高級宿・ロビー |
高級宿へは難なく到着することが出来た。
確かに、建物は石造りでなかなか高級そうな作りをしていた。
玄関を潜りカウンターに行くと、仕立ての良い制服を着た男が用件を聞いてきた。
泊まる旨を伝えると、
「申し訳ありませんが前金です。一泊50ガメルになります。後宿帳にご記入を」
と言ってきた。
■ゾフィー To:カウンターの男 |
50ガメル?……あらそう、皆様のおもてなしに期待させていただきますわよ。 |
55ガメルを手渡すと、渡された宿帳のページにさりげなく目をやり、さらさらと、自分の出身地を記載するゾフィー。
署名は「ゾフィー フォン バイエルン」と書かれていた。
ただし、すべてドワーフ語である。
■カウンター係 To:ゾフィー |
それでは、お部屋の準備が終わるまでロビーでお待ち頂けますでしょうか。 後で、紅茶を紅茶をお持ちさせて頂きます。 |
カウンター係がベルを鳴らすと、一人のメイドがカウンターにやって来た。
メイドはゾフィーをロビーに案内すると、一旦戻っていった。
■メイシアス To:カウンター係 |
すみません。バーレイン商会の求人窓口からの紹介を受けて参りました。 メイシアス・メイズです。よろしくお願いします。 |
メイシアスは、きれいな建物と内装にドキドキしながら挨拶をすませ、バーレイン商会の求人窓口で受け取った書類を差し出した。
■カウンター係 To:メイシアス |
ようこそ。 早速ですが、メイド長に仕事内容の説明を聞いてください。 |
カウンター係はスタッフ室に入ってメイド長を呼んできた。
メイド長は40代くらいのふくよかな中年女性で、メイシアスを歓迎してくれた。
具体的な仕事内容は、オランからやって来た衛視様(=ファラハ)に専属で身の回りの世話をするという物だ。
細かく仕事内容(部屋の掃除、その他)を説明され、スタッフ室に案内されたメイシアスは、制服のメイド服を渡され着替えるように促された。
着替えが終わると、メイド長は衛視様に紹介すると言ってメイシアスをロビーへ連れて行った。
ロビーには、到着したばかりであろうファラハが紅茶を飲みながら座っていた。
ゾフィーは先客に軽く会釈すると、そのまま空いている席に腰を下ろす。
豪華なソファーに座って一息ついた頃、先程のメイドがティーセットをキャスターに乗せて戻ってきた。
彼女は慣れた手つきで紅茶を淹れ、ゾフィーの目の前に置いた。
■メイド To:ゾフィー |
お客様、どうぞお召し上がり下さい。 お茶菓子はビスケットとスコーンを用意していますが、どちらがお好みでしょうか? |
■ゾフィー To:メイド |
では、スコーンをお願い。 クロテッドクリームとベリーのジャムを添えていただけます? |
■メイド To:ゾフィー |
畏まりました。 (しばし準備) どうぞ。 それでは、わたしはこれで下がらせて頂きます。 で何かご用があればそちらのベルでお呼び下さいませ。 |
メイドは一礼し、キャスターを押しながら厨房へ引っ込んでいった。
メイドが立ち去った後、ファラハがそしらぬ顔をしてゾフィーの座っているテーブルに移動してきた。
■ファラハ To:ゾフィー |
失礼、少々ご一緒させても宜しいですか? 他のお客は商用で出かけているようで、話し相手が欲しくてですね。 ご苦労様です。現在の状況はどういった感じですか? |
■ゾフィー To:ファラハ |
こちらこそ、喜んで。 到着したばかりですので、心強いですわ。 ここの紅茶は、しっかりと香りがたっておりますわね。 4人が仕事を探しに出ました。 アダマスにふたり、この宿にひとり、わたくしは明日朝からバーレインの製鉄所にまいります。 さらにふたりは「気がついたこと」を追い掛けるつもりのようです。 残りのひとりが憩い亭に宿泊して、情報のまとめ役になる予定です。 |
■ファラハ To:ゾフィー |
流石、直営宿だけのことはありますわね。 分かりました。引き続き調査をお願いします。 |
■ゾフィー To:ファラハ |
そちらはいかがでしょうか? また、なにか指示や連絡、調査内容のご希望はございますか。 |
■ファラハ To:ゾフィー |
こちらは、今夜男爵の歓迎の宴に参加することになりました。 様子を窺うには丁度良いので、適当に牽制してきます。 私から特に指示はありません。 なるべく状況証拠だけで無く、物証を捜すようにして欲しい位ですね。 |
■ゾフィー To:ファラハ |
物証ですね、承知しました。 ……ところで、この地方の天気はどんなものなのかしら。 雨が降りやすかったりしないとよろしいのですけれども。 |
二人で話しているところに、宿のメイド長が着替えたばかりのメイシアスを連れてやって来た。
■メイド長 To:ファラハ>メイシアス |
ソーダック衛視様。 こちらが、貴女様専属のメイドになります。 ご滞在の間は彼女がご用件を承りますので、ご遠慮なく申しつけ下さい。 さあ、ご挨拶なさい。 |
■メイシアス To:ファラハ |
はじめまして。ソーダック衛視様の身の回りのお世話をさせて頂きます、メイシアス・メイズと申します。 よろしくお願いいたします。 |
■ファラハ To:メイシアス |
こちらこそ宜しく。 ……そうね、取り敢えずお茶菓子を貰えるかしら? |
■メイド長 To:ファラハ>メイシアス |
今すぐお持ち致します。 さあ、こっちよ。 |
メイド長はファラハに一礼するとメイシアスを厨房に連れて行った。
メイド長は、マイレイ名物の菓子を手早く盛りつけると、キャスターに乗せてメイシアスに渡した。
「くれぐれも粗相の無いようにね」と、メイド長に念を押されながら、メイシアスは再びファラハとゾフィーが談笑しているところに戻ってきた。
菓子をファラハの前に置くと、ファラハが小声で話しかけてきた。
■ファラハ To:メイシアス>ゾフィー |
ご苦労様です。 丁度良いポジションに入って貰えて助かります。 これなら私の側に居ても全く違和感がありませんから、色々とやりやすくなります。 ありがとう。頂くわ。 宜しければご一緒にこちらのお菓子も如何です? |
■ゾフィー To:ファラハ&メイシアス |
それはご親切に。 せっかくですから頂戴しますわ。 まろやかな甘味が広がりますわね……しっかりした食べでがありますが、重すぎはせず……。 あまり見かけませんが、この土地の名物かしら? |
■メイシアス To:ゾフィー |
はい、この街の名物で、蒸かした芋に砂糖を加え、練り上げた餡を小麦の薄皮でくるんだ菓子になります。 干菓子と違いあまり日持ちしない為、お土産品とする事はできませんが、この街に来ればいつでも出来立ての味を楽しむ事ができます。 また、疲れを癒し幸せな気分を運んてくれると、昔から親しみ愛されている味なんですよ。 とかだったと思います…確か… |
■ファラハ To:メイシアス>ゾフィー&メイシアス |
なるほど。 流石、お詳しいのね。 それでは、明日以降の調査に期待しておきます。 くれぐれも慎重におねがいします。 |
■メイシアス To:ファラハ |
はい。 |
■ゾフィー To:ファラハ |
慎重にですね、かしこまりました。 |