#149 月夜に吠える

6-2a オラン下町、対峙

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オラン下町・裏通り
冒険者達はメイシアスを先頭に、オランの下町を走る。
後方では、衛視隊の面々が集合しているのであろう足音が聞こえる。
程なくして、街の外壁が見えてきた。
行き所を無くした狼は――月光の下、冒険者達に対峙するように威嚇の唸り声を上げている。

ウリディケ達は、連携を取りながら『最後の詰め方』を確認する。
一足で踏み込み一撃を見舞える程の距離まで近づいたところで、ウリディケはナナイから降りるとメイシアスの前に立ち「白雪色の大剣」を構えた。

「万事は尽くした」…ウリディケはそう思っていた。
この一瞬で狼の動きを止められなければ、……次は殺すつもりの一撃を振るわなければならないだろう。
アンナ……自分とそう変わらない歳の少女、名前や両親の顔も知ってしまった。

しかし……、

それでも躊躇なく殺せるだろう、……以前黒衣のミノタウロスを貫いた時のように。
そして、それ以前に数多くの「任務」の中で行ってきたように。
ウリディケにとって、そんな自分がとても恐ろしかった。『獣』ですら無い『殺戮の人形』である自分が……。

後ろから見ていたアールには、それが「感傷的になっている」ように見えたのか。
■アール To:ウリディケ
余計な感傷は、剣が鈍るんじゃない?
そこまで余裕があるなら安心だけどね。

ウリディケを励ましているのか―実際には感傷ではないのだろうが―それとも自分に何か言い聞かせたいのだろうか。
杖を握る手が汗ばんでいく中で、自分にできることを頭に思い浮かべる。
そして、他の人間がどのように対処するか、信頼できるのか、不安と戦いながら目を細め、呪文を唱えるための集中を始める…。
■エルステッド To:ノーム
被害は最小限にとどめるもの。友よ…力を貸してくれるか?

先に使役したノームに語りかける。
普段のオラン市街ならばノームの力を借りる事はできないが、近しき友となっていれば容易な事となる。
■エルステッド To:
邪なる獣、我が友の力によりその場より動くこと叶わず

エルステッドが精霊語を唱えると、支配していたノームの力によって狼を大地に――石畳ではあるが――縫い止める事が出来た。
急に脚を取られた狼は低い唸り声をあげている。
■アール To:
「彼の敵を眠りへ誘え雲よ!」

移動を阻まれた狼に、眠りの雲を避ける術はない。
しかし、アールの上位古代語は狼の抵抗力の前に効果を発揮できなかった。

他のメンバーは、ホールドが成功した事が分かると行動を取りやめた。
事実上、戦闘は終結したと考えて良いだろう。
呪文が効果を発揮しなければ、魔力付与の共通語魔法を紡ぐ予定だったカロンは、その様子を確認すると、コモンルーンの指輪を嵌めた方の腕を下ろし、戦場の張り詰めた空気を打破して最初に口を開いた。
■カロン To:エルステッド>ノーブ
ふう、さすがエルスさんだね。これで少しの間、狼を押さえておけるよ。

ノーブさん、今のうちに精神力賦与の魔法をエルスさんにお願い。

エルステッドとノーブへ声をかけた後、カロンは狼の容姿を見渡しワーウルフかどうかを確認した。
狼の体長等から判断するに、カロンにはこれが間違いなくワーウルフである事が判った。
■ノーブ To:カロン
サポートに廻るつもりではあったが、さすがにエルフの御仁の魔力とはすごいものじゃのう。
ワシの出番はなかったがこれぐらいはさせてもらうのじゃ。

ノーブがエルステッドの脇に移動し、精神力賦与の奇跡を行なおうとした。
相手がドワーフという事もあり、一瞬びくっとしたものの……自分にも、パーティーにも必要な事である事には変わりないので、おとなしくノーブに触られるエルステッド。
奇跡の効果で、エルステッドは気力が充足していくのを感じる。

そうしてる間にも、
■ウリディケ To:
どうやら、無傷ですんだみたいね。

■メイシアス To:ウリディケ
ほんと、良かったです。

残ったメイシアスとウリディケで手際良く狼を綱に絡めてゆく。
プロの盗賊や野伏の技術は、瞬く間に狼を確実に縛り上げていった。

現場もすっかり落ちつくと、エルステッドが問題を切り出した。
■エルステッド To:ALL
さて…無事捕獲したが。かの狼が今回の原因かどうか……どう調べたものかな。

使役したノームの様子を見つつ、狼を見る。
■カロン To:ALL
たしかに、被害者の人に確認してもらっても確実とは言えないしね。

■エルステッド To:ALL
衛視の詰め所に連れて行くか?
……即刻首を切られぬが良いがな。

エルステッドの脳裏に浮かぶは、先ほどの夫婦か。
■ウリディケ To:エルステッド
現状では、有り得ないわ。
どうしてアンナが感染したのか、原因が解からないもの。

■アール To:エルステッド
生きた証拠だからね、ファラハさんもそこまで短慮なことはしないと思うよ。

■ウリディケ To:ALL
……
そうね、でも、
問題の先送りはいけないわね。エルステッドの言うとおり、今後の事も考えておかないと。
私は衛視隊をもう少し信用しても良いと思うけど……どうかしら?

ウリディケは、死戦場に赴く兵士のような深刻さと、新たな戦場にありつけた傭兵のような陽気さを、ない交ぜにしたような表情を浮べる。

結局、ウリディケは事象の「確率」を問題にしてるだけで、最も「信用」していないのかも知れない。
■アール To:ウリディケ
どんな形であれ、「あの娘」が両親の元へ生きて返れるように…してあげたいと思う。
それに、他の「狼」の可能性が無くなったわけではないし、まだやらなくちゃいけないことが多いようだね。

感染源のことにしても、あの夫婦が関係ないという証拠がある訳でもない。
何がどうなるかも、全く予断を許さない状況のままだ。
やっと、手掛かりを掴んだに過ぎない。

アールの台詞をおとなしく聞いていたウリディケだったが、
精霊を見ることができる者が見れば、
『一瞬ウリディケの肩に戦乙女がまとわり付いているような気がした』
かの様な、冷たいオーラが見えたかも知れない。
■カロン To:アール>ALL
たぶん衛視隊に渡して治療の見込みが無ければ両親の元には戻してあげられないと思うよ。

ひとまずどうするかだけ衛視隊の人達が来るまでに決めておかないとね。
ファラハさんは治療の見込みがあるなら支援するとは言ってたけど上から命令があれば従うしかないと思うし・・・。

■エルステッド To:ALL
我々の依頼内容の中に「原因究明」も入っているのならば、すぐさま首を切られるという事については意義を唱えられる、という事か。
次なる我々の仕事は「どうして彼女が狼になったのか?」の原因究明となるのだろうな。
ファラハ殿が先ほど鳴子にて呼んだ衛視達もそろそろ集まってくる頃だろう。
場所を衛視達の詰め所へと移動し、今後の策を練るのが…一番か?

■カロン To:エルステッド
そうだね、依頼内容は犯人を突き止めて再発を防止ってことだから「原因究明」ってことでなんとかなるかな。

■ウリディケ To:エルステッド、ALL
そうね、
ほかに異論が出なければ、私はそれで賛成よ。……まだ大丈夫だと思うから。

■メイシアス To:ALL
このままにしておくわけにもいきませんし…ひとまずファラハさんに預けましょう。
貴重な証人になるかもですし…無下に扱わないようにお願いして…
できれば、ご両親と…娘さんとお話してみたいですし…
ん〜まずは詰め所で作戦会議ですね…

■アール To:ウリディケ
あと、まだ夜が明けるまで、十分時間があるから詰め所で休息も取るとしようか。
彼女が人間の姿に…戻るとして、それまでの記憶やなにか…事件のあらましも…

■ノーブ To:ALL
メイ殿の意見は賛成じゃ儂は娘さんが何時何処で感染するのか?をどうしても知りたいのじゃ。
まあ事情聴取は朝日が来るのを待って作戦会議は道端にするのもなんじゃし詰め所に戻るのじゃ!

■カロン To:ALL
まあ、もしものことを考えてほしかっただけだからみんな同意見ならいいか。
ロープの絞め具合だけ確認してから行こう。

冒険者がそう相談していたとき、衛視隊を引き連れてファラハが到着した。
ファラハは縛られた狼を見て状況を把握したようだ。
■ファラハ To:ALL
皆さん……ご苦労様でした。
とりあえず、狼は衛視隊で一旦預かります。
念のため、マーファ神殿にも連絡して神官を派遣して貰います。
もしかしたら、治る見込みがあるかも知れませんから。
少なくとも、いきなり殺してしまうような事はしませんので安心してください。
とりあえず、皆さん詰め所に戻られて一休みしてください。

ノーブは、ファラハの不殺宣言を聞きほっとした安堵した表情を見せた。そしてファラハに事情聴取のお伺いをたててみた。
■ノーブ To:ファラハ
あのう、宜しければ朝になって狼から戻ったら、娘さんの事情聴取する事はできるのじゃろうか?
それとこの依頼の件の内容なんじゃが、この件が達成する条件には犯人(狼)捕獲と感染源を探す事のどちらを重点に置くのじゃろうか?

■ファラハ To:ノーブ&ALL
今のところは、原因である実行犯の確保と言うところで一段落です。
これから原因の調査を始めることになりますが、月が沈まぬ事には話を聞くことも出来ません。
少なくとも明日の朝までは、この後の方針を決めるのは保留になりそうです。
それは、今この場所で話す事では無いでしょう。
一旦詰め所に戻ってからでも遅くは無いと思います。

■ウリディケ To:ファラハ
ところで、あの御夫婦…アンナさんのご両親と言うべきかしら…は今どちらにいらっしゃいますか?

■ファラハ To:ウリディケ&ALL
衛視隊詰め所の方に来て貰っています。
詳しく事情も聞かないといけませんし……。


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GM:teshima