
■ゾフィー To:鉱夫B&鉱夫達 |
ヤマに置いておくですか、外見は樽とは言え、結構不用心ではありませんこと? ああ、でも警備の方々がいらっしゃたのでしたわね。 その人達の目がとどくところに置いてあったりするのかしらね。 |
■鉱夫B To:ゾフィー |
ああ、ごめんごめん。 ちゃんと鍵の掛かる倉庫に仕舞って居るんだ。 その鍵は班長が保管しているし、盗まれたりはしない筈だよ。 |
■ゾフィー To:鉱夫B&鉱夫達 |
それなら一安心ね。ところで先ほどから話題にでている班長さんというのは、どちらにいらっしゃるの? |
■鉱夫A To:ゾフィー |
班長なら、街の方に家を持ってるから、そっちに帰ってるんじゃ無いかな? こっちには来ないよ。 |
■ゾフィー To:鉱夫達 |
なるほど、かなり信頼されている方ということかしらね。 しかし、まさか石がね……掘っているのはどちらのヤマなのかしら。 |
■鉱夫B To:ゾフィー |
アダマスさんところのヤマに決まってるじゃないか。 ああ、旧ドマリの所じゃ無いよ。 |
■ゾフィー To:鉱夫B&鉱夫達 |
なるほど、採掘自体はいつ頃からやっておられまして? それにしても、なぜ危険な夜中にさせたりするのかしらね。 アダマスさんのお考えなのでしょうか。 |
■鉱夫B To:ゾフィー |
俺たちはここ最近だけど、古い人は半年くらい前からかな? その連中はとっくに借金返して居なくなっているけど。 明かりはしっかり確保してるから、坑道での作業はそこまで危なくないよ。 シフトも上手いところ班長が工夫してるし。 でも……もしかしたら、商会長にはなんかやましい所があるのかもね。 |
■ゾフィー To:鉱夫B&鉱夫達 |
借りた物を返すことは大事ですけれど、身体を壊したら元も子もございませんわよ。 皆様の様子を見ると心配ですわ。 シフトがきちんととしていることを願いましょう。 それから作業中の明かり、もしかしてランタンだったりしませんかしら。 鉄が必要になるということは、次には油の価格も上がりかねませんからね。 そちらもしっかりと確保されているとよいのですけれど。 |
■鉱夫A To:ゾフィー |
んー。ほら、鉱山の中ってやっぱり暗いじゃない? だから昼間でも明かりは必要。 あんた見たいなドワーフさんなら構わないんだろうけど、うちは人間が多いから明かりはしっかり確保してるよ。 ランタンを大目に吊しているだけなんだけどね。 下手にその辺を手抜きして事故が起きたら元も子もないから、商会の方も安全対策だけはしっかりしてる。 だから俺たちも安心して働けるってもんだよ。 |
■ゾフィー To:鉱夫達 |
まあ、働く人達に過剰な無理を強いていないと言うならよかったですわ。 戦争の噂なども耳にしましたもので、時制柄心配にもなりましたの。 皆様もかなりお疲れのようでしたし……。 ……あら大変、お疲れの方々をだいぶ引き留めてしまいましたわね。 失礼いたしました、どうぞお休みくださいませ。 わたくしは、もう少しこの街の夜の様子をながめることにいたしましょう。 |
■鉱夫A To:ゾフィー |
ああ、ありがとう。 あんたもこんな時間までお疲れさん。 じゃあ、俺たちはもう寝るから。 それじゃあ。 |
ゾフィーに軽く会釈をして鉱夫達は寮に戻っていった。
辺りには静けさが残るばかりだ。