#155 雲の上の話

光の神殿

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ファリス神殿
昼下がりとは言え、ファリス神殿は参拝者でいっぱいだ。
ラーダに重きを置くオランでも、その勢力は決してひけを取るものではない。
荘厳な正門をくぐると、修道女がレイスを出迎えた。
■修道士の少女 To:レイス
お帰りなさいませ、レイス神官様。

レイスは少女に向かいゆっくりと頭をたれて至高神を讃える神聖な音句を紡ぎ出した。
■レイス To:修道士の少女
ラウマ・アドニア・モイル・デ・ファリス…
ただいま戻りました。
神官長はいらっしゃいますか?

■修道士の少女 To:レイス
神官長は今夜『第一回トレジャーハンター大会』の前夜祭招待会に出席予定ですので、手短でないと困ります……。

■レイス To:修道士の少女
承知致しました。
お手間は取らせませんのでよろしくお取次ぎお願い致します。

■修道士の少女 To:レイス
分かりました、それではご案内致します。

神殿の奥、大司教位を持つ高位の神官とその世話の為に出入りを許された神官しか入る事の許されない執務聖堂の最深部、神官長の執務室まで通された。
レイス神官であっても、入信の際「神官長直々」の勧誘を受けた経緯が無ければ、後「数年」は踏み入れる事はできなかっただろう。
■神官長 To:レイス
どうしましたか?
信仰に迷いでも生じましたか?

■レイス To:神官長
いえ。ひとつは喜ばしいことを報告致したく、もうひとつはささやかな懸念があり参上仕った次第です。

先程、とある少年に対し「癒し」を至高神に祈ったところ神聖なる奇跡を見ることができました。またひとつ、より深く至高神への感謝の心を持て喜ばしく思います。

レイスはそこで少し言葉を区切ると眉根を寄せて
■レイス To:神官長
もうひとつの懸念というのは、その少年から寄せられたもので、かすかな災厄の火種があるらしい、という事です。
詳しく調査しなければ分かりませんが、なにやら古代王国期の魔法の物品が暴走しているような印象を聞き取りました。
私は市井の仲間とともにこの災厄の芽を摘みに参りたいと思います。
…もしひと月以上ここに戻ることが無ければ、災厄は私の手に余るものだったという事をお含み置きいただき、神官長のお力でしかるべき方に警告をお願いできればと思います。

■ゼファルディート To:神官長
こんにちは、僕はゼファルディート。
さっき、レイスが言っていた古代王国期の魔法の物品っていうのが空飛ぶ船のことらしいんだ。
もし、知っていたらでいいんだケド、ここの神殿にそういった船についてなにか伝承とか、そういったのって伝えられてる?

■神官長 To:ALL
浮遊船ノーヴァテリウスのことですね、コルネリア侯爵家は代々ファリス信者の家系、もちろん聞き及んでますとも。
カストゥール王国との戦いの歴史なれば、ラーダでなくともその概要は記録されてます。

しかし、その魔法装置が再び起動するのであれば、確かに重大な事態と言えますね。
ところで「もしひと月以上ここに戻ることが無ければ、災厄は私の手に余るものだった」とは、『ひと月は魔法装置の暴走を抑えて見せる』という宣言ですか?
もしそうであるなら、こちらもそのように準備を進めさせましょう。

レイスとしては『祭器』の暴走の事を指しているつもりだったがゼファルディートのおかげで興味深い話が聞けるようだった。
■レイス To:神官長
浮遊船ノーヴァテリウス?
それはコルネリア侯爵家の所有物なのでしょうか?

それから暴走を抑えるという話ですが、何がどうなってるかは調べてみないと分からないので、現状では「最善を尽くします」としかいえません。
また、「ひと月」の根拠は捜索、調査、原因の発見と排除で最長それぐらいかかるであろう希望的観測でしかありません。
暴走の内容やそれによって波及する効果もわかりませんからもしかしたらもっと短い間に大変な事が起きるやも知れません。

■神官長 To:ALL
そうでしたか、なにか情報を持っているのだと期待しすぎたようですね。
警告の件は承知しました、レイス神官も無理は禁物です、生きて帰還することも大事な責務なのですから。

あと神殿に伝わる話では、浮遊船ノーヴァテリウスは共に戦ったフェザーフォルクの少女の村になったといわれています。村の名はたしか……「くもふね村」だったはずです。
もちろん、コルネリア侯爵家の所有物ではありません。

■レイス To:神官長
無知蒙昧な迷える子羊に、いましばらくご教示ください。
神殿に伝わる話とは―

レイスは自分なりに聞いた話を整理してみた。
1.古代王国期の戦いの歴史がラーダ神殿以外にもここ(ファリス神殿に伝わっている)
2.現在のコルネリア侯爵家はいつの頃からか分からないが、代々ファリス信者である
(支配階級だから秩序を重んじるファリス信徒でも不思議じゃない)
3.浮遊船ノーヴァテリウスは古代王国期の王朝との戦いに使用された。その後、共に戦ったフェザーフォルク一族の村になった。その名前は「くもふね村」である。
■レイス To:神官長
それと、たいした事ではないのかもしれませんがもうひとつだけ分からない事をご質問させてください。
コルネリア候の先祖は、所有物ではないけど浮遊船ノーヴァテリウスでフェザーフォルクと共に戦ったということなんでしょうか?

■神官長 To:レイス、ALL
うーん、どうやら知らなかったようですね。あまりに有名なので、つい知っている前提で話を進めてしまいました。

カストゥール王国時代末期、我々の先祖は遂に立ちあがりカストゥール王国に対し反攻したのですが、空中都市レックスもまたその対象になり、我々の先祖達によってレックスを浮遊させる魔法装置である環状列石が破壊されていったのです。空中都市レックスに住む魔術師達は、我々の先祖達による環状列石の破壊行為を黙って見てる訳も無く、様々な方法で我々の先祖の破壊行為を妨害したのです。『浮遊船ノーヴァテリウス』は、特に苛烈を極めたものの中の一つとされています。

……この戦艦によって幾つもの部落が消滅したと言われています。

この戦艦に立ち向かった勇者が「アルバー」と言う青年で、彼は「無双弓の爺」「ファリスの聖戦士」と「銀の甲冑をまとったエルフ」「ハルバード使いのグラスランナー」、そして「フェザーフォルクの少女、フレイア」のたった6人で船内に侵入し、鎧のコーレムを倒してノーヴァテリウスを停止させたとされています。

その後アルバーはカストゥール崩壊後にできた小国の貴族となり、その際に「コルネリア」の家名を得たことになっています。

ノーヴァテリウスは決して生易しい相手ではないでしょう。

■レイス To:神官長
なるほど…オラン周辺では有名な英雄譚だったのですね。
ところでその鎧のゴーレムに関する部分なんですが、話から察するに、そのゴーレムが機関部―魔法装置のゲートキーパーといえるようですが、何か弱点のようなものはあったんでしょうか?

■神官長 To:レイス、ALL
伝わる話では、ハルバードで足を転ばせたところに、杭で止めを刺したとのことです。
この杭が手に入れば有利でしょうが、普通の戦術も通用するということでしょう。
また、空からの攻撃にも弱かったと聞きます。

逆に、腕力はオーガー並です、しかも剣を装備しています。その剣撃は、石柱をも一刀のもとに切り倒したそうです。
しかも、鎧と盾で完全武装とも聞いています。
伝承が本当であれば、倒し難い上に剣の一撃は致命的でしょう。

■レイス To:神官長
(杭か。何か魔法的な力があるんだろうな)
かなりの強敵のようですね…ともあれ、貴重なお時間を割いていただき改めて御礼申し上げます。
ありがとうございました。
あとは微力を尽くして最善の結果を目指したいと思います。

■神官長 To:レイス、ALL
この危機を全力で対応する事を望みます、次会うときまでには、何か準備しておきます。

■レイス To:ゼファルディート
ゼファは他に何か聞きたいことある?なければお暇しようか。

レイスはふかぶかと一礼すると、ゼファルディートを伴って神官長の前から辞去した。
■レイス To:ゼファルディート
結構有用な情報を聞けたね。
さて…まだ時間もあるだろうけど、ちょっとキューレの様子が気になるから俺は銀の網亭に戻るね。


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GM:支倉真琴