SW-PBM #072
汎用ヒト型演劇人形

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ハザード河沿いの道を歩いていると、岸辺に人だかりが出来ていた。
「事故」「溺れた」という言葉が聞こえて来る。
■ヴィトリス 
??? 溺れた?

人混みを掻き分け前の方へ。

水面に、転覆した小型の川舟が浮いていた。
ずぶ濡れになった数人の人間が、岸に上げられている。
■野次馬
どうやって助けよう、って思った瞬間来たんだよ。

■野次馬
そいつが全員を助けたのか?
たった一人で。

■野次馬
どこぞの名のある騎士様に違いない。

■野次馬
しかし、えらく大きな奴だったって話だが。

周囲から様々な話が聞こえる。
■ヴィトリス To:最寄の人
すいません。ちょっと教えて下さい。
一体何が起こったんです?
溺れたって聞こえたんですけど、全員助かったんです?
何やら、溺れた人を立派な体格の騎士様が助けたとか聞こえたんですけど?

■野次馬 To:ヴィトリス
おぅ、その通りだ坊主。
舟が何かの拍子に転覆したらしいんだが、親切な大男が全員を岸に救い上げたんだとよ。

そう答えた男も、背丈が2mを越える逞しい身体の持ち主。
■ヴィトリス To:野次馬の大男
へ〜、親切な大男…
僕から見たら貴方も十分大男ですけど、まさか貴方が…て訳は無いですよね。
その人は今どちらに?

■野次馬の大男 To:ヴィトリス
ん〜、名前も名乗らずにに濡れた身体で街中に消えたって話だ。
格好良い奴じゃねえか。

■ヴィトリス To:野次馬の大男
そうですね。
僕も見てみたかったですねぇ。

■野次馬の大男 To:独り言
儂も酒など飲んどらんで、一つ人助けでもせんといかんなぁ。

うむ、と頷く。
■ヴィトリス
(うむ、うむ)

特に意味無く一緒に頷く。
■衛視 To:ALL
あー、どいたどいたぁ。
怪我人と関係者以外は邪魔だから散って〜。

野次馬達が散り始める。
■ヴィトリス To:野次馬の大男
しょうがないですね。
では、色々ありがとうございました。
縁がありましたら又。

■野次馬の大男 To:ヴィトリス
ははは、物見高いだけだ。
また会おう、坊主。

男と別れたその時、足元に野犬が戻って来る。
そういえば、話をしている間姿が見えなかった。
■野次馬
お、おぁーっ!
俺の弁当……。誰だよ?!

悲痛な叫びが近くから聞こえる。
■ヴィトリス To:野犬
まさかお前………
急ぎましょう。

本殿への参拝者を横目に、裏手の宿舎へ。
厨房があるのは一階の北側である。
■ヴィトリス To:野犬
では、おとなしく待ってて下さいね。

そういい残して厨房の勝手口を開ける。
■ヴィトリス To:厨房
こんにちは〜。
え〜と…誰かいませんか?

こちらに背を向けた細身の女性が居た。
白いエプロンに、腰に届く黒髪という後姿。
ヴィトよりも15cmは背が高い。
■女性 To:ヴィトリス
何をふざけてる。次の仕事があるからな。
荷物はそこに置いておけ。
まず、机の上の野菜全部の泥落とし。
水場は出て右手の林の中だ。
帰りは水を汲んで来い。桶は外に掛かってる。
10分で済ませろ。
ついでに、暇そうな奴が居たら引っ張って来い。

背を向けたまま、矢継ぎ早に指示を出す。
■ヴィトリス To:女性
え?え??
?……え〜と、じゃ、この鍋はここに置いときますね。
でっと……机の上の野菜っと。
では、行ってまいります。

素直に野菜を抱えて洗いに行く。

10分経過。

何とか洗い終え、水を汲んだ桶も抱えて戻る。
戻ったヴィトを待っていたのは、包丁を握った女性。
■女性 To:ヴィトリス
遅いっ。休んでる暇は無いぞ。
まだまだやる事は……。

……おまえ誰だ?

■ヴィトリス To:女性
え〜と…その…ヴィトリス・ルと言います。
茜屋さんから鍋を預かってまいりました。
以後よろしくお願いします。

■女性 To:ヴィトリス
ふむ。
手伝ってくれるなら大歓迎だ。

机に置かれた鍋を手に取って仕上がりを確かめる。
■女性 To:独り言
……今度は人を叩かないようにしよう。

勝手口が開き、ヴィトより少し年上の青年が入って来る。
手には縛った鶏が数羽、下げられていた。
走って来たのか、苦しそうに息を切らせている。
■青年 To:女性
メルさん、鶏、言われたとこで、買って来ました。
クリムって、子の、居る店、ですよね。

■メル To:青年
ご苦労。

■メル To:青年&ヴィト
それじゃあ、二人は鶏の下準備頼む。

■ヴィトリス To:メル
え?これを?僕が?

生きた鶏を見て青褪める。
■ヴィトリス To:メル
あの…出来たら、この野菜を切るとかの方が良いんですけど……。

睨まれた──気がする。
■メル To:ヴィトリス
そうか。
それなら横で手伝ってくれ。包丁は使えるか?

■ヴィトリス To:メル
え〜と、まぁ、たぶん大丈夫です。

■メル To:ヴィトリス
これを使え。

ほいっ、と投げられる。
宙で放物線を描く包丁。
■ヴィトリス To:メル
え?

飛んでくる包丁をかわす。
受け取られず床に落ち、木の床に刺さる包丁。
■メル To:ヴィトリス
何故避ける?
家の妹でも上手く受け取るぞ。

■ヴィトリス To:メル
そんな無茶な……あ、いや…。
はぁ…どうもすいません…。

■メル To:ヴィトリス
次はちゃんと取ってくれ。

■ヴィトリス To:メル
…努力します。

手を動かしていると、話掛けられる。
■メル To:ヴィトリス
お前、仕事は何をしている?
どうして鶏が殺せない?

■ヴィトリス To:メル
え?あぁ、その…仕事は…何なんでしょう?
自分でも良く分からないんですよ。
世間では、冒険者とか言うんですかね?そんな奴です。

だから、まあ、鶏も殺せないって訳じゃないはずなんですが…。
その…一言で言うと血を見るのが怖いってだけかも知れないですね。

■メル To:ヴィトリス
お前には向いて無さそうな仕事だな。
死ぬ前に止めた方がいいぞ。

慣れていない手付きで野菜を刻むメル。
見ていると恐い。
■ヴィトリス To:メル
そうですね。やっぱり向いてないですかね………。
でも…その…メルさんも人のことは言えない様な……。
…怪我します…。

■メル To:ヴィトリス
これ(料理)は苦手なんだ。
風邪で倒れた知り合いに、無理矢理代わりを頼まれてな。

しかし、何かあっても怪我するのは自分だけで済む。
冒険者稼業は……、そうはいかないから恐い。

■メル To:ヴィトリス
住み込みで皿洗いか……。
募集してる店があったな、行ってみろ。

歪んだ三角亭、という酒場を紹介される。
■ヴィトリス To:メル
あ、どうもありがとうございます。
え〜と、歪んだ三角亭ですね。

■メル To:ヴィトリス
ああ。
いい店だから安心して働けるだろう。

■ヴィトリス To:メル
分かりました。では、また伺ってみますね。

でも、とりあえず今の仕事だけは片付けとかないと…
と、いうことで、今、MAD人形工房ってところで盗まれた人形を探してるんですけど
何かご存知ないですか?

人形の形状を説明。
■メル To:ヴィトリス
奇怪な人形だな……。
盗まれたというなら、盗賊の領分になると思うが。

■ヴィトリス To:メル
ま、そうですね。どうもありがとうございます。


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シナリオ編集:倉沢真琴 kushida@terra.dti.ne.jp