SW-PBM Scenario #82 | 目次 |
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銀の網亭・ビアトリスの部屋 |
相談がまとまった頃、隣の部屋ではようやくビアトリスが手紙を書き上げていた。羊皮紙とペンはあったが、封蝋を持っていなかったので、しばらく迷った後、自らの髪留めで手紙に封をしている。そして、シルヴァに向き直ってまじめな顔で。
■ビアトリス To:はやぶささん |
あの……。手紙を書き終わりましたわ。これ、あなたにお渡しすればよいのかしら……。おりこうさんね、よろしくね。 |
くちばしにくわえてアシストのところに持っていってくれるのかと誤解しているらしい。隼の鋭いくちばしに、おっかなびっくり手紙を差し出す。
小さく鳴いてくちばしでそれを受け取るシルヴァ。と、同時に扉を叩く音がする。
■ビアトリス To:扉 |
はい……、どうぞ? |
扉の外にいたのはアシストとユウルとリッキだった。
■アシスト To:ビアトリス&シルヴァ |
書き終わったみたいだね。 シルヴァもご苦労さん。 |
シルヴァを撫でてやると手紙を受け取り、ビアトリスに向き直る。
■アシスト To:ビアトリス |
この手紙はきっと届けるから(^^)b |
■ビアトリス To:アシスト |
よろしくお願いいたします。 |
ビアトリスは深々と頭を下げる。
■リッキ To:ビアトリス |
ねぇねぇ、あたし、ビアトリスさんに聞きたいことがあって。 マルセリーナちゃんを取り戻したら、どうするの?どこか、行くあてってあるの? |
リッキに言われて、初めて気がついたようにハッとした顔をするビアトリス。
■ビアトリス To:リッキ |
いいえ……。その後の事など考えておりませんでしたわ。クーラフクに帰っても、また同じ事の繰り返し……。どこか静かに、2 人でゆっくりと暮らせるところがあればよいのですが…… |
■ユウル To:ビアトリス |
体のことも考えると、あまり遠くへの旅も難しそうですね…そうだ、私の故郷の村がこの近くなんですけど、一旦そこへ身を寄せてみませんか? 幸いまだうちの両親健在なので、いろいろ世話してくれると思いますよ。田舎だから、社交界とか高等な教育とかは縁がないですけどね(^^ゞ |
■ビアトリス To:ユウル |
まぁ、素敵。わたくしの故郷もとても田舎なのですよ。きっと、穏やかで良いところなのでしょうね。でも、ご迷惑ではないかしら。わたくし達などがおしかけて…… |
■ユウル To:ビアトリス |
あ、それは気にしなくても平気だと思います。 村のみんなは気さくでいい人ばっかりだし、私の父親って元冒険者で「自称元勇者」だから、困ってる人助けるの大好きなんです(笑よければ、どうぞ遠慮なく居ついてください♪ |
■ビアトリス To:ユウル |
ありがとう。本当に、こんなわたくしによくしてくださって…… 感謝いたしますわ。 |
■ユウル To:ビアトリス |
それで、今後の行く先と関連することなんですが…(真剣な表情になって)急な話ですが、明日、マルセリーナ嬢をゴリーエフ氏の元から奪還する計画を立てました。一通り、ご説明しますね。 |
ユウルは明日の計画の概要をビアトリスに説明した。ビアトリスにはオラン郊外で待機してもらいたい旨を告げる。
■ユウル To:ビアトリス |
お身体の具合にもよりますから、無理でしたらここで待ってもらってもと思いますが…明日、移動できそうですか? |
■ビアトリス To:ユウル |
まぁ、そんな計画を……。 勿論ですわ。そんな大事な時に一人待ってなどいられません。たとえこの身がどうなろうと、再び娘に見えられるのであれば……異存はございません。 |
ユウル、リッキ、アシストの手をそれぞれ取っておし戴く。
■ビアトリス To:ALL |
本当に、本当にありがとう。わたくしには祈る事しかできません。常に幸運が皆様と共にありますように。お頼みいたします。どうか、娘をよろしくお願いいたしますね。 |
■ユウル To:ビアトリス |
はい、ご期待に添えられるようがんばります。明日のためにも、今日はゆっくりと休んでおいてくださいね。 |
ゴリーエフ邸 塀の外 |
すっかり夜も更けて、美しい満月が中空を彩る。ゴリーエフ邸周辺に人影はなかった。そして外側から見る限り、屋敷内の明かりも消えている。
しかし、マルセリーナのいる塔だけは、窓が開き暗いランプの明かりが漏れている。昼間のアドバイスに従って、月を見ながらお祈りでもしているのだろうか。しかし窓の位置は高く、耳を澄ませてもその声は聞こえない。周囲も物音一つしない。
■ユウル To:ALL、リッキ |
窓はあいてるみたいだね…まだ起きてるかな?リッキ、ウインドウボイスで声をかけてみることはできる?私は屋敷周りをちょっとみまわってくるよ。 |
■リッキ To:ユウル |
うん、いってらっしゃ〜い。 |
ユウルは屋敷を一周してみた。
二つある門は鍵がかかっている。今の所、巡回警備も門番も居ないようだ。犬も寝ているのか、屋敷はしんと静まり返っている。特に昼間と違うところや、危険は感じられない。
■アシスト To:ALL |
この暗さじゃシルヴァは飛べないからね。 どうやって彼女にこっちのことを伝えるかなんだけど……。 |
■リッキ To:ALL |
ウィンドボイス、聞こえれば、気付いてくれるかな?やってみるね。 シルフ……応えて? |
リッキの呼びかけにシルフが現れ、塔の窓と地上を風の道がつないだ。マルセリーナの祈りのささやきが聞こえてくる。
リッキはウィンドボイスで自らの声を飛ばした。
空いている窓から見えるマルセリーナに向かって。
■リッキ To:マルセリーナ |
マルセリーナちゃん、聞こえる?あたし、リッキだよ♪ 魔法で声を飛ばしてるの。見つかったら怒られちゃうから、知らないふりして、聞いててね〜。 |
祈りの声が止まった。
マルセリーナは、思わず窓から顔をのぞかせてキョロキョロしている。地上のリッキを見つけて、小さく手を振った。聞こえているようだ。
■リッキ To:マルセリーナ |
(にこっ)良かった〜、聞こえたんだぁ♪ ……えっとね、ビアトリスさんに、お手紙渡したよ。すごく喜んでたよ♪ それでね、あたしたち、色々考えて、マルセリーナちゃんをお母さんに会わせるために、計画を立てたの〜。 明日、家庭教師のお姉さんが、ゴリーエフさんも一緒に3人で歌劇を見に行こうって誘うから、賛成してくれる? そこで、マルセリーナちゃんに変装(語弊有り(^^;))したアシストと入れ替わって、劇場を抜け出すの〜。 それで、お母さんの所に連れて行ってあげるよ♪ |
■マルセリーナ To:リッキ |
ほ、ほんとうに?ほんとうにお母様と会えるの?嬉しい!わたし、なんでもするわ。リッキさまの言うとおりにするわ! |
■リッキ To:マルセリーナ |
うん♪ えと……ゴリーエフさんの様子、どう?怒ってない?(>_<;) |
■マルセリーナ To:リッキ |
ゴリーエフ様?うぅんと……。ディナーの時、確かにいつもより難しい顔をしていたわ。 ……あら? |
■リッキ To:マルセリーナ |
……? なぁに?(首傾げ) |
■ユウル To:ALL |
ただいま。屋敷回りは特に怪しいことはなかったよ。 マルセリーナ嬢に連絡はついた……ん、どうかしたの? |
マルセリーナの声が途切れた。ややあって、チャリン、チャリンという音、衣擦れの音が近付いてくる。もちろん、塔の上で。マルセリーナの部屋に、誰か来たようだ。
■マルセリーナ To:ゴリーエフ |
ゴリーエフ様……。 |
■ゴリーエフ To:マルセリーナ |
まだ起きていたのか。しかもこんな夜中に窓を開けるなど、はしたない。何をしている? |
苛立ったゴリーエフの声がする。昼間の礼儀は毛ほども感じられない。
■マルセリーナ To:ゴリーエフ |
な、何でもありません。月を見ていたのです。 |
マルセリーナは、窓を庇うように背にして立った。小さな金髪の頭が窓から見える。
■ゴリーエフ To:マルセリーナ |
フン。月を見ながら昼間訪ねて来た薄汚いヤツ等の事を考えていたのかな?それともあのアバズレの母親か? |
■マルセリーナ To:ゴリーエフ |
お母様はアバズレなんかじゃありません!それにあの方達も、とてもよい方だわ! |
バシッ、と乾いた音がして、窓からマルセリーナの頭が消える。
■ゴリーエフ To:マルセリーナ |
俺に逆らうな。まだ判ってないようだから言っておいてやる。どっちにしろ、無駄な事だ。俺はお前を手放すつもりは無い。お前はこれから一生俺の道具として生きるんだ。売り飛ばされないだけありがたいと思え。 |
答えるマルセリーナの声は聞こえない。
■ゴリーエフ To:マルセリーナ |
そうだな……。口答えする悪い子には、身体で判らせてやるか? |
■リッキ |
えっ……?? |
■ユウル |
……あいつ…! |
ユウルは怒りに肩をふるわせた。怖いくらい真剣な表情。我慢ならないという風に、JJを手に屋敷の入り口めがけて駆け出す。
■アシスト To:ユウル |
って、ちょっと待って! ここでオレ達が出ていくのはマズいよ。 |
■ユウル To:アシスト |
っ!…………だね。ごめん。アシスト、シルヴァ、頼むよ。 |
ユウルを引きとめると、ポケットから小石を取りだし隼の脚に掴ませる。
■アシスト To:シルヴァ |
頼んだよ、シルヴァ! マナよ集え、刹那の輝きを! |
ライトの灯りが付いた小石を持ったシルヴァが、塔の窓を目掛けて飛び込む。激しい羽音とゴリーエフの悲鳴、そして怒声。
■ゴリーエフ To:鳥 |
ひぃぃぃっ!なっ、やっ、このっ、やめっ!このやろうっ!!! |
塔の 3 階では、シルヴァを追い払おうとゴリーエフが拳を振り上げた。その瞬間、シルヴァが持った小石の明かりがパッと消える。アシストがライトをかけた時、このタイミングで消えるように図ったのだった。
ゴリーエフは急激な明るさの変化に一瞬目標を見失った。しかしそのまま振り払った拳は運悪くシルヴァの胸を一撃した。その衝撃は、地上のアシストにも伝わる。シルヴァはそのまま気を失う。
■ゴリーエフ To:鳥 |
こっ、この畜生が!俺は子供と動物が大嫌いなんだよっ!! |
床に伸びてしまったシルヴァを、ゴリーエフが踏みつけようとする。危うしシルヴァ!
■マルセリーナ To:ゴリーエフ |
ダメえっ!! |
身体全体で、マルセリーナがシルヴァをかばった。激しい目でゴリーエフを見返す。思わぬ事態と激しい抵抗に、ゴリーエフも動揺する。
■ゴリーエフ To:マルセリーナ |
く……。きょ、今日はこの位にしておいてやる。二度と俺に逆らうなよッ!! |
捨て台詞を残して、衣擦れの音が去っていった。塔の 3 階は静かになり、マルセリーナが深く息を吐いた。
■ユウル |
(深く息を吐いて)…なんとか、最悪の事態は回避できた…かな。 |
■マルセリーナ To:リッキ |
……あっ!どうしよう。鳥さんが…… しっかりして、ねぇ、ねぇってば。ど、どうしよう、リッキさま、鳥さんが死んじゃう! |
■アシスト To:マルセリーナ |
大丈夫、シルヴァは気絶してるだけだよ。 だから心配しないで……ちょっと痛かったけどね。 |
■リッキ To:マルセリーナ |
シルヴァ……良かった〜(>_<;) マルセリーナちゃんも大丈夫っ? |
■マルセリーナ To:リッキ、アシスト |
わたしは大丈夫ですっ!鳥さん…… シルヴァちゃん?えっと、その声はアシストさまもいるの?鳥さんはシルヴァちゃんで、みなさんのお友達なの? |
こちらも混乱気味(笑)
■ユウル To:マルセリーナ |
マルセリーナちゃん、ユウルです。よかった、無事で。怖かったと思うけど、もう大丈夫そうだから。深呼吸して落ち着いてね。 シルヴァはアシストのお友達。命は助かってるから、安心して。 |
■アシスト To:マルセリーナ |
説明が少し難しいんだけどね……ええと、魔法使いには使い魔っていう相棒がいるんだ。 オレにとってのソレがその隼なんだよ。 だから、オレには生きてるってわかるんだ。とりあえずそっちに行くから。 |
アシストは呪文を唱え、ふわりと浮かび上がる。
そのまま搭の窓の下までやってきたが、手を伸ばしても残り3.3 メートル足りない。
■アシスト To:マルセリーナ |
元々、今夜は君のお母さんからの手紙を渡しに来たんだけどね。 まずは手紙から渡すよ。 |
あと 3.3 メートルを埋めるために、アシストは適当な重さの小石に手紙をくくりつけて上空の窓を向かって投げ入れた。
■マルセリーナ To:アシスト |
きゃっ! |
窓から顔を出していたマルセリーナはうまくキャッチできなくて、一瞬顔を引っ込めたが、すぐに手紙を持って笑顔で現れた。
■アシスト To:マルセリーナ |
それじゃ、シルヴァを返してくれるかな? |
■マルセリーナ To:アシスト |
はいっ。でも、投げるわけにいかないし…… かわいそう。 |
ちょっと引っ込んで、お手製のエレベータを準備してきた。手籠にクッションを敷いて、その上に気を失ったシルヴァの身体を乗せてある。持ち手の部分に長いリボンを結んで、そろそろと窓から降ろす。シルヴァはアシストの手に戻った。
気がつくと、裏門の犬が低い唸り声を上げている。その鼻にアシストとシルヴァの匂いが届いたらしい。
■アシスト To:マルセリーナ |
おっとそろそろヤバイか。 手紙は見つかったらマズイから、読んだら暖炉にくべるなりして処分してね。 それじゃ、また明日会おう。 |
マルセリーナは了解の印に小さくうなづいた。
アシストはそそくさと塀の向こう側に降り、術を解いて二人のところへと戻る。
■アシスト To:ユウル&リッキ |
さ、それじゃ銀の網亭に帰ろっか。 |
■ユウル To:アシスト、リッキ&マルセリーナ |
そうだね、見つからないうちに退散しよう。今夜はもう大丈夫だと思うけど… (マルセリーナへ)明日、必ずお母さんの元へ連れて行くから。怖いかもしれないけど、今夜一晩我慢してね。 |
■マルセリーナ To:ユウル |
わたし、負けない。お母様に会えるなら、何だって我慢するわ。 |
■リッキ To:マルセリーナ |
うん、全部終わったら、一緒に遊ぼうねっ♪ |
リッキはマルセリーナの方へぶんぶんと手を振った。
銀の網亭に戻ってさっそく、シルヴァはヴィトリスの癒しで元気になった。
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