SW-PBM Scenario #82 | 目次 |
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ロゾニィ屋敷 2階 |
時は少し遡って、敵が逃げた直後のバルコニー。仲間のうち 2 人はその片方を追ってやはり森へと消えていた。
一部始終をバルコニーから見ていたレヴィックは、玄関から庭に出ようと部屋に戻った。すると、足元に小さな影が 1 つ。小さな子供の姿をした、ブラウニーだ。
■ブラウニー(精霊語) To:レヴィック |
エマが呼んでる。薄紅の薔薇の部屋で会いたいって呼んでる。 |
■レヴィック(精霊語) To:ブラウニー |
え?エマさんが?……それは行かなくてはいけないね。 薄紅の薔薇の部屋…は、どこのことかな? |
レヴィックはブラウニーの後をついて部屋に行った。
レヴィックが案内されたのは、昨夜フィオンと 2 人で来た時に道から白い影を見た部屋だった。ブラウニーはまっすぐ窓際に歩いていく。しかし部屋の中には誰もいない…… その瞬間、雷が窓の外に閃いた。一瞬、部屋の中を白く染める。その光の中に、小柄な老婦人の姿があった。白髪を円く結って、こちらを見て優しそうに微笑んでいる。
■老婦人 To:レヴィック |
お呼びだてしてごめんなさいね。一言お礼を申し上げたくて…… あの者を追い払っていただいたのね。感謝いたしますよ。 |
レヴィックには、老婦人がまとっている黄色のオーラがはっきりと見えていた。しかし、うやうやしくその婦人に一礼する。
■レヴィック To:老婦人(エマ) |
…貴方がエマさんなのかしら。始めまして、レヴィックと言います。 お屋敷を勝手に歩き回ってしまってゴメンナサイ。この屋敷を少し調べさせてもらっているものだから…。 …率直にお伺いするけれど、どうしてエマさんはココに留まっているのかしら?何か気がかりでもあって? |
不躾と思いつつも、直球で質問をぶつける。実は外の仲間のコトもあって内心焦っていたりもして。そんなレヴィックのようすを見て、エマの霊はちょっと昔を懐かしむような顔をした。
■エマ・ロゾニィの霊 To:レヴィック |
あらまぁ。若い方は良いわねぇ。素直で、少しせっかちで……かわいらしいわ。実はあの者の仲間かと思って少し怖かったのよ、なんて言ったら困らせるだけかしらね? |
そして、いたずらを楽しむような顔で笑った。その様子にレヴィックもばつが悪そうに笑い返す。焦りが和らいだ感じがする。
■レヴィック To:エマの霊 |
いいえ、そう思うのも当然だと思うし。 でも、信じてもらえたみたいで良かったわ。 |
■エマ・ロゾニィの霊 To:レヴィック |
ええ、もちろん信じますとも。 さて、こんなおばあちゃんになってこの世に何の未練があるのかしら。きっと不思議なのでしょうねぇ。うふふ。 私にはね、どうしても解けない謎があるの。その謎を解かなくては、どうしてもクレマンの所に逝けないのよ。そうだわ!困らせついでに、お願いを聞いてくれないかしら。私の代わりに謎を解いて頂戴。どう? |
■レヴィック To:エマの霊 |
あら、女性に年齢は関係ないっていうし。その謎を解いたら貴方が楽になれるっていうならゼヒ協力させてもらうわ。女の子が困ってるのを見過ごす男じゃなくってよ。 で、その謎って言うのはどんなコトなのかしら? |
■エマ・ロゾニィの霊 To:レヴィック |
まぁ、頼もしいこと。その謎はね、こういう詩の形をしているのよ。あなたに解けるかしら…… |
エマの霊は、朗々と詩を詠い上げた。
「白き薔薇の中の 紅の薔薇
摘みとりし み手の下
光眠りし 暗闇あり」
■エマ・ロゾニィの霊 To:レヴィック |
『私が逝った後、もし困るようならこの詩を思い出すが良い』 私の夫はそう言って神の御許に召されたの。一体何のことなのかしら。優しいお友達のおかげで困ることも無くこんなおばあちゃんになってしまったわ。 |
■レヴィック To:エマの霊 |
お友達って…ブラウニーのことかしら?彼らはとっても気のいい精霊よね。 |
■エマ・ロゾニィの霊 To:レヴィック |
あぁ、ブラウニー。彼らとはこんな姿になって始めて会えたのよ。その時はとても嬉しかったわ。うふふ。 |
■レヴィック To:エマの霊 |
あら。じゃぁ他にもお友達が居るのね。…そのお友達はまだ生きてるのかしら? |
■エマ・ロゾニィの霊 To:レヴィック |
さぁ……。私がこうなってからはお会いしていないのよ。まだ生きている方もいらっしゃると思うわ。 |
また雷鳴がとどろいた。それを追って窓の外にすぐ閃光が走る。雷は近そうだ。
■レヴィック To:エマの霊 |
…雷が近いみたいね…(フィオンちゃん達大丈夫かしら…) ああ、それはともかく詩のことよね。うーん、詩に託したってことからしてもきっとエマさんに思い当たる何かが隠されてるはずなんだけれど…。どうかしら、「白い薔薇と赤い薔薇」で思いつくことって無いかしらね。 |
■エマ・ロゾニィの霊 To:レヴィック |
詩のことは私もよく考えたのだけれど、どうしてもわからないの。「白い薔薇と赤い薔薇」といえば、やはり私達自慢の庭だわ。こちらへいらして。 |
エマの霊は先に立って先ほどの部屋に戻った。開け放していた窓はいつのまにか閉まっている。ブラウニーが、雨が入らないように閉めたのだろう。
■エマ・ロゾニィの霊 To:レヴィック |
ご覧になって。 |
エマの霊が手を差し伸べた先を見たレヴィックは目を疑った。庭には一面に薔薇が咲いている。2 階の窓から向かって左側に白い薔薇、右側に赤い薔薇。そして、それぞれの中央には反対の色の薔薇が咲いている。先ほどまで嵐にみまわれた枯れた薔薇の殺伐とした庭だったはずが、今は甘い薔薇の香りさえ漂ってくるようだ。
■レヴィック To:エマの霊 |
………これは見事な……。 |
■エマ・ロゾニィの霊 To:レヴィック |
あの白い薔薇の中に咲いている紅の薔薇、名前はエマというのです。夫が私のために作ってくれた品種なのですよ。 |
薔薇の幻影は一瞬で消えた。エマの霊の顔には少女のような微笑が浮んでいる。
■レヴィック To:エマの霊 |
…ステキな旦那様だったのねぇ。 でも、そうすると旦那様の詩にでてくる薔薇はあの庭の薔薇じゃないかと思うのだけれど…あの薔薇の根元に何があるか調べてみたりは? |
■エマ・ロゾニィの霊 To:レヴィック |
えぇ、もちろん調べましたよ。庭師に頼んで探してもらったのだけれど、土の下に何かあるようではなかったわ。 |
そこへ、仲間が戻ってきた。待ち伏せをした部屋で5 人がまず見たものは、窓際に立つレヴィック、そして隣の老婦人。足元に子供のような姿が 1 人。
■ユウル To:レヴィック |
ただいま〜。侵入者は見失っちゃったよ。ずいぶん濡れたから、お屋敷汚しちゃうな…って…え?! も、もしかしてその人… |
■レヴィック To:帰ってきたメンバー>エマ |
あら、お帰りなさいご苦労様。成果はどう? あ、そうそうこちらエマ・ロゾニィ婦人よ。 エマさん、あちらはアタシのお仲間。 |
エアヘッドは、面白いものを見つけたように、目をキラキラ輝かせている。
■エマ・ロゾニィの霊 To:ALL |
ごきげんよう、みなさま。雨の中大変だったでしょう。すぐお湯を用意させますから、手足をお洗いになってゆっくりしてくださいな。お茶も煎れましょうね。 |
子供のような姿がふぃっと消えた。ブラウニーが湯と茶の準備をしに行ったようだ。
■シャルル To:ALL、エマさん |
お気遣いありがとうございます、エマさん。 今消えたのがブラウニーさんなんですね。僕、初めて精霊さんをみました♪ ……あ、こんな夜中にお邪魔しちゃってごめんなさい(深々とお辞儀) |
■フィオン To:エマの霊、レヴィック |
ごきげんよう・・・って、ちょっと(^^;! やっと会えたのは嬉しいけど、お茶なんか飲んでる場合?! ゆっくりしてる余裕は無いわよ。雨が上がったら侵入者の追跡行かなきゃ。 |
■レヴィック To:フィオン |
うーん、雨があがってからじゃ遅いかもねぇ…。 ま、どっちにしても説明しなくちゃいけないこともあるし。頂かないこと? |
■フィオン To:レヴィック |
説明? |
■シャノン To:エマさん |
かわいそうに、現世に迷っておられるのですね。 すぐにファリス様の下へ送って差し上げます。 |
と、シャノンは呪文の詠唱をしかける。
■ユウル To:シャノン、エマの霊 |
わ、わ、シャノンちょっと待った!せっかく会えたんだから、話くらい聞きたいし… (…アンデッドだけど…この見かけならなんとか怖くないし…) こ、こんばんは、ユウルです。(自分の姿を見やって)…お言葉に甘えて、着替えさせてもらいますね。 |
■シャルル To:シャノン、エマさん |
ファリス様の下へ……? はわわっ、そう言えばお亡くなりになられていたのでしたーっ(おたおた) って、シャノンさん呪文じゃなくてこの世に残られた未練を解消してあげるのが僕たちの勤めじゃないですか〜(><) |
■エアヘッド To:シャノン |
ソダ、すぴりちゅあるナびじょん、消ス、ヨクナイ。 |
■シャルル To:ALL |
はわわっ、エアヘッドさんが喋ったですよ?!(おたおた) |
■エマ・ロゾニィの霊 To:レヴィック |
おほほほほほ。おもしろいお仲間なのねぇ。 |
エマの霊はそんな一同を見て楽しげに笑っている。
■レヴィック To:シャノン |
……シャノンちゃん、ちょっと気が早くってよ(^^;シャノンちゃんが真面目なのはわかったけれど、憂いを持った人を強制的に連れて行くって言うのはあまり賛成できないわ。 |
■シャノン To:レヴィック |
で、でも……。 …………分かりました。 そうなったならば、一刻も早く憂いを晴らしましょう。 |
ブラウニーがお湯とお茶を持ってきた。
シャノンをなだめつつ、お茶が出ている間にレヴィックは皆に詩の説明をした。
幻影で見えた庭や、その庭をすでに調べてあることも加える。
■エアヘッド |
薔薇ノ名前、エマ…… |
そうつぶやくと、エアヘッドは、エマの手のひらを「じー」っと見つめる。
■シャノン To:おおる |
御手の下に光のある暗闇ですか? 宝が隠された穴でもあるのでしょうか。 薔薇の花が、庭のものではないとなると……エマさんの肖像画という意味にも取れますね。 |
■フィオン To:ALL |
宝って何かしらね〜♪ あれ?でもそれ見つけた場合って・・・コンネル氏の物になるのかしら? |
詩にうっとり…… と言うより、お宝と言う言葉にうっとり。
■シャルル To:ALL |
あ、そう言えばロビーにエマさんの肖像画がありましたね。白い薔薇に囲まれた絵でした♪ |
■ユウル To:ALL |
庭でなければやっぱり屋敷内…白い薔薇の壁紙の部屋は?薄紅の薔薇の壁紙の部屋と対になってる感じだったし、小さい肖像画もあったよね。 実はあの肖像画の裏か本棚に何か秘密があるのかも。 |
■フィオン To:ALL |
もうちょっと各部屋をじっくり調べれば良かったかしらね? でも本棚かぁ・・・あれ動かせとか言われたらキツイかもよー |
言いながら自分の腕の筋肉をもみもみして準備運動。エアヘッドも、もみもみ。
■シャルル To:フィオン、エアヘッド |
えぅ……もしかして二人ともやる気満々です?(^^;) |
■レヴィック To:ユウル、シャルル、ALL |
そうね…庭にばかり注目していてもダメなのかも。 一度調べてみましょうか。 |
■エマ・ロゾニィの霊 To:ALL |
私も仲間に入れてちょうだいね。一緒に探したいわ。 |
■レヴィック To:エマの霊 |
じゃぁ、せっかくだから一緒に。 |
■シャルル To:エマさん |
はい一緒に行きましょう♪ |
シャルルは、思っていたよりも幽霊は恐いものではないと認識を改めた。
■エマ・ロゾニィの霊 To:シャルル |
ありがとう、坊や。良い子ね。 |
シャルルの頭をなでなで……
しようとした手の感触をシャルルが感じることはなかった。それでもなでなでしてくれたのは分かったのでシャルルは大変嬉しそうだ。
■レヴィック To:エマの霊 |
それから。さっき聞きそびれてしまったんだけれど。さっき来た人物って…知り合いってわけでもないみたいなんだけれど、この屋敷で何をしたいのかしら? |
■エマ・ロゾニィの霊 To:レヴィック |
さぁねぇ……。あの者は 4、5 日前に突然入ってきたの。それから毎日、昼は出かけていて夜は帰ってきて休んでいたわ。いくら隠れても、私のこと見えているみたいで…… ブラウニーも脅されたと言っていたし。私達にはそれ以上何もしなかったけれど、気味が悪くてねぇ。しかも、遊びに来てくれた若い人を殺したりして。出ていってくれてホッとしましたよ。 |
ちょっと憤慨しているようだ。
■シャノン To:エマさん |
遊びに…… |
■エマ・ロゾニィの霊 To:シャノン |
ええ、いろんな方達が来てくれましたよ。お友達同士や恋人同士で。でも、私が姿を見せるとみんな逃げてしまうの。ですから、帰るところをそうっと部屋の窓からお見送りしていたのです。 |
にこにこと楽しそうに答える。
■シャルル To:エマさん |
お、お見送り……あはは(^^; |
■ユウル |
(小声で)…それは、かなり怖い… |
■エマ・ロゾニィの霊 To:フィオン、レヴィック |
そういえば、貴方達は昨夜もいらっしゃったわね。しっかり腕を組んで、恋人同士のように見えましたけれど。いいわねぇ、若い人は…… |
エマの霊は、フィオンとレヴィックを見てにこやかに微笑む。
■シャルル To:レヴィック、フィオン |
う、腕を組んで恋人同士のようにぃ?! |
■シャノン |
……。 |
■レヴィック To:エマの霊>フィオン |
(ぶっ……)あ、あれは(^^; 門番がいたんでその…ねぇ…。 |
目線でフィオンに助けを求めてみるレヴィック。その隣ではシャルルも「そうなの?そうなの?(涙)」と目線でフィオンに問い掛けている。
■フィオン To:ALL |
そ、そーよぉ。 門番の目を欺くために、カップルの”ふり”をしただけなんだからっ! や、やだわエマさんたら。そーゆーのを見てたのね(^^; 俗っぽいんだからー、あはは。 |
シャノンの様子を伺いつつ、なんか必死に言い訳。
■シャノン To:フィオン、レヴィック |
怪しい二人組みとは、レヴィックたちのことだったのですね。 見張りの方たちが怪しいと思うような"ふり"だったんですか……。 |
■フィオン To:シャノン |
見張りの人が怪しんだのは、私達が魔法を使ったからよ、きっと。 |
いくらか冷静になって受け答え。
■エマ・ロゾニィの霊 To:ALL |
あ、あら……。私ったら、何か悪いことを言ってしまったのかしら。ごめんなさいね。 |
のん気なエマの霊も、さすがに何だか微妙な空気を察した。涙目のシャルルと元気の無いシャノンを見てオロオロ。
■レヴィック To:エマの霊 |
……と、それじゃぁこれから探し物をするとして。アタシはさっきの人物が気になるし、外をもう一度見てくるツモリなの。 エマさんは彼女(ユウル)達と一緒に行ってもらってもよくて?この子達(ブラウニー)と話せるのもアタシ除くとエマさんしか居ないし。 |
■シャノン To:レヴィック |
一人では危険ですよ。 私も行きます。 |
■エマ・ロゾニィの霊 To:レヴィック |
こちらは任せてちょうだい。 |
■ユウル To:エマ・レヴィック・シャノン |
よろしく、エマさん。二人とも、気をつけてね。 |
■フィオン To:レヴィック、シャノン |
行ってらっしゃい。 |
フィオンは濡れるのが嫌なので外には行かない。
ロゾニィ屋敷 庭 |
逃げた侵入者が殺人を犯したことは確からしい。それを追うためにレヴィックは古代語魔法のライトをロッドにかけ、それを持って再び外へ出た。すぐ後にシャノンが従う。
外は依然として雨が激しく降っている。しかし、雷は遠ざかってしまったようだ。玄関前には相変わらず番人がいる。こちらに向けてランタンを振って、異常が無いことを合図している。
■レヴィック To:シャノン |
アレはシャノンちゃんが頼んでくれたの? |
■シャノン To:レヴィック |
はい。 確か、昨晩もあの方たちが見張りをしていたはずですよ。 |
声が少し硬いかも。
■レヴィック To:ALL |
?シャノンちゃん、大丈夫?寒い? さっさと、足跡を探してしまわないとね。とにかく四阿まで行って見ましょうか。 |
■シャノン To:レヴィック |
……いえ、大丈夫です。 そうですね、急ぎましょう。 |
激しい雨の中を四阿まで走る 2 人。まだ残る激しい風が、ときおりシャノンの足元を掬おうと吹きぬける。
■シャノン To:レヴィック |
すごい嵐ですね。 気をつけていないと、飛ばされそう……。 |
ようやくその中を四阿まで辿りついた。
さっそくレヴィックはロッドに灯した魔法の明かりを頼りに謎の人物の足跡を探す。しかし、形跡は激しい雨に流されてしまったようで、彼の目でもそれを見つけることはできなかった。
■シャノン To:レヴィック |
これでは、さすがに無理のようですね。 |
■レヴィック To:シャノン |
そうみたいね。さ、これ以上ぬれるのもなんだし、戻りましょうか。 |
■シャノン To:レヴィック |
そうしましょう。 |
2 人は犯人の捜索に見切りをつけて、館に戻ることにした。
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