ガトーショコラ館 |
王城近い貴族達の館が立ち並ぶこの通りから、オランの街の遥か彼方の西の山に夕日が沈みきり、空は星空が支配しはじめる。まだネイサンの依頼を聞いてから、まだ6時間程度しか過ぎてないのに、もう随分色々な事があったような気がする。
一行の目の前には、ミルフィーユ・コルネリア=ガトーショコラ男爵の住まうガトーショコラ館が見える。
一度、ファリス神殿に寄り、紹介状を発行してもらいに行った一行であったが、そこでは紹介状以外に、聖水を一瓶賜っていた。聖水はレイスに渡され、ファリス信者が飲んだときのみ3分間だけ、戦士の技量が上がる効果があると言われていた。
一行よりも早く「面会の約束」の使者が着いているはずであったが、上手く話は通ってるだろうか?『第一回トレジャーハンター大会』の前夜祭招待会に出席予定などと言われた日には目も当てられない。
正面の、薔薇でガーデニングされたアーチ門は開かれ、そこには、平服にレイピアを腰に差した男装の女騎士が一人と、女中と思われし少女2人が確認できた。男装の女騎士は、忙しなく何か指示しているようだ。
■男装の女騎士 To:女中達 |
呪い師を呼べ!穢れを払うんだ!! |
■女中達 To:男装の女騎士 |
はい、ただいま。 |
女中の一人が館の奥へと消えていった。
■アール To:リフィル&ALL |
まさか、俺たちが“穢れ”ってわけじゃないよな(苦笑) |
■リフィル To:アール&ALL |
笑えない冗談だが、運んできた依頼内容は穢れと言われれば否定できないな(苦笑) |
■レイス To:リフィル&ALL |
(少し顔を顰めながら)穢れという言葉は嫌だな。俺たちの事じゃないといいんだけど。 |
■ゼファルディート To:ALL |
僕は海のにおいが染みついているから、そう言った意味では「穢れ」ているかも(苦笑) なれていない人には潮の香りってキツイかもしれないし。 |
■アール To:レイス |
まあまあ、男爵が女性ということは、お供も大半が女性かもしれない。 だとすると、男性一般が穢れと言われてもしょうがない状況かもね。 |
こちらから確認できる距離に入っても、女騎士はまだ一行に気付いた様子はないように見えた。
軽口を交えているうちに一行がアーチ門の前に着いた。
レイスが紹介状を懐から出し女騎士に手渡すと、女騎士は紹介状の中身を確かめた。
今まで険しかった顔が、紹介状を読んだ後、少し柔和になったような気がした。
■男装の女騎士 To:ALL |
貴方方が、ヨシュア候の紹介の方ですか? ……想像とは別の意味で全く違いますね、まさかファリス神殿の神官様御一行とは。 どうぞ、御通りください。 |
■アール To:男装の女騎士 |
通るのは構わないが案内はしていただけるのかな? あとお嬢さん、よろしければ我々のことをヨシュア侯からどのような連絡を受けたか…教えていただけませんか? 我々は紹介は頼みましたが、ただの冒険者で侯の配下ではありませんから。 まあ、詳しい話は男爵に直に通させてもらいますが。 |
■男装の女騎士 To:アール、ALL |
もちろん、御案内させて頂きます。 どうぞ、こちらへ。 |
館は、オランの一般住居に比べれば、確かに広く庭もあった。
しかし全体の広さは80坪程度と思われ、ヨシュアの城館とは比べようもない。
庭を半周しなければ玄関につけない構造になっているようで、その庭は良く手入れされている。
爵位持ちであれば特別なことでもない、普通の館という印象をうけた。
■男装の女騎士 To:アール、ALL |
ヨシュア侯からは、あくまで面会の予約の為の、形式的な内容でしかありませんでした。 「冒険者の男性6人」とありましたので、使者より容姿について質問せねばなりませんでした。……もちろん、侯の配下でない事は承知しております。 使者 の、色呆け露出狂アホ馬鹿メイド女 は、ほんの数分前に帰られたところです。 当館では、ヨシュア侯から使者が来た時には、後で御払いをしてもらうしきたりとなっております。 |
■レイス |
…(なんか物騒な単語が聞こえた気が…) |
話をしている間に、玄関を通過し、食堂の中に案内された。……館の大きさに対して1フロアの3分の1は使ってそうな部屋で、天井と壁の一部が温室のように硝子張りになって、小さな庭を眺められるようになっていた。
横に4人づつ、奥と手前に2人づつ座れそうな広さのテーブルには、白いテーブルクロスが敷かれ、その上には7人分の食器と、庭のものと思われる赤い薔薇を刺した花瓶が置いてある。上座には、フリルとレースがささやかな贅沢を主張する、清楚な青いワンピースを着た、長く波打った金色の髪、透き通るような白い…それでいて健康的な肌、全てを見通すような碧眼の少女が座っていた。
おもてなしの笑顔を湛えた少女であったが、得も言えぬオーラを感じた。
少女の左隣には、食器を運ぶ為のワゴンが置かれ、その上には青味がかった銀色のとら猫「シフォン」が円くなって、虹色に輝く『鍵』を傍らに置いていた。
■ミルフィーユ To:ALL |
お待ちしておりました、急なお話でしたので大したおもてなしも出来ませんが、どうぞお寛ぎください。 現在、貴方方が暴走しつつあるノーブァテリウスを追っていることは、父の使者より承っております。私は、何をお手伝いすれば良いのでしょう? |
後ろから、門のところで見た女中たちがスープを皿に盛り付けて行く。
ミルフィーユは、ヨシュアから「空飛ぶ絨毯の貸し出し条件」などは聞いていないように見える。
■ジン To:ミルフィーユ |
恐縮です。では早速。 ノーブァテリウスの暴走を止めるには、その『鍵』が必要となるでしょう。 そして、コルネリア家に伝わる伝承知識もおそらく必要になってきます。 この2つをお持ちのガトーショコラ様に、先発隊に同行をお願いに参りました。 停泊地点のガゾ山までの距離を鑑み、明朝の出発を考えております。 |
■レイス To:ミルフィーユ |
ファリス神の御稜威(みいつ)を遍く照らし、迷える子羊を助ける為に是非ご助力願います。 |
■アール To:ミルフィーユ |
自己紹介等は省略させていただきますが…なにより女性に急ぎの支度を申し出る非礼をお詫びいたします。 |
そうしている間にも、焼き立てのパンに「サラダの盛り合わせ」や「ガチョウのロースト」が、女中達の手で次々と並べられていく……さっきから、この2人しか見ないのが不思議だが。ミルフィーユは一口スープをすすると、温和な…消え入りそうな?…声で語りかけた。
■ミルフィーユ To:ALL |
どうぞ、冷めないうちに、お召し上がりください。 しかし、この棒が…かような物だとは。……これもファリス様のお導きなのでしょうか。 分かりました、それではこちらからも条件を出させてください。 『わたくしの護衛は出しません、わたくしと従者1名以外には連れて行きません。』 ノーヴァテリウスは、兵士を集めてどうにかなるものでもないはずです。 また、ノーヴァテリウスを止める事ができなければ、オランの街を守る為に兵が必要になります。 わたくしに何かあっても家の名に傷はつきませんが、兵の死傷は家名に泥を塗るに充分です。 |
■リフィル To:ミルフィーユ |
それでは、遠慮無く頂かせて貰うとしよう |
■ジン To:ミルフィーユ |
はい。その条件で結構です。 |
ミルフィーユは、給仕していた女中の一人を呼びとめると、一行に紹介した。
■ミルフィーユ To:ALL |
では、このエクレールを連れて行きますので、よろしくお願いします。 |
■エクレール To:ALL |
エクレール・タルトです、初めまして。 |
■リフィル To:ミルフィーユ&エクレール |
エクレールさんに、少しだけ聞きたい事があるのだが… あなたは、ミルフィーユ嬢の従者なんだよな? ミルフィーユ嬢が目に掛けると言う事は、それなりの冒険者並の技量か知識が有ると考えて良いのか? …特になければ、無いで構わないんだが、相手が相手なだけに、宛に出来る戦力なら色々心強いのでね |
■エクレール To:リフィル、ALL |
わたしは吟遊詩人です。 ミルフィーユ様の身の回りのお世話が主な仕事になると思いますので、戦力としてはあまり期待しない方が良いと思います。 |
■レイス To:エクレール |
(頷きながら)承知しました。 |
■アール To:ミルフィーユ&ALL |
さて、それではいただきながら、いろいろ伺わせていただきます。 ただ先に言っておくべきだったかもしれませんが、ヨシュア候には兵を挙げるように進言は致しましたが、男爵におきましては「我々にお付き合いくださるよう」お願いに上がった次第で、そこのところはお間違えないようにいただくと。 まあ、頼りないと思われたなら、仕方ありませんが。(苦笑) |
リフィルにならってそれぞれが席に着く。
■キューレ To:ALL |
……これ鶏肉だ。 地上でも鳥は取れるんだね。 |
■リフィル To:ジン&アール&レイス&ゼファ |
(ショコラ嬢に聞こえない程度の小声で) なぁ、ショコラ嬢は何か、対人恐怖症でも持ってるのか? この屋敷もそうだが、やたらと少人数に拘ってるぞ? 取り敢えず、この辺は触れない方が良いのか? |
■ジン To:リフィル |
ふむ・・・ことさら豪華さを嫌う御仁なのかもしれんな。 |
■アール To:リフィル>ジン |
いろんな意味で狙われないように少数精鋭なのかも。 味方のふりをした敵が一番怖いからね、使用人には気をつけているんだろう。 |
■ゼファルディート To:リフィル&ALL |
まあ、へたに侯爵令嬢でございって感じで物々しく大人数でこられるのもあれだしね(^^; こういった場合って、少数精鋭のほうがいいもんなんでしょ? |
■アール To:ゼファルディート |
つまり我々が精鋭並の働きをしなきゃいけないってことだね。(笑) |
■キューレ To:アール、ALL |
あのコを守るのか? ぼくより強そうだけど、頑張るよ。 |
■リフィル To:ALL |
精鋭並みの働きが出来るかは疑問だが、やれるだけはやるさ(笑) それと、キューレは生き残る事を最優先しろよ お前が居なくなると、雲船の住人達との橋渡し役が居なくなり、ややこしい事になるからな |
■キューレ To:リフィル、ALL |
……そうだね。 死なないように、気を付けながら頑張るよ。 |
■レイス To:キューレ |
小さな矢傷なら俺が治せるから、近くにいてくれよ。 |
■ゼファルディート To:ショコラ |
自己紹介が遅れてスミマセン、ゼファルディートっていいます。 質問があるんですが、ヨシュア侯はノーヴァテリウスを奪った人物に心当たりはないとおっしゃっていたんですが、ショコラさんには思い当たる人物などはいますか? |
■ミルフィーユ(=ショコラ) To:ゼファルディート |
はて? わたくしには、心当たりはありません。 しかし、父には心当たりが「有り過ぎた」のでしょう。 何れにせよ、相手は「浮遊船に乗りこむ能力があり」「浮遊船の知識に深く」「オランを害する意志を持つ」者なのでしょう。しかし、父に心当たりが無いのであれば、以外にもコルネリア侯爵家に遺恨や宿怨は無いのかも知れません。 |
■アール To:ALL>ミルフィーユ |
キューレは最初“オラン村”と言った。ならばその狙いがコルネリア家という枠で考えるのは、小さい発想だったかもしれないな。 っと、これは侯爵家を卑下しているのではナイので、お気を悪くなさらないでください。 |
■ミルフィーユ To:ALL |
それでは、これからどうすれば宜しかったですか? 館にお泊めする訳にもいきませんので、明日の集合時間と場所を教えて頂ければ、間に合うように致しますが。 |
■ジン To:ミルフィーユ |
では、日の出前に、こちらまで迎えに参ります。 それまでに出立のご用意を。 それと、お父上様に我々と行動を共にすることをお知らせいただけますでしょうか。 |
■ミルフィーユ To:ジン、ALL |
分かりました、お待ちしております。 |
■アール To:ミルフィーユ |
あとはヨシュア候と必要な打合せはしていただきたいですね。 差し出がましいようですが、お父上とはなにやらあるようですが、面子に囚われて大事な機会を逃さないように願います。 |
ちょっと言い過ぎたか?と表情を気にする。しかし、ミルフィーユは気にしてないようだ。
それより他の事で気が重くなっているようで、溜息をついている。
■ミルフィーユ To:アール、ALL |
つまり、父に会えと言う事ですね。 わたくしには父への面子などありません、しかし父には面子しか無いのかも知れませんが……。 分かりました、当家の問題は持ちこまないことをお約束いたします。 わたくしが会いに行く際に、皆様は連れていかなくても宜しかったですか? |
■アール To:ミルフィーユ |
我々がいてはお話できないこともあるでしょう。 お父上には「約束の件をお願いします」とだけ、お伝えいただければそれで。 |
■ミルフィーユ To:アール、ALL |
「約束の件」? 父と何を約束されたのですか? 事によってはお断りすることになりますが。 何れにせよ、良く分からない事には手を貸す事はできません。 |
■アール To:ミルフィーユ |
失礼しました。 コルネリア家の家宝「魔法のじゅうたん」を借りる手筈だったのですよ。 お嬢様も、まさか空に馬で乗り込むつもりではありますまい。 むろん、ヨシュア候が一介の冒険者の我々に家宝をおいそれと貸す道理もありません。コルネリア家の一員である、ミルフィーユ男爵ならば別…という話です。 ただ、じゅうたんは「5人乗り」と聞いておりますのでそこまでの移動手段を別には考えてはおりますが。 もし同行が必要なら、ファリスの神官であるレイスならお嬢様も信頼していただけるかと思いますが。 |
■ミルフィーユ To:アール、ALL |
……そうでしたか。 父は、わたくしを条件に家宝を貸すと言ってきたのですね。 分かりました、わたくしが借りてきましょう。……同行するかどうかの判断は、そちらに任せます。 しかし、あの絨毯は5人しか乗り込めないはず? 貴方方はそれで良いでしょうが、わたくし共は別の手段を考えねばなりませんね。では、わたくし共2人はこちらで何とか致しましょう。 |