SW-PBM Scenario #82 | 目次 |
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ゴリーエフ邸 塔 |
お茶会の会場であるバルコニーから屋内に戻る。入った所の右手に塔へ繋がる渡り廊下があった。そこを進むと、どうやら塔の 2 階に出たようだ。そのまま塔の壁を回るように上る螺旋階段を 2 階分上がると、木の扉があった。
家庭教師が扉をノックする。
■家庭教師 To:マルセリーナ |
マルセリーナさん、入りますよ。 |
答えを待たずに扉を開ける。
扉の正面に大きな机があり、マルセリーナはそこにいた。びっくりして振り返った目は赤く、周辺には羊皮紙が散らばっている。
■マルセリーナ To:ALL |
ご、ごめんなさ…… |
慌ててはねペンを持った手で涙を拭って、うっかり顔に墨が付いてまっくろになってたりして……
どうやらまた泣いていたらしい。
■リッキ To:マルセリーナ |
あう、お顔が汚れちゃったよ〜。 |
またもらい泣きしそうな顔で駆け寄って、ハンカチでがしがし拭いてあげる。(大ざっぱ?(^^;))
■リッキ To:マルセリーナ |
(ぐす)…あのね、ゴリーエフさんはお仕事に戻ったんだよ。 あたしたち、お手紙が書けるまでちゃんと待ってるからね♪ だから、ゆっくり書いても大丈夫だよ♪(にこっ) |
■ユウル To:マルセリーナ |
そうそう、慌てる必要はないから、安心してね。 |
出来るだけ優しい口調で声をかけつつ、マルセリーナの周囲に散らばった羊皮紙を(チラッと盗み読みしつつ)拾い集め、マルセリーナに手渡す。
どの羊皮紙にも同じような言葉が途中まで書いてある。
曰く、『マルセリーナは元気です。ゴリーエフ様はよくしてくれます。お母様もお元気で……』
でも、あちこちに涙の染みがある。それが明るい文面を裏切っている。
■マルセリーナ To:ALL |
お手紙、書けないです。お母様に心配かけたくないのに、これじゃ…… |
リッキにがしがし拭かれつつ、ユウルから受け取った反故紙を抱きしめてまた泣きベソ。
■ヴィトリス To:マルセリーナ |
(泣かれると……どうも…苦手なんですが……) …ま、その…余りその様なことは気にせずありのままで良いと思いますよ(^^ ……ここでの暮らしは辛いですか? |
しばらくうつむいて考えていたが、何かをごくっと飲み込んで話す。
■マルセリーナ To:ヴィトリス |
たべものも、着るものもたくさんあります。お勉強もさせてもらって、毎日いそがしくしています。マルセリーナは良い子にしています。だから、だから…… |
それ以上は言葉にならなかった。かすかな声でささやく。
■マルセリーナ |
……お母様に会いたいよぅ…… |
ふっと手を止めて、今度は自分の目をがしがしこするリッキ。
■リッキ To:マルセリーナ |
(ふにゃ…)…そうだよね、おかあさんに会いたいよね…… ビアトリスさんもね、すっごく会いたいって言ってたよ。 もう一度…会って話したいって…… |
■ユウル TO:マルセリーナ |
(なんとか会わせてあげたいけど…一度会うだけではいおしまいってわけには行かなそうな状況だよねえ…) マルセリーナちゃん、お母さんの言葉、思い出せるかな? |
ユウルはマルセリーナの目線までしゃがんで視線を合わせると頭をそっと撫でて、なだめるように声をかけた。
■ユウル To:マルセリーナ |
…お母さんは、マルセリーナちゃんになんて言ってゴリーエフさんの元へ送り出してくれたかな? もう会えない、なんて言ってた? |
■マルセリーナ To:ユウル |
ゴリーエフ様の言うことを聞いて、立派な貴婦人になりなさいって、良い子にしていれば、また会えるって…… |
■リッキ To:マルセリーナ |
どうして別れなくちゃならなくなったのか、おかあさんから聞いたの?… |
■マルセリーナ To:リッキ |
お父様が亡くなったんです。その後、しばらくは叔父様がよくしてくださったの。でもそのうちみんな冷たくなって……町の人もいじわるになって。お金もないし、野菜もパンもミルクも買えなくなってしまったの。お母様が、町で働きますって言って出ていかれて、ゴリーエフ様と一緒に戻っていらしたの。それで、わたしはゴリーエフ様と一緒にオランに行くことになったのです。 |
本人は、これでも順を追って一生懸命説明しているつもりらしい。
■アシスト To:マルセリーナ |
……その、ちょっと聞きにくいんだけど、 なんで町の人たちが冷たくなったのかわかるかい? |
■マルセリーナ To:アシスト |
叔父様がそうさせたんです。お母様ははっきりとは言わないけど、きっとそうなの。 |
■ユウル To:マルセリーナ |
何か理由があって意地悪したのかな。それとも、もともと叔父さんってそういう嫌な人? |
■マルセリーナ To:ユウル |
ううん。昔は親切でした。よく馬に乗せてもらったわ。お父様とお母様は女の子が危険なことをしてはだめっていうのだけれど、叔父様は好きなことをさせてくれたの。 叔父様はお母様のことが好きなの。お父様が亡くなって、お母様をご自分の奥様にしたかったの。でも、お母様は今でもお父様のことが好きなのです。だから、断ったの。そうしたら急に意地悪になって…… こういうのを、『可愛さ余って憎さ百倍』と言うのですわね。 |
覚えたてのことわざなんか使ってみる。
■マルセリーナ To:ALL |
でも、わたしもお父様の方が好き。お母様は叔父様のせいだとは絶対に言わないけど、叔父様に言われたら町の人も従うしかないのですもの。でも、そんなふうに力で言うことを聞かせるようなことをしてはいけないって、いつもお父様はおっしゃっていたわ。 |
■ヴィトリス To:マルセリーナ |
なるほど、それはお父様のおっしゃるとおりですね。 …しかし、その叔父様っていう方はそれだけの力のある方なのですか…… もし、よろしければその叔父様のお名前を伺っておいてよろしいですか? |
■マルセリーナ To:ヴィトリス |
ええ。叔父様のお名前はナリスよ。ナリス・ラブレースというの。 |
■リッキ To:マルセリーナ |
ほえ……偉いひとなの?? |
■マルセリーナ To:リッキ |
ええ、お父様の跡を継がれたの。だから偉くなったのだわ。 |
■コリス To:マルセリーナ |
お父様は貴族の方なのですか? |
■マルセリーナ To:コリス |
ええと、領主なの。 |
■コリス To:マルセリーナ |
なるほど、領主様なら、町の人も従わざるを得ませんからね。 |
■ヴィトリス To:マルセリーナ |
そうですか。 …大体の事情は何となくわかりましたが、で、貴方はこれからどうなされたいのですか? その…つまり、貴方がお母様と暮らしたいということは分かるのですが、それは、ここで暮らしたいのか、それともここではないどこかで暮らしたいのか、ということなんですけど? |
■マルセリーナ To:ヴィトリス |
えっ? そんなことができるのですか? お母様と一緒に暮らせるのならどこでも……あっ、いいえ、お母様が望まれるところなら、どこでもいいわ! |
マルセリーナは目をキラキラ輝かせてヴィトリスを見ている。
■ヴィトリス To:マルセリーナ |
そうですか。 いや…その…できるって訳でもなんですけど…一応希望は… え〜と、努力はして…でなくて……そうなるといいですね。 |
喜びから急転、ちょっとうつむいてくちびるを尖らせてみたり。
■マルセリーナ To:ヴィトリス |
……そうよね。マルセリーナが悪い子だからきっとまだ会えないのです。もっともっと良い子になればきっと…… きっとまたお母様と一緒に暮らせます。きっと。 |
昔の話をしているときは幾分元気を取り戻したように見えた。しかし、やはり母親と別れていることは彼女の心に陰を落としているようだ。再びお茶会で初めて会った時のような大人しい表情になる。
■家庭教師 To:ALL |
あまり長居すると怪しまれましてよ、皆様。 |
■リッキ To:家庭教師&マルセリーナ |
う、うん……。 ね、マルセリーナちゃん、お手紙、頑張って書こうよ。正直な気持ちを書いたほうが、おかあさんもきっと喜ぶよ〜。ねっ。 |
■マルセリーナ To:リッキ |
……うん。書いてみるわ。 |
家庭教師が新しい羊皮紙を用意した。マルセリーナは机に向かってしばらく考えた後、一気に書き上げてそれをみんなに見せた。
親愛なるお母様へ お母様、お元気ですか?お加減がよくないと聞きました。心配です。お母様にお会いしたいです。マルセリーナは良い子で毎日勉強していますから、早く会いに来てください。待っています。
心をこめて マルセリーナ・エイダ
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■マルセリーナ To:リッキ |
どうかしら、お母様はこれを読んで、会いに来てくださるかしら。マルセリーナを嫌いにならないかしら…… |
■ユウル To:マルセリーナ |
大丈夫、嫌いになんてならないよ。 お母さんにも…きっと、会えるよ。もう泣かないでね。 |
安心させるようににっこり微笑んでマルセリーナの頭を撫でる。
■マルセリーナ To:ユウル |
うん…… |
■ユウル To:家庭教師 |
今までのやり取りを聞いておられて、大体想像できてしまったと思うのですが…私達はマルセリーナ嬢を母親にあわせたいと思っています。 その結果、ゴリーエフ氏には探られたくない部分を探ることになってしまうかもしれません。 大変わがままなお願いですが、私達がマルセリーナ嬢から情報を得て探っていることをゴリーエフ氏には内密にしていただけないでしょうか? |
まっすぐに家庭教師を見つめて、真摯な態度でお願いしてみる。
■家庭教師 To:ユウル |
ええ、よろしくてよ。 |
あっさり。
■ユウル To:家庭教師 |
ど、どうもありがとうございます。 (この人は味方になってくれる、のかな…?) |
家庭教師は手紙にきちんと封をし、それをユウルに託した。
■ユウル To:家庭教師、マルセリーナ |
確かにお預かりしました。 きちんとビアトリスさんに届けさせてもらいますね。 |
■マルセリーナ To:ユウル |
はい。よろしくおねがいします。 |
■ヴィトリス To:マルセリーナ |
では、貴方の希望する未来が手に入るよう祈っております。 勉強の方も頑張って下さい。 でも、勉強に疲れたときは、そうですね…夜風が気持ちいいですし、たまには窓を開けて夜風に当られるのもいいかもしれませんね。 |
■家庭教師 To:マルセリーナ |
そうですわね。月もきれいですし、思索を深めるのにもよいかもしれませんわ。 |
■マルセリーナ To:ヴィトリス、家庭教師 |
はい、では今晩から時々窓を開けてみます。 |
■家庭教師 To:マルセリーナ |
では、みなさんお帰りですよ。ご挨拶なさい。 |
■マルセリーナ To:ALL |
はい。ごきげんよう、みなさま。 |
きちんと礼儀に則ったお辞儀をするマルセリーナ。そのようすは、一行の前に現れた時のビアトリスにうりふたつだった。
■ユウル To:マルセリーナ、家庭教師 |
そうやって礼儀正しくしてる姿は、お母さんにそっくりだね(^^)大変だろうけど、頑張ってね。 それでは、失礼します。(丁寧に一礼) |
塔を出た一行は、ゴリーエフに挨拶をして預けた武器を受け取り銀の網亭に帰還した。
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