「袋の鼠」亭 |
冒険者達は準備をした後にカロンの案内で「袋の鼠」亭を訪れた。
ファラハも目立たない格好で同行している。
ウリディケも白馬ナナイを詰め所に預け、神官衣も脱いで、普通のマントに替えている。
普段であれば革鎧に着替えるところであるが、ノーブと前衛を維持する手前、甲冑までは脱げない。
ノーブやエルステッドも、”常闇通り”の住民に溶け込んでいる。
カロンとメイシアスは特に変わりない格好でいるがあまり違和感を感じないようだ。
店の中を眺めるとまさに場末の酒場という感じで、昼間から飲んだくれている連中の姿が多く見られる。
入ってきた冒険者達を、店のおやじがうさんくさげに見て言った。
■おやじ To:ALL |
……あんた達、面倒ごとは御免だよ。 適当に空いてる席に座んな。 |
■ウリディケ To:おやじ |
……あのテーブルに座るわよ ところでソロンを探してるの、いつ来るの? |
■おやじ To:ALL |
ああ、あいつか。 あいつなら、来るのは夕方になってからだ。 言っておくが、俺はあいつの素性はよく知らんぞ。 ……この街じゃ他人の詮索をしすぎる奴は長生き出来ないんでね。 |
おやじの返答を聞き、打ち合わせどおり二組に別れ離れた席に腰かけた。
(ウリディケ・カロン・ファラハ組とエルステッド・ノーブ・メイシアス組)
しばらくしてからアールが入ってきた。
いつもの口元まで隠した状態にフードをかぶり、みすぼらしいとかとは、違った意味で目立つ気がする。
視線だけ動かし、店の中を見渡して…ウリディケらには目を留めずにおやじの方を向いて、彼らの隣のテーブルを杖で指す。
■アール To:おやじ |
酒をふたつ…食い物をなにかくれ…。 |
■おやじ To:アール |
ああ、ちょっと待ってろ。 |
そう言うと、おやじは厨房へ向けて大声でエールと料理を持ってくるように言った。
■ウリディケ To:おやじ |
こっちにも、つまみと食い物持ってきて。 あと、少し遊んでくから、賽コロと木のコップ、それとピッチャーで薄荷(ミント)水。 |
ウリディケの注文に応えて、おやじは厨房に引っ込んでいった。
暫くして戻ってくると、ウリディケとアールの元に注文の品を持ってきた。
それから暫く時間は経って夕方になった頃、店も徐々に客が増えてきた。
怪しまれないように視線を隠しながら、入ってくる客を見定めているうちにその中に目的のソロンらしい人物が店にやって来て、カウンターに座って言った。
■ソロン? To:おやじ |
おやじ、エールといつものを頼む。 |
おやじは無言でそれに答えてエールとシチューらしきものをソロンらしき男の前に置いた。
アールがカウンターに移る。
■アール To:おやじ |
おやじ、同じのを頼む。 |
視線を向けずに隣のソロン?に小声で話し掛ける。
■アール To:ソロン? |
…あんた、ソロンさんかい?俺は若旦那の使いなんだけどよ… |
■ソロン To:アール |
ああ、そうだが……。 一体何の用だ? |
■カロン To:心の中 |
(奴がソロンか・・・) |
ソロンは黒い外套を羽織っていて、今は顔だけを出している形だ。
見える範囲で顔を見ても、特に目立った特徴があるようには見えない。
ただ、日に当たることが少ないのか、肌が全く日に焼けておらず、不健康なまでに白かった。
■ウリディケ To:カロン、ファラハ |
どうやら、現れたみたいですね。 ファラハさんとカロンさんと私の内の誰か2人で店の外に待ち伏せしてみるのはどうでしょう? もちろん、店の中で問題が生じたら「追い立て」ないといけないので、誰か一人は店の中に残らなければいけませんが。 …… もちろん、裏口から逃げるようなことがあれば、笛なり声なりで知らせる必要もあるでしょう。 |
■ファラハ To:ウリディケ |
それは構いません。 でも、もう少しアールさんの様子を見てからでも良くありませんか? |
■カロン To:ALL |
う〜ん、俺が外にいようか。ここの窓際の席なら魔法を使って連絡がとれるし、尾行するときにも都合がいいしね。 |
■ウリディケ To:カロン、ファラハ |
そうね、おねがいします。 でも、アールが上手くやってくれれば、ゆっくり跡を追うだけで良くなるのも事実ですね。…… カロンさん、一人で店の外に潜伏して頂けないかしら? 数秒ソロンを足止めできれば良いし、上手く行ってるようなら捕まえずに尾行して欲しいのですが。 |
■カロン To:ウリディケ&ファラハ |
了解、動きがあったら声を掛けてくれ。 あと俺一人だと何だしできればメイシアスさんを時間をおいて外に出るよう合図しておいてくれない? 外に二人いればなにかあった時、足止めもうまくいく可能性も増えるしね。 |
カロンは返事を返したあとガメル銀貨を数枚置き、立ち店の外へと向かっていった。
外に出てウリディケ達がいる席近くの窓際で待機し精霊魔法のウインドボイスを詠唱をした。
■カロン To:ウリディケ&ファラハ |
こっちの準備はOKだよ。 |
■ウリディケ To:カロン |
こちらも、聞こえますわ ところで、メイシアス達は窓3つ向こうの席ですから、外から合図を送った方が確実ですわ。 |
カロンは言われた通り外から合図を送ると、メイシアスからも音で返答があった。
窓の隙間から外に出るよう指で示すと、メイシアスも銀貨をカウンターに置いて外に出てきた。
店の外で合流すると、二人で身を隠す。
■カロン To:独り言 |
あとはソロンが動くのを待つだけか・・・。 |
■アール To:ソロン |
…若旦那の使いと言ったろ。ネルドだよ。なんか知らんが“アレ”をもう一回頼みたいそうだ。急ぎだって言われて、わざわざ使いで来たのさ… |
■ソロン To:アール |
ふーん。 それで、アンタが本当にネルド若旦那の使いって証明できるのかな? 若旦那の取り巻きにしては、普段見ない顔だがねぇ……。 |
■アール To:ソロン |
そりゃそうさ。あんた知らないだろ? …若旦那は怪我しておねんねしてるのさ。(身振りを交えて)おっきな獣に襲われたみたいで、こう「グワーッ」とね。しばらく顔見ないのはそーいうわけさ。俺はたまたま通りがかって快方したってんで、いろいろと、まぁ、ね。 |
声のトーンを変えながら、お調子者を装いソロンに説明してやる。
ソロンは「ふーん」と呟いた。
しかし、獣云々の話に興味を持っているような感じである。
■アール To:ソロン |
で、“アレ”だけど、詳しく聞かなかったけど、なんか「女に使ったら、店にでてこなくなった」とかで、効き目があったみたいだから、「他にも使ってみたい」ってワケさ。 そこで、あんたら取り巻きと連絡つけるには、俺みたいの出番ってことで。 店の人間をこんなとこにはやれないだろう(笑) |
ことさら笑顔をつくりソロンに媚を売っていると、「こんなとこ」に反応して睨むおやじの不機嫌顔が目に入り、愛想を返して、ごまかす。
■ソロン To:アール |
そうかそうか。 だがなぁ……”アレ”は今手持ちがないんだ。 若旦那には悪いんだが、明日またこの時間にこの場所で引き渡す、ってのは駄目かね? |
■アール To:ソロン |
いや、俺はいいんだが…なんか明日にも帰っちまう客に一服盛りたいんだとよ。 それで急ぎで俺がここに来たのさ。なんせ、昼から待ってたんだぜ!おやじに聞いてみてくれよ。 まったく、ネルドの若旦那ときたらあんたのことも「見ればわかる」みたいな言い方しかしないし…。 なぁ、頼むよ手ぶらじゃ帰りにくくてさ、わかるだろ? |
ふところのあたりで“金”を指す形を指でつくる。
■アール To:ソロン |
それに、よくわからないけどあんたもまんざらじゃ無さそうだし、どんな薬か教えてくれないか? 結局、若旦那にもわからなかったみたいだしな。まあ秘密なら聞かないけどよ。 その薬が「もうかる話」ってのなら、一口乗りたいのは誰でもいっしょだろ? |
■ソロン To:アール |
……まあ、ここじゃ難だ。 外に出て話さないか? それで、旦那は幾ら出すって言ってる? |
ソロンは”金”に反応した様で、少し乗り気になって居る様だ。
(かかった…か?)
「じゃあ…」、とおやじに2人分の支払をすると、先に席を立つ。
もちろん、ソロンにアピールするため、わざわざ金貨で支払ってみせる。
■アール To:ソロン |
若旦那からは「酒代だ」って、これしか預かってきてないんだ。 とりあえず、外に出ようか。 |
■ソロン To:アール |
ああ、分かった。 おやじ、勘定だ。 |
ソロンはそう言うと、数ガメル分の銀貨をカウンターに置いて立ち上がり、店の外に出て行った。
それを受けて、ファラハや冒険者の仲間達も尾行を始めるべくカロン達に連絡をいれ合図を待って店の外に出た。
■アール To:ソロン |
さっきも言ったけど、薬の内容もわからないのに頼むくらいだから、よっぽどアンタの腕を信用してるんじゃないのか? 薬まで盛ろうなんて“かけひき”するくらいだから悪い金額じゃないと思うぜ。 それに金額を聞いてたら、俺が適当なブツを準備して、いただいちまってるかも知れないだろ?(笑)おこぼれでいいから、頼むぜ。 |
■ソロン To:アール |
……まあ、良いだろう。 付いてきな。 |