SW-PBM #128 おやじたちの挽歌 第四章 一幕 飛び交うお菓子 |
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■ 【アリュース邸・応接間】 |
アイレンに案内され、応接間に通されたパーティの面々。
豊かな暮らしぶりが伺える豪華な調度品が所狭しと並んでいる……その隅で、何かごそごそやっているのが1名。
■アイレン To:ベル |
……ベル。何をしているの? |
■ベル To:アイレン |
ふえっ? あ、アイレンさん? えっと、そのぉ、奥様からここのお掃除をするように言われたんですけど。 |
けれども、その手にあるのは掃除道具ではなくて。
片手にはいかにも高級そうなお菓子の箱と、もう片手にはかじりかけのクッキー。
■ベル To:アイレン |
あやややややっ(汗) 違うんですよっ。こっ、これはその、お掃除の途中で見つけて、ついつまみ食いをしていたとかそういうのじゃ……。 |
慌てて両手を背中に回して証拠隠滅を図ろうとする。
■リエラ To:アイレン |
あの、アイレンさん、そちらの方は? |
今まで田舎では見たことも無かった大きなお屋敷や『使用人さん』に圧倒されて口もきけなかったリエラだが。
ベルと呼ばれた娘の庶民的な行動を見てようやく言葉が出てきたようだ。
■アイレン To:リエラ |
私と同じく、こちらのお屋敷でお世話になっているベルです。 掃除をするように言われたみたいですが……見ての通りですね。 |
ため息。
■オルフェ To:ベル |
あはははは、嘘をつけないお嬢さんのようだね。 |
■アイレン To:ベル |
ベル、この方たちは奥様のお客様です。 お茶の用意をするから手伝って。 |
■ベル To:アイレン |
あ、はいっ。 じゃあ、その、これ……お茶菓子です。 |
恐る恐る、後ろ手に隠していたお菓子の箱を出す。
■オルフェ To:ベル |
ふむ、それはありがたく頂くよ。 |
言いつつ、お菓子の箱を持った手ごとそっと包み込むように握っているあたりが抜け目無い。
■オルフェ To:アイレン&ベル |
ところでお嬢さん方。 突然だが、私はどこかでキミ達と会ったことがあったかい? 確かにどこかで会ったような気はするんだけど、それがいつだったのか思い出せないんだ。 |
ナンパ師の常套手段とも思える手口だが、本人は本気で考え込んでいるようだ。
ちなみにベルの手は、当然(?)の如く、握られたままである。
■アリエ To: オルフェ |
Σ(・∀・;) 既にキラーモード突入してます・・・?しかもメイドさんにまでっ |
アリエは玄関口でオルフェに「マダムキラーモード」を頼んだ張本人である。
確かに頼んだ・・・が、ちょっとドギマギしていたりする。
■ベル To:オルフェ |
ええっ! そ、そうでしたか? それはどうも、ご迷惑をおかけしましたっ。 あの、その節はどうもすみませんでした、ですっ。 |
何か勘違いしているらしぃ。
というか。そんなにたくさん謝る心当たりがあるのだろうか。
■オルフェ To:ベル |
うーん、どうだったかな……まあ、そうだったとしても気にする必要は無いよ。 美人にかけられる迷惑なら、気にしないさ。 |
■ミァ To:ベル、オルフェ |
そ〜れ〜よ〜り〜。 お菓子っ。お菓子っ、なのでスー♪ |
視線はさっきから、お菓子の箱に釘付けだ。
■ベル To:ミァ |
あ、はい。どうぞっ。 |
オルフェに掴まれたままの腕をミァに向け……ようとして、当然つんのめる。
傾いた箱から、色とりどりの美味しそうなお菓子が飛び出した。
■ミァ |
Σ(○▽○)! と〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜うッ!!!! |
それを見た途端、すかさず口をあんぐりと開けてジャーーンプッ!!
……が、気合が空回りしたのか、それとも口でキャッチしようとしたのがそもそもの間違いだったのか。
一つも口に入らないままにお菓子は絨毯の上に散らばった。
■ミァ |
・・・・・・・・・・敗因はミーの口が小さかったことでスカネー・・・(がくり) |
口は必要以上に大きい。
どちらかというと、身体の小ささが今一歩届かなかった理由だろう。
何よりも、1ゾロ振っちゃあどうしようもないわな。
■キルリック To:ベル |
私たちは、慌てるほどのお客じゃありませんから。 そんなに慌てなくても良いですよ。 |
そう言うと、何を考えたかキルリックは落ちているお菓子をおもむろに集め。
そして、ミァの前に差し出した。
■キルリック To:ミァ |
これも欲しいですか? |
無頓着も、ここまで極まるともはや犯罪級である。
そんなキルリックの手に、ミリスレスカがそっと手を重ねた。
■ミリスレスカ To: キルリック |
あ、ダメですよキルリックさん。 |
ベルの方に、ちらっと笑顔を向けてから、真顔に戻ってキルリックにささやく。
■ミリスレスカ To: キルリック |
ベルさんの分が、なくなってしまいますよぅ。 |
指摘すべき所が間違っている。
ミリィのズレっぷりもなかなかにトンデモない。
■ミァ To:ミリスレスカ |
・・・・・・ミーはつまみぐいもしてませんのニー・・・(えぐえぐ) せめてその、ハニーブラウンシュガークッキーぃぃぃぃ(><。) |
絨毯に座り込んだまま未練たっぷりに、キルリックの手に乗ったお菓子たちを見つめる。
……食うなよ。いくらなんでもそれは。
■リエラ To:ミァ |
大丈夫ですか、ミァさん。 そんなに食べたいなら後で宿のキッチンをお借りしてそのハニーブラウンシュガークッキーっていうのを作ってあげますから、泣かないでください〜。 |
慣れた手つきでミァに手を伸ばして起き上がらせ、服に付いた埃を払う。
何気に子供扱いをしているが、その子(?)はお前よりもずっと年上だ。
……ぐららんを初めてみた田舎娘に分かるわけないか。
■ミァ To:リエラ |
Σ(>▽<)!!! そ、それはホントなのでスカーッ!? めっちゃ期待するのでスー♪ あんたさんいーひとでスー♪♪ |
ぱぁぁああ、と即座に幸せそ〜な笑顔を浮かべるミァ。
これだけ見てると、本当にただのお子様にしか見えない。
アリエもしゃがみこんでミァの頭を撫でながら、アイレンの顔を見上げた。
■アリエ To:アイレン&ベル |
ねえねえ、奥様がいらっしゃるまでにまた片付けて、お茶の用意をしなきゃでしょう? こちらの片付けは手伝いますから、「お茶」と「お菓子」の準備、してらっしゃっていいですよ?(にっこり) ああ、ベルさんは一緒にお片づけしましょう〜。 |
親切を装って、お菓子を再要求する。
アリエも甘い物は大好きである。お菓子どんとこ〜い。
■ミァ To:アリエ |
華麗なる援護射撃ー、なのでスネー。 心強いのでスー(>x<)b |
■アイレン To:アリエ |
そう……ですね。それではお願いできますか? 私はお茶の支度をしてきますので。 |
■ベル To:ALL |
うう、ごめんなさい。 すぐに片付けますから。 |
■ミリスレスカ To:ベル |
あ、じゃあボクも、おてつだいしますね! みんなでやったほうが早いですよ♪ |
ベルを慰めながら、手際よく片付けを手伝い始める。
さぞかし、いいお嫁さんになれそうだ……男の子でなければ。
その後、ベルが淹れたばかりのお茶をこぼしたりとか。
そのこぼしたお茶をかぶって大騒ぎしたりとか。
アイレンがまるで慌てずにこぼしたお茶の始末をしたりとか。
でもその間騒いでるベルは無視されていたりとか。
いろいろあったけれど。
まあ、とにかく。
パーティの前にお茶とお菓子が並んで、そして。
■イライザ To:ALL |
初めまして。私がオラン商店婦人会会長のイライザです。 一応、今回の依頼をさせていただく代表者……ということになりますね。 |
30台半ばくらいの落ち着いた女性が、パーティの前に座った。
いかにも上品な奥様、といった風情で微笑を絶やさない。
少し前のベルの大騒ぎも見ていたのだが、叱責するでもなく、ただ楽しそうに笑って眺めていた。
……ひょっとしたら、ただのおトボケなのかもしれないけれど。
■アリエ To:イライザ |
(ああ!ついに神殿で教わった営業スマイルの出番!) 奥様初めまして。私はチャ・ザの神官でアリエ=アクアと申します。 今回の依頼を受けるため、銀の網亭より参りました。(にこっ) それにしても、大変素敵なお屋敷でいらっしゃいますね〜。 ねっ、リーダー? |
イライザに向けた笑顔は、そのままオルフェに向けられた。
ちなみにその笑顔の意味は「マダムキラーな交渉で、依頼料確保は頼みます!」である。
さて、正しく通じるのかどうか……。
■イライザ To:アリエ |
あら、ありがとう。お世辞でも嬉しいわ。 |
■オルフェ To:イライザ |
ごきげんよう、マダム。 お初にお目にかかります、オルフェと申します。 |
そう言うと、恭しくイライザの手を取って手の甲に口付けを……しようとするが、イライザは微笑みを崩さないまま、空いているもう片方の手でそれをぴしゃりと叩き落とした。
■イライザ To:オルフェ |
気持ちは嬉しいけど、おイタは駄目よ? そういうのはちゃんと場所と雰囲気と格好を揃えてから、ね。 |
■オルフェ To:イライザ |
これは失礼を。 |
そう言いつつ一礼をするが……多分懲りてなさそうだ。
■リエラ To:イライザ |
私はアリエラ・ココットと申します。 リエラとお呼び下さい。 (こう言っておけば、アリエさんと名前間違われることはもうないよね) |
ペコッと頭を下げる。下を向いた時の表情はちょっぴり不安そうだ。
やはり初っ端から名前を間違われたことを内心では気にしているらしい。トラウマにならなければいいのだが……。
キルリック、ちゃんと責任取ってやるんだぞ?
■アリエ To: イライザ |
(むぅ、「お世辞」と言われた上にオルフェさんを軽くあしらうの〜(泣)) それで・・・代表者と仰いますと、お話は奥様から伺えば宜しいんでしょうか? |
■イライザ To:ALL |
そうね、依頼のお話なんだけど……他にあと2人、あなた方にお願いしたいっていう人がいるの。 その人たちが来てからでいいかしら? |
■オルフェ To:イライザ |
ええ、勿論構いませんよ。 |
そこへアイレンが顔を出す。
■アイレン To:イライザ |
失礼します。 奥様、お客様がいらっしゃいました。エミリ様とリーゼ様です。 |
■イライザ To:ALL>アイレン |
言ってるそばから来たみたいね。 通してちょうだい。 |
キルリックは立ち上がり、新たな依頼主を迎えた。
それに習うようにして何人かが慌てて腰を上げるが……ただ一人、ミァは新たな人物には目もくれずに。
目の前のお菓子にぼっとーしていた。
ばん!
と大きな音を立てて応接間の扉が開けられ、正に「雪崩れ込んで」という表現がぴったりな勢いで、2人の女性が室内に入ってくる。
■ミァ To:独り言 |
・・・・・そんなに急いで、お茶菓子を食べたかったんでしょおカー。 ライバル出現なのでスネー(>x<) |
違うから。
■エミリ To:ALL |
あーた方が、アタクシたちの依頼を受ける冒険者ザマスか? お金はいくらでも出すザマス。 ウチのバカ亭主が外で騒ぎを起こさないうちに早く連れ戻してきてほしいザマス。 |
■リーゼ To:エミリ>ALL |
こらエミリ、少し落ち着け。ああ、すまないね、あんたたち。 あたしがリーゼ、こっちがエミリ。それからイライザの3人で、あんたたちに仕事を頼みたいんだ。 改めて、よろしく頼むよ。 |
■オルフェ To:エミリ&リーゼ |
ごきげんよう。 我々が、依頼を受けさせて頂くことになりました。以後、お見知りおきを。 |
まだ何か言いたそうなエミリをイライザとリーゼが押さえる。
2人増えただけで途端にやかましくなった。
なおも喚き散らさんとするエミリをアイレンとベルまでが手を貸してようやく大人しくさせ、改めて仕事の話に移る。
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