シーリーと名乗った女性が奥に行って暫く。
　冒険者はただ待たされていた。
　暇なのでざっと室内を観察すると、壁にいくつかのレース作品が飾られていた。
　その作品は、繊細かつ美しい文様を描き。思わず見とれてしまう作品もいくつか飾られている。

　…すると。扉が勢いよく開き、部屋の中に一人の男性が入ってきた。

　ここはレース編み職人の工房のはずである。
　しかし、冒険者達の前に現れたその男。一応ここの工房の主の名前を名乗ってはいるが……ざっと見て身長は190cmを超える大男。肩 幅も広く、引き締まった肉体は、腕利きの戦士と紹介されても納得いくであろう。
　その、大男が。この、レース作品を作ったとは…とうてい信じられない風貌であった。

　と初対面なのに失礼な質問をぶつける。

　またゲンコツが飛びそうになるが、依頼人の手前ぐっと抑える。
　当の本人。その不躾とも言える質問を豪快に笑い飛ばし、

　と、何故か力瘤を誇示しつつ答える。

　勝負…大食いとか、多分その系統なら同じフィールドで戦えると思われる。

　と、茶目っ気のある笑顔で言う。

　一人で呟き一人で決定。
　ウィルトは、さらさらと羊皮紙にペンを滑らせた。
　無骨な手からは想像もつかないが。なかなかに流暢な字体である。

　その解答に、ウィルトは軽く笑う。

　こそこそと、依頼人に聞こえない程度で相談しばし。

　思い出すは、今朝の朝食の注文の事か？

　照れくさいのか少し視線を逸らし、ぽりぽりと頬を掻きながら説明する。

　そういって、ウィルトに話を促す。

　ウィルトから聞いた内容を羊皮紙にメモする。

　と、少し不思議な顔。

　指をおって数えるような仕草をしながら確認していく。

　苦笑しつつ。