ジュナイル邸 食堂 |
明るいパステルカラーにまとめられた店内に入ると、そこは文字通り甘い香りに満ちたかわいらしいケーキ屋さんと言った雰囲気だった。
日の光を取り込む出窓に置かれた花瓶には瑞々しい花が飾られ、チェック柄のテーブルクロスにはポプリの入った小さな素焼きのつぼが置かれている。
そして、当然店員も、頭に可愛らしいリボンをつけ、愛らしいエプロンを掛けた……
■店員 To:フィアルラ |
おぅ、ねぇちゃんか……。 また姉御……マリーお姉さんに用かい? |
■フィアルラ To:店員 |
あはははは、ははぁ……こんにちはぁ(^^;) えと、そうなんですけど……マリーさん、いらっしゃいますか? |
頭に可愛らしいリボンをつけ、愛らしいエプロンを掛けた一見して盗賊風の、死んだ魚のような目でこちらを見てくる店員になるべく近づかないようにして、そう尋ねた。
■フィアルラ |
うう、いつ来ても思うけど……店員さんの人選、考え直した方がいいと思う……。 |
それと、品物に含まれる砂糖の含有量もね。
■店員 To:フィアルラ |
……俺を避けてるんだよな……分かるよ。 でも、仕方が無いよな……でも、でもな…… |
その時、店の奥からマリーお姉さんが姿をあらわした。
■マリーウェラー To:フィアルラ |
あら、フィアちゃん。いらっしゃい。 ちょうど新作の美味しいケーキが焼きあがったところなのよ。 さすがに、いいタイミングは逃さないわね。 |
いいタイミングなのだろうか。
■フィアルラ To:マリーウェラー |
あうううぅぅ〜(T-T) え、遠慮したいんですケド……ダメです……よね? 一人分で良いですから……。 |
こう断っておかないと何人分でも出てくるらしい。
■フィアルラ To:マリーウェラー |
あ、それと。 今日はお茶を飲みに来ただけじゃなくて、お仕事の話なんですけど。 |
仕事でどうしても、って以外では極力足を運ぼうとしないクセに。
■マリーウェラー To:フィアルラ |
あら、そうなの? それじゃ、ちょっと待ってて。 |
マリーウェラーは一度店の奥へ消えると、きらきらと光を反射する不思議なケーキと紅茶、そして水差し程度のつぼを持って戻ってきた。
■マリーウェラー To:フィアルラ |
はい、お待たせ。 新作のケーキと紅茶よ。 |
手早く紅茶のカップとケーキの皿を並べると、つぼを手にし、カップに中身をドボドボと流し込んだ。
……1:9ぐらいの比率かな。
■フィアルラ To:マリーウェラー |
(ケーキを指して) こ、この反射光は一体……(^^;) それに、マリーさん。あの、そのつぼの中身は……なんです? |
聞くと後悔しそうだが、聞かずに口に含む気にはとてもなれない。
どうせ口にしなければならないことに変わりは無いのだが。
■マリーウェラー To:フィアルラ |
お砂糖を溶かして板にしたものケーキを何段にも重ねて、その回りをまた溶かしたお砂糖で固めるの。そして、その上から粉砂糖をふったのよ。 綺麗でしょう? それと、こっちはガムシロップ。 フィアちゃんて、紅茶にお砂糖入れないんだっけ? |
■フィアルラ To:マリーウェラー |
いえ、入れます……入れるんですけどぉ……。 あの、スプーンに2杯ほどでいいんですケド……(T-T) |
■マリーウェラー To:フィアルラ |
それで、聞きたいことってなぁに? |
■フィアルラ To:マリーウェラー |
あ、はい。 えっとですね、今『ジュナイル・ルドファ』って方の依頼を受けているんですけれど。 お仕事の内容はちょっと言えないんですけど、それでそのジュナイルさんが信用に足る人物なのか、って仲間内でそんな話が出まして。 それでジュナイルさんに関して、判る限りの事を聞かせてもらえたらと思って。 |
■マリーウェラー To:フィアルラ |
信用に足る人物かですって? うーん、難しい質問ね。 私も、結構お花が好きだからその人のことは知ってるわ。 商売も、お花に関しても、結構強引なところがあるのよね。 根は悪い人じゃないと思うんだけど……。 |
■フィアルラ To:マリーウェラー |
うーんと、聞き方が悪かったですか? えっとですね、それじゃ……裏で何か、人に言えない悪いことをしているとか、そういうお話を聞いた事とかはあります? もしくは、その強引なところ……強引過ぎて、取引の相手さんを困らせたり泣かせたりすることがよくあるとか。 |
■マリーウェラー To:フィアルラ |
まぁ、あれだけ羽振りがいいんですもの。 清廉潔白な人じゃないわよね。 強引過ぎて相手を泣かすなんていうのは、よくあるみたいね。 |
■フィアルラ To:マリーウェラー |
へぇ……。 それじゃ、恨んでる人も多いんじゃ……? |
■マリーウェラー To:フィアルラ |
まあ、多いでしょうね。 |
■フィアルラ To:マリーウェラー |
少なくとも、評判が良いとは言えないみたいですねぇ。 うーん、余計な事にまで巻き込まれなきゃいいケド。 |
言いつつ、殆ど無意識にケーキを一口。
そしてその瞬間、
■フィアルラ |
……う゛っ(汗) |
……まぁ、当たり前の反応である。