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SW-PBM Scenario#144
白夜の島

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PANDORA 〜Part2


 ラウンド3

トリュボスの背後に現れた影は、異様なものだった。

1体は、野生の山猫を思わせるしなやかな肢体と、つややかな黒い毛並みで全身を包んでいる。しかし長い尻尾は……途中からウロコに覆われ、赤い舌をチロチロと覗かせる蛇の形をとっていた。そして背中にはコウモリを思わせる小さな羽根がついていた──あまりにも小さく、空を飛ぶには役に立たなそうだが。
そしてもう1体は、力強く太い4本の足で大地をつかんだ大型の犬だった。
山猫型の怪物と同じように全身が漆黒に覆われていたが、何倍も大きな身体、ぎらついた赤い目、獲物を求めて半開きになった口から覗くするどい牙からは、はるかに危険な雰囲気が感じられた。
セイルディアには、その異形の姿に見覚えがあった。
■トリュボス To:下僕
ゆけ。最も代わりの“容れ物”に相応しい戦士と……、
小賢しいエルフども……。
美しいその容姿を、魔物と見まごう姿にしておあげ……。

トリュボスが前方を指し示すと、2体は低いうなり声を上げて冒険者たちのほうへ走り出す。
セイルディアは再び「エネルギー・ボルト」を唱えた。
しかし光の矢は、トリュボスの歪んだ微笑みの前に力なく弾けた。
■トリュボス To:セイルディア
……エルフの盾をマケリ・レードルに仕込んだのは……お前か?
その割には……クク……この程度か。

身をよじり嘲るトリュボスに、間髪入れずカーガッドの戦斧が襲った。
手応えは浅かったが、トリュボスはわずかに表情を歪め、また嬉しそうに笑みを浮かべる。
■トリュボス To:カーガッド&マーキュリー
……おいで。culter…

再び襲う暗黒の刃──しかし、「抗魔」をまとったふたりの戦士は悠々と、それを跳ね返す。トリュボスの目の端に一瞬だけ、驚愕の色が浮かんだ。
■マーキュリー To:トリュボス
その歪んだ笑みも企みも今日で終わりだ。

トリュボスの下僕たちが冒険者たちを襲う。カーガッドに飛びかかったヘルハウンドだったが、素早い身のこなしで避けられ、虚しく空気を噛んだ。
「山猫」は、命令通り忠実にセイルディアを狙う。
しかしレヴィンの身体が目の前に滑り込んで来たのを見て、思わずそれを引っ掻く。
そしてまんまと囮に騙される格好で、するどい爪は空を切った。
■マーキュリー To:セイルディア
セイル!こっちへ!
慈悲深き母なるマーファよ、かの者に我が内なる力を分け与えたまえ。

マーキュリーはセイルディアの側へ行き、マーファへと祈りを捧げた。
彼の精神力は光となって、消耗していたセイルディアの身体へと溶け込んで行く。
ケットは「マーチ」の加速の効果がトリュボスへと引き継がれていると見るや、すかさず新たな願いを込めて歌い直す。
■トリュボス To:ケット
またその「音」か……今度は何だというのだ……

忌々しげにつぶやいたトリュボスは、今度こそ「マーチ」の効果をはねのけた。
暗黒の世界に生きる者にはわからない、明朗な呪歌の調べは、冒険者たちに再び加速を与えた。同時に異形の動物たちにも恩恵を与えてしまったようだが……
■エウリス
こわい……こわいよ……
何にも……何にも聞きたくない!

■リーア To:エウリス
エウリス! しっかり……

リーアの腕の中で震えるエウリスは、恐怖のあまり呪歌をも拒絶してしまった。
じわり、と周囲の空気が澱む。ミニョンが悲鳴を上げた。もうすぐそこまで黒い空気が迫っているのだ。
■マーキュリー To:子供達
エウリス!みんな!怖さに負けちゃダメだ!
絶対生き抜くって気持ちを忘れないで!

トリュボスに向き直りながら子供達に語りかける。
■エウリス To:マーキュリー
う……ぐすっ。……

強気なエウリスの泣き声が聞こえる。が、ちいさな手で必死に涙を拭っているのが見えた。
 ラウンド4

迫り来る黒い空気を避けながら、ケットは「マーチ」の演奏を続行。
セイルディアは再び「エネルギー・ボルト」をトリュボスに向かって放つが、またも強力な抵抗にあい、わずかなダメージしか与えることができない。
しかし──トリュボスにはもはや余裕がないのか、その表情から歪んだ笑みは消えていた。
■トリュボス To:セイルディア
小娘……。

■マーキュリー To:トリュボス
よそ見をしてる暇はないぞ!

歯ぎしりをするトリュボスに、カーガッドとマーキュリーの連撃が襲う。
■トリュボス To:カーガッド&マーキュリー
グァッ!! ……ク…!

トリュボスは身体をくの字に曲げ、胴体を切り裂いた傷口を両手で覆う。紫の液体が指の間からじわりと滲み出しているのが見えた。
■ヘルハウンド To:カーガッド
ガフッ。

主人の危機を察知してか──あるいは単に本能の命ずるままか、目の前のカーガッドに再び牙を剥く黒犬。しかしこれも軽くいなされてしまう。
「山猫」の攻撃をいなすことに集中しているレヴィンは、またも爪の攻撃を難なくかわす。
■トリュボス To:カーガッド
グ……ハ…ならば……
virus…

トリュボスはカーガッドの首に細く長い指を突き立て、暗黒語をつぶやく。
体内に毒を発生させる暗黒の力──しかしすぐに弾かれたように腕を引いた。
■トリュボス To:カーガッド
馬鹿な! ……これでも……この力をも拒むというのか!
……“光”を……あの壁を破壊するのに力を使い過ぎたか……
……ク……ククク……

狂ったような笑みを浮かべ、したたかに流れる紫の液体の中で身をよじった。
■マーキュリー To:トリュボス
“光の力”で退却なんてさせない。
お前は消滅するんだ。

 ラウンド4

よどみなく流れる「マーチ」の旋律の中、三たび「エネルギー・ボルト」がトリュボスへと走る。しかしこれも抵抗され、空中で力なく四散した。
カーガッドは迫り来る黒い空気から逃れながら、ヘルハウンドに攻撃。
しかし手元が狂ったのか、ダメージを与えることができなかった。
■山猫のような怪物 To:レヴィン
フーッ。

「山猫」はするどい爪で焦れたようにレヴィンを襲うが、またも空を切ってしまう。
ヘルハウンドの口が大きく開かれ、マーキュリーを巻き込んで灼熱の炎を吹き出した。
しかしマーキュリーの精神力はその威力をも拒み、両腕に刺されたような痛みを感じるのみだった。
■マーキュリー To:トリュボス
くっ!これでどうだっ!

その炎を切り裂くようにマーキュリーのモールがトリュボスへと振り下ろされ、重い鉄槌をくさびの如く闇の身体に打ち込んだ。
■トリュボス To:マーキュリー
あ……、あ……ア……!!

悲鳴ともとれる断末魔の叫びをあげ、トリュボスの身体はブツブツと音を立てて崩れていく。辺りを覆っていた黒い空気の侵蝕が止まり、冒険者たちに襲いかかっていた二匹の下僕も動きを止めた。
■トリュボス To:ALL
何故だ……なぜ……ナゼ……
自らの力によって……希望を失いかけた愚かな下賤の民よ……
それでもなお……“光”の世界にしがみつくというのか……
それでもなお、闇を拒むというのか!
……ファラリスよ! 私は未だ、早すぎたと……いうのか…………

呪いの言葉発しながらだらしなく崩れ落ち、やがて身体をかたどっていた闇が灰燼のように散り散りになっていった。
黒い空気も次第に薄れ、風が吹くたびに力なく消えていく。
二匹の下僕も、主人の後を追うように崩れ落ちて姿を失っていった。

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GM:ともまり