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SW-PBM Scenario#144
白夜の島

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星を見上げて


 ザリィ村

翌朝。
恐らく最後の「白い夜」が明けた。

昨夜のうちに家に運ばれた村人たちは、朝の訪れとともにきちんと目が覚めたようだ。
もちろん、ババ様やブラーボも何事もなかったかのように目覚めた。
ヒュレスが準備した朝食をとり、すぐに出発の準備にとりかかる冒険者たち。
ブラーボは何があったのかを聞きたい様子だったが、柔和な笑みを浮かべたババ様になだめられていた。
ヒュレスとリーアを連れて外に出ると、マケリが子どもたちと一緒に見送りに来ていた。
■マケリ To:ALL
……気をつけて。夜が近づいたら、村人たちといっしょに空を眺めているよ。

■子どもたち To:冒険者たち
おほしさま、楽しみにしてるね!

一行は荷物と馬たちを迎えに行くために、──そして魔法装置を停止させるために、再びザリィ村を出発した。
 ザリィ島・滝のある泉

昨日と同じように、休憩を取りつつゆっくりと馬を歩かせる一行。
あれだけの戦いの翌日である。疲れがたまっていてもおかしくないが、さすがに体が資本の冒険者だけあって音を上げる者はいなかったようだ。
ヒュレスはリーアとのふたり乗りに緊張しているのか、ただでさえ危なっかしい手綱さばきがさらにおぼつかないようだ。
それに対してリーアは希望にあふれた表情で、久しぶりに触れる自然の風の感触を心から楽しみながら馬に揺られていた。
歩き続けること数時間……、ようやく泉に着いた頃にはすでに太陽は傾き始めていた。
泉のほとりでは、せまい洞窟の中が耐えられなかったのだろう、フレディとマケリの乗っていた馬が仲睦まじく寄り添って水を飲んでいた。
一行は乗ってきた馬の手綱を近くの木にくくりつけると、まずは洞窟から荷物を運び出した。すべて無事である。
洞窟──「ミレスの家」では、相変わらず魔法装置が輝かしい光を放っていた。
リーアはそれがまぶしいのか、魔法装置の方へは顔を向けられずにいる。
■ヒュレス To:ALL
それじゃ、魔法装置を停め……。
え、えっと、どうするんでしたっけ?(汗)

■コッコロット To:ヒュレス
「祈るだけ」デスヨ。

緊張のあまり顔がこわばっているヒュレスに、コッコロットが懐から顔を出して、フォローを入れる。
■ヒュレス To:ALL
……じゃあ、いきます……。
……。

ヒュレスは目を閉じ、胸に手を置いて、一心に祈り始めた。
魔法装置は一瞬、小さく震えたかと思うと、光を急速に弱めていく。
■コッコロット
……何ダカ胸がチクチクするデス。「セツナイ」?
ヒューレィ様、役目は終わったのデス……。

パペットゴーレムのつぶやきと同時に、光は消え、魔法装置は浮力を失って静かに台座の上に収まった。それはただ沈黙するばかりの鉱物の塊となったのだ。
■セイルディア
…偉大なる先人の知恵と勇気に、感謝いたしますわ。
どうぞ心安らかに、お休みくださいませ。

■カーガッド To:ALL
さあ、これで私達の役目も終わりですね。
あとは夜までゆっくりと待つことにしましょうか。
……正直なところ、やっぱり昨夜の疲れが完全には取れていないみたいで。

一行は泉のほとりで、夜のとばりが降りるのを待つことにした。
傍らでは馬たちの草を食む音、風が森の中を吹き抜ける音だけが聞こえている。
西の空がオレンジ色に染まり、徐々に墨色へと見事なグラデーションを描き出す。
息をのんで見つめるリーアとヒュレス。
太陽が森の中へ姿を隠すと、空を覆い尽くす墨色は優しく広がり、やがて森と空との輪郭線もわからなくなった。
黒々とした森から、ふいに「ヒュッ」と風を切り裂く音がした。
いくつもの白い光の線が、まるで逆に流れる流星のように天に向かって走って行く。
■セイルディア
…星が空へ…帰ってゆく…
本当にこんなことが、起こるのですね……なんて綺麗な……

やがて、ぽつり、ぽつりと小さな光の粒が夜空に輝き出した。
それは瞬く間に空一面に広がり、皆の頭上にはこぼれ落ちそうなほどの宝石のような星が、今までの分を懸命に取り戻そうとするかのように、精一杯光り輝いていた。
■ヒュレス To:リーア
お嬢さま……、見えますか?

ヒュレスが星明かりに照らされたリーアの顔を見ると、彼女は目にいっぱいの涙をためていた。
■リーア To:ヒュレス&ALL
うん…見える。
見えるわ…。なんて、なんてきれいなの…。

■セイルディア To:ALL
…やはり…夜はこうでなくては、ですね。
この星空の美しさこそ、この島の美しい風景に似合いますわ…

■マーキュリー To:ALL
本当にすごく綺麗ですね…

■カーガッド To:ALL
そうですね。
本当に上手く行って良かったです……。

リーアは涙をぬぐってから、皆に向き直った。
■リーア To:ALL
…みなさん、本当にありがとうございます。
私、たとえこの目が今より良くならなくても、この星の輝きを覚えている限り、生きることをやめたりしないわ。
まぶしくて辛かった光なのに、暗闇で輝くとこんなにもきれいなことがわかったの…
お星さまと同じくらい、私も一生懸命生きていきます。

にこっと笑う。
それは「また元気に生きる」という彼女の宣言でもあった。
■ヒュレス To:リーア>ALL
お嬢さま……。僕は、その笑顔が見たくて。
…みなさん、ありがとう…本当にありがとうございました。

涙が止まらないヒュレスは、冒険者たちに向かって深々と頭を下げた。
■マーキュリー To:リーア&ヒュレス
喜んでもらえてこちらも嬉しいです♪
それにブラーボ先生も仰っていましたけど光のバランスが元に戻れば、きっと目も元通りに戻りますよ♪
それでこそ命を張って星を取り戻した甲斐があったってものです♪(^^)

■リーア To:マーキュリー
…はい。私もそれを信じます。
まだまだ見たいものが、たくさんあるもの。

首を傾げて、また無邪気に笑った。
ふとヒュレスが胸元に手を当てた。
違和感を感じたのか、懐にあったコッコロットを取り出す。
■ヒュレス To:コッコロット
コッコロット…

コッコロットはくたっとして動かない。
どうやら魔法装置と共に魔力が抜けて、ただの木の人形になってしまったようだ。
■マーキュリー To:ヒュレス、コッコロット
そっか、役割が終わったんですね。

長い間お疲れ様、コッコロット…

■セイルディア To:ヒュレス、コッコロット
…コッコロットは、立派に遺志を継いで役目を果たしましたわ…。
本当はつれて帰りたいと申し出たかったのですが、それは無粋というものですわね。
主人のいるこの島で眠らせてあげるのが、一番なのでしょうから。
…大事に、してあげて下さいな。

■ヒュレス To:マーキュリー&セイルディア
…はい。父さんの残してくれた想いを、忘れないように……
ずっと大事にします。

ヒュレスはぎゅっとコッコロットを抱きしめた。
木のお人形は、これからもザリィ島の未来を静かに見守ってゆくのだろう。

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白夜の島

GM:ともまり