マーファ神殿 |
冒険者達は詰め所を出ると、一旦アンナ宅の現場検証に同行した。
しかし、特に証拠となるようなものは出なかった。
問題の風呂敷も調べてみたが、魔法の反応は出なかった。
ウリディケは、アンナの両親にこれまでの経緯を説明し、これまでの非礼を詫び事件の解決に全力を尽くすと告げた。
そして、後の調査は衛視隊に任せ、冒険者達はマーファ神殿に赴いた。
神殿では、ネルドを問い詰めると、最初は頑なに証言を拒んでいたが、やがて、もう逃れられないと思ったのか、ぼそぼそと証言を始めた。
要約すると、次の通りである。
・アンナに奉公人の前で振られたことを恨みに思っていた。
・酒場で仲間に話すと、翌日小瓶を渡され、「これで憎い奴を辱められる」と言われた。
・それを聞いて、買ってきたお菓子に小瓶の中身を振りかけて、アンナに渡した。
・その夜、アンナの家近くで薬の効果がどうなったか見るために見ていると、アンナが外に出てきて、目の前で変身してしまった。
・恐ろしくなって逃げ出そうしたときに、後ろから襲いかかられた。
・後はここに担ぎ込まれて治療を受けていた。自分が原因なので、ばれるのが怖くて言い出せなかった。
ここまで証言すると、ネルドは俯いてしまった。
■ウリディケ To:ネルド |
なるほど、 では、貴方があまり厳しい刑罰にならないよう衛視隊に交渉してみますので、まず弁護する為の「明るい材料」を提供して下さい。 小瓶をくれた仲間の名前と、その人の居場所を教えて下さい。あと、受け取った酒場の名前と場所も。 |
ネルドから聞き出そうという意図は理解できたが、あまりに身勝手な理由に内心治まらない者もいる。
穏やかな表情でネルドに接するウリディケに対し、アールは怒りの表情を隠さずに質問に割り込んでいく。
■アール To:ウリディケ>ネルド |
「明るい材料」…ね。 俺が気になるのは、あなたがわざわざ夜まで「アンナを見張ってた」ってところなんだけどな。 どういう薬って聞いたのか、もう一度だけ聞かせてもらいたいね。 あと、「どうやって入手したのか」を聞いたのかどうか…もね。 今更、嘘やムダに隠さないとは思うけど、正直に答えてくれ。 |
■エルステッド To:ネルド |
嘘は常に見破られるものとして話すのが懸命だな。 古代の力の前には、浅はかな嘘なぞ薄っぺらいものに等しい。 |
そういいつつ、メイジスタッフをちらりと見せる。
■カロン To:アール>ネルド |
まあ、アールさんの言いたいこともわかるけどさ、先に必要なことを聞かない?その仲間から小瓶渡されてから数日経ってるし少しでも早く行動しないと。 ネルドさん、繰り返しになりますが、もう一度訊きますよ。 小瓶をくれた仲間の名前と居場所、受け取った酒場の名前と場所について、あとは小瓶ですが残っているのなら譲っていただけないですか? (あとで薬を調べる時に役に立つかもしれないし・・・。) |
■ネルド To:ALL |
酒場は”常闇通り”の「袋の鼠」亭って所で、くれた奴はソロン、って名乗ってる。 瓶はもう捨ててしまって、残っていない……。 |
■カロン To:ALL |
「袋の鼠」亭か、少し前に聞いたことよ。 場所の方も大体わかるけど、ソロンって奴については誰か知らない? |
と、同じ盗賊仲間のアール・ウリディケ・メイシアスへと確認する。
そんなカロンを見て、ウリディケは頭を横に振って「知らない」事を示した。
加えて、盗賊の符丁で「ギルド外部」「かも?」と感想を伝える。
カロンをちらっと見ただけで、アールは「知らない」と、振りで返した。
■メイシアス To:カロン |
ん〜私も記憶にないです。 |
メイシアスは眉間にあててた指を外し、申し訳なさそうに答えた。
そんな皆の様子を見てカロンは自身の意見をこぼした。
■カロン To:ALL |
みんな知らないってことはやっぱり余所者なのかな・・・?。 |
■ノーブ To:ネルド |
ところで、その狼に変身する薬を渡した人物は、渡す時にどんな効果を言ったのじゃ? 毒薬か? はたまた惚れ薬かのぅ? |
■ネルド To:ノーブ&ALL |
いや、単に「これで憎い奴を痛い目に遭わせられるぜ」としか聞いていない。 ちょっとした嫌がらせのつもりだったんだが……ああいった効果とは思ってもいなかった。 |
自分自身が「袋の鼠」になってしまったようにネルドは冒険者達の様子をうかがいながら、淡々と話した。
「どこまで」を考えて行動したのか、その様子では推し量れない。
■アール To:ネルド |
あとは、あなたとソロンの付き合いはどのくらいなんだ? あなたの知っている限りの素性を話してくれ。 もう分かったと思うが、「そんな薬」を普通のごろつきに入手できるとは思えないだろう? もっとも「知らない」とか、“そのていど”の付き合いの人間からもらったものを信用して使った…というなら、別だが… |
■ネルド To:アール&ALL |
ソロンってのはこの所暫く一緒に飲んでいた位の付き合いだよ。 まあ……”悪い遊び”を一緒にしたり……な。 俺も、半分冗談だろうとは思っていたさ。 単なるチンピラみたいなのが、そんな薬を持っている訳はないしな……。 俺はせいぜい下剤くらいだろうと多寡を括っていたんだよ。 |
■ウリディケ To:ネルド |
(……やっぱり、その程度の付き合いなんですね。) それでは、「袋の鼠」亭に行ってソロンさんという方に会いに行きましょう。 ネルドさん、ソロンさんという方は、何時行けば会えるのですか? |
■アール To:ネルド |
それと、彼:ソロンはどんな背格好かな? 絶えず身に付けているモノとか刺青とか、目印になるような特徴があれば教えてくれ。 |
■ネルド To:アール&ALL |
特にこれと言った特徴はないが……。いつも店には夕方に現れる事と、来るときに長めの黒い外套を身につけている事くらいだな。 殆ど毎日のように店にやってきては食事をしているようだな。 |
■カロン To:ネルド |
それを知ってるってことはその酒場によく行ってたってこと? |
■ネルド To:カロン&ALL |
毎日って訳じゃないが……。 2,3日にいっぺんって所だったな。 |
(考えてみれば、薬=毒とあたりまえに考えるのは自分たちが「裏」の人間だからか。)
「ネルドが悪さをした」といっても、うかつに「表」から「裏」に足を踏み入れてしまったコトであって、彼自身の行為はそれ以上咎められるべきでないかもしれない。
穏やかな表情に作り直して微笑む。
■アール To:ネルド&ファラハ |
そうそう、“悪い遊び”をやめて真面目になるって約束するなら…きっと、あそこの偉い人が寛大な処置をしてくださるだろうよ。 |
しかし、司法取引に失敗したウリディケは、アールの言葉に反応して、つい思ったことを洩らしてしまう。
■ウリディケ To:ネルド、ALL |
どうかしら? これだけの騒動をおこして、無事で済むはずも無いわ。 『感染する』『魔法の』『毒』なんて使っておいて、犯人の手掛かりがこれだけなんて……『死刑』は確定ですね、弁護の余地もありませんわ。 幸運をお祈りしています、それでは、ごきげんよう。 |
ウリディケはネルドに軽く会釈すると、椅子から立ちあがった。
■ネルド To:ウリディケ&ALL |
な……そんな、俺の知っている事は全て話した。 これ以上話せる事は何もない……。 信じてくれ……。 |
■ファラハ To:ネルド |
とりあえず、そのソロンという人物を確保して裏を取るまであなたを勾留します。 ソロンの証言や背後によってはあなたの処遇は悪くなることもあるでしょう。 |
ファラハがそう言い放つと、ネルドはがくりとうなだれた。
今頃になって、自分のやったことがかなり大きな事件になってしまった事を認識しているようだ。
■ウリディケ To:ネルド |
話は疑ってません、ソロンという人さえ捕まれば何とかなるでしょう。 折角ですから、捕まるよう一生懸命信仰する神様に祈って下さい。 『一生、女断ち』ぐらい約束すれば、きっとご利益もありますわ。 |
■アール To:ネルド |
ソロンが逃げていないことを…祈ることだね。 (それにしても、ウリディケの変わり身の速さ…さすがだな) |
■ノーブ To:ネルド |
ところでソロンはどんな身なりや格好をしておるのじゃ? せめて人相書きぐらい協力してもらえんかのぅ? |
■ネルド To:ノーブ |
いや……すまんが、俺は絵が描けない。 子供の落書きのような絵を書いても意味はないだろう? 何でも協力したいのは山々なのだが……こればかりはどうしようもない。 済まない。 |
ネルドからの事情聴取がある程度終わった頃、ファラハが言った。
■ファラハ To:ALL |
さて、皆さん。私達は早くそのソロンという人物に接触しましょう。 もしくは店に赴いて、彼のねぐらを探るのも手と思います。 |
■カロン To:ファラハ>ALL |
そうだね、ソロンって奴がまだ同じ薬を所持してる可能性もあるし早めに動かないと ・・・問題は酒場以外の居所が不明ってことか、どうする分かれて店とギルドに確認を取りに行った方がいいかな? |
■ウリディケ To:カロン |
報告通りなら、不要ですわ。 後、ここでは、こっちを使って…………。 |
ウリディケは表情を曇らせると、
盗賊の符丁で、「人前」「盗賊ギルド」「話す」「危険」「用心」「不足」と付け加えた。
怒ってると言うより、心配してる雰囲気だ。
それに気付きカロンは心配させてすまないと符丁を返した。さすがに気になったので、アールが手で制して割り込む。
■アール To:ウリディケ、カロン |
別にモグリじゃないから、そこまで隠さなくてもいいでしょう。 隠してもファラハさん達が不審に思うだけですよ。 行動することは普通に口に出していいんじゃないかな。 |
■ウリディケ To:アール |
……ファラハさんだけなら、その通りね。 ……後で「密告者」って言われないように。 |
■アール To:ウリディケ、カロン |
そんなヘマはしないよ。あと、個人が特定できたのなら、情報も変わってくるだろうし。 素性を聞くだけなら、そう金も時間もかからないだろうから、行ってこようか? |
■カロン To:アール>ALL |
俺も常闇通りにある酒場なら人についての情報もあるんじゃないかなと思ってね。 それにソロンが内部の人なら居場所にも見当が付くだろうし、もし外部の人なら少しは調べてるんじゃないかな、特に常闇通りに毎日来てるならね。 |
■ウリディケ To:アール、カロン |
分かったわ、こちらも「引き伸ばし」はするから、間に合ってね。 |
■アール To:ファラハ>ウリディケ |
では目立たない服装で、酒場で合流ということで。 ウリディケさん、ノーブさんやエルステッドさんのコーディネイトよろしく。 エルステッドさんは目立つのしょうがないから、「みすぼらしく」頼むよ。(笑) |
■カロン To:アール |
まあ、ファラハさんとウリディケさん以外は別にいいんじゃない?? 衛視や神官が常闇通りにいるのは違和感あるけど冒険者ならそう問題ないと思うけどな。 |
■ウリディケ To:カロン、ALL |
いえ、相手は”常闇通り”、やれることはやっておきましょう。 特に、ノーブさんとエルステッドさんは、今のままでは完全に余所者ね。 もちろん、私も相応の姿になるつもりよ。 |
ウリディケはそう言うと、背負い袋の中から使い込まれたマントを出した。
これを着込めば、いわゆる「あやしいフードを被った者」になれそうだ。
カロンはそれを見て納得いったように頷きながら答える。
■カロン To:ALL |
それもそっか、ならコーディネイトはウリディケさんに任せるよ。 俺はアールさんのために店までの地図書いておくかな。(カキカキ) |