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SW-PBM Scenario#133 純恋花 |
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モンターナ山・ふもと |
エスターテの身体を見たナイコスはショックの色を隠しきれず、下山の道中は終始うなだれて黙り込んでいた。
しかしエスターテはそんなナイコスにずっと寄り添い、何事か話しかけていたようだった。
だいじょうぶです、気にしないで……という言葉が時折冒険者たちの耳にも届いた。
道を下ってゆくにつれ霧は薄くなり、やがて霧の中を抜け出したが、山頂を振り返ると相変わらず濃い白い霧に包まれたモンターナ山が、何事もなかったかのようにそびえ立っていた。
モンターナ村・夕暮れ |
あたりはすでに薄暗くなり、オレンジ色の夕陽がモンターナの山々を赤く染め上げている。
村の家々からは夕餉の煙が細くゆらゆらと立ち上っている。
一行は人目に付かぬように村のはずれで足を止め、冒険者たちが姉妹の家へと走りエリスを呼びに行った。
花屋である姉妹の家は、店を閉めていた。
戸をたたくと、長い長い間待たされた後、寝間着姿のエリスが出迎えた。
高熱に顔を赤く染め、足元もふらついておぼつかない。
病状が悪化し、店を出せない状態だったのだろう。
■エリス To: |
ああ……よく、ご無事で…… こんな格好で……ごめんなさいね…… |
エリスは恐る恐る、一番聞きたいことを飲み込んだまま冒険者を見つめた。
■ミァ To:エリス |
んにに、そんなの気にしちゃいけまセーーン! いっそ寝間着姿は悩殺かもしれませんシー(=▽=) にしても随分具合が悪そうですネー(・x・) こりはさっさか・・・・・とゆーことで、四の五の言わずにミーたちと来やがれー、なのでスヨー! |
■エリス To:ミァ |
あ、は、はい……。 |
■リエラ To:ミァ&エリス |
ミァちゃん、エリスさんは具合が悪いんですから、そんな言い方をしちゃダメですよ〜。 エリスさん、大丈夫ですか? これ、どうぞ。 |
羽織っていたマントを脱いで、エリスに羽織らせた。
■エリス To:リエラ |
あ…ありがとうございます。 |
ふらつくエリスを村のはずれまで連れて行くと、エスターテがふわっとそばに飛んで行き、ナイコスのそばへと促した。
エリスはナイコスと見つめ合うと、みるみるうちに目に涙をためたが、必死に感情を抑えようと自分の肩を抱いた。
■エリス To:ナイコス>エスターテ |
…ナイコスさん、よくご無事で…………。 よかったわね、がんばったわね、エスターテ。 ……! |
■ミリスレスカ To:エリス |
……ごめんなさい。ボクたちには、どうすることもできなかったんです……。 |
ミリィはうつむいて前髪で目元を隠し、エリスと目線を合わせないようにしたまま、ナイコスの少し後ろから、そっと脇にずれた。
エリスはナイコスの後ろに横たわる妹の骸に気づくと、息を飲んだ。
そして、へなへなとその場に座り込むと、声を上げて泣いた。
■ミァ To:エリス |
哀しいかもしれまセーーン。 ・・・・・でも、エスターテっち、凄かったんですヨー。 |
■リエラ To:エリス |
ええ、そうですよ。 エスターテさんはすごく頑張ったんです。 でも、ごめんなさい。 私達では、彼女を生き返らせることはできなかったんです……。 |
エスターテはリエラの言葉に大丈夫と言うように首を振り、
■エスターテ(幽霊) To:エリス |
お姉ちゃん、泣かないで、私、だいじょうぶだから、だいじょうぶだから。 |
■エリス To:ミァ&リエラ&エスターテ |
……うっ……ごめんなさい……取り乱してしまって……。 わかっていたことなのに、エスターテの透明な姿があんまり元気だから、現実を見失っていました…… そうですね、エスターテは、死んでいたのでした…… |
冒険者たちは、モンターナ山で知り得たこと、そこで起こった全てのことを話した。
ナイコスが山へと登った、その目的も。
■エスターテ(幽霊) To:ナイコス |
……先生……お姉ちゃんの命を救えるの、先生だけです。 お願いします、お姉ちゃんを助けてくださいです。 |
■オルフェ To:ナイコス |
さあ、これを。 |
オルフェは外套の陰から、そっと花を差し出す。
ナイコスは銀の純恋花をオルフェから受け取った。
それは山を下りてもなお輝きを失わず、きらきらと輝いていた。
ナイコスは涙を流さぬように唇を噛みしめながら、両手を覆って泣き続けるエリスの手に触れ、そっと上を向かせると、花びらで頬を撫でた。
銀の輝きは二人を包み、花びらから一粒の銀のしずくが流れ落ち、エリスの唇に吸い込まれていった。
そして──彼女の頬が、頬紅をさしたように明るくなり、目元に生気が甦ったのをその場にいた全員が夢のように見つめていた。
■エスターテ(幽霊) To:ALL |
よかった…… |
その言葉はすでに遠くから聞こえてくるようだった。
■ミァ To:ALL>エスターテ |
んにんに、ホントーにある意味では、はっぴぃえんどっぽく。 エリス姉っちも、もうこれで安心なのでスー(^▽^) ・・・・・って、あやや。エスターテっち・・・?? |
エスターテの幽体が徐々に薄くなっていく。
■エスターテ(幽霊) To:ALL |
……ありがとう、みなさん、ほんとにありがとうですぅ。 私、山に登ってよかったです……役に立って、よかったです。 お姉ちゃん、先生と仲良くしてね…… 先生……先生、お姉ちゃんを、しあわせにしてください…… |
■ミリスレスカ To:ALL |
そ、そんな……エスターテちゃん…… |
■オルフェ To:エスターテ |
お別れのようだね。 でも、美味しいご飯を食べに連れて行く約束、私は忘れないでおくよ。 だから、さよならはいわない。また……いつか会おう。 |
オルフェは手にしたリラを静かに弾きはじめる。
静かで美しい、しかしそれは鎮魂歌のような悲しい曲ではない。
エスターテの想いを称え、来るべき再会を待ち望む……力強い、希望の曲だった。
■ミァ To:エスターテ |
・・・んに、ミーたちも、エスターテっちと会えて、お仕事出来て、ほんとーに良かったと思うでスヨー! エスターテっちも、お空の上で元気にしててくださいネー。 そしてまた、花を銀色にしたよーな想いの強さで、みんなに会いに来てくだサーーーイ(=▽=)9゛ |
■リエラ To:エスターテ |
さようなら、あなたの想いの強さ、そして、やさしさ。 決して忘れませんよ。 早く生まれ変わって、幸せな人生を歩めるように祈ってます。 |
■エスターテ(幽霊) To:ALL |
はいっ、がんばります…… |
彼女はふわりとオレンジ色の空に浮き、やがて夕陽に溶けるようにして消えていった。
エリスとナイコスは、その姿を追うようにして何度もエスターテの名を呼び、いつまでも泣き続けた。
地面にはナイコスの手から落ちた純恋花が、土色に染まって枯れていた。
■キルリック To:消えたエスターテ |
・・・・・・・エスターテ。 (気の遠くなるような時間の先に、まだ、生き返れる可能性があるなら、どうする?、等と、未練の無くなった者に聞くのは、逆に未練を生ませてしまいますよね・・・(苦笑)) 私は、神官としても、人としても、まだまだ未熟ですね。 |
モンターナ村・早朝 |
翌朝。
姉妹の──今はエリスだけの──家で一晩明かした冒険者たちは、エリスとナイコスにあらためて話をした。
純恋花の存在を隠し、決して広めないで欲しいということを。
ふたりはよく理解し、固く約束した。
そしてナイコスは、これから一生かけて精霊と対話を続け、この土地を苦しめる病を治す方法を探すことを誓った。
■リエラ To:エリス&ナイコス |
あの、わたし達のお願いには「エリスさんたちも決して二度と純恋花を使わない」という事も含ませてください。 理由は……もう、言わなくてもわかりますよね。 |
■ミリスレスカ To:エリス&ナイコス |
あれは、人が触れるべきものでは、ないと思うんです……。 ボクからも、お願いします。 |
■エリス To:リエラ&ミリスレスカ |
……はい、わかりました。 この村の祖先が犯した過ち、決してくり返しませんわ。 |
■オルフェ To:エリス&ALL |
実は帰り際、私にもエルフの声が聞こえてね。 彼らはもう怒ってはいない……ただ静かに純恋花を見ていたい、とそう言っていたよ。 |
■キルリック To:オルフェ&ALL |
そんな事があったんですか?、全然気がつきませんでした。 確かに花は愛でてこそ、の花ですからね。 |
■リエラ To:エリス&ナイコス |
あと、一時的にでも他の土地で過ごしてもらうことはできませんか? わたし達のせいでもあるのですが、村で冒険者が銀の花のことを調べて、その後に山に登り、戻ってきた時にはエスターテさんが亡くなっていて、重い病気だったエリスさんが、いきなり元気になっているとなると、どうしても村の人達の興味を引いてしまうと思うのです。 その中にはわらべ歌の銀の花に思いをはせる人もいないとは言えません。 |
■ミリスレスカ To:エリス&ナイコス |
村の人たちだって、ボクたち冒険者が突然やってきて、花や伝承歌のことについて聞きまわって、一夜明けたらエリスさんが突然健康に……なんて、少しすれば、誰かが真相に感づいてしまうと思いますよ? そうなったら、いくらエリスさんとナイコスさんが黙っていたって、きっと、おばばさまの花畑が、またこの村の人々に……。 |
■エリス To:リエラ&ミリスレスカ |
……。 |
エリスは下を向いて考え込む。
■リエラ To:エリス&ナイコス |
それに、普通に聞かれるぐらいだったらこう言ってはなんですが、シラをきることはできると思うのです。 ですが……もしも、村の子供さんがエリスさんと同じような病気になって。 その親御さんが必死になって、エリスさんを治したクスリのことを聞いてきたら…? もしも、その子供が、エスターテさんと同じぐらいの女の子だったら…? 純恋花のことを隠し続けることは、とてもつらいものになると思うのです。 やさしいエリスさんは、隠し通した結果、その子が死んでしまったら、とても傷ついてしまうと思うのです。 |
■エリス To:リエラ |
……そう…ですね……。 |
■リエラ To:エリス&ナイコス |
わたし達がお二人にお願いした「純恋花の存在を隠し決して広めない」ということはすごく酷な願いになってしまうかもしれません。 自分の命にかえても助けたい命……親が子供の命を助けたいと想う心…愛する人の命を助けたいと想う心…、生きている上では避けられないそんな場面に出会った時に、何とかできるかもしれないのに、何もしないでいるというのは、すごく辛いと思うのです。 |
■ミリスレスカ To:エリス&ナイコス |
でも……酷だからこそ、秘密を守ってほしいんです。 でないと……ボクはもう、イヤなんです……エリスさんたちだって、そうでしょう? もう、エスターテちゃんのような事は……見たくも、聞きたくもないんです……。 知られないほうが、教えないほうがいい事だって、あると思うんです……。 |
■リエラ To:エリス&ナイコス |
どこか、遠くに移住することはできませんか? こんなに近くではなく、少し遠ければ、諦めがつく、ということもあると思うんです。 まあ、エスターテさんのお墓のこともあるので、無理に、とは言えませんが…。 |
■ミリスレスカ To:エリス&ナイコス |
半年でも1年でも、療養のため……とかで姿を隠しているだけでも、村の方々が受ける印象は違うと思いますよ? |
エリスは黙って皆の言葉を聞いていたが、やがて苦しそうに口を開いた。
■エリス To:ALL |
…お気遣いありがとうございます。……本当にありがとう……。 でも、私にはどうしてもこの村を離れて行くことはできないんです。 生まれ育って、エスターテと一緒に花を育て、生きてきた場所です。 両親の残してくれた花畑もあります……。 確かに、私だけ助かって……村の人たちが同じ病気で亡くなっていくことを見ることは、辛いことです。 だからこそ、私は……私たちは、ここにとどまり、一日でも早く病気を治す術を見つけなくてはならない…そう思います。 純恋花の力を借りずに、私たちの方法で…… 私は何も力がありませんが、精霊と通じ合えるナイコスさんを助けて生きていこうと思っています……。 |
■ナイコス To:ALL |
私の想いがまだ未熟なせいで、バランスを崩した精霊たちとなかなか対話できない。しかし、心から気持ちを込めて語りかければきっと通じ合えると思う。 エスターテと純恋花を見て、そう思った……。 ……。 きっと、純恋花に頼らず、病気を治す方法を見つけてみせる。 そして、エスターテに報告したいと思っているよ。 |
■キルリック To:ナイコス&エリス |
固い意志ですね。 これ以上、何を言っても駄目ならば、その固い意志で約束も守ってください。 |
エリスは、冒険者たちに一個の宝石を手渡し、ナイコスもまた、心尽くしを手渡した。
■ミァ To:エリス&ナイコス |
んにに、ありがたく気持ちを受け取っておくでスヨー(・x・)b でもそんなに考え込んでばっかりも駄目ーだと思いマーーースゥ。 たまにはミーみたいにさっくり生きる日も作ってくださいネー。 国宝級ぐららんからの貴重なアドバイスゥ、なのでスヨー(=▽=) |
■オルフェ |
……いや、ミァのように生きる日ってのは、それはそれで凄く問題がある気がするけどね……。 |
■エリス To:ミァ |
……ええ、ありがとう。 |
一晩経っても彼らの表情は晴れなかった。
これから傷ついた心とともに強く生きていくことが、彼らの償いとなるだろう。
■ミァ To:エリス&ナイコス |
それじゃー、またなのでスヨー。 今度遊びにきた時には、美味しい料理をご馳走してくだサーーイ♪ |
■リエラ To:エリス&ナイコス |
幸せになってくださいね。 エスターテさんの分も含めて、人よりも2倍も3倍も…幸せに生きてください。 |
■ミリスレスカ To:エリス&ナイコス |
今は、笑ってほしいなんて言えないです。でも…… でも、いつかきっと、エスターテちゃんのことを思い出しても、微笑める日が来ると思うから……だから、その日まで……二人で、がんばってください。 |
■オルフェ To:エリス&ナイコス |
またなにかあれば、遠慮なく声をかけて欲しい。 まあ、冒険者に依頼するような出来事は、起こらない方がいいんだろうけどね。 |
■エリス To:ALL |
はい……みなさん、本当にありがとうございました。 |
■ナイコス To:ALL |
皆さんのことは忘れない。本当にありがとう。 |
彼らに見送られながら、冒険者たちはオランへと帰路についた。
エリスの家の裏の花畑のすぐ横に、エスターテの墓標があった。
彼女の身体は枯れてしまった純恋花と共に埋葬された。
もうすぐ秋、やがて春が来たときに、
エリスの花畑はたくさんの花を咲かせるだろう。
同じ頃、モンターナの頂上でも、
花おばばが育てた純恋花が、いっせいに白く咲き誇っているだろう。
Fin
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GM:ともまり |