銀の網亭・酒場 |
神殿で恐るべき伝承を聞くことができたレイスとゼファルディートは、ひとまず『銀の網』亭に戻ることにした。
『銀の網』亭の酒場はお客さんのピークも過ぎたようで、カウンターに「フードで顔を隠しローブを着た者」と「痩せた革鎧の男」の2人組がいる以外に、お客さんは誰もいない。
■レイス To:おやじ |
おやじさん、ただいま。一息つきたいんで、紅茶かなにかもらえますか? |
レイスはおやじに声をかけながらも、同業のようなカウンターの2名に意識を向けることを忘れなかった。
■おやじ To:ALL |
おう、どうだ収穫はあったかい? 「坊主」の方は、眠ってはいないがベッドで横になってるよ。 一応、飯も食わせておいた、豆スープだけどな。 それと依頼主さんから、念の為「坊主の武具」も準備しとくとさ。 後、必要なら深夜でも会いに来て構わないって言ってたな。 |
おやじは何に気を使ってるのか、キューレを「坊主」ネイサンを「依頼主」と言っている。
■レイス To:おやじ |
ありがとう、おやじさん。いろいろ気を遣ってもらったみたいだね。 おやじさんは知っているかもしれないけど、「坊主」の先祖に関する話は聞けたよ。 依頼主さんの言伝、了解です。あとでみんなにも話しておきます。 「坊主」はまだ眠ってますかね?様子をみたいんですが。 |
■おやじ To:ALL |
おう分かった、いま案内するよ。 |
案内されたのは2階の借りている個室ではなく、地下階の個室だった。
隣りの部屋は使用中のようで、固く閉ざされている印象を受けるが、空室の部屋は扉が開け放たれている。
部屋に入るとベッドにはキューレが寝かされていた、おやじの話によると、しばらくの間キューレは村に帰ろうとしていたが、どうにか説得に応じてくれたとのことだった。
キューレの顔を覗きこむと、傷を治す為に「寝ることに集中している」ように見えた。
■ゼファルディート To:ALL |
……ん、精霊力は正常に働いているみたいだから、ケガの具合は良くなっているようだよ。 あとはゆっくり休んで、栄養をつければいいかな。 |
■レイス To:キューレ |
キューレ、具合はどう…ってそんなに力んでいたら治るものも治らないよ。 村に帰りたいなら身体を楽にして休まないと。 俺は翼がないから飛んだことないけど、風を受けて大空に舞っている時のようにしてごらん。力みが消えると思うから。 |
■キューレ To:レイス、ゼファルディート |
舞っている時……そっ、そうか。 気合で治るかと思ったけど、そうじゃないんだね。 この部屋に移るときに、一度外を見せてもらったんだ。 ここは、どこまでも続く「石の海」だね、それとも「建物の山々」かな。 「みんなで逃げる」なんて全く無理だっていう意味が、よく分かったよ。 でも、明日には動けそうだし、朝には出発するよ。 |
■レイス To:キューレ |
うん。明日なら今のままでもなんとか動けるだろうね。 眠る前にもう一度癒しの祈りを捧げるからそれでなんとかなるだろう。 …キューレ。少し話をしてもいいかな? |
レイスはそういうと、ファリス神殿で聞いた伝承をキューレに分かりやすいよう、フェザーフォルクの少女フレイヤを中心として伝えてみた。
■レイス To:キューレ |
このフレイヤという少女はキューレの部族のご先祖様なのかな? |
■キューレ To:レイス、ゼファルディート |
フレイヤ? ぼくは、村を始めた大お婆さまは「コルネ」って名前だって聞いてるよ。もし間違えて覚えてたとしても、「ふれいや」なんて聞いたことないよ。 でも、村の言い伝えとほとんど同じだね。 |
■レイス To:キューレ |
なるほど… (アルバーがコルネリア家の家名を下賜されて、フレイヤと共に村を興したというのが自然なのかな) キューレ、そのコルネという方は、違う呼び方も残ってなかったかな?例えば…アルバーとかコルネリアとか。 |
■キューレ To:レイス、ゼファルディート |
村が始まったときの話は、「にんげんの祭器(魔法装置ノーヴァテリウス)」の言い伝えの一部だから、たぶん、まちがってないと思うよ。 「にんげんの祭器」はむかし、とても暴れんぼうだったんだ。 空に住むにんげん達は、自分達のなわばりをそれ以外の生き物に分けたくなかったから、祭器でみんなをいじめていたんだ。 コルネ大お婆さまも、そのころはまだやっと大人になったばかりで、大お婆さまじゃなかったんだけど、祭器に困ってたエストンの山を守るために山を降りたんだ。 山を降りると、にんげんの部落にたどり着いたんだ。長の息子「アルバー」と仲良くなって、そのアルバーと友達の「祭祀コープ」、そして「またぎのバリ爺」と一緒に旅に出たんだ。 つぎに、たった一人の草原の妖精の女の子が、集落を襲おうとしている化物の群を足止めしていたんだけど、とどめを刺されそうだったから4人でさらって逃げたんだ。女の子は「百体までは数えたんだけどね、斧が割れてからはジリ貧だったの、助かったわ」と言って仲間になったんだ。 その後、エルフの青年と仲間になって、6人で「にんげんの祭器」に挑んだんだ。 なんとか「にんげんの祭器」をおとなしくさせた大お婆さま達は、この祭器を放っておけなかったから、ここに「くもふね村」を作ったんだ。他の仲間は故郷に帰ったけど、故郷に帰ったアルバーは「大お婆さま」の名前を自分につけたって、あとから村に教えてくれたんだ。 ねっ、「フレイヤ」なんて出てこなかっただろ? アルバーは大お婆さまの親しい友達だし、コルネリアはよく分からないよ。 |
■レイス To:キューレ、ゼファルディート |
(レイスは指折り数えながら) 「アルバー」 「無双弓の爺は、またぎのバリ爺」 「ファリスの聖戦士は、祭祀コープ」 「銀の甲冑をまとったエルフ」 「百人殺しのハルバード使いのグラスランナー」 「フェザーフォルクの少女、コルネ…こちらの伝説でいうフレイア」 …符号しないのはコルネ大お婆さまのみという事か。 どうもしっくりこないな。なんか大事なことのような気がする。 (嘆息し)無い知恵を絞っても仕方ない。ゼファ、皆と合流して知恵を分けてもらわないか? |
■ゼファルディート To:レイス、キューレ |
……うん、もしかしたら神殿には伝わっていない伝承がもしかしたらあるのかもしれないしね。 ホラ、英雄譚なんかでよくある「消えた英雄」とか「最後の一人」とかいうやつ。 どちらにしても、情報が足りないからね、行動しよう! |
■レイス To:ゼファルディート |
じゃあ皆のところに行こうか。 …っと、キューレをこのままにしてるのも気になるな。 本当は安静にしてたほうがいいんだけど…。 もう一度癒しの奇跡をお祈りして、キューレも一緒に行動してもらおうか。 そのままだと危ないから簡単な変装でもしてもらって。 |
■ゼファルディート To:レイス、キューレ |
了解! キューレの変装に関してはおやじさんに大きめの外套があれば貸してもらえればOKかな、羽を隠せればあとは人間と変わらないんだし。 |
■ゼファルディート To:おやじ |
おやじさん、これから他の仲間と合流しに行くよ。 で、キューレも同行してもらうことになったから、羽を隠すための大きめな外套とかがあれば貸してほしいんだケド。 |
■おやじ To:ゼファルディート |
貸すのは構わないが、慌てないなら仲間が帰ってくるのを待ったらどうだ? 「変装は専門家に任せる」ってのも手だぞ。 |
■レイス To:おやじ |
そうですね。アールが戻ってくればお願いしてみます。 |
夕方近くなった頃、学院に調査に行っていたジン、リフィル、アールが帰ってきた。
合流してコルネリア候の屋敷に行くつもりのようだ。
お互いに得た情報を交換し合うと、色々な疑問が解消し、また新たな疑問が浮上してきた。
自分達だけでコルネリア候の館に向かうつもりだったジン達であったが、「狙われている」状況も踏まえ、キューレも連れ全員で移動することにまとまった。
■アール To:キューレ |
さすがにそのままじゃ、普通っぽくないからな、どれ、匂いやらなにやら気になるかもしれないけどガマンしてくれよ…っと。 んっ。 あ、動くなよ。 とっ。 こんなもんかな?他人にやるのは難しいもんだね。 |
色白い細面の顔だちを、丁稚のくたびれた少年のように見せ、羽根は外套で目立たなくしてみる。
見たところ、荷を背負った丁稚といったところか。
■レイス To:アール |
おお、化けたね〜。いいんじゃないかな。 |
■キューレ To:アール |
うん、袋に入った翼も窮屈じゃないし、なかなかいいよ。 悪い人に捕まると生きて帰れないって言われてたからちょっと どきどきしてたけど、これで安心だね。 |