#155 雲の上の話

決戦、くもふね村

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塔、内部
アールはフライトのスクロールを使用し、ミルフィーユはレイスが貰ってきたポーションを飲み、それぞれ不意を突くべく塔の外から侵入し、他の全員は扉から突入した。
概ね不意打ちに成功したが、塔の高いところの窓に立つグラスランナーまでは欺けなかった。
塔の外より飛空のマントで襲いかかるミルフィーユに、グラスランナーの鋭い眼光が浴びせかけられた。
■ピロン To:ミルフィーユ
甘いよ、ぼくは気付いてる。

ピロンは腰のショートソード2本を抜き、二刀流でミルフィーユに襲いかかった!
ところが、ミルフィーユの実力は薬の力で強化されていたが、ピロンは“先入観”故にすっかり騙された。
■ミルフィーユ To:ピロン
貴方の実力は推測済みです。
このままでは、何かと面倒なはず。ここは、引きなさい!

■ピロン To:ミルフィーユ
……小娘が!

そして、不意を突かれ、これと言って身動きできないでいた塔の中にいた怪物達と、床に下りていたグリュネ大司教はアールのフレイルとキューレのレイピア、そしてゼファルディートの矢とエクレールの石弾によって、瀕死の状態まで持ちこまれた!
生きているのは“流石”大司教と言ったところか!
■ゼファルディート To:独白
くそっ! やっぱり非力な僕の力じゃ、まともにダメージは与えられないか。

■グリュネ To:ALL>キューレ
なんだ、お主達は!
……キューレ、生きておったか。
キューレ話を聞け、お主が地上に落とされたのは「事故」だ、決してお主を蔑ろにするつもりではない!
今こそ人間に復讐するとき、共に戦おう!

■キューレ To:グリュネ
おじさん、白々しいよ!
言ってる事が本当なら、村の人達はとこに行ったの!

■グリュネ To:キューレ
キューレ信じてくれ……我は決して……。
村人達は倉庫の中だ、我の話に同意せぬから仕方ないのだ。

■キューレ To:グリュネ
おじさんこそ目覚めてよ!
おじさんの言う事なんて、誰も同意できないよ!

■アール To:キューレ
無駄だよ、キューレ。
ああいう目をしたやつは言葉では止められない。
覚えておくんだな。

■キューレ To:アール
………そうなんだね。

そのころリフィルとレイスは、ガーディアン・サーバント攻略に挑んでいた。
■リフィル To:ガーディアン・サーバント&レイス
アンタにモノを言っても無駄なんだろう?
後の事は知ったこっちゃ無いんで…サヨナラだ!
(フェイントを入れて、ハルバードで足を刈る)レイス!後は任せた!

■レイス To:リフィル>ガーディアン・サーバント
承知した!うおおぉぉぉっ!!!

ノーヴァテリウスの中枢とも言うべきガーディアン・サーバントも、過去アルバー達が為した事をなぞらえたように、リフィルがハルバードで転ばせた所にレイスが『虹色の杭』を刺し込んだ。ガーディアン・サーバントは、この瞬間から全く動かなくなった。

『杭』の刺さった瞬間、塔全体がフラッシュしたような気がした。

グリフォンゾンビも、ジンが作り出したストーンサーバントの拳で、既に体力の1/3が削り取られていた。
■グリュネ To:ALL
しまった!
もはや、これまでか。

■ピロン To:グリュネ>グリフォン
グリュネ大司教、諦めるのはまだ早いよ。
きみは、まだ生きている!

ここにいる人間共を、みんな生贄にできれば、時すらも戻し得るかも知れないよ。
幸い、毛並みの良い小娘もいる。

殺れ、グリフォン!
小娘を血祭りにあげるんだ!

■ミルフィーユ To:ピロン
そんなに上手くは行きません、今のわたくしを甘く見ないことです。

■リフィル To:ピロン
確かにアンタを相手にするのは少し骨だが、手がない訳じゃないさ
幾ら優秀な冒険者でも一人で出来る事は限られてる…

つまり、アンタ以外から片づければ問題ないってことだ!

こうして会話している間にも、ジンからの支援魔法《フィジカル・エンチャント、クイックネス》がミルフィーユの身体にかかる。ピロンの2刀にグリフォンの猛攻が加わるはずが、間のタイミングにミルフィーユが割って入る形になった。

ピロンの2刀を受けたミルフィーユは、ピロンの隙にグランド・レイピアを突き入れ、グリフォンの“訓練されたウォードッグ”を連想させる無駄の無い猛攻を、大盾一枚で押し返す。
■ピロン To:ミルフィーユ
くっ………ばかな! 有り得ない、ぼくが血を流すなんて。

■グリュネ To:ALL
うむ、まだまだこれからだ!

しかし、暗黒神官達にとって、現実は厳しかった。
■レイス To:グリュネ
見苦しいぞ暗黒神の司教よ!

■リフィル To:グリュネ
諦めな、前衛を失った魔法使いがどれだけ無力か判らない程、馬鹿じゃないんだろ?

■アール To:グリュネ
ここまでだ。
これ以上キューレを失望させないでやってくれ…

グリュネ大司教が呪文の詠唱に入る前に、リフィルとアールの挟み撃ちに持ち込んだ。
リフィルのハルバードは奇跡的に受け止められたものの、アールのフレイルは順当に当てることができた。
■グリュネ To:ALL
おのれ……人間…め…。

グリュネ大司教は音も無く崩れ落ちた。

また、ストーンサーバントも更にグリフォンゾンビの腐肉を拳で叩き散らし、反撃もことごとく避わしていた。


仲間の惨敗を見たピロンは、笑みを浮べて一行に話しかけた。
■ピロン To:ALL
面白いよ、きみ達。
このぼくが、ここまで追い詰められるなんて…流石『銀の網』の冒険者だね。
完全にぼくの負けだ、『冒険談』攻略おめでとう。

ここで皆殺しにするもスリリングな体験ができそうで面白そうだけど、きみ達の今後の活躍が見たくなった。

きみ達さえ良ければ、ぼくはここで引かせてもらうけど、どうかな?

戦うなら受けて立つよ。
……もっとも、ここから先は『英雄談』になっちゃうけどね☆。

■ジン To:ピロン
それはあんたの目的次第だ。
ネイサンと何か関係があるのか?

■ピロン To:ジン、ALL
ネイサンとは関係無い、“関係あった”のは「ネイサンの輸送イベント」だよ。
でも、手駒も無くなった今となっては、手駒の為にそこまでお膳立てする義理もなくなったよ。

■リフィル To:ピロン&ALL
俺としては願ったり叶ったりな申し出だがな…さて
まぁ、この娘(生け贄)は置いていって貰えるんだろ?

■ピロン To:リフィル、ALL
もう、生贄を使ってまで『主』に御足労願う理由も無いからね。

■アール To:ピロン
これ以上やりあうのはごめんだが、ひとつだけ聞いておきたい。
あんたが本当に“枢機卿”と呼ばれる者か、だ。

ファリスとファラリス。
この状態でミルフィーユが手を引くかどうか…
しかし、実際に彼…ピロンが暗黒の技を使っているのは誰も見てはいないはずだ。
ミルフィーユについても“枢機卿”の可能性を承知の上で、ピロンに対して始めから「手を引きなさい!」と言っているのだから、今更ごねたりしないはずだ。
前のように、「飾りだ」と言えばこの場は収まるだろう。その意図に気づくかどうか?…意味ありげな笑みをピロンに返す。

ピロンも戦闘で敗北しただけではなく、『銀の網』の冒険者達に対して「借り」を作ってしまった事に気付いて、アール達に話しかける。
■ピロン To:ALL
……本当に、きみ達の今後が『楽しみ』だよ。

「借り」は返す、
ギルドの役職に戻ったら、ネイサンに対する通告を、ぼくの勢力(ちから)で取り消させるよ。
反対勢力の押さえ込みが大変だけど、きみ達にはその程度の見返りが無いと「貸し」を帳消しできないだろう。

今日は引くよ。
次、敵として遭うときは、最高の武装と準備をして『英雄談』の世界を見せるよ。

そう言うと、グリフォンに跨り塔の窓から飛び去っていった。

そのころ、『杭』を刺されたガーディアン・サーバントにも予定されていた崩壊が始まっていた。
鎧そのものの身体の中の虚空の中……『杭』の刺さる先に、回りの空気を振るわせながらウィル・オー・ウィスプのような輝く球体が出現し、剣や盾や身体そのものだった鎧が地面に崩れ落ち球体のみになったところで、輝く球体から一行の耳……いや頭に声が響く。
■頭に響く声 To:ALL
「ショユウシャノ コウタイヲ カクニン、シン ショユウシャノ ナマエヲ トウロク セヨ。」
「ナオ トウロクニハ シレンヲ ウケルコトトナル。」

声の主に言葉が届くかは判らなかったが、このままでは情報が足りない。
アールは古代語ならば通じるかもしれないと(古代語で)聞き返す。
■アール To:頭に響く声
(以下古代語)待て!
この中にその所有者たる資格があるものはいるのか?
“試練”というからには、お前はその器を見極めることもできるのだろう?
器ならざるものを選びて、自らを崩壊させることはあるまい。

■頭に響く声 To:ALL
「ウツワ ナラザルモノヲ エラビテ ミズカラヲ ホウカイサセル コトハ アルマイ。」
「コノ コトバヲ キクモノコソ タイショウシャ ナリ。」
「エイエンノ シレンヲ ウケルモノノ ナマエヲ トウロク セヨ。」

■ゼファルディート To:ALL
やっぱり、ここは「英雄の子孫」たるミルフィーユ嬢が適任だよね、父君よりも英雄の資質はあるようだし。

と、仲間内だけに聞こえるように小声でつぶやく。
しかし、肝心のミルフィーユには「声」が聞こえていない……対象者から洩れたようだ。

どうやらジンの調べた書物には“試練”らしきことにも振れてあったようで、思い出したように説明がはじまる。
■アール To:ジン>ALL
なるほどね。そーいう得体のしれないところには興味が湧くねぇ(笑)
でも、どうする?。役に立ちそうだと思うなら、他にも名乗りを上げてくれよ。
まあ「呪い」がいかほどのものか…わからないけどね。

■レイス To:アール>ALL
んじゃ俺も立候補させてもらうよ。
装備品もなんとか付けられそうみたいだし。
正直…「呪い」は怖いけど、好奇心のほうが勝っちゃうね(笑)

こうして、ジン、アール、レイスの3人が試練に名乗り出たが、その中で選ばれたのはジンだった。
地面に崩れ落ちた鎧が光に包まれ、見る見る小さくなって鉄の像に変わり果てた。
ジンの頭の中に、詳細が次々と流れ込んでくる。
■ジン To:ALL
これは・・・

■頭に響く声 To:ジン
「シン ショユウシャ ニシテ サイゴノ ショユウシャ“ジン” ヨ …… ワレヲ タクス。」

一通り説明が終わると、輝く球体は徐々に薄くなって、空気に溶けるように消え失せ、床には、剣と盾、……そして鉄像が残された。
■リフィル To:ジン
……おぃ、無事なのか?
どっか体調に変化はあるか?
先に進めそうか?

■ジン To:リフィル、ALL
ん?・・・ああ、大丈夫だ。
試練とは、この像を一生守り抜くことらしい。
俺にやりぬくことができるか・・・。
まあ、それができるように、この像へ魔力を注ぐと短時間だが再びガーディアンとなって戦ってくれるみたいだけどな。

■レイス To:ジン
なるほど、そういう試練だったのか。
結果論だけど、選ばれなくて良かったかも(苦笑)

■アール To:レイス>ジン
いや、他の人ならば違うものになったかもしれないから、そうとも言い切れないよ。
ともかくサーバントが強化されるのは、ジンさんにとっては頼もしいところだね。
いや、この場合ジンさんがサーバントなのか?(苦笑)

続いてジンとアールで剣と盾を鑑定したところ、剣は高品質だが普通の品だったが、盾は魔法の品であることが判った。
■アール To:レイス>リフィル
こっちは二人に使ってもらえそうだね。
っと、そういえばふたりの装備は“いわくつき”なんだっけ?

■レイス To:アール>ALL
いや、俺のは特にこだわり無いよ。
ネイサンさんに作ってもらおうとしてたくらいだからね。
…この盾はどうやら良さそうな品みたいだね。店売りするくらいなら借金しても買いたいよ。

こうして、盾はレイスが預かることとなった。

周囲が落ち着いたのを感じたのか、キューレが一行に声をかけた。
■キューレ To:ALL
……村のみんなが心配だ。
僕は、船底の倉庫に行ってみるよ。

■リフィル To:キューレ&ALL
行くのは全然構わないが、この生け贄の少女はどうする?

■ジン To:リフィル、キューレ、ALL
あまり時間がない、一緒に連れて行こう。
まずは船底の倉庫、そこに全員が居なければ、手分けして探すか。

■レイス To:ジン
了解。行ってみよう。

■アール To:ジン
了解。じゃあ、その子は絨毯にのせて運ぶか。

「魔法の絨毯」に神官の少女とグリュネを乗せた一行は、キューレと共に船底の倉庫に向かった。

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GM:支倉真琴