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SW-PBM Scenario#144
白夜の島

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宿命


 ミレスの家・内部

光の眩しさに目をそらし、再び視界が開けた時には、空気の冷えた洞窟のような場所に立っていた。
崖をくりぬいて作られた家──というより広々とした部屋に近いものだった。
岩肌はむき出しだったが、じゅうたんや木づくりの家具も置かれており、意外と生活感がある。
ベッドの隣には、不思議な文様が施された棺のような箱が置かれていた。
自分たち以外の生き物の気配はない。

入口の方を振り向くと、岩を透かして見るような格好で、さっきまで冒険者たちの背後にあった滝の裏側が見えた。
■コッコロット To:ALL
入口、ちゃんと空いてマス。中からは、外見えるデス。
でも外からは家の中、見えないデスし、何も入って来れないようになってマス。

さ、こっちデス。

コッコロットはぴょんぴょん歩いて皆を奥へ導く。

部屋は奥に行くほど広がっていた。
15メートル四方はあるだろうか。一行の足音が怖いくらいに響く。
その一番奥まったところに、妙な置物があった。
■コッコロット To:ALL
コレ、ヒューレィ様が作った、魔法装置デス。
ザリィ島の“護りの光”、作ってマス。

コッコロットが「魔法装置」と呼んだそれは、複雑な文様が施された台座と、その真上で浮いてる球体だった。
大きさは直径1メートルほど。まるで水晶のように透き通っており、白く淡い光を絶え間なく放っている。そのために、外の光が届かないこの場所も明るく保たれているようだ。
球体のまわりを、上位古代語らしき文字が輪のように連なって回っている。
しかし、セイルディアも見たことのないような不思議な配列をしていた。

よく見ると、球体の発する光は、時折パチッ、パチッと不安定な音を立てている。
■コッコロット To:ALL
ヒューレィ様とミレス様、悪魔からこの島を守るために、この魔法装置つくること、思いついたのデス。
今から何年も、何百年も昔のコトデス。

■ヒュレス To:コッコロット
え? 何百年…?

ヒュレスは不思議そうにまばたきをした。
■マーキュリー To:コッコロット
君がヒュレスを迎えに来たってことは、最近になってこの装置の調子が悪くなってきたってことですよね?
あと、向こうのベッドの横にあった箱、ひょっとしてミレスさんが眠っていたりするんですか?

■コッコロット To:マーキュリー&ALL
…魔法装置、異界からの悪魔のチカラに押されて、チカラを失いかけているデス。
トリュボス。とても強い。
“護りの光”で手出しできなくなってカラ、何百年もの間、異界でチカラを蓄えていたみたいデス。
自力で“護りの光”、突破しようとしていマス。

…あの箱、ヒュレス様が眠っていた箱デス。
あの箱の中デ、生まれた時カラ、ずっと眠っていたデス。
闇のチカラが強くなって、魔法装置にイヘンが起きたら、目が覚めるようになっていたデス。
コッコロット、お育てするハズだったデス。……
目を離したスキに、泉に落ちてしまわれたのデス。
ずっと、探していたのデス。鳥にさらわれたり、キツネの巣穴にホーリ込まれたりしてコンナに遅くなっちゃったデス。コッコロット、フガイナイ。

コッコロットはヒュレスに向かってかくんかくんと頭を上下運動させた。
どうやら謝っているつもりらしい。
■ヒュレス To:コッコロット
あ、いえそんな。
……。

ヒュレスはあわてて首を振る。
それ以上は、うまく言葉が出てこない様子だった。
■マーキュリー To:コッコロット
なるほど、闇の力が・・敵はトリュボスっていう悪魔なんですね・・・
どんな敵なんですか?
ヒュレスが魔法装置に新たに力を与えることができれば問題解決…とはいかないですよね?

■コッコロット To:マーキュリー&ALL
トリュボス、“闇”が凝り固まった女性のスガタ、してマス。
絶望を喰う悪魔デス。ひとのココロを惑わし、誘惑し、かき乱して絶望を誘い、最後には乗っ取ってしまいマス。

魔法装置にチカラを与えるコト、ヒュレス様にしかデキマセン。
ヒュレス様、最後のザリィの民デス。
ザリィの民、悪魔を異界へ撃退するコトのできる“護りの光”、生み出すことができマス。特別な民デス。

ヒュレス様、半分は、ニンゲンであるヒューレィ様の血。
でも、ちゃんとツノを持ってますカラ、ミレス様の血、消えてないはずデス。
魔法装置にチカラを与えれば、トリュボス、撃退できマス。
ヒュレス様、そのために残されたデス。

■ヒュレス To:ALL
あ…。

ヒュレスは思わず頭の帽子に手をやった。
■セイルディア To:コッコロット
空を切り裂くように出てきた魔物は、魔法装置の異変の為に護りの光が薄れてしまったためだったのですね。
どうしてこの島は、異界の悪魔に狙われるようなことになったのかしら。
ザリィの民は、悪魔を退治する力を持っているように見えるけれど…それと関係が?

■コッコロット To:セイルディア&ALL
ザリィ島が、異界との“扉”、開きやすい土地だったからデス。
悪魔たちが、この世界を攻撃スル、足ガカリ。
今も、そうデス。
この土地に、ザリィの民が生まれたコト、必然。
ミレス様、そう考えてイマシタ。

■カーガッド To:コッコロット
最悪、そのトリュボスという悪魔と戦わなければならないのですかね……。
その悪魔の特長とか弱点とかは知ってますか?

■コッコロット To:カーガッド&ALL
戦うナンテ! トンデモないデス。
ミレス様の時代、トリュボスはたくさんの下級悪魔を率いテ、何度もザリィ島を攻撃して来たデス。
ザリィの民、星読みで悪魔の出方を予知シテ、“護りの光”で撃退していマシタ。

くるっと回って、空気を集めるような仕草をする。
■コッコロット To:カーガッド&ALL
トリュボスは戦いの中デ、仲間の民を乗っ取り、そのカラダが使い物にならなくなるマデ、殺戮に利用したのデス。
そして、絶望を喰い破って出て来るのデス。
戦う度に、ザリィの民、傷つきマシタ。仲間もたくさん、死にマシタ。

絶望が絶望を呼ぶマエに、仲間のカラダ、破壊するしかなかったデス。
カラダを捨てて出てきたトリュボスに、“護りの光”浴びせ、異界へと撃退していマシタ。
それが精一杯だったのデス。

大陸の国からやってきたヒューレィ様、ザリィの民と協力して、「永遠」の“護りの光”で、島を包むコトのデキル魔法装置、作ったデス。
ヒューレィ様、立派な魔法使い。すべては島と、ミレス様と、未来のためデス。

コッコロットの使命、ソレをヒュレス様にお伝えするコト。
ヒュレス様の使命、“護りの光”を守るコトデス。

■セイルディア To:コッコロット
「永遠」に…この魔法装置には、それほどに膨大な魔力があるんですのね。
それにしても、引っかかる言い方ですわ。
護りの光を得たことで、この島は…普通ではなくなった。
ババ様のおっしゃったように、バランスが崩れて何かが起こったのでは?

■コッコロット To:セイルディア&ALL
ばらんす? …?? イミフメイ。
“護りの光”を守るコト、イチバン大事。

コッコロットは首を傾げた後、ぐいっと胸を張って言った。
■セイルディア To:コッコロット
そうね、今現在島を守っているのはその光なのだから、大事でしょう。
ただ、何の犠牲も無くこの光を守っていけるものなのかしら?
この島の光と闇の精霊は、何か特別な力で押さえつけられているようですわね。
私は今まで、それは上空から来る闇の影響だと思っていましたけれど…
もしかして、この装置の影響で精霊達が不安定になっているのでは?

■コッコロット To:セイルディア&ALL
…??? セイレイ? フアンテイ? コッコロット、わからナイ。
コッコロット知ってるコト、ヒューレィ様が教えてくれたコトがすべてデス。
コッコロット、使命忘れナイ!

やっぱり誇らしげに胸を張っている。
■マーキュリー To:ALL、コッコロット
でも、それじゃリーアさんに星を見せてあげられないですよね?
僕達がやらなくちゃいけないのは、やっぱりトリュボスをやっつけることなんじゃないかな。
そうすれば護りの光も必要なくなるし、僕達はそのために来たんですから。
どこかにトリュボスの本体がいると思うんですけど、心当たりはないですか?

■コッコロット To:マーキュリー&ALL
トリュボス、まだ異界にいるデス。
“扉”完全に開いタラ、出てきてしまいマス。
下級悪魔も一緒に、たくさん、たくさんデス。

背伸びをして、両手をうんと大きく広げた。
■セイルディア To:ALL
…トリュボスの実態はまだ異界にあるとしても、その意識の一部は既に何らかの方法で”護りの光”を突破しているかもしれない。
そのことが、”護りの光”を生み出す魔法装置の異変に繋がったのかもしれない…推測、ですけれど。
もしそうならば、たとえ魔法装置を直しても、内側から破られてしまうのではないのかしら?

■コッコロット To:セイルディア&ALL
トリュボスの力、大きくなってカラ、魔法装置、具合悪くなったデス。
空に小さな“扉”見え始めて、そこからトリュボスの力、漏れ始めてマス。
影響は、ドコカに出ているハズデス。
トリュボスを超える強い光で、もう一度追い返せば、ダイジョウブ。
あとは、ヒュレス様、“護りの光”をずっと守ればダイジョウブ。

■ヒュレス To:コッコロット
………そんな。

消え入りそうな声でヒュレスがつぶやいた。
■マーキュリー To:ヒュレス
…リーアさんの目は完全に見えなくなっちゃうでしょうね。
今より強い光は一度は悪魔を撃退できるかもしれないけど、きっとリーアさんだけじゃなく村の人全員に影響を与えるようになるでしょう。
そしてみんな治らない病に絶望して…みんなの絶望は悪魔に更なる力を与えることになっちゃうと思います。
そんなイタチごっこはここで終わらせるべきです。

■カーガッド To:ALL
私もそう思います。
何か……何か手はあるはずです。
我々が希望を失ってはいけません。

ここには、何か書きつけ見たいな物は残っていませんか?
魔法装置とか、トリュボスについてとか、何でもいいです。

■コッコロット To:カーガッド&ALL
必要な情報、全部コッコロットにキロクされてマス。
ソレカラ、ミレス様が残された映像がアリマス。
ヒュレス様でなければ、再生できないノデ、コッコロットもまだ、見たコトないのデス。

そう言うとコッコロットは、手近な棚から布を引っ張り出してきて、魔法装置の台座部分にはめこまれている鏡のような面をきゅっきゅっと磨き始めた。
どうやらなにかの準備らしい。
■セイルディア To:コッコロット
…トリュボスを超える強い光…どうやって作り出すんですの?
この装置のほかにも、光を生み出すものがあるのかしら?

■コッコロット To:セイルディア&ALL
“護りの光”、もともとザリィの民が生みだすチカラ。
ヒュレス様、祈るだけでいいのデス。
魔法装置、共鳴して、光は強くなって行くデス。

コッコロットはせっせと台座を磨きながら答える。
布ごと台座に飛びついて、ずるずるとずり落ちているだけのように見えなくもない。
■セイルディア To:コッコロット
ヒュレスが泉に落ちた時、一緒に本を落とさなかった?
確か、「思い出」と表紙にかかれた本。あの一枚目にあった詞のような文章がずっと気になっていましたの。
ミレスさんもリーアさんと同じように、また星空と出会えることを願っていたのではないかしらって。
……ヒューレィさんとミレスさんは、魔法装置が出来上がった後ずっとここで装置の番人をされていたのかしら?

■コッコロット To:セイルディア&ALL
ソウデス。
装置が完成シタ後、おふたりは民の集落を離れテ、ココに移り住んだのデス。入り口に結界を張って、装置を守るためデス。

「オモイデ」の本? ミレス様、亡くなられる直前マデ絵を描いていたデス。
ヒュレス様のおくるみの中に入れておいたノデ、一緒に流されたと思うデス。


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GM:ともまり