オラン東門 |
結局徹夜で『魔法の絨毯』を操り、一行はオランに到着した。
日の出はとうに過ぎ、誰もが働き始める時間となっていた。
ネイサンとの約束の東門に到着すると、馬車2台を野次馬で集まった人々が取り巻いていた。
宣伝もばっちりのようだ。
野次馬達は、一行を確認すると一斉に歓声を上げた。
■野次馬男A To:ALL |
おおっ!、オランを救った英雄のご帰還だ!! |
■野次馬男B To:ALL |
アルバーの再来だ! 何でも、『銀の網』亭を拠点にしてる冒険者だってよ! |
■野次馬女C To:ALL |
あぁん、美形ばっかりだわ♪ フリーかしら? |
■野次馬おばさんD To:ALL |
わたしも、あと10年若ければね…………。 |
■ゼファルディート To:野次馬ズ |
……ああ、どもども、ありがとー。 ……そっちのヒトも、こっちのヒトもありがとー。 |
と、民衆にちょっと遠慮気味に愛嬌を振りまくゼファルディート。生来の気質のためか、群がってくる人たちを無視することもできないのだが、(今回はただ、パーティのみんなにくっついていっただけだからなあ……。次はもっとみんなの助けになれるようにしないと)と、心の中でひとり、決意を強くするのだった。
■ネイサン To:ALL |
よくぞ、ご無事で! 早速で申し訳ありませんが、既に予定の時刻を過ぎています、無理やりですが出発します。皆さんは、馬車で寝てください。何かあったら起します。 それから、約束の武具も揃っています。 馬車の中で身につけてください。 |
■アール To:ネイサン |
しかし、この短時間によくここまで宣伝したもんだ。 道中はともかく、出発の喧騒の合間が一番危険だから注意は怠らないでくれよ。 “元”冒険者さん。 |
■ゼファルディート To:ネイサン |
それがもともとの契約だからね。 気合い入れて、改めてカンバらせてもらうよ。 |
■ネイサン To:ALL |
実は、皆さんと別れた後、ギルドに話を付けてきました。 少なくとも、オランを出発するまでは大丈夫です。 |
■レイス To:ネイサン |
それはありがたい。では早速休ませてもらおうかな。 |
一行が馬車に乗り込むと、ワンピースを着た花売りの女が、アールに呼び掛けながら馬車に近づいてきた。
■花売り女 To:アール |
アール様、お待ちしておりました。 ギルドからの連絡です、お受け取りください。 |
花と一緒に手渡された「それ」は、1枚の羊皮紙だった。
内容も簡素で、「ネイサンへの通告を取り消す」と書かれていた。
……サインは盗賊ギルドの幹部達の連名で、ピロンの名も一番最後に記されていた。しかも、最後に小さな字で
「先行組は止められなかったよ、ごめんね。 ピロン」 と追記してあった。
花売り女に礼をいいながら、1枚1枚はなびらを毟りはじめる。
■アール To:ALL |
ピロンが約束を守ってくれたよ。 ただし、一部を除いて…だけどね。 まぁ、返事がきただけでも良しってくらいに思っててくれよ。 |
■ジン To:アール、ALL |
敵に塩を送られた気分ではあるがな。 まあ、道中警戒して進むのは変わらん。 俺はまず睡眠を取らせてもらいたいがね。 |
■ゼファルディート To:ジン、ALL |
しょうじき、あんまり敵にしたくない人物だよねえ(苦笑) ともかく、筋はきちんと通すヒトのようだから、先行隊さえ排除できればってところかあ…… まあ、その先行隊とやらがどんな隊なのかは気がかりだケド。 |
■花売り女 To:ゼファルディート、ALL |
先行しているのは、「影刃」ダークと部下3名です。 |
■レイス To:花売り女>ALL |
二つ名がついてるということは、相応の腕利きってことかな? |
■花売り女 To:レイス、ALL |
あれだけの腕があって、こんな仕事をするのは、冒険者くらいなものです。 |
■ネイサン To:ALL |
それでは、出発しますよ! |
いよいよ、群集に見守られる中「ニジイロワカメ」輸送イベントが開始した。
馬車が動き出すと同時に、花売り女も後づさるように人混みに進み、群集に溶け込んでいった。