SW-PBM Scenario #82 | 目次 |
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ゴリーエフ邸 控えの間 |
14:00 になると、内側から正門が開いた。
中からは、目つきは門番達と変わりないが、少しだけ身なりを整えた男が現れた。
■案内 To:ALL |
お待たせいたしました。順番に前の方からお進みください。 |
案内人に従って進むと、正門から玄関を通って館の内部に通された。玄関を入ってすぐは広いロビーになっている。向かって左手に 2 階へと続く大階段があり、右手と正面にはドアがある。
ロビーの周囲には、いくつか木のベンチが置いてある。待合室も兼ねているようだ。
■案内 To:ALL |
では一番目の方、チケットを拝見します。それ以外の方はしばらくこちらでお待ちください。 |
男はチケットを確認すると、ロビーの右側の扉を開いて中に誘導した。ここは狭い部屋になっていて正面に扉がある。この奥がゴリーエフの執務室で、ここはそれに続く控えの間であろう。
■案内 To:ALL |
武器の類はこちらでお預かりします。一応、確認させていただきますが? |
自主的に出さなければ、ボディチェックが待っている。女性だろうと遠慮会釈ナシ。むしろ喜んで、という感じだ。
■ユウル |
はい、では宜しくお願いします。(…まあ、預けるのは当然だろうしここでごねるとまずいことになりそうだから仕方ないけど…不安だな(^^ゞ) |
ユウルは愛剣『JJ』を、アシストは魔術師の杖を預ける。リッキ、ヴィトリス、コリスもマントの下からダガーを出して預けた。ユウルは不安そうな顔をしている。
■案内 To:ユウル、ALL |
きちんと責任を持ってお預かりいたします。ゴリーエフ様にもしものことがあってはなりませんからね。 では念の為、ちょっと失礼いたしますよ。 |
■リッキ To:案内 |
ぅきゃははは、くすぐったい〜(笑) |
■案内 To:リッキ |
あ、あまり暴れないでいただけますか……(汗) |
簡単に、服の上から身体を軽く叩くようにボディチェックをされた。もちろん全員。少しだけ女性に対して念が入っていたのは気のせいだろうか?
預かった武器を棚の上に置いて、案内人は奥の扉を開けた。
■案内 To:ALL |
ゴリーエフ様、5 名様お入りです。 では、どうぞお入りください。 |
ゴリーエフ邸 執務室 |
奥の部屋へ入って、まず目だったのは正面の重厚な執務机だ。室内の装飾は立派なもので、それはちょっと悪趣味なほど。そして絨毯もフカフカ。でも、居心地はあまりよろしくない。
■ゴリーエフ To:ALL |
ようこそ、私がゴリーエフです。これはこれは大勢様ですな。どうぞ、おかけください。まま、そちらの長椅子もお使いになって…… |
そう勧めた男は、太鼓腹の 40 代の男で、額がだいぶ後退している。髪は赤毛で驚くほどの青い眼がギラギラと精力的な印象を受ける。
ちなみにヒゲはない。ドワーフほど小さくもないが、このまま縮小してヒゲを生やしたらドワーフ級の体格かもしれない……
愛想よい口ぶりで、口元は笑っているが、目は笑っていない。
■ユウル To:ゴリーエフ |
はい、それでは失礼します。 |
ユウルはゴリーエフとなるべく近い場所に腰かけた。しばらく居心地悪そうにしていたが、ゴリーエフのほうに意識を集中する。
■リッキ |
(思ったほど怖そうじゃないけど〜…) ひゃっ? |
慣れないフカフカの長椅子にめり込んで驚いている(笑)
■ゴリーエフ To:ALL |
それで、今日はどのようなご用件で? |
■ユウル To:ゴリーエフ |
はじめまして。ユウルと申します(ぺこり)今日はビアトリスさんという女性の依頼で、こちらに伺いました。 |
ビアトリスの名前を出した時の反応を見逃すまいと、じっとゴリーエフの様子をうかがう。
■ヴィトリス To:ゴリーエフ |
え〜と…これ、つまらないものですけど、そうぞお召し上がり下さい(^^ |
様子を伺うユウルの横から、徐に、果物籠を差し出す。
■ゴリーエフ To:ヴィトリス |
ははぁ、これはこれは立派なものを。 ありがとうございます。 |
遠慮する様子は微塵もなくにこにこと受け取り、自分の右側に置く。
■ゴリーエフ To:ユウル |
ええと、ビアトリスさんと言いますと……どちらのビアトリスさんでしたかな?こう毎日人と会っておりますと時々うっかり忘れることがありまして。 |
困ったような表情で肩をすくめている。
■リッキ |
(えーっ……マルセリーナちゃん預かってるのに、忘れちゃうの??) |
■ユウル To:ゴリーエフ |
(とぼけてる振り?それとも本気?) 私の言っているビアトリスさんは、半月ほど前にマルセリーナという12歳のお嬢さんを貴方の元にお預けになった女性のことです。 …思い出していただけましたか? |
平常心を装って、落ち着いた口調で尋ねつつじっと目を見つめる。
■ゴリーエフ To:ユウル |
ははぁ、あのビアトリス様ですか。えぇ、えぇ、思い出しましたとも。お元気でいらっしゃいますかな。 して、奥様のご依頼とは、どういった件で? |
ユウルの目をじっと見返す。特に動揺しているようすはない。
■ユウル To:ゴリーエフ |
はい、ビアトリスさんはマルセリーナさんとの面会を望んでおられます。 ですが、ちょっと体調が思わしくなくて、何とかこの街までたどり着かれているんですが今も宿で休んでおられるのです。 私達としてはマルセリーナさんをビアトリスさんのところまで連れて行ってあげたいと思っているのですが… マルセリーナさんは今こちらのお宅にいらっしゃるのですか? |
■ゴリーエフ To:ユウル |
ええ、お嬢様は確かにうちでお預かりしておりますよ。 しかし、面会ですか…… それはちょっと。妙な里心が付くといけませんからねぇ。 ところで、奥様のお加減が悪いとか?医者には見せられたのですか? |
■リッキ To:ゴリーエフ |
ううん、お医者様には見せてないよ。宿で休んでもらってるだけ。 ……どうして里心がつくといけないの?? |
首を傾げて尋ねる。
■ゴリーエフ To:リッキ |
里心がついて、『お母さまのもとへ帰りたい』などということになったら、どうします。 ここまでに注ぎ込んだ資材が全部水の泡ではないですかな? お嬢様を立派な貴婦人に育てると誓った私も、合わせる顔がありません。 |
■ユウル To:ゴリーエフ |
私達がビアトリスさんから聞いたところによりますと、ビアトリスさんのご主人が亡くなって生活に困っているところへ、娘さんを養女にと申し出られたそうですね? |
■ゴリーエフ To:ユウル |
ええ、そうです。最初はお二人とも私が面倒を見させていただくと申し出たのですが、奥様はどうしても断られまして…… それではせめてお嬢様だけでもということで引き取らせていただきました。あのままではお二人とも行き倒れてしまいかねなかったものですから。 |
傍らに置いた果物籠の桃がどうしても気になるらしく、指でつっついてみたりしている。
■ヴィトリス To:ゴリーエフ |
なるほど… …桃は余り指でつつかない方がよろしいですよ(^^ 指でつついたとこが腐っちゃいますから(^^ で、まぁ、これまでの話からするとマルセリーナさんは責任を持って必ずこちらに連れて戻れば、一目だけビアトリスさんに合わせに連れて行くということは問題ないと考えてよろしいですね(^^ と…それから、メロンは多分あと10日ほど寝かしたぐらいが食べごろですので(^^ |
笑顔連発のヴィトリス。
ゴリーエフは、指を引っ込めて心配そうに桃を見ている。
■ゴリーエフ To:ヴィトリス |
ははぁ。責任を持って必ず連れてくるねぇ……。本当にそんなことができますかねぇ? いえいえ、あなたを疑っているわけではないのですよ。 |
桃から目を離して、ヴィトリスに向き直る。
■ゴリーエフ To:ヴィトリス |
例えば、一目だけ顔を合わせたお二人がそのまま別れられるでしょうか?顔を合わせたら話したくなる、話せば止まらなくなる。次の日も、その次の日も、尽きず語り合うそんなお二人を、あなたは引き離すことができますかな? メロンの件はわかりました。10 日我慢しましょう。しかし、お嬢様は一分一秒一銭たりとも無駄にはできんのです。社交界デビューを目指す彼女には今が一番大切な時なのですからな。12 歳では遅過ぎる位です。 いやしかし美味そうですな〜 |
笑顔満面。 >メロン
■ヴィトリス To:ゴリーエフ |
そういって頂けますと、買ってきた甲斐がありましたね(^^ なるほど確かに12歳でしたら社交界デビューの大切な時ではありますね(^^ しかし、母親との会話というものも人柄に幅を持たせるという意味で決して無駄にはならないと思いますけど(^^ それに12歳ともなれば十分な分別はつく歳ですし、帰らないと駄々をこねるようなことは無いでしょう(^^ もう少し自分の育てておられる娘さんを信用してあげてはいかがですか? |
笑顔絶やさず。
■リッキ To:ゴリーエフ |
メロンもいいけど、リンゴもおすすめだよ♪ そうだよ〜、ゴリーエフさんが育てた女の子なら大丈夫だよっ♪ |
無邪気な笑顔を重ねる。
■ゴリーエフ To:ヴィトリス、リッキ |
いやはやなんとも…… 私は商売人ですのでね、最悪のことを考えて決断します。育てているといっても半月程度の事ですし、私の考え方を彼女が完全に理解しているとも思えませんしねぇ。 |
笑顔が消える。
■ゴリーエフ To:ALL |
あなた方のおっしゃりたいことはわかりましたが、私には飲めませんな。リスクが高過ぎます。ではわかりやすいように今までお嬢様にかけた財産を概算してみましょうか? |
机の引出しから羊皮紙を出してメモを取りながら、
■ゴリーエフ To:ALL |
引き取り時に奥様に支払ったお金が 3 万ガメル、 部屋を整えるのに費やしたお金が 1 万ガメル、 教育のための費用が 6000 ガメル、 衣装費、化粧品代で約 5000 ガメル、 食費がおおよそ 4000 ガメル…… と、あとこまごましたものもありますが、オマケして。 |
さらに羊皮紙になにやら書き込む。
■ゴリーエフ To:ALL |
しめて 5 万 5 千 ガメル。もしお嬢様が戻らなかった場合、わたしはこれだけの金額をドブに捨てることになるんです。そんなリスクは犯せません。また、あなた方にはわたしにこの金をドブに捨てろと言う権利はないわけです。ご理解いただけましたかな? |
■アシスト To:ゴリーエフ |
……つまり、どうあってもビアトリスさんとマルセリーナさんを会わせることは出来ない? |
■ヴィトリス To:ゴリーエフ |
そうみたいですね。 で、5万5千ガメルも投資して貴方に何の利益がお有りなのですか? |
くどいようだがまだ笑顔。
■ゴリーエフ To:ヴィトリス |
社交界に新たな関係ができるということですからなぁ。私の商売にとってはそれだけでも大きな利益ですが? |
■コリス To:ゴリーエフ |
なるほど、その程度の投資額なら、充分に見返りがあるということですね。 |
■ゴリーエフ To:コリス |
最終的にはもうすこし額が増えるでしょうし、維持費もかかりますがね。顔をつなぐ、知己を広げるというだけでも大きな利益に繋がるんですよ。 |
■ユウル To:ゴリーエフ |
…もしビアトリスさんが貴方に面会にこられて、娘さんを返して欲しいと望まれたら、その投資額を請求されますか? それとも絶対にダメだと断りますか? |
■ゴリーエフ To:ユウル |
もちろん、投資額がお支払いいただければお嬢様をお返ししましょう。私も鬼ではありませんからなぁ、ハッハッハ。 |
ぜんぜん悪びれたようすはない。
■ヴィトリス To:ゴリーエフ |
…なるほど…… …残念ながら今私達にその様な大金はありませんが、このまま帰るわけにも行きません。 せめてマルセリーナさんの健やかな姿を拝見させて頂き、そのことをビアトリスさんに報告して安心させてあげたいのですが? |
■ゴリーエフ To:ヴィトリス |
なるほど。そうですな…… ではしばらくお待ちいただけますかな?15:00 になったらティータイムなので。バルコニーでお茶をいただく習慣となっているのですよ。ご一緒しましょう。 |
■コリス To:ゴリーエフ |
ありがとうございます。 先ほどからの話ですと、マルセリーナ嬢をビアトリスさんに会わせに連れ出すのは、ダメだと言う事のようですが、ビアトリスさんがこちらのお屋敷に訪ねる、という形でしたら会わせて差し上げていただけますか? ビアトリスさんも社交界でお暮らしだった様子ですし、何より、お嬢さんの社交界デビューを望んでおられます。 あなたの危惧するような事になるとは思えませんが… |
■ゴリーエフ To:コリス |
百歩譲って奥様がそうだとしても、お嬢様はどうでしょうなぁ…… 特に奥様はお加減が悪いとのこと、そんな母親を放っておけるものでしょうか。納得できませんな。 愁嘆場が見たいのならばそれもよいかもしれませんが、私にはそんな趣味はないのでねぇ。 |
■ユウル To:ゴリーエフ |
(かなり何か言いたそうだが、ぐっとこらえて平静を装う)…現状では、親子の対面を許可していただくのは難しいようですね。 その件に関して諦めたわけではないのですが、その前に…この手紙について、少しお聞きしてもよろしいでしょうか? |
ユウルはポーチにしまってあったビアトリスから預かっていた手紙を取り出し、ゴリーエフに広げて見せた。
■ユウル To:ゴリーエフ |
これは貴方とビアトリスさんの間で交わされた契約書のようなものとお見受けしますが、この書類の前半部分には何が書かれていたのか覚えていらっしゃいますか? |
ゴリーエフは、ユウルの持った羊皮紙を覗きこんだ。
■ゴリーエフ To:ユウル |
えぇ、えぇ、覚えてますよ。私がお出ししたものですな。確かにこれは途中で切られていますなぁ。えぇと、前半には…… ちょっとお待ちを。確か写しがありますので。 |
腰から様々な形・色の鍵が束ねられた紐を取り出し、その中から 1 本を選んで机の引出しを開ける。そこから、羊皮紙を一枚選び出した。
■ゴリーエフ To:ユウル |
これですな。どうぞ。 |
それをユウルに手渡す。ユウルはそれを全員に見せた。
親愛なる ビアトリス・ウィルマ・ラブレース様
この度はあなた様(ビアトリス・ウィルマ・ラブレース様)と私(ピエルスィク・ゴリーエフ)との個人的なお約束にご同意いただき誠にありがとうございます。 マルセリーナ御嬢様の御身柄は大切に御預かり致します。御母堂様に置かれましては御安心の上、心安らかに日々を御過ごし頂けますよう、心より御祈り申し上げます。
貴女の忠実な友
ゴリーエフ |
■コリス To:ALL&ゴリーエフ |
なるほど… これは、ビアトリスさんが見せたがらなかったのもうなずけますね… しかし、この文章を見る限り、ビアトリスさんをマルセリーナ嬢に会わせない、とは書いていないようですが… それは、ビアトリスさんもご承知のことなのですか? それに、何より、「お預かりする」とあります以上、それを確認する権利がビアトリスさんにはあるのではないですか? |
■ゴリーエフ To:コリス |
確かに書面には書いてありませんが、口約束はいたしましたよ。お互いを信用してのことだと思っていたのですが、ということは、何か私が疑われているのですな…… 心外です。 |
■リッキ To:ゴリーエフ |
そんなことないよ。ビアトリスさん、お世話になってること、すごく、すごく感謝してるって言ってたよ。疑いなんて、これっぽっちも感じなかったもん。 マルセリーナちゃんに会いたがってたのも、本当だけど…… ね、口約束って……どんなお約束?…もしかして、一生会えないなんて……? |
■ゴリーエフ To:リッキ |
いや、お嬢様が社交界で一人立ちされるまでは私にお任せいただくという約束ですな。私には私のやり方というものがございます。お任せいただいた以上は、横から口を出されると非常にやりにくいのですがねぇ。 |
ゴリーエフは、ユウルから手紙の写しを返してもらった。
■ゴリーエフ To:ALL |
さて、そろそろよろしいですかね。次のお客様もお待ちですので。ティータイムまでロビーでお待ちいただけますか? |
アシストはユウルにこっそり耳打ちする。
■アシスト To:ユウル(小声) |
このまま続けても向こうのペースだよ。 交渉は一旦報告してからもう一度ってことにしない? |
■ユウル To:アシスト(小声) |
うん、ここで粘って感情的に訴えても会わせてくれそうにはないね。一旦帰ってビアトリスさんと相談するかな… |
■ユウル To:ゴリーエフ |
わかりました。 それでは私達はお茶会時間までロビーで待っていますので。 |
一行はロビーに退出した。
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