SW-PBM #070
人形屋敷の奥方

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■森 
薄墨を振りまいた夜空に満月が浮び、夜道を行く一人と一匹を照らしている。
オランの街から、サーラと共に急いで屋敷に帰るポムだ。
完全に夕食に遅れてしまったが、皆は待っててくれてるだろうか?

ようやく森の近くまでたどり着いた。
後は森の中の小道を1キロほど進めば屋敷に着くはずだ。

怪しい人影が出ると聞いた森なので、辺りを警戒しつつ先を急ぐポム。
■ポム To:サーラ
もうすぐご飯だ!
頑張ろうぜ

サーラに小声で話し掛けて、自分を元気をづける。
ん?
だがサーラの方はポムを無視するかのように、立ち止まって後(オラン)の方向をジッと見ているぞ。

そちらの方に目をやると、何やら薄暗闇の中を小さな明かりがこっちにユラユラと向かってきている。
多分、ランタンかトーチの明かりだと思うが・・・。
■ポム To:サーラ
(小声)頼む、静かにして

ポムはサーラを抱き上げて、鳴かないように口をそっと抑えると草むらへ”すすっ”と隠れた。
どうやら隠れて様子を伺うつもりらしい。
暫くすると、明かりがポム達の隠れている草むらの近くまでやってきた。
明かりはどうやらランタンの物らしい。そしてその相手は・・・、
■若い男
ありゃ?
おかしいっすねぇ〜。さっきは遠目にそれらしき姿が見えていたんすけど・・・。
もう森の中へ入ったんすかねぇ。
こりゃ間に合わなかったって事にしときますか。

と隠れて聞き耳を立てているポムに、男の独り言が聞き取れた。
んー?
この声は・・・、昼間のギルドで話した若い店員のような気がする。
本当にギルドの人間か、本当に独りでいるのか、武器を手に持っていないか確認の為に覗き見るポム。

他には誰もいない。昼間の若い店員一人だ。武器も手にしている様子は無い。

安全の確認が取れると、ポムはサーラを置いて、声を掛けながら草むらから出てきた。
■ポム To:若い店員
よう、兄弟♪
探し人は見付かったかい?(にやり)

■ベック To:ポム
どひゃっ!?

・・・・・・・・・び、ビックリしたぁ〜。


突然のポムの出現に、奇声をあげて驚くベック。
見かけ通りに臆病なようだ。そして一息ついてから
■ベック To:ポム
冗談キツイっすっよ〜!
上の命令で追っかけてきたのに、脅かすのはカンベンすよ〜。

と半泣きの顔で、ポムに抗議をしてきた。
■ポム To:ベック
そう怒るなって(笑
逆なら兄弟だって、あたしと同じ事するだろ?
先に脅かされたのはあたしなんだし。お互い様って事で、なぁ

■ベック To:ポム
はぁ・・・。そう言われれば、確かにそうっすね。

■ポム To:ベック
で、上の命令って何だ?

■ベック To:ポム
えーとですねぇ。
確か一年近く前だと思うっすけど、あの屋敷にうちのメンバーの新人が冒険者として雇われたらしいっす。
でもそれから全然連絡が無いので、今日になってどーなってるのか調べておけって上から言われたっすよ。

それで丁度良いから、ポムさんにお願しようと町中を探して、ここまで追いかけて来たっす!


■ポム To:ベック
それって依頼か?
(あたしが船って事かぁ?)

腕を組んでベックを見返す。
■ベック To:ポム
え〜、つまり依頼というか、まぁ個人的な依頼っす。
オズマルガン邸についてもっと調べておけと、上から命じられたんすけど・・。

■ポム To:ベック
それじゃ調べた情報を買うって事か?

■ベック To:ポム
そうっす。下請けみたいになるっすけど、よろしくお願いしやす〜。

とポムに頭を下げる。
■ポム To:ベック
一年前かぁ……
行方不明な新人の名前と特徴ってどんなんだ?
雇われた冒険者は一人?
じゃなければ他の冒険者メンバーも行方不明なのか?

■ベック To:ポム
メリーナっていう十代の可愛い女の子っす。
その子の仲間はロジャーとヒルダという二人っす。
え〜と特徴は・・・かくかくしかじか・・・っす。

ベックの述べた特徴は、以下のような感じであった。
・メリーナ:背の低い若い女の子(人間)
・ロジャー:体躯の良い大柄の神官戦士(人間)
・ヒルダ:女剣士(人間)
■ポム To:ベック
その中に老人はいないのか?

■ベック To:ポム
へ?全員若者っすよ。

■ポム To:ベック
おっかしいな〜、以前依頼した冒険者に年寄りがいたから
年寄りお断りって、依頼書にあるって聞いたんだけどな〜
ふ〜ん

■ベック To:ポム
それは初耳っすねぇ。

■ポム To:ベック
ふにふに。冒険者達で行って行方不明か
他に一人行方不明な神官もいるんだよな
そうなると、あたし達も危険って事だよな
安くないかも知れないぜ(笑)

■ベック To:ポム
そりゃただとは言わないっすけど、こっちも手取りが安いもんで・・・。
1本・・、いや2本じゃ駄目っすか?

■ポム To:ベック
2000か?

■ベック To:ポム
ひ、一桁多いっすよ〜。
それじゃ只でさえ少ない懐に、借用書が沸いて出るっす〜(TT

■ポム To:ベック
冗談だって(笑)

「2万ガメルか?」だったら気絶してたかも・・・。
■ポム To:ベック
…一つ聞いて良いか?命令した上って誰だ?
一応どういう流れで来ているのか、知っておいてもいいだろう?兄弟♪

■ベック To:ポム
いや、詳しい事はよく知らないっすけど、別口からギルドに調査依頼がきてた様っす。
なんか魔法の品絡みらしいっす。
チラリと聞いた所によると、とんでも無い代物とかなんとか。

■ポム To:ベック
なんだって!そんなヤバイもんが関わってるなら6本以上じゃないと!
…でも、まぁ事前に分かったって事で、5本に負けとくかぁ
更に詳しい事が事前に分かるなら、4本にしとくぜ♪

■ベック To:ポム
分かったっす。それでポムさんにお願しやす。

■ポム To:ベック
メリーナ達が誰からどんな依頼を受けたか知っているか?

■ベック To:ポム
ん〜、変な依頼だって言ってたっす。
「若者限定」とかなんとか。

■ポム To:ベック
…今回と似てるな
グラスランナーお断りがプラスしてたけどさぁ

■ベック To:ポム
う〜ん、それは初耳っすねぇ。

■ポム To:ベック
依頼は一週間だ
それ以降、あたし達が揃って銀の網亭に一度も帰って来なかったら
屋敷で何かあったと思ってくれ
あたしの冒険仲間についてはわかるよな?

■ベック To:ポム
了解っす。そん時は銀の網亭のオヤジさんにも知らせとくっす。
あとこっちでもちょっと調べてみるっすよ。
よろしくお願しやすね。

■ポム To:ベック
暗〜い夜道。そっちも気を付けろ(にやり)

■ベック To:ポム
ういっす。ポムさんも気をつけて下さいっすね。
あ、良かったらこれ使って下さいっす。
月明かりがあるにしても、森の方が暗いっすから。

とベックは自分の持っていたランタンをポムに手渡す。
■ポム To:ベック
ありがたく借りてくぜ♪
じゃぁ、いつもの酒場でな♪
忘れるなよ

冒険が終わったら、ギルドの酒場でって事らしい。
そしてベックは「了解したっす〜」と言葉を残して、街の方へ走るように帰って行った。
【森の手前】
■ポム To:サーラ
行こう♪

と草むらで待っているはずのサーラに声をかける。
ちゃんとサーラは草むらの中で大人しく待っていたが、その場にちょこんと座り、じっとポムを見上げている。
■ポム To:サーラ
どうしたんだ?
いっちゃうぞ

ポムが森に向かって数歩進むと、サーラは草むらから飛び出てポムの足に飛び掛かり、噛み付いてきた。
丁度アキレス腱の辺りにガブリ。これは結構痛い・・・。
■ポム To:サーラ
いっぅ!何するんだ!

かなり暴れたが、どうにかサーラを捕まえて足から口を外す。
■ポム To:サーラ
あたしは何もしてないぞ
それとも行かれちゃ困るとか思ったのか?

サーラはポムの腕の中でまだ暴れていた。
放せって事なのだろうか?

そしてスルリと腕の中から抜け出ると、ポムの正面で前かがみ気味になり、”ふぅ〜!!”っと威嚇する。
丁度サーラの後に屋敷への小道がある。

■ポム To:サーラ
どうしても行かせないつもりか?
でも、あたしだって引けないぜ♪
仲間が待ってるんだ!

だがサーラは全く引く気配は無いようだ。
どうしても行かせたくないのか?

一方、ポムは鞘付きショートソードで牽制しながら、じりじり屋敷の方へ回り込もうとするが・・・。
サーラもそうさせじと行く手を遮ろうとする。
そこでポムは手近の小石を拾って、サーラの足を狙って投げようと・・。

腕を振り上げた瞬間、サーラはパッと横に飛び退いた。
何故かサーラは哀しそうにポムを見上げ、それから身翻し草むらへと駆け込む。
そしてその足音は森の方へと消え去った。

■ポム To:サーラ
な、なんだよ
先に噛み付いたのはサーラだぞ!
あたしは行かなきゃなんないんだ、シーアン達は危険な場所にいるんだから
大事な仲間なんだ、ゆっくりなんてしてらんないんだ!

ポムはサーラが消えた森に向かって言う。
良心にチクチクとくるものがあるのだろう。
■ポム 
(なんか子供みたいな言い訳してるぞ。あたし)

とぼとぼと歩き始める。
■ポム To:サーラ
なんでそんな目でみるんだよ
…まるであたしが悪者じゃないか(ぽつり)

そしてじょじょに早歩きになり
■ポム 
うにに〜、子守り歌でも習っとくんだったかな

駆け足気味にポムは屋敷に向かった。

その頃屋敷では・・・・。


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シナリオ編集:倉沢真琴 kushida@terra.dti.ne.jp