依頼人の店 Scenario #122b
職人魂


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オラン 郊外

 銀の網よりてくてくあるく事2時間近く。
 周囲の家々も、だいぶ高級感あふれるものになりつつある。
 銀の網亭のおやじより手渡された―だいぶ字が綺麗だが、おかみにでも代筆を頼んだのだろうか?―地図によると、あの角を曲がったところにウィルトの工房はあるようだ。
 工房…とは言うものの、パッと見たところなかなか小綺麗な店のようである。
 客用の馬車を繋ぐところや、店の外には植木が綺麗に刈り込まれてあった。
 正面の扉。アレクラスト大陸では高価とされるガラスがはめられた扉には、内側より綺麗なレース飾りが施されているのが見える。
■アップル To:おーる
 ここ・・よね・・?

 地図をみながら、きょろきょろきょろ。
 どうやら、高級住宅街には縁がないらしい。
 確かに…周囲の雰囲気と、アップル達の服装にはかなりの隔たりが。
■リュント To:アップル
 ここだろう? おやっさんの地図が正確なら。

■ザン To:リュント
 信用するにはちと不安があるな。

 ひどいご意見。
■アップル To:リュント、おーる
 それが・・心配なのよね。えーと、誰かいるのかな?
 ウィルトさんかなぁ?

 ガラス扉の向こうに人影が見えた。
 アップルはガラス越しに、目を凝らして見ると…どうやらこの扉はミニショップへの入口の扉らしい。
 冒険者達とはかけ離れた格好のご婦人方が、談笑しつつ買い物を楽しんでいる様子が、外から見て取れた。
■リュント To:ALL
 ここが例のリーダーやナミキの無縁と言われる店か・・・

■ナミキ To:リュント
 ナイス度胸な言いぐさね、リュント。

 中にいるご婦人達の服装は、ふんだんに布が使われ、冒険とはまったく無縁の格好である。
■ランス To:ALL
 (あ〜あ、わいは知らんでぇ)
 無縁かどうかはともかく、えらい上品っていうか・・・華やかというか。
 わいらってなんか場違いのような気が・・・

 一応フォローのつもりらしい(笑)。
■アップル To:リュント
 ・・なによぉ。この真新しいラメラ・アーマーとベージュのマントが織りなす清楚さがリュントにはわからないの?

 まぁ、わかってくれる人も……もしかしたら、いるかもしれない。
■リュント To:アップル
 う〜〜ん、俺には真新しいラメラ・アーマーに不釣合いの血痕がついているモールのハーモニーにしか見えんが・・・

■アップル To:リュント
 なによ〜! これでもジールタンのは落としたんですからね!

 「なんならリュントの赤も加えてみる?」という言葉が浮かんだということは永遠に秘密。
 だって花も恥じらう女の子ですもの。

 その横で、ジールタンは、そこのグリップに付いている、緑色の体液じゃない?
 な〜〜んて言葉は飲み込んでおく。リュントくんてば大人ー。
■ザン To:アップル
 こらこら、アップル殿。武器の手入れはちゃんとせんといかんぞ。
 血糊が付いたままでは、そのうち錆びて使い物にならなくなるぞ?

 マジレスをするおやぢ、ザン。
 武器は冒険者の命を預けるもの。確かにもっともな意見だ。
■アップル To:ザン
 だって、”ぐちゃ”っていった後って取りづらいんですもの・・ぶつぶつ。

 表現を変えるか、もうすこし小声で言おうね。花も恥じらう乙女でしょ?
 正面の扉前にて…しばし躊躇する一行。
■リュント To:りーだー
 大人しく、裏口に回ろうか?
 冒険者に仕事を依頼したなんて、この界隈で知られたく無いかも知れないし。

■アップル To:リュント
 そうね、あのガラス扉から入るのは、なんだか負けって感じがするし。

 いや、それは私的な感情だと思う。
 ……ともかく、裏口を探すことにした。
 裏口は程なく見つかった。
 表の可愛らしい扉と違い、こちらは質素。むしろ、冒険者達にとっては見慣れた扉のように思える。
■リュント To:アップル
 鉄則通り、3点セット(聞き耳、罠感知、鍵開け)やっておく?

 と、ベルトポーチから7点セットを取り出そうとする。
 いや、それやったら不法侵入だし(汗。
■ザン To:リュント
 やめんか。
 依頼を受ける前から不審がられてどうする。

 言いつつ、その拳骨がリュントの頭を狙っている。
 今度こそ外してなるものかと気合充分なせいか、その拳は見事リュントの頭を捕らえた。
■リュント To:ザン
 痛〜〜〜!
 兄者よ!手加減してくれないと、そのうち殺人事件になるぞ!

 情けない声ながらも、抗議の声が。
■ザン To:リュント
 大丈夫だ、馬鹿は死なん。

 それって『馬鹿は死ななきゃ治らない』の間違いだと思うの……。
■リュント To:心の声
 それでもめげないぞ・・・
 いつか兄者の背後を取ってやる・・・

 と、メラメラ闘志を燃やすリュントであった。
■アップル To:リュント
 鍵くらいはついているかもしれないけど・・・・
 強行は、最後の手段にしておきましょ。

 てか、強行手段するのですか!という、天からの突っ込みが入りつつ、アップルは扉をノックした。
■声 To:ALL
 あいてますよ〜

 中から。緊張のかけらもない声がする。
■リュント To:独り言
 ちっ! せっかく腕が試せるチャンスだと思ったのに・・・
 どうも〜〜 こんちわ〜〜

■アップル To:扉の向こう
 失礼します・・

 扉をあけて、顔をちょっとのぞかせてみる。
 扉の向こうは、適度にこざっぱりと片付けられた部屋であった。
 荷物を出し入れする場所なのか、幾つも箱が積み重ねられてある。
 部屋の中央に備えてある机に向かって、多分返事をしたであろう女性がなにやら書き物をしていたようだ。
■女性 To:ALL
 あら…お客さん?
 何か御用でも?

 書き物の手を休め、冒険者達のほうを見上げた。
■リュント To:女性
 どもども、貴方はウィルトさん?

■女性 To:リュント
 あははは
 私は師匠じゃないわよ〜って、貴方達…師匠に御用?
 …ていうか、どなた?貴方達。

 手に持つペンを置き、冒険者達に向き合う。
■リュント To:女性
 俺らは冒険者で、あなたの師匠が「銀の網亭」へ貨物輸送警護の依頼を出したろ?
 それを見てやってきたのさ。
 良かったら師匠に取り次いでもらえないだろうか?

■女性 To:リュント
 冒険者…銀…あ〜〜。言ってた言ってた。
 なんだ。てっきり正面から来ると思ってたし…ほら。お嬢さん達も冒険者なの?
 そうは見えないんだけどなー…

 お嬢さん。きっと該当者は3名。
■ザン To:シーリー
 我々のような者が表から入っては迷惑になるかと思ってな。
 ……失礼する。

 頭を屈めて店内に入る。
■シーリー To:ザン
 あら。
 表のショップは、殿方も買いに来るときもあるから…そう気になさらなくってよかったのに(笑)。

 と、明るい笑い声をあげる。
■女性 To:リュント
 アタシの名前はシーリー。
 師匠ね…待ってて。ちょっと呼んで来る。

 シーリーと名乗った女性はそう言うと、奥の部屋へと出ていった。
■リュント To:女性3人
 良かったな! 冒険者には見えない女性だって(笑)

 と、隣に居るアップルを肘で突っつき、
■アップル To:リュント
 あらリュント、嬉しいわ。

 言葉と口調に、やけに温度差があると思うのは気のせいだろうか?
■ナミキ To:アップル
 わー、アップルこわーい。

 茶化すナミキに、
■リュント To:アップル
 ごめん、リーダー。調子に乗りすぎてた・・・

 少しガクガクブルブル気味なリュント。
■アップル To:リュント
 いえ、リュントさん、大丈夫ですわよ。気にしないでくださいね。

 適齢期の女性の笑顔で接してみたりなんかする。
 微妙に違和感を感じるのは…きっと気のせいであろう。
■ザン To:独り言、のつもり
 普通の街娘に見えるとも言われていなかったがな。

 化け物に見えたとでも言うつもりか?(笑)
■アップル To:ザン
 あら、ザンおじさま? 私たちのような素直な小娘が、他に何に見えて?

 心なしか。「おじさま」に、強調がみられるかもしれない。
■ザン To:アップル
 可愛らしい素敵な街娘、だ。

 気のせいか。額にうっすらと冷汗が光っているような。
 戦いの相手は、別にモンスターに限ったワケではない。
 何気ない日常にも、戦いは潜んでいるようだ。
■リュント To:ザン
 おぢさまだって!!
 いや、何でもないよ兄者。独り言。

■ザン To:リュント
 人の事を言える歳か。
 お前だってもう30だろうが。

 おやじーず結成か?
■リュント Toザン
 だから、兄者って読んでるし〜〜
 もしかして、名コンビ?

■ナミキ To:ALL
 まあ、あたしはどう見られても気にしないけど……。
 みんな見る目がないのよね、こんな可愛い娘たちが集まっているのに。

 「やれやれ」といった風にため息をひとつ。
■アップル
 (それにしても・・・)

 他の2人はともかく、アップルは比較的背が高いので、鎧を着ていれば、まぁ普通の街娘にはみえない。
 そのため、シーリーの台詞に内心首をかしげていた。
 …幸い、自覚はあるようだ(笑)。

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 GM : shuu
 mail: shuu@ichinoseki.ac.jp