馬車の中 |
トベルコを起こして、一行は夜にも関わらずパダ方面へ出発した。
アリエラの精神力をキルリックとニアリースの魔法で回復し、移動中にオルフェの呪歌で回復するという作戦だ。
馬車の御者台にはキルリックとミァが、馬車内にはロープで拘束されたトベルコと、ミリレスカ・リュント・ニアリース。
オルフェとアリエラは、同じく馬車の中で休憩している。
道を照らすのは、ミリスレスカがランタンに掛けたライトの魔法。
そのおかげで、夜にもかかわらず視界は良好である。
トベルコの頬をピチピチ叩きながら
■リュント To:トベルコ |
おらおら! そろそろ呪歌が利いて来て気が付いているんだろう!? キリキリ起きて、さっさと吐いちまいな! 楽になれるぜ〜〜 |
とてもフレンドリーにとは行かなさそう。
■トベルコ To: |
……うぅ。ここは……何処だ。 確か、街に居たはずで、聞こえてきた歌の歌い手を一目みたいという気になってふらふらと歩いて行ったはずだったんだが……。 |
冒険者達には、トベルコがまだ自分の置かれている状況を認識していない様に思える。
■リュント To:トベルコ |
ここは馬車の中さ。 今はエレミア方面に進んでいるところさ。 お前さんは捕獲されたんだよ、宝珠の行方を捜索している冒険者グループにな。 |
■トベルコ To:リュント |
ああ……もう追いつかれたのか。 私の手元にはもう宝珠は無いぞ。 とっくにどこかに持ち去られてるはずさ……。 |
トベルコは自虐的に笑うと、そういい捨てた。
■リュント To:トベルコ |
んな事はとうに承知の上だよ。 お前の元仲間クロークとラミルカが持ち逃げしたんだろう? 調べはとっくについているんだよ!! それでエレミアのどこに行って研究をし直すつもりだったんだ?? |
■トベルコ To:リュント |
はぁ? あの二人は何の関係もないんだが……。 ノヴェルとフォレスの間違いじゃないのか? ……エレミアには何かとコネがあるので、こっそりと裏町に隠れて研究をするつもりだったんだがな。 |
■リュント To:トベルコ |
何も知らないようだな・・・ この馬車はパダへ向けて行っているんだ。 お前が言うノヴェルとフォレスは、パダの隠れ家か何かへ向けて出発したらしい。 そこで相談だ。 罪滅ぼしに、俺らの質問には答えてくれないか? |
■トベルコ To:リュント |
ああ、もう失うものは無いからな……。 私も馬鹿なことをしてしまったものだ。 知っていることなら何でも答えるよ。 ……罪はちゃんと償うさ。 |
■リュント To:トベルコ |
二人組の人相を教えてくれないか? 俺らは顔を知らないんだよ。 それと些細な事でも良いから、パダで二人が立ち寄りそうなところ、行きそうなところの心当たりは無いか? |
■ミリスレスカ To:トベルコ |
それに、貴方が盗み出した宝珠の使い方や、能力の内容も。 もう、能力の発動法くらいは、解明されていたんじゃないですか? 流石に、なんの咎も無く元の生活に戻ることなんて、無理でしょうけれど……せめて協力していただければ、叙情酌量の余地もあると思いますよ……? |
■トベルコ To:リュント&ミリレスカ |
宝珠の使い方は簡単で、コマンドワードを唱えるだけだ。 それで、眠りの精霊に関する精霊魔術……といってもスリープだけだが……が使用できる。 精神力もそんなに消耗しないで使用できるという素晴らしいものだった。 ただ、やはり封じてある精霊が安定していないらしく、たまに暴走する可能性がある。 あと、二人の行動だが……たぶんまっすぐパダには向かっていないと思う。 途中の街道沿いの街に良く使ってた宿があるので、そこでは無いかな? 場所は私が知っている。 ……この際だ、出来る限りの協力はするよ。 |
■リュント To:トベルコ |
って事は持っている奴にも拠るが、限界ギリギリまでスリープを掛けられるんだな? それは確実に魔法を掛ける事も出来るのか? それとも単発で掛けるしか出来ないのか?? それと良く使ってた宿とは、ここからどれ位だか分かるか? 宿場町を出発してまだそれほど経っていないが? 念の為に街に近づいたら警戒しながら動かないといけないからな。 トベルコが知っているって事は、敵だって無警戒で行動はしていないだろう? |
■トベルコ To:リュント |
いや、魔法を変化させることは出来ない。 あくまで通常の効果を発揮させるのみだ。 宿なんだが、おそらく徒歩で一日くらいのはずだ。 既にもう宿に入ってると思われる。 なんとか馬車を夜通し走らせることが出来れば、翌朝には追いつくはずだ。 |
■リュント To:トベルコ |
それなら作戦は立つな。 んじゃトベルコには道案内を頼むとして、俺らは作戦会議をしておくとするか。 |
■トベルコ To:リュント&ALL |
……一つだけ言っておくが、魔力が暴走したらどういった状態になるかはまだ分かっていない。 あの二人が面白半分に使っていないとも限らないのでな。 その点は考慮しておいた方が良いだろう。 |
■リュント To:トベルコ |
作戦を立てる上で相談なんだが、二人はそれぞれ戦士と盗賊の技術しか持ち合わせていないのか? 何か他にも技術を持っているのかい?? |
■トベルコ To:リュント&ALL |
いや、持っていないはずだ。 野外生活の能力とかは合ったが、奇跡や魔法の類は使えないし、昨日もそういった様子は無かった。 |
■リュント To:トベルコ |
それなら計画が立て易いな。 あとは二人が宝珠を持ち逃げする時に、他に持って行かれた物はあるのかい? それと目的の街の規模は?冒険者が常駐するような規模の街かい? |
■トベルコ To:リュント&ALL |
いや、他には特に無い。 街についてだが、オラン〜パダに行く途中に通過する宿場街といった感じで、さっきの街より少し小さいくらいだ。 冒険者なんかは、たまたま宿に泊まってる連中くらいしかいないと思う。 |
■リュント To:トベルコ |
すると、どうだろう? 二人が護衛を雇っている可能性は低いと思うか? 戦術的には二人と、宝珠さえ考慮に入れれば問題無いと考えるか? |
■トベルコ To:リュント&ALL |
人を雇うようなことはしないだろうし、おおかたそんな余裕も無いだろう。 従って、君の言うとおり二人と、あと宝珠の力だけ注意しておけば良いだろうな。 |
■リュント To:トベルコ |
宝珠の力だが、使用する時はコマンドワードを唱えるだけってさっき教えてくれたが、 宝珠を手にしている必要があるのか? 対象に対して見えるように掲げないといけないとか、 両手で持っていないといけないとかの制限はわかるか?それとも、腰袋とかに入れているだけでも良いのか? |
■トベルコ To:リュント&ALL |
ああ、説明不足だったね。 正確に言うと、「片手ないしは両手で対象に向けて持った上で」コマンドワードを唱える必要があるんだ。 この説明で理解してくれるだろうか? |
■ミリスレスカ To:トベルコ>リュント |
ええと……じゃあ、言葉を発せなくなったり、宝珠を落とさせたり……あとは、身動きが取れなくしてしまえばいいってコトですね? ……ねえリュントさん、コレなんてどうでしょう? |
ローブの左の袖口に手を入れて、なにやらごそごそ。
ぱっと出してきた手元には、束ねた細身のウィップが握られていた。
■リュント To:ミリスレスカ |
よくウィップなんて持っているな? それで宝珠を持っている奴を拘束出来れば話が早いんだけどな〜 |
■ミリスレスカ To:リュント>ミァ |
え? 「拘束武器は魔法戦士のたしなみだ」って、お義兄さまが……東方だと、違うんですか???いちばん素早いリュントさんが、宝珠を持っているほうを拘束しちゃえば、相手も諦めてくれるかもしれませんし。 でもえっと……ホントはミァさんのほうが素早いですケド、その……意外と重いですよね、コレって? あ! そうだ、こっちなら大丈夫じゃないですか? |
■リュント To:ミリスレスカ |
拘束武器は魔法戦士のたしなみだ〜?? そんなこと初めて聞いたぞ?? それより今度は何が出てくるんだ!? |
今度は胸元に手を入れてごそごそやると、ボーラを取り出してミァに手渡してみせる。
なんだか歩く武器庫状態だ。
■ミァ To:ミリスレスカ |
ほいほーい! そっちの女王様のウィップ(?)は無理むりですケドー。 ボーラだったらミーでも持てますバッチグゥ、でスヨー。 ………にしてもミリィっち、ほんとたぁっくさん持ってまスネー(・x・) |
■リュント To:ミリスレスカ |
俺がウィップでミァがボーラだな。 それプラス誰かが手を狙って武器落しをすればかなり確立が上がるかな? |
■ミリスレスカ To:リュント>トベルコ |
はい、あとはボクやキルリックさんが、メイスで手を狙って殴れば。 それと……トベルコさん。お願いがあります。 |
■トベルコ To:ミリスレスカ |
……ああ、何かな? |
■ミリスレスカ To:トベルコ |
あなたを力ずくで捕まえたボクたちには、お願いできることではないのは充分承知の上で、あえてお願いします。 ノヴェルさんとフォレスさんの拘束と、宝珠の奪還に、協力してください。 |
■トベルコ To:ミリスレスカ |
もとより私には選択の余地など無いよ。 犯罪を犯した身。少しでも償いになるなら何でもするさ。 もっとも、今更反省したのでは遅いんだがね……。 |
そういって、自嘲的な笑みを浮かべた。
■ミァ To:トベルコ |
にはははは、やぁっと気づいたんでスカー? まぁ誰だって若気のい・た・りとゆーのはありまスシー。 これからきばっていけばいーんじゃないでスカー(・▽<)-☆ |
■キルリック To:トベルコ |
そうです、犯した罪は償えば良いのです。 あなたのお父様も、『戻って来い』と伝えてくれと言っておられましたよ。 |
■トベルコ To:キルリック&ミリスレスカ |
……分かった。出来るだけの事はしよう。 それで、一体何をして欲しい? |
■ミリスレスカ To:トベルコ |
トベルコさんには、魔法による支援をお願いしたいんです……。 ノヴェルさんとフォレスさんや、彼らが暴走させてしまった眠りの精霊と戦わなければならなくなったら、支援の魔法をかけてほしいんです。 そのかわり、ノヴェルさんとフォレスさんは、可能な限り無事に……最悪でも、手心を加えて気絶させるように、努力して戦います。 間違いに気付いた、と思われているのでしたら……かつてのお友達も間違いに気付く、その手助けをしては、いただけませんか? |
■トベルコ To:ミリスレスカ |
……ああ、分かった。 むしろ、こちらは問答無用で殺されても文句は言えないんだし、 それを穏便に対処してくれた君たちには感謝しているよ。 宜しい……できることは極力協力しよう。 ただし、発動体を何か貸してもらえなければ私は何も出来ないがね。 |
■リュント To:トベルコ |
それならトベルコが持っていた指輪をミリィに貸してやって、 代わりに杖を借りたらどうだ? お前さんは直接戦闘には向いていないんだろう? |
■トベルコ To:リュント |
分かった……。 そうさせて貰うよ。 |