廃倉庫 |
まず一行は取引に使われると思われる場所の下見を始めた。最初にやって来たのは港の北の方にある廃倉庫である。
この辺りは港からは若干離れており、荷の積み卸しなどを行うには不便なのであろう。一帯の倉庫はここしばらく使われたような形跡も手入れされた形跡もなかった。どちらかというと、単なる物置に使われているようにと思われた。
肝心の廃倉庫は、周囲のものと同じくらいの大きさ(縦30×横20m)だったが、それらよりも遙かに劣化が激しかった。正面にある荷の運搬口の扉も片側が破損していた。内部にはもはや使われていない木箱が、ところどころにうずたかく積み上げられ、放置されていた。故に中の様子は外からは見えないようだった。
また、突き当たった正面の壁には裏に抜けられる勝手口が二つあった。
とりあえずアレクサンドロスは隠れるのに都合のいい場所を調べてみたが、よさそうな場所は見つからなかった。
■ リシィア To:ALL |
かなり荒れてるみたいですね。 人が寄りつきそうもないですし……それがいいのでしょうけれど(^^; |
言いつつ、リシィアは調査を開始した。
勝手口の扉は開閉状況を調べてみたが、両方ともきしむ音は立てるものの、比較的スムーズに開閉が出来た。錠前をつけるための閂はついているようだが、完全にさび付いており、よほど強い力でひかないと閂をかけることは無理だと思われた。
特に倉庫自体に怪しい仕掛けなどはないようだった。
■アルフレッド To:ALL |
近くから見張るのは難しそうだな、表の入り口のドアは壊れてるからどうしようもないけど、勝手口の方なら「ロック」をかければ使えなくする事は出来るんじゃない? |
■ リシィア To:アルフレッド |
わたしも同じ事を考えていたところです。 でも、あらかじめ開かなくしてしまうと、不審に思われるかも知れませんね。 |
空き地 |
続いて、一行は空き地をの下見にやってきた。大通りを少し入った横道に面しているが、港の東のはずれの方にあり、やはり不便そうな場所であった。あちこちに破損した船の一部やもはや使用されていない箱が山と積まれており、どちらかというと廃材置き場のようになっていた。外からはやはり視界がほとんど通らなかった。
周囲は建物で囲まれており、塀をよじ登るのでなければ、出入りする場所は一行のやってきた横道以外はなさそうである。
エルステッドはおもむろに破損している船の一部、箱などを調べ、
■ エルステッド |
ふむ……この程度の強度ならば、私は乗る事はできるな……金属製の重い装備では少々心許ない所ではあるが…… |
続いて塀を調べ、
■ エルステッド |
かなり頑丈な塀だな。 これを壊すのは……ただの無駄な労力にしか過ぎぬだろう。 |
地面については、
■ エルステッド |
ふむ。ここならば地の精霊の力を借りる事は容易だな。 スネアなども問題はないだろう。 ……私がへまさえしなければ、だが……。 |
……あまりせっぱ詰まった状況で詠唱をしたことがないのか。
仲間達に気付かれぬよう、エルステッドは平静を装っているようだ。
■ アレクサンドロス To:エルステッド |
ん?どうかしたのか?そんなとこでぶつぶつ呟いたりして。 |
■ エルステッド To:アレクサンドロス |
ああ……ここの足場になりそうな所がな。私のような皮鎧ならば大丈夫であろうが、金属鎧のような重い物を身に付けていると……あまり乗らぬ方が良い見たいなのだよ。 だが、このように土が露出しているからな。土の精霊の力を借りる事ができるというのが判明し、少しほっとしている所だ。 |
アレクサンドロスが調べたところ、隠れる場所にはことかかないようだった。しかし、場所によっては足場が崩れて思わぬ事故も起きそうである。
■ アレクサンドロス To:ALL |
こんなもんか? ここに隠れて待つなら足下には気をつけないといけないみたいだな。 |
■ エルステッド To:アレクサンドロス |
ああ。アレクサンドロス殿やギャスパー殿は金属製の鎧を身につけているから……。移動には充分注意せねばならぬと思う。 |
■ギャスパー To:エルステッド |
そうだな。うまく相手を封じ込められる位置から見張らねぇとな。 |
■ エルステッド To:ギャスパー |
ここの足場や箱を少し移動し、見張りしやすいように組み替えた方が良いかと思うが、ギャスパー殿はどう思うか? 簡単なのでよければ、野外の罠も仕掛けられると思うのだが…… |
■ギャスパー To:エルステッド |
うーん、身を隠す場所は十分ありそうだし、変に動かすとかえって警戒されそうな気がしねぇか? 罠の方は賛成だけど、レイラックが来るより先に、取引相手が引っかからねぇといいな。(笑) |
■ エルステッド To:ギャスパー |
確かに……今日来たばかりの我々よりも、前もって下調べしているやもしれぬしな。 ここは下手に動かさぬ方が良いのだろうか…… |
まだ、悩んでいるようである。
■アルフレッド To:ALL |
出入り出来そうな道が一つしかないのは幸いだな、奴が中に入ってから出口を塞いでしまえばそうそう逃げられんだろう。 |
■ エルステッド To:アルフレッド |
そうだな。 ここはじっくりと……入ってくるかもしれぬ、というのを待つしかない場所ではあるな。 |
■ リシィア To:ALL |
他に出入り口が無いようであれば、入り口だけ見張っていればいいという事になりますね。 廃材に隠れるのは少し危険な気もしますし、入って行く所だけ確認できれば問題無いですよね? |
■ギャスパー To:ALL |
どうだろ? 空き地の中じゃなくて、この横道に罠を仕掛けておくってのは? 相手が入ったのを確認してから、足首の高さにロープを張っておきゃあ、逃げられたときの保険にならねぇかな? 馬車や荷車を買って、横道を塞ぐってのもありだろうけど。 |
■ エルステッド To:ギャスパー |
馬車や荷台など、目立つ物を使うのはどうかと思うが。 うまくいけば、ではあるが……足を引っ掛ける程度であれば、ノームの力を借りれば、物は使わぬともできるやもしれぬぞ。 |
■ ギャスパー To:エルステッド |
そういや、そんな魔法もあるらしいな。(苦笑) ま、あんたがここの担当にならなかったら、そういう仕掛けも使えるってことで。 |
■ エルステッド To:ギャスパー |
まぁ、そうではあろうが。 ……そういえば、捕獲用の網などは準備しておかなくて良いのか? 地面に仕掛けておくにしても。後から投げつけるにしても。あった方が比較的楽に捕獲できると思うのだが。 |
彼の中では、微妙に人を捕まえるのから、獲物を捕まえる話に移っているらしい。
■ エルシア To:エルステッド |
どちらにしても、どの精霊力が働いているかは確認しておいたほうがいいわね |
そういうと、エルシアは精神を集中させ、精霊力を感知しようとした。
■ エルステッド To:エルシア |
いや、、、、、まぁ、精霊が居なければ、借りる力も借りれぬからな。 |
すでにに調べた、という事を伝えようともするのだが。精霊についてはエルシアの方が得意という事もあり、無駄な口を挟むのはやめたようである。
空き家 |
一行が続いて向かった空き家は単なる家と言うよりも、家と倉庫を兼ねてる場所だった。
一階部分と二階部分に分かれており、一階が倉庫として使われていたらしく、残されたものが片隅に並べられてあった。それほど倉庫としての規模は大きくないため、どちらかというと物置のようにも思われた。
一階部分の大扉を開けると中を一望できるほどに視界が開けた。奥の方にある階段を上ると二階に出たが、二階部分も一階と同じように隅の方に使われなくなった家具などが押しやられていた。部屋はその一つっきりで仮住居として使われていた物と思われた。
建物自体は大通りを少し入っただけの横道に面しており、正面玄関からも裏口からも楽に出入りできるような場所だった。
アレクは隠れられそうな場所を探して回ったが、屋内に隠れられそうな場所はなかった。屋外ならば、壁に張り付くなりして隠れることも出来るであろうが、けっして隠れるのに適してるとは言えなさそうだ。
■ギャスパー |
裏口の先には別の家…か。こっちから出入りされるとやっかいだな。 |
■ アレクサンドロス |
・・・ん〜、ここは離れたところか見張るしかない、、か? |
■アルフレッド To:ALL |
そうだな、出入り口を限定したいなら俺が「ロック」をかけてもいいけど見付かったら怪しまれるからな、奴が中に入ってから逃げ道を塞ぐ感じでやったほうが効果的じゃないかな? |
■ギャスパー To:アルフレッド |
そうだな。窓から逃げられないように塞いでおくか? そうすりゃ、出入り口だけ押さえりゃ済むから楽だろう? |
■ エルシア To: ギャスパー |
出入り口に関しては、油の樽を用意して、まいてやるっていう手もあるんじゃない? 両方まいたら後始末も大変だし、どちらか片方の出入り口に巻くとかね。 |
エレミア市街 |
現場の下見が終わった一行は今夜行われるであろう取引に関する情報探しに聞き込みにでた。
こういう場合は人の集まりやすいところほど情報が集まりやすい………ということで、やってきたのは人通りの多い下町。
表通りは活気があり、老若男女問わず多様な年齢層や階級層が多くあつまる場所だった。が、一歩裏道に入れば、とたんにいかがわしい店が多く建ち並ぶようになった。ようは表と裏が明白に別れている下町であった。
ざっと空き地を調べたエルステッドは、そのまま聞き込みに回る事にした。
■ エルステッド To:シルフ |
さて…… 我が友たるシルフよ、"人間"が多く居る場所を教えておくれ…… |
エルステッドの呼びかけに応じて、シルフが囁くように答える。
■シルフ To:エルステッド |
見ての通りここにたくさんいるわよ〜。 |
やはり、精霊は精霊のようである(笑)
しかし、そんな反応になれているのか。表情ひとつ変えずに、
■ エルステッド To:シルフ |
ふむ。聞き方が判りにくかったようだな。 では、この周辺……この街で。"人間"の密度が一番高いところはどこだ? |
■シルフ To:エルステッド |
ここら辺(表)よ〜。 あっち(裏)の方が人が少ないからわたしたちも自由に動けるの〜。 |
■ エルステッド To:シルフ |
そうか、つまらぬ事を聞いてすまなかったな。 では、自由に遊ぶがいい。 |
シルフから情報を得たエルステッドは、
■ エルステッド To:ALL |
私はここ(表)で聞いてみる事とする。皆はどうするのだ? |
■ リシィア To:ALL |
私は少し、近くにある宿屋を回ってみようかと思います。 ひょっとしたら、取引以前に居場所を知ることが出来るかも知れませんしね。 |
■ アレクサンドロス To:エルステッド&ALL |
そうだな、じゃあオレは適当な冒険者の店にでも行ってみるか。 またオレ達みたいに冒険者を騙して上手く利用しようとしているのかもしれないしな。 |
■アルフレッド To:ALL |
そうだな、シーフギルドに隠れてやってる訳だから護衛を付けようと思えば冒険者を雇うしかないからな。 名前は変えてる可能性が高いから最近護衛の為に冒険者を雇った奴がいないか調べて見よう。 ついでに、連絡係を探してもいいしな。 |
■ エルステッド To:アルフレッド |
ふむ。 然るに……私達のような冒険者を探せば良い、といったところなのか? |
と。いまいち要領を得ていない様子の新米冒険者。
■ギャスパー To:独り言&エルシア |
俺はどうしようかなぁ…。 エルシアさんや、もし裏町で情報集めするんなら、俺が用心棒代わりについていこうか? |
■ エルシア To:ギャスパー |
そうね、お願いしようかしら |
そういうと、ギャスパーをつれて、エルシアは裏通りにある酒場へと向かった。二人は酒場だけでなく、街角に屯しているちんぴら等にも少し話を聞いてみた。
エルシアは今一芳しい情報は得られなかった。しかし、ギャスパーが小耳に挟んだ情報に、一行が先ほど調査した廃倉庫の周りを妙にうろうろしている男二人連れがいたというものがあった。二人のうち、片方は頑強な体躯であり、もう片方は小男だったが目つきに鋭いものがあったとのことだった。先ほどのシルフの案内に従って、エルステッドは表通りで聞き込みを始めることにした。
酒場に始まり、武器屋、各種ギルド、はてはうわさ話にも耳を傾けた結果、えられた情報は、昨夜か一昨日辺りにレイラックと背格好が似ている人物が大荷物と共にエレミアにやってきたということだった。
■ エルステッド |
大荷物……とな。熊のような荷物にしても、雄牛のような荷物にしても。 その取引相手がいかなる人数で来るのかが気にかかる所だな。 さて……次はどうしたものだろうか…… |
残るアレクサンドロス、アルフレッド、リシィアも表通りで情報の収集を開始した。
リシィアが得た情報は基本的にエルステッドと変わらない物だった。アルフレッドが冒険者の店に護衛の依頼が来てないかどうか調べてみたが、レイラックの物と思われる護衛の依頼は見つからなかった。
アレクサンドロスが聞き込みを続けた結果、妙にかさばる荷物を持った中肉中背の男が港の方………、廃倉庫のちかくに現れたらしいという情報が入った。
暇をもてあましたエルステッドは単身(?)港に向かった。
まだ日が沈んでない今現在、港は活気に満ちていた。客船から降りてくる者や港付近の酒場など、人がもっとも集まりそうなところを聞き込んだところ、柄がいいとは言えない船着き場でちょっとした情報収集。
■ エルステッド To:酒場の男 |
失礼。お話をさせていただけるだろうか? |
朗らかに酒を飲んでいるからだろうか。見知らぬエルフの青年に、その男は嫌な顔せず話を聞かせてくれた。
なんでも行商と名乗っている男がやってきたそうだが、積み荷に統一性は全くなく、妙にかさばるものばかり積んでいたという。背格好も聞いてみたところ、やはりレイラックに似ているようだった。この酒場は廃倉庫にかなり近いということも同時にエルステッドの脳裏をかすめた。
■ エルステッド To:酒場の男 |
有り難う。感謝する。 |
そっと酒場の隅に移動するエルステッド。彼の頭には先程下見した場所達が浮かぶ。
■ エルステッド(独り言) |
先程の倉庫に近いこの場所で。奴が目撃されていると言う事は……倉庫にて取引を行う、と考えた方が順当なのだろうか……? |
こうして調査は進んでいったのであった。
エレミア市街 |
下調べを終えて数時間後。日が沈み、辺りが薄暗くなりかけてきたころ、一行はそれぞれの場所で待機することにした。
廃倉庫にアルフレッド・エルシア・ギャスパー・エルステッドの4人、空き家にアレクサンドロス、空き地にリシィアの各一人ずつである。聞き込みの結果、廃倉庫が一番怪しいと思われたが、念のため他の場所にも見張りを一人置いておくというわけである。ついでに連絡係として他の冒険者も4人雇った。体制を万全に整え、待ち続けること数時間………。
廃倉庫に二人組の男が現れた。片方は頑強な体躯であり、もう片方は小男だった。辺りをきょろきょろ見回しながら、廃倉庫の中に入っていった。
■ギャスパー To:(心の声) |
(ん、あいつらかな…?) |
長時間の待機で少しだれていた体にカツを入れつつ、男達に見覚えがないか、ギャスパーは自分の記憶を探ってみた。
エルシアは隠れているところから、入ってきた男達の様子を探った。
同様にエルステッドもアルフレッドもその男達に見覚えがないか記憶の糸をほぐしてみたが、やはり誰にも見覚えはなかった。
■ギャスパー To:エルステッド |
レイラックじゃあねぇみてぇだけど、取り引き相手かな? 今のうちにアレクとリシィアさんに連絡すれば、レイラックが来るまでに、こっちも全員揃うんじゃねぇか? |
■ エルステッド To:ALL |
それもそうではあるが……よもや奴らの片方が、レイラックが変装した姿ではなかろうか? 私達が遠くから見ているだけでは……まだ判断は付かないかと思う。 |
■ギャスパー To:エルステッド |
うん、とりあえずはこのまま様子見だな。とりあえず伝令を出して、二人にはこっちに来てもらおう。 |
■ エルステッド(独り言) |
"先輩"たるエルシア殿。貴方ならば"姿隠し"の呪文が使えるのではないか? ここで見ているよりも。より中の様子を伺い知る事ができるかと思うのだが…… ……ここに居らぬから……ふむ。伝える事はできぬな。 あらかじめウィンドボイスをかけておれば……今からでも……遅くはないか? |
じっと廃倉庫の方を睨み付けながら、そっと呪文を唱える為に体勢を整える。
二人の会話に耳をとぎすましてみたエルステッドだが、風向きが悪いのか何も聞き取ることは出来なかった。
ギャスパーも同じく聞き耳を立ててみるが、やはり聞こえなかった。
いずれにしてもこの場所が取引の場所になることは間違いない………そう思ったエルステッドは待機させていた冒険者二人をアレクとリシィアの元に走らせた。
■ギャスパー To:雇った冒険者たち |
目的の男はこのあと来るかもしんねぇから、大通りからこっちにくる辺りから、静かに近づくよう伝えてくれや。 |
一方のアレクとリシィアはというと、どっちの場所にも特に何も起きていなかった。
いい加減待ちくたびれてきたころ、二人のそれぞれの元にエルステッドのとばした伝令がやってきたのであった。
■ アレクサンドロス To:伝令 |
そうかやっぱりあの倉庫だったんだな。 急げばまだ間に合いそうなのか?よし分かった。 |
言うが早いか、アレクは廃倉庫へと向かって駆け出した。
■ リシィア To:伝令 |
……そうですか、わかりました。 急いで廃倉庫へ戻りましょう。 |
魔術師の杖を握った手に力が入る。
そして、夜道を廃倉庫へと向かい急ぎはじめた。
再び廃倉庫。
少し離れた位置にいるギャスパーやアルフレッド達と連絡を取れるようにするため、エルステッドは小声でウィンドボイスを発動させた。
■ エルステッド To:裏口 |
聞こえるか?呪文にて言葉は通るようにしたのだが…… そうだ、アルフレッド殿。勝手ながら雇った冒険者をアレクサンドロス殿とリシィア殿のところへ向かわせたのだが、よかったであろうか? 向こうから何もリアクションがないということは、あちらはただただ待ちぼうけかと思ったのでな…… |
■アルフレッド To:エルステッド&ALL |
あぁ、構わないよ、どうやらここが当たり見たいだし。 |
報告を受けた後、エルシアは事前に発動させて置いたウィンドボイスで表の二人の会話を盗み聞きしてみた。
■男A(長身) TO:男B(短身) |
遅いな……… 約束の刻限はもう来てるはずだが………。 |
■男B To:男A |
まぁ、注意深いことで有名な男だ。様子を見ながら来てるのやもしれん。 なにせあんだけ大量のヤクだ。下手に見つかればあやしまれかねんからな。中で待つことにするか。 |
言うと男達は廃倉庫の中に入り、外から見られないよう倉庫の隅の方に移動した。
■ エルステッド |
やはり……自然ならざる物の取引か…… ……もとより手加減するつもりはないが。 …… なおさら手加減する所以は無くなった……な。 |
半ば。
あきれた口調で言う。
■ギャスパー To:ALL |
今のうちにこいつらを無力化しといて、あとから来たレイラックを待ち受ける、って手もあるな。各個撃破の形になるから楽ができそうだ。 …とはいえ、どたばたやってる途中でレイラックが来ると面倒だな。なんかいい魔法はねぇか? |
■アルフレッド To:ギャスパー&ALL |
「魔法は万能では無い、大事なのはそれを使う者の知恵と勇気だ。」 って師匠に良く言われたけど、なかなかそう都合の良い魔法は無いよ。 確かにむこうは二人だけどこっちも全員揃ってないし、今へたな事をして奴に逃げられたら元も子もない、奴が現れるまでは大人しく待つべきだろうな。 |
■ギャスパー To:アルフレッド |
わかった。おとなしくしているよ。 |
■ エルステッド To:ALL |
眠らせておく事も考えることはできるだろうが。 倉庫に入る前に声などをかけ、反応がないとレイラックも怪しむだろうしな。……やはり、待つのが良いのだろうか? |
それから数十分。アレクとリシィアが廃倉庫に到着した。
それとほぼ同時だろうか。遠くから馬を引く音が聞こえてきた。
ゆっくりとゆっくりとその音は、明かりと共に廃倉庫に向かってきていた。
それが一行の前を通り過ぎた時、薄明かりに照らし出されたその音の主は、間違いなく、2週間前にオランで一度だけ会ったレイラックに間違いはなかった。
廃倉庫の前にたどり着くとレイラックは改めて辺りを見回した。
■ エルステッド |
あれは…… レイラック……!! |
内なる怒りに体が反応するのか。ほんの少しではあるが、その手が震える。
そんなエルステッドを見かねて、ギャスパーが声をかける。
■ギャスパー To:エルステッド |
落ち着け、エルステッド。生きたまま捕まえなきゃ全部パーだぞ。 |
■ エルステッド To:ギャスパー |
ああ、大丈夫だ。 "仕事"は、最後までやらんと仕事ではないからな。 止めを刺すなどはせぬよ。 |
しばらく辺りを見回していたレイラックは少々警戒の表情も見せたが、そのまま馬を引いて廃倉庫の中に入っていった。その馬にはかなり大きめな荷物が積まれており、馬が進む度に揺れ動いていた。
■ エルステッド To:ALL |
今……奴は倉庫へと入っていった…… ……裏口をふさげば、奴らに逃げ道はない…… ……どうする? 封鎖し、突入するか? |
■ リシィア To:エルステッド&ALL |
まずは裏口の封鎖ですね。 もう少し……レイラックがあの二人に近付くのを待って、突入しましょう。 |
■アルフレッド To:ALL |
オッケ〜、じゃあ裏口にロックかけたらそっちに行くよ。 もしアレだったら、俺がそっちに付く前に踏み込んでくれてもいいし、タイミングは任せるよ。 |
カメレオンを解除して、ロックをかける為にドアに近づく。
■ エルステッド To:ALL |
密売の取引がいかほど時間がかかるかはわからぬが。 既に両者が接触しているゆえ、あまりのんびりとはしてられぬかと思うのだが? |
■アルフレッド To:ALL |
よし、裏口は塞いだ。今からそっちに良く。 |
ロックをかけ終わり、他の仲間の方に走る。
■ギャスパー To:ALL |
よし、大将たちが到着したら踏み込むぞ。俺がレイラックにつっこむから、アレク、お前さんは出入り口を塞げ。 |
■ アレクサンドロス To:ギャスパー |
分かった。向こうも何を用意してるか分からない、気をつけろよ。 |
■アルフレッド To:ALL |
お待たせ〜、んじゃ行こうか。 |
■ギャスパー To:倉庫の中 |
やっと見つけたぜ、レイラック! レイラック以外にゃあ用はねぇ。そっちの二人、命が惜しけりゃ下がっていろ! |
ギャスパーはそう怒鳴ると、レイラックに向かって突撃していった。
しかし、レイラックはずいぶんと落ち着き払っているようだった。
腰に下げてる袋を取り出しつつ返答した。
■レイラック To:ギャスパー |
ふぅ………。ここ最近盗賊ギルドの動きが慌ただしかったから誰かしら来るとは思っていましたけどねぇ。 あなた方でしたか。 |
レイラックのその口調には余裕さえ伺えた。
続いて戦闘である。