オラン下町・事件現場周辺 |
冒険者達は再び事件現場周辺を訪れた。
先ほどより高く昇った月が街を照らしている。
人通りは全くなく、少々寂しい感じがする。
カロンは通りを見渡しながらみんなに声をかけた。
■カロン To:ALL |
さっき見回りした時よりも人通りが減ってるね。 時間ってのもあるけどやっぱり事件の影響もあるのかな? |
■ウリディケ To:カロン、ALL |
そうでしょうね、とは言え…女性や子供でこの時間に出歩いてたら、同業者か同業者ね。 |
何の職業か?を伏せたら、同じ言葉が並んでしまう。
本当なら「娼婦か盗賊か冒険者」と3つ続けるつもりだったところ、伏せたら意味が無いことに気付き「途中で」口に出すのを止めた為だ。
しかも、言ったウリディケがウケてしまい、クスクス笑い始める。
ウリディケの明るい感情が影響したのだろうか?、白馬ナナイも心なしか足取りが軽くなった気がする。
■ファラハ To:ALL |
それで、これからどうされますか? だいぶ夜も更けてきましたし、人狼が現れるのはおそらくこれからの可能性が高いですが……。 |
■アール To:メイシアス>ALL |
そろそろ予定通り、囮作戦の配置で行動といきますか。 |
■カロン To:アール>ALL |
そうだね、ファラハさんが言うように時間もよさそうだし。 先ほどと同じでメイシアスさんが先行して、後は後方から付いていけばいいか? |
■メイシアス To:ALL |
では…すみません。たいまつお借りします。 コースは先程回った感じですね♪ では、行ってきます! |
メイシアスはたいまつを受け取り歩き出した。
30〜40mほどの間隔を空けて、後からの組が歩き出す。
暫く歩いた所で、少し遠く(100m位と思って下さい)から悲鳴らしき声が聞こえた。
少しはっきりと聞こえなかった事から、おそらく屋内で発せられたものと思われる。それを聞きとめたメイシアスは、たいまつを振りながら―異常を知らせつつ―悲鳴の上がったと思われる方向へ足を向ける。
■アール To:メイシアス以外のALL |
今、なにか聞こえたよ? もしかしたら「狼さん」かもしれないけど、どうする? メイシアスには方向も把握できたみたいだから、私は後に続くよ。 |
■カロン To:アール>ALL |
あれは悲鳴みたいだったよ、ひとまず確認しないと!! みんな足元にだけ気をつけて。 |
■エルステッド To:アール |
悲鳴、だろうな。急ごう。 |
話ながら、他の意見を聞くよりもアールとエルステッド、カロンは走りだしてしまった。
今までもそうだったが、このPT、魔法使いの面々は案外考えるよりも先に体が動いてしまうタイプのようだ……。と思ってみたりもしたが、それは杞憂だったようだ。
飛び出して見えたのは、あくまでアール達の反応速度が速かっただけで、ウリディケとノーブを乗せたナナイが、馬ならではの脚の早さを活かしてアールの横を通りすぎていった。
ファラハも冒険者達の後を追いかける。
念のために帯剣の柄に手を掛けながら。
■ノーブ To:ウリディケ |
ウ、ウリディゲ殿もっとゆっくりお願いしますじゃ |
ノーブはあまりの速さで舌をかんでしまったそして振り落とされるのを必死の形相で懸命にこらえている。
■ウリディケ To:ノーブ |
心配しなくても、「まだ」落ちたりしないわよ♪ それより、私が手綱を持ってる間に、銀の斧を構えた方がよろしくてよ。 |
などと言ってる間に目的地に着いてしまう。
そこは普通の民家だった。
玄関の扉は開け放たれていて、そこから中を覗くと、40歳前後に見える女性が放心状態で座り込んでいた。
その傍らには、これも同じく40歳前後に見える男性が倒れている。
上着が大型の獣の爪で切り裂かれた様に見えて、その傷跡から出血している。
なお、周囲には狼の気配は無いように思える。
ノーブはナナイに降りて銀製の手斧を手に持ってさっと身構えた。
第一陣が到着して直ぐ、エルステッドも現場に着いた。
全力で走ったからか、やや息が乱れているようだ。
■エルステッド To:ALL |
大丈夫か……? |
ざっと家の周囲を見、倒れている男性の様子を診ようとしゃがむ。
家の中は特に荒らされた様な様子はない。
家は三部屋に分かれているようで、二人が倒れている居間兼台所の左手に扉が二つ付いている。
手前側の部屋の扉が開いていて、男性はその近くに倒れている。
ついで、アール、カロンも玄関の前に到着し周りを見渡しつつ男性の様子を見ているエルステッドへ声をかけた。
■カロン To:エルステッド |
エルスさん、その人はまだ息はありますか? 重症だったらウリディケさんに治癒魔法かけてもらわないと。 |
■エルステッド To:カロン |
致命的ではなかろう。今なら治癒も間に合うと思う。 |
■ウリディケ To:カロン |
怪我は任せて。 誰か奥さまの様子も見て。ついでに犯人の逃げた先も聞いて。 |
矢継ぎ早に台詞を吐き素早くナナイから降りると、ウリディケは銀の聖印を構え、倒れた男に向けて治癒の祝詞を唱えた。
■ウリディケ To:ラーダ |
「おねがい、かみさま。おじさんのけがを、いやして。」(神聖語) |
ウリディケの奇跡は効果を発揮し、男の怪我はみるみるうちに塞がっていった。
男性の傷について心配がなくなり、エルステッドは女性の方へと近づいた。
■エルステッド To:女性 |
突然失礼いたします。私たちはオランの衛視隊より依頼され、この近辺を警邏している冒険者です。 悲鳴が聞こえたので駆けつけたのですが……男性……旦那さんでしょうか? 大丈夫。仲間が傷を癒しましたので大事には至らないでしょう。 ……お話を伺ってもよろしいでしょうか? |
放心している女性を労わるかのように、エルステッドはなるべくソフトに聞こうとしている。
ちらりとアールに目配せすると、女性の視界に手斧を構えたノーブが入っている。それを受けて、アールが武器を下ろすようにノーブを制した。
「狼」の気配を察知しようと集中していたノーブは、危険でないと判断したのかその合図に従う。
遅れてメイシアスも室内に入る。
カロンは女性の様子を見て、ウリディケへ静心の呪文をお願いした。
■カロン To:ウリディケ>ALL |
ウリディケさん、余裕があれば奥さんにも魔法の方をお願いします。 俺は扉が開いてる部屋の様子を見てくるよ。 |
■ウリディケ To:カロン>ALL |
旦那さまの手当てをしてるのに、余裕なんて無いわよ。どうしてノーブさんじゃ駄目なのよ〜? ……て、私の方が疲れないからでしたね。 分かったわ、奥さまの方は私に任せて、旦那さまの方は誰かお願い。 |
■メイシアス To:ウリディケ |
お疲れ様です。私が代わりますので奥さんをお願いします。 |
メイシアスはウリディケの横に屈み作業を引き継ぐ。
そして、旦那を介抱しながら周囲に散る血痕に目を向けた。
更にその隣りで、ノーブは倒れた男の傷跡を注意深く見ている。男の傷跡は、これまでに見てきた被害者の傷とほぼ一致していた。
また、血痕はこの家の玄関へ続いており、その先は通りに出ているようだ。
血痕を確認したメイシアスは男の手当て等を手早く済ませ、入り口までソレを追う。
■アール To:カロン |
ひとりで行動して大丈夫か? 私もそちらに行くから、ちょっと待ってくれ。 |
ウリディケやアールの言葉を待つまでもなく、カロンは手前側の扉へ警戒しつつ移動し、部屋の様子を確認した。
部屋の中は、まるで何かが暴れたかのように荒れていて、床には女物の服らしきものが落ちている。
■カロン To:独り言 |
部屋が荒れてるな、犯人の仕業なのか? |
呟きつつ、床に落ちていた服と部屋の中を調べ始めた。
間をおかずにアールも室内を調べ始める。
ウリディケは、カロンが隣りの部屋の様子を見に行くまでの僅かな時間で、放心している女性と声をかけるエルステッドのところまで駆け寄ると、エルステッドに女性の様子を問うた。
■ウリディケ To:エルステッド |
奥さまの様子はどうなの、《静心》の祝詞は必要かしら? |
そこまでは必要がない…とエルステッドが言おうとした時に、その「奥様」はなんとか声を絞り出した。
■女性 To:ALL |
……わ、私は大丈夫です。 それよりも娘を……。 |
■ノーブ To:女性 |
奥さん娘さんがどうかしたのじゃ? |
■エルステッド To:ノーブ |
状況から見て、ナニモノカに連れ去られたか…… |
”ナニモノカになって出ていってしまったのか…”と、エルステッドは心の中で呟いた。
■女性 To:ALL |
娘が……狼になってしまって……。 部屋で物音がするから、この人が様子を見ようと扉を開けたとたん引っかかれて……。 そのまま玄関から飛び出していってしまいました……。 もう何がなにやら分かりません……。 |
ノーブは奥さんの発言を聞いてみてやっぱりなというような複雑な表情をしていた。
「狼」とゆう単語に反応し、メイシアスが玄関から戻ってきた。
■ノーブ To:女性 |
奥さん娘さんは最近、原因不明の発熱はした事があるのじゃ? もしくは旅行はした事があるのかのぅ? 宜しければ娘さんの最近の行動を詳しく教えてもらえんかのぅ? |
ノーブは真犯人が娘以外に他にもオランにいそうと油断なく注意深くあらゆる角度に吟味し真剣に考えていた。
しかし、ウリディケには”意図は解かる”が、今「正に進行中」の騒ぎの最中に、悠長に事情聴集を始めるノーブの「のん気」さ加減に、驚きを禁じえない。
野外に逃走中のオオカミ娘に新たな犯罪を犯されては、我々の立つ瀬が無い。
第一、こんな緊急時に「貴女の娘は、何時から犯罪者と知ってましたか?」なんて聞いて、もし黙秘を始められたらノーブはどう責任を取ってくれるのだろう……などとコミュニケーション能力の不足を怒っても仕方が無い。
ウリディケはエルステッドに倒れている男が感染してないか確認するよう依頼し、続いてノーブを横に除けると、この瞬間に必要な情報を問い直した。
■ウリディケ To:女性 |
奥さま、 それで『さらわれた』お嬢さまは、外に出てから、どちらに連れ去られましたか? できればさらわれたお嬢さまの歳と、さらった狼の大きさも教えて下さい。 |
それを問うウリディケの表情は、『貴女の娘が狼に化けたなどとは信じない』。
だから今は「真実など棚上げして」事実で捜査に協力してと語っていた。
■女性 To:ウリディケ |
玄関から左手の方に……。 娘は18歳で、狼の大きさは人間くらいの大きさです……。 |
■ウリディケ To:メイシアス |
メイシアスさん、狼は玄関の外、左手側に逃げたわ。 調べてみて。 |
■メイシアス To:女性>エルステッド |
んと、後1つ…よろしいでしょうか?…お嬢さんのお名前を教えて下さい。 すみません、エルステッドさん。ボーラをお一つ、貸して頂けますか? |
■女性 To:メイシアス |
娘の名はアンナ……です。 |
■エルステッド To:メイシアス |
一つでよいのか? 多少重いからな。投げる時は注意してくれ。 |
”重い”とはいっても、それはメイシアスとエルステッドの話。
他の冒険者ならば、軽々と投げられる重さである。しかし、筋力のないグラスランナーとエルフでは死活問題だ。
■メイシアス To:エルステッド、ウリディケ |
分りました!行ってきます!! |
メイシアスは急ぎ、入り口に置いていたたいまつを回収しようとしたとき。
■エルステッド To:メイシアス |
メイシアス殿、灯りならこちらを。 |
エルステッドから声がかかり、ライトのかかった小石が軽くほうりだされる。
それを受け止めたメイシアスは狼の追跡に入った。
血の足跡は勿論、狼が残した痕跡を探し周囲に気を張る。
その時、別室ではカロンとアールが、女物の服らしきものの鑑定を調べ終えていた。
服のサイズは大体身長が150cm〜160cmくらいで、成人女性の物であることが分かった。
また、部屋に外部から侵入した形跡は無く、中にいた人間が暴れた様な様相を呈している。
残された部屋の調度からは、この部屋の主が妙齢(15〜20歳)の女性であることが伺える。
その落ちている服は着用していた物が脱げた後に、何かで引っ掻いた様な跡が見えることが分かる。
ワーウルフの事を知っている冒険者達には、服を着たまま変身してしまい、服が脱げてしまって、変身した後に絡みついていた部分を無理に引き裂いたという状況だったのでは無いかと推測できた。
服…だったものと言うべきか、アールがつまみあげてカロンと皆のところに戻る。
■アール To:カロン>ALL |
見ての通り、どうやらサイアクのパターンみたいだな。 旦那さんの傷…「一応」神殿に連れて行った方が良いと思うけど…どうする? |
■カロン To:アール>ALL |
神殿に行く前に一応俺達で男性の傷を見ておいたほうがいいんじゃないかな? あと一応インフラビジョンで発熱の具合だけ確認だけはしておくよ。 |
「発病」という単語を考えながらも、これ以上奥さんを動揺させるわけにはいかないと思い、「神殿」と言い換える。
アールはなんとなく、マイクロフトの台詞を思い出していた。
「冒険者は、過去に起きた事実の解明のためではなく、困っている人の未来を守るために、雇われるんですよ」
「だから、この人達をかならず助けてみせるさ」と心に誓う。
ノーブはアールとカロンが持ってきた服を受け取り鑑定しつつ、奥さんの発言から総合的に考えて推測し、アールとカロンに小声で話し掛けた。
■ノーブ To:アール&カロン |
う〜む娘さんは本当に犯人なのじゃろうか? 今はもう時間がないのじゃがこの件が済んで、もう一度部屋に娘さんが何時頃狼さんに襲われる日時を書かれていた日記とか探して欲しいのじゃ。 |
■カロン To:ノーブ |
あとで詳しく調べるのは賛成だけど、それよりは夫婦に事情を聞いたほうが早そうだと思う・・・。 |
■アール To:ノーブ |
時間が許してくれるなら…ね。 |
男性の傷を確認しつつ、それぞれがノーブへ自分の考えを述べる。
■エルステッド To:ノーブ |
何事にも用意周到かつ用心深きお方。 今必要な事をするのが先決ではないのかな? |
エルステッドは、ノーブを冷たい目で見た。
その隣で男性を見ていたアールがエルの腰元の道具(ボーラ)に目をやる。
■アール To:エルステッド |
ところでエルさん、それ(ボーラ)を貸してもらえるかな? 残念ながら私の魔力では届きそうにないので…できることをやっておきたいんだ。 |
■エルステッド To:アール |
原因究明の為だからな。 |
先ほどのメイシアスへの貸与よりはやや冷たい反応。
パーティーを組んでいるとはいえ、やはり根底にあるのはハーフエルフへの思いなのか。
冒険者達の見立てでは、男性は外傷以外に特に目立った以上は見られない。
また、カロンには特に男性の精霊力が乱れているようには見えない。
■ウリディケ To:アール>ファラハ |
そうね、一応神殿で観ていただいた方が良さそうね。 ファラハさん、衛視隊の方に御夫婦を保護してもらえるよう連絡していただけますか? |
■ファラハ To:ウリディケ&ALL |
分かりました。 呼び子を使って衛視隊を呼びます。 その後、こちらのお二人を保護した後に私も皆さんの後を追いかけます。 皆さんは早く追いかけてください! |
■カロン To:ファラハ>ALL |
お二人の方はお願いします。 男性の方の傷痕に発熱の様子はないですが一応用心して下さい。あと、合流まで少しかかりそうなのでコモンルーンを貸しておいてもらえますか? |
ファラハの指示を聞き、カロンは返事を返した後に小声で怪我の見立てと注意を促し、ついでコモンルーンの貸与を要請した。
■ファラハ To:カロン>ALL |
それではこれをお渡ししておきます。 私は至急衛視隊を呼びますね。 |
ファラハは指に填めていた「エンチャント・ウェポン」のコモンルーンをカロンに渡すと、家の外に出て行った。
外で衛視隊を呼ぶ呼び子が鳴らされる。
高い呼び子の音が辺りに響き渡った。カロンはコモンルーンの指輪を指に嵌め皆に声をかけつつ玄関に向かって疾走した。
■カロン To:ALL |
みんな、ここはファラハさん達に任せて犯人を追おう。 |
カロンはコモンルーンの指輪を指に嵌めながら皆に声をかけ玄関に向かって疾走した。
程なくして、先行していたメイシアスに一行が追いついた。
■ウリディケ To:メイシアス |
メイシアスさん、何か手掛かりはあった? |
■メイシアス To:ウリディケ |
えと、何とか跡を追えそうです〜! |
メイシアスの呼びかけに答え、ウリディケも玄関を出ると白馬ナナイにまたがり、追跡するメイシアスを追った。
ノーブはウリディケが乗ったナナイの後を、メイシアスが狼を追う場所に向かって全速力で走リ出した。
残った3人もファラハに後を任せ、狼がいるであろう場所に全速で向かう。