村の宿 |
一旦部屋に戻った二人は他の仲間を起こさないようにぼそぼそ相談を始めた。
確かに先ほどの男の行動は怪しかったが、かといって即座に捕まえるほどのものではなかったからである。
■ エルステッド To:ギャスパー |
さて……まだ担当の時間内ではあるな。 最も、あまり面倒な事は起きては欲しくないのだが…… |
■ギャスパー To:エルステッド |
まったくだ。……それにしても、今の男を見逃してよかったのか、悩むところだな。 ま、とりあえず交替の時間まで、もう一踏ん張りすっか。 |
今更ながらに首をかしげるギャスパーだが、過ぎたことは仕方がないと、自分の頬を叩いて気合を入れ直す。
しかし、それからは特に何も起こらなかった。
見張りの時間を終え、続く3巡目のエルシアとリシィアに代わったが、何事もなく朝を迎えた。
■ エルシア To:リシィア |
じゃあ、そろそろ男達を起こしてくるわね |
そう言って男部屋へエルシアは向かった。
■ エルステッド |
………ん…………朝か…… |
見張りのせいか中途半端な眠りになったエルフの青年は、いつも通り朝早くに目覚めるも……だいぶ眠そうである。
■ エルステッド To:男性陣 |
アルフレッド殿、アレクサンドロス殿、ギャスパー殿。 すでに日が昇っている。そろそろ起きる頃ではないか? |
エルシアは、男部屋の戸を軽く叩くと、呼びかけた。
■ エルシア To:男性陣 |
そろそろ時間よ、起きてくれない? |
■ エルステッド To:エルシア |
私は起きているのだが…… |
指さす方向を見れば、アレクがとっても幸せそうに、
■ アレクサンドロス |
・・・ん〜、あと、、、ちょっと。 |
とボソボソと言いつつも起きる気配なし(をぃ)
■ エルステッド To:女性陣 |
先程から何度か声をかけてはいるのだが。さっぱり起きる様子がないのだ。 あまりのんびりしているわけにもいかぬし、さて…… |
と、思案するばかり。
■ エルシア To:エルステッド |
起こし方は任せるわ、水でもかけてあげたら? |
■ エルステッド To:エルシア |
水……か。ふむ、そうしよう。 |
エルシアはそういうと、壺のところまで戻った。
■ エルシア To:リシィア |
男達が起きるまで時間かかりそうだし、先に交代で食事をすませましょうか? |
■ リシィア To:エルシア |
はい、そうしましょう(^^) 今は少しでも時間を節約したい時ですしね。 |
女性陣が平和な雰囲気の中。男性陣の泊まっている部屋では、今からとんでもない事が起ころうとしていた……
■ エルステッド To:アレクサンドロス |
水は……この水差しの中にあるもので足りるな。 では、アレクサンドロス殿……アレクサンドロス殿……朝だ。起きないと……… |
流石にいきなり「水」で起こすのがためらうのか。再度声をかけてみようとした矢先、そこに外からひょっこり帰ってくるギャスパー。朝の鍛練で一汗かいてきたらしい。
■ギャスパー To:エルステッド |
おはよう……て、アレクさんの枕元で水差し持って、何してんだ? |
■ エルステッド To:ギャスパー |
ん?いや、その。 アレクサンドロス殿に声をかけてもなかなか起きぬのでな……エルシア殿の助言から、水を使って起こそうかと思ったのだが。 ほれ。「寝耳に水」という言葉があろう? ほんの少しの水を寝てる者の耳の中にいれると、効果覿面で起きるという事を聞いたことがあったので……試そうかと思っていたのだよ。 |
■ギャスパー To:エルステッド |
起こすだけなら、水なんていらねぇだろうが。エルステッド、大将の方はあんたに任せた。(^^; |
そういうとギャスパーはアレクの鼻をつまむと、突然耳元で声をかける。
■ギャスパー To:アレクサンドロス |
アレクさ〜ん、朝だぞぅい。 戦士なら、朝は早起きしねぇとカッコ悪いぞぅい。 |
■ アレクサンドロス To:ギャスパー |
っ!?んぁ、なんだ? |
鼻をつままれ反射的にギャスパーの手を払いつつ、顔をしかめて上半身だけ起こす。
■ギャスパー To:アレクサンドロス |
にいちゃん、朝だ。さっさと起きねぇと、置いてかれっぞ。 |
■ アレクサンドロス To:ギャスパー |
ん・・・ああ、もう朝なのか・・・。 |
アレクが起きたのを確認して、自分の着替えを始めるギャスパー。
一方のエルステッドはと言えば…
■ エルステッド To:アルフレッド |
アルフレッド殿。すでに日は昇っている。 早々に起きねば……少し荒っぽい事をさせていただくぞ? |
■アルフレッド To:ALL? |
う〜〜。(ー'`ー;) |
寝ながらも怪しい気配に気付いたのか、ベッドの中に潜りこんでしまった。
ようやく立ち上がったアレクはそんな彼らの様子を見つつ、
■ アレクサンドロス |
ふぁ、、、なんだリーダーはまだ起きてないのか。。。 |
■ エルステッド To:アレクサンドロス |
ああ……。リーダーが一番遅いというのはな。なんというか。 ここはしっかりと起きてもらわねばならぬと思うが…… |
やおらかけてあるものをはぎ取ると、アルフレッドの耳・首筋などに少量の水をかける。
■ エルステッド To:アルフレッド |
アルフレッド殿。アルフレッド殿。朝だ。 他のものは皆出立の準備ができているぞ? |
■アルフレッド To:ALL? |
ふぎゃっ!?Σ( ̄□ ̄;) ・・・あぁ、もう朝か。 あんまり寝た感じがしないな・・・。 |
流石に飛び起きるらしい。(笑)
■ エルステッド To:アルフレッド |
アルフレッド殿、朝だ。 既に皆起き、朝食をとっているぞ。 これからの事もあろうに。あまりのんびりしている余裕はなかろう? |
起きたのを確認すると、すたすたと朝食を取りに降りるエルステッド。
現状説明は最小限にとどめるらしい。
■アルフレッド To:エルステッド&ALL |
あ〜〜、OK〜。 俺もすぐに降りるよ。 |
まだ眠いのか目の辺りを擦っていたが、暫くしてもそもそと起き出してきた。
早くしないと置いて行かれるぞ〜。
そして朝食の席。
■ギャスパー To:ALL |
そういえば昨日の見張り番の時なんだけど…。 |
部屋の前をうろついていた男の話をみんなにする。
■アルフレッド To:ギャスパー&ALL |
ん〜、それだけじゃなんとも言えないな。 まぁ、もし怪しい奴だったしても、地元のコソ泥ならもう会う事も無いだろうし、俺達を狙ってるならまた向うからやってくるさ。 |
街道上 |
それからしばらく…夜中に不審者が現れた以外に特に目立った事件もなく一行は最初に宿泊した村を後にすることにした。
やはり同じ方向に向かうものが多いのか、街道を西に向かって出発しようとしている旅の者も見渡せば大勢いるようである。
■ エルステッド |
ふぅ……旅行者は意外に……いるものだな。 ……これでは関門に時間がかかりそうだ…… |
旅行者の数より、よけいにかかる時間を心配する青年。
風景とかはあまり気にしないようである。
■アルフレッド To:エルステッド&ALL |
そうだな、まぁ街道だから人も多くて当たり前かな。検問も、前みたいにすんなり行ってくれると助かるんだけどな・・・。 |
■ エルステッド To:アルフレッド |
いつでもうまくいくとは限らぬしな。 常に最悪の状態を想定していたほうが良いかもしれぬな。 |
かといって、いつも最悪の事ばかり考えているのはどうかと思う。
■ アレクサンドロス To:エルステッド&アルフレッド |
ま、オレ達は別にやましいことをしてる訳じゃないんだ。 変に意識してもかえって怪しく見える、 今はなるべく気楽に堂々としてるのが一番じゃないか? |
■ギャスパー To:独り言 |
(昨日の男もいるのかな?) |
周りを見渡して、昨夜見た男を捜すが、その男は見あたらなかった。
しばらく辺りを見回していると隣を並行していた小規模なキャラバンの馬車から、一人の女性が一行の元にやってきた。
年の頃は30代半ば。小柄な体躯だが、体格はしっかりしている。おかみさんという言葉がふさわしい女性である。
■女性 To:一行 |
あんたたち冒険者だろ。 なにが珍しくてそんなにきょろきょろしてんだぃ? |
■ギャスパー To:女性 |
昨日別嬪さんを見かけたんでな、その辺にいないかと思ってな(笑)。 ねぇさん達は何を商っているんだい? |
■女性 To:ギャスパー |
あ〜ら、そんなら目の前にいるじゃない。 ………そういう冗談はさておいて、うちは主に食料よ。 |
■ギャスパー To:女性 |
ああ、こっちも生ものじゃねぇからな。……もっとも、こう時間がかかると旅費も馬鹿にならねぇからな。儲けが吹っ飛ばないか、そっちが心配だよ。 っと、俺はギャスパーだ。荷物運びの仕事をやっているところさ。 |
■テス To:ギャスパー |
私はテスよ。しばらくの一緒になりそうね。よろしく頼むわ。 まぁ、でも次の検問はミド付近って聞いてるから、一週間くらいは大丈夫そうだけどね。 |
■ アレクサンドロス To:女性 |
アレクサンドロスだ、ギャスパーと一緒に仕事をしてる。 ところで、アンタは随分慣れてるみたいだが、 こういう検問って、この辺りじゃ結構頻繁にやってるのか? |
■テス To:アレクサンドロス |
い〜え、ここまで国中に巡らされてるものは初めてよ。よほど大がかりな麻薬事件なんじゃないかしら。 |
■ エルステッド |
国中…… |
その言葉に、うんざりとした顔をするエルステッド。
おばさんとはいえ、やはり女性には顔を向けることはないようだ。
アレクサンドロスがテスと話ている間に、エルシアは気付かれないようにテスを観察してみた。
服装や装飾品判断するにオラン出身であろう。比較的裕福そうである。言葉遣いこそ荒さが見られるものの、仕草等には上品さが見受けられる。特に怪しそうな点などは特になかった。
■アルフレッド To:独り言 |
ふむ、次ぎはミドの近くか・・・。 だとしたら、検問は後一回で済みそうだな。 |
■ギャスパー To:テス |
へぇ。そこまでお上が慌てるたぁ、一体どんな事件なんだろう。 もし何かわかったら、俺たちにも教えてくれよ。 |
■テス To:ギャスパー |
分かったら、ね。 でも、わたしもあなたも同じ方向に進んでるわけだし、分かるとしたら同時じゃないかしらね………。 ちなみに私たちはエレミアまでさ。あなた達は? |
■ エルステッド To:テス |
ミド。 |
相変わらずというか、なんというか。
まったく女性の方を見ずに答えるエルステッド。
……はたして、それが答えと取ってもらえるのだろうか?
■テス To:エルステッド、ALL |
あぁ、ミドね………。 ちょうど検問が貼られている場所だね。直前で足止め食うとは運がないねぇ。 しかも、ミドの検問にいるのは結構性根の悪いヤツって聞くんだよ‥‥‥。 |
■ エルステッド To:テス |
……? 「ミド」の直前で検問が行われているのか、それとも「ミド」で行われているのか。 もし、「ミド」で行われているのならば我々は楽だろう。訪問者さえいてくれれば、その場で荷物を手渡せるのだからな。 |
……そうはいかないと思うけど……(^^;
■テス To:エルステッド |
言い方が悪かったわよ。 直前よ直前。ミドは比較的名が知れてる村だから、検問もはりやすいんだとおもうのよ。 |
■ エルステッド To:テス |
直前か……。ふむ。それも致し方ないか。 先程は私の誤認識だからな。こちらこそすまなかった、お嬢さん。 |
■テス |
お、お嬢さん………? |
エルフと人間では当然に年齢に関する考え方の差はあるだろうが、30すぎてお嬢さんと呼ばれたことにはさすがに違和感を感じたのであろう。
■ アレクサンドロス To:テス |
へえ、役人も結構大変そうなんだな。 ・・・で、性根の悪いヤツってのは、どーゆー意味なんだ? そんな噂になるほど有名なヤツがいるのか? |
■アルフレッド To:アレクサンドロス |
だいたいこの手の役人で”性質が悪い”って言ったら「賄賂要求してくる」とかじゃないの〜? |
■ アレクサンドロス To:アルフレッド |
賄賂!賄賂だって? |
熱血直情正義感のアレクサンドロスは賄賂を受領する官憲の話を聞いて即座に怒りを覚えたようである。
■ エルステッド To:アルフレッド |
"わいろ"?なんだそれは?そんなもの、旅の準備で購入していたか? もしそんなものを要求された場合……購入していなかったら大変な事になるな。 |
■ アレクサンドロス To:エルステッド |
賄賂ってのは立場を利用して不正に金やものを要求する行為のことだっ。 |
■ エルステッド To:アレクサンドロス |
ふむ。何か物品を準備しわすれていたのかと、少しばかり肝を冷やしたが……別に準備しわすれな物は今のところないのだな。 "不当"な要求というのは、ちと困りものだが……それが運搬に必要な事だとするのならば、後で依頼人に対し"必要経費"として請求すれば良いのではないのか? |
"賄賂"をあまり理解していないのか。あっさりと言い放つ。
■ アレクサンドロス To:エルステッド |
そんな問題じゃないっ! |
カッとなっているのか、睨むような鋭い視線をエルステッドに向ける。
そのアレクの視線を、エルステッドはいまいち理解しきれていない様子である。
■テス To:もろもろ |
そうね、そんなところらしいわ。 |
■ アレクサンドロス To:テス |
そんなヤツを誰も咎めないのか!? |
■ リシィア To:アレクサンドロス |
アレクさま、ここでテスさまに向かって声をあらげても、しかたありませんよ(^^; そういった不正はたしかに許せないことではありますけれど……やはり、無くは無いのでしょうね。 |
突然詰め寄られたテスはさすがに少しあわてたようであるが、すぐにアレクサンドロスを宥めつつ返答した。
■テス TO;アレクサンドロス |
まぁまぁ、お待ちよ。 あくまで噂だし………。私だってそれ以上のことを聞いてる訳じゃないからねぇ。 仮にいたとしたら、よっぽどそいつが上手くやっているか、頭が回るヤツかなんじゃないかねぇ。 |
■ アレクサンドロス To:リシィア&テス |
あ、悪い。つい・・・な。 そうか、まだ噂だけなのか。 だが、もし本当にそんなことをしているヤツがいるんなら、何とかしないとな。 |
■アルフレッド To:アレクサンドロス |
あ〜、悪の役人を懲らしめるのも良いけど、今の俺達の仕事はこの壷を届ける事だからね。(´▽`;)もし、どうしてもそいつの事が許せないなら、帰り道に成敗しようぜ! |
リーダーらしく正義感旺盛な若者をなだめてみたり〜。笑)
■ アレクサンドロス To:アルフレッド |
ああ、そうか・・・確かに、、今は仕事の方が大事だよな。分かった。 オレは金を稼がなきゃいけないんだもんな・・・・。 |
■ エルステッド(内心) |
(悪の役人征伐……いわゆる"血気盛んな若者"というのは、彼の事を指すのか?) |
ころころと表情を変えるアレクを見て、そんな事を思うエルステッドであった。