SW-PBM Scenario #61B 目次

再会


祭壇前

 ケニが、背後から飛び出してきた。そのまま、全速力で走っていく。
■ケニ To: 男B
お父さんっ!

 先程、ダークエルフと一人対峙していた男に向かって飛びこんでいく。男は、持っていた槍を落として、それを抱き止める。
■バルク To: ケニ
ケニ、無事か……っ

 後ろの段上にいた村人達も降りてきて、全員でバルクとケニを取り囲んだ。
■村人 To: ケニ
ケニ、村は?

 ケニは、黙って頭を横に振る。
 村人たちの間から、ため息ともつかぬうめき声が漏れた。
■ケニ To: ALL
あの人達が、助けてくださった時にはもうみんな……
ファリス様が遣わして下さったんです。私達の宝を守るために。

■カナル
(神様が金を払ってくれるっていうなら、それでも良いがな)

■ソフィティア
そこまで大層な者じゃないと思うんだけどなぁ(^^;

■アスタルテ To:ケニ&村人
いえいえ、正義に使者として当然のことをしたまでです。

 アスタルテはカナルの心境など知る由も無く、無い胸をことさら強調するかのごとく後ろに反らし、ドンと胸をたたいた。
 そう言われて、村人達は改めて冒険者達の方を見つめた。一番年かさの男が、弓を傍らの少年に渡して一人で近づいてくる。白髪で皺だらけの老人だが、山育ちのせいかしっかりした足取りだ。
■村長 To: ALL
バル・ファリス村の代表をやっております、モロクと申します。
あなた方は一体……?

■ソフィティア To:モロク
わたしたちは、とある人から村の話を聞いてオランから駆けつけた冒険者です。まさか、ここまで酷いありさまだとは思わなかったんですが、早く来てよかったですね。

背後の村人達は、武器は構えていないものの、まだ警戒した様子が見える。
■ソフィティア To:モロク
オラン軍にもほかの人間が出動を要請に行っている筈ですので、もしかしたら後から来るかもしれません。それまでの繋ぎと思ってもらって結構です。来ないかもしれないんですけどね(^^;

■モロク To: ALL
そうですか、オランから……。皆さんがおらんかったら、わしらはもう駄目かも知らんかった。本当に助かりました。ありがとう。ありがとう。
じゃあ、こんな所で立ち話も何ですから、地上に上がりましょうか。

 モロク村長は、村人に目配せした。村人はダークエルフの死体を担ぎ、早速ここを出る準備を始めている。
■アトール To: モロク
おいおい、とりあえず何が原因なのかの話ぐらい聞かせてくれよ。
オランから徹夜で山登ってきて、ダークエルフと訳も分からず戦ってきたんだぞ。
ケニからは何も聞いていないんだ。
これで、また地上に出るまで数時間おあずけは無いんじゃないか?

■ヴィクトール To:アトール&モロク
うんうん、確かにオレも気になるなぁ。
理由によってはまだやらなきゃいけないことが残ってるかもしれないし・・・。

■モロク To: ALL
ほほぅ、何も聞かずにここまで来てくださったと……?
それは本当にファリス様の御使いかもしれんのぅ。

■ケニ To: 村長
本当です、村長さま。わたしが話せないって言ったら、みなさんそれ以上は聞かないでいてくれたんです。この人達なら大丈夫です。わたしたちの宝の話を聞いたからって、それを奪ったりするような人達じゃありません。絶対に他の人に吹聴したりしません。わたし、信じてます。

 ケニは、それぞれの冒険者達の目をじっと見つめた。
■カナル To:村長
御使いなんて、そんな大層な者ではありませんがね。
ただ、ダークエルフに奪われるぐらいなら、一介の冒険者に話を聞かせる程度の事をしていただいても、ファリス様はお怒りにならないと思いますが。

■アフル To:カナル&村長
また、そんな言い方して…(^^;;

ま、少なくとも、人の物を取るような事をする人は俺達にはいないですし、人に話して良い事か悪い事かの分別はつくつもりですよ。

■アスタルテ To:パーティALL
ねえ、言いたくない事なら聞かなくてもいいんじゃないの。
ケニも言ってたじゃない。
外の者には話せないって。
ボクとしては、事が終わったんなら早く上に戻って亡くなった人のお弔いをしたほうがいいんじゃないかなって思うんだけど。

■ソフィティア To:ALL
そうね。宝の話は後で良いじゃない。アスタの言うように早いところ弔ってあげましょうよ。さすがに、野晒しのままじゃ可哀相だわ。

■アトール To:ソフィー、ALL
別に宝の話なんてしてるつもりはないぞ、ソフィー。
俺達はオランでカレブの依頼を受けて村の様子を見に来るように頼まれて、徹夜でこんな所までやってきたんだ。
オラン軍まで動かそうかっていう程の事件に関わって、大勢の死者も出て、俺達も一歩間違えれば死んでいたかもしれない程の敵とやりあってるんだ。別に、何から何まで洗いざらい話せなんて言ってるわけじゃないさ。
いったい、何がこんな事態を引き起こしたのか、説明があるのが当然だろ?
ファリスってのは助けに来た人にそういう態度をとるのが教えなのか?

■カナル To:おおる
そういうことだ。
何も知らないまま働かされるのだけは勘弁して欲しいな。

■モロク To: ALL
宝の話と今回の原因は切っても切り離せないからのぅ。こちらにとっては別の話じゃあないのだよ。
そちらの女性方は興味が無いようだから話してもよいかと思ったが……あんたら 2 人は危険な匂いがするのぅ。「聞きたがりは話したがり」と言うじゃあないかぃ?

■ヴィクトール To:モロク
オレ達、言っちゃいけないことならそんな簡単に言い触らしたりなんかしないよ〜。

 後ろからやれやれと声がした。バルクだ。
■バルク To: モロク
そんなに意地悪を言うものじゃないぜ、爺さん。
どのみち、『ファリス様』はもうここには置いておけんだろう。生き残った俺達だけでは守りきれん。二度と今回のような事が起きんように、もっと安全な場所に移した方がいい。
オランから来た人達なら、相談に乗ってくれるだろう?

■ケニ To: バルク
えっ、でも、お父さん……

■バルク To: ケニ
仕方が無い。バル・ファリス村もこれで終わりだ。

■モロク To: バルク
さてさて、村が終わりなら村長ももういらんのぅ。もうろく爺は引っ込むとしようかの。

 バルクは、ケニを離して体を脇にどけた。背後に隠れていた、巨大な鍾乳石が全貌を現す。そこには、一振りの剣があった。太い鍾乳石の中央に、半ば埋もれるように一体化している。
 剣が置かれてから、よほど長い年月が経ったのだと想像できる。
■バルク To: ALL
これが我等の宝であり、ダークエルフがここを襲った原因だ。

■ケニ To: ALL
ファリス様が下さった剣です。

■バルク To: ALL
まぁ、何だな。単なる魔剣だ。

■ケニ To: バルク
!!

■バルク To: ALL
……数百年前、我等の先祖がここでこれを見つけた。その時、ファリス神の啓示があったと言い伝えられている。「そはわが身の分身なり。剣を守れ」と。どこまで本当かはわからんがね。

 モロクは、そっとファリスの聖印を切って、小声でつぶやいた。
■モロク To: ファリス神
暴言を許したまえ……

 年齢が上の村人は、バルクの言葉を聞いても冷静を保っている。少年(ルカス)やケニは動揺している。
■バルク To: ALL
もうひとつ言い伝えがある。剣を見つけたとき、それを手に取った若者は体中にみなぎる『力』を感じたそうだ。それはまるで自分が神になったような気分だったらしい……
だがその数分後、若者は死んだそうだ。

■モロク To: ALL
ダークエルフは言い伝えの前半分をどこかから聞きつけたらしいのぅ。さて、どこから漏れたもんか…… 彼らにとっても不幸なことよ。
後ろ半分を知っておれば触ろうとはせんかったじゃろうて。そんでもって ここで死ぬことものぅ。

■ヴィクトール To:モロク
・・・そっか、そうなんだ。
言い伝えが正しく伝わってさえいれば、避けられたのかもしれないんだね・・・。

■ケニ To: バルク、モロク
そんな…… 嘘だよね?ファリス様が下さった剣が人を殺すなんて……

■カナル To:ケニ
剣て言うのは、人を殺すための道具だぞ。

■ケニ To: カナル
……そんな、でもっ!

■ルカス To: バルク、モロク
そうだよ、嘘だよ!ファリス様がそんなことするわけないもん!

■モロク To: ALL
その若者は、剣に触れたとき偉大な者の声を聞いたそうな。
「汝、力を求めしか?」。……若者は YES と答えたんじゃな。

■バルク To: ケニ、ルカス
村の人間は成人が認められた時に、後ろ半分の言い伝えを知るんだ。お前達も もう少し経てば、この話を村長から聞くはずだった。

 呆然とする子供達。バルクは冒険者に向き直った。
■バルク To: ALL
さて、こんなとこで説明になったか?

■アトール To: バルク
その言い伝えが本当なら、ダークエルフなんて剣を掴んだとたんにあの世行きじゃないのか?
まさに、力を求めてやって来たのだろうし。
なんで、命を賭してまで、村を潰してまで、その剣を守る意味があったんだ?
ダークエルフがそれを手にする事による危険性が、俺には今ひとつ解らないが?

■バルク To: アトール
村を潰したのが俺達の意志のように聞こえるな。本気で言ってるか?俺達が煙に気が付いて村に戻った時にはもう終わってたんだよ。全てな。

 バルクは言っても仕方の無い怒りを払うように、太いため息をつく。
■バルク To: アトール
命を賭してまで守る意味か……。終わってみればそんなものどこにも無かったのかもしれん。
しかし、俺達にとっては腐っても神剣だ。先祖からずっと守ってきたものがダークエルフの手に落ちるのは許せなかった。俺達の村を、仲間を、妻を殺した奴等なんかに渡すわけには行かなかった。危険性云々の話じゃない。そういうウエットな理由だ。
愚かだろう?笑いたければ笑えよ。

■カナル To:バルク
別に、笑いやしませんよ。
家族を失った悲しみは、たまたま関わった者に窺い知ることが出来るとも思いませんしね。

■アトール To: バルク
村では、拷問された形跡もあった。
そして、それでも剣を守ろうとして話さずに、命が幾つも失われている。
確かに命を賭してまで守り通すものかどうかなんて、よそ者の俺には解らない。
それに関して、愚かだと笑うつもりは毛頭ないさ。
ただ、こういう結末になったのは代えようもない事実だ。
重要なのは、これからどうするか?と言うことさ。
ケニの様な残された若者に、どういう生き方、どういう考え方、を指し示すのかは、あんたら大人の役目だ。
村のしきたり云々に口を挟むつもりは無いが、ケニに指し示す道を、今回の事件を踏まえた上で良く考えることだな。

■バルク To: アトール
ああ。若い世代には大人が新しい道を示さねばならない。容易いことではないが、それを行うのは我々の責任だな。

■ケニ To: バルク
お父さん、わたし、村の最後の司祭としてできるだけのことをしたい。ソフィーさんやアスタさんが言うように、まずは村のみんなのお弔いをしなくちゃ……

■バルク To: ケニ、ALL
ケニ……
どうやらちょっと見ない間に、娘は随分成長したようですね。

 今までの冒険者達の導きの賜物だろうか?
■アスタルテ To:ト書き
ボクたちの人徳って言ってほしいなあ。

■カナル To:バルク
しかし、物騒な物ですね……。
その剣を掴んだ者が必ず亡くなるにしても、そしてもし仮に、命を落とさずにそのまま神の力を受け継ぐことになったとしても。

で、どうしたいんです?
オランにある賢者の学院へ持っていけば、外へ出すことなく封印して貰うこともできるでしょう。
その程度の解決方法で満足していただけますか?


■バルク To: ALL
この際言わせてもらえれば、神の力かどうかも怪しいもんだと思うぜ。

 ケニはもう反論する元気も無いらしい。モロクはちょっと肩をすくめただけで聞き流した。
■ヴィクトール To:バルク
そうかな?オレはそうは思わないな。少なくとも神様の力だって信じることは悪い事じゃないよ。
それに神様は魔法の力を使って世界を創ったんだからさ。

■モロク To: ヴィクトール
元は同じ。まぁ、そうかもしれんのぅ。ならば、ここで守るも賢者の学院とやらで守るのも同じだのぅ。

■バルク To: ALL
ま、そこへ持っていけば封印できるのならば、それに越したことはないな。この村の人間では、賢者の学院とやらに話をつけることすら難しいさ。紹介してもらえるならば、非常にありがたい。
問題は、そこまでどうやって持っていくかだが。

■モロク To: ALL
力を求めぬものがおれば、それも可能かもしれんのぅ。いかなる敵に対しても、相手を傷つけず争いを解決できる道を探したいなどと心から言えるような者がおればの。

■カナル
(そんな奴居るわけ……
 ああ、一人いるかもな……とびっきりのが……
 しかし、だからと言ってなぁ……)

■バルク To: モロク
そんな奴はいない。多かれ少なかれ、命ある者は相手を殺すことで生きているもんさ。我等がファリスでさえ、敵には容赦せん。

 村人は押し黙った。少しの間沈黙が流れた。
■ヴィクトール To:ALL
あ、あの・・・オレ持つよ。
勿論、村長さん達が許してくれれば、だけど。
オレ、やってみたいんだ。

■ケニ To: ヴィクターさん
ヴィクターさん……。
わたしも、きっとヴィクターさんなら大丈夫だと信じています。でも、ひょっとしたらそれは無責任な思い込みかもしれません。もしかしてそうだったら、大変なことに……ヴィクターさんが死んじゃうなんて、わたし、イヤです。

ケニには、ようやくアフルやアトールが言いたかったことが本当に伝わったようだ。
■ソフィティア To:ヴィクトール
わざわざ、危険に飛び込むこともないんじゃない?ロープででも縛ってぶら下げて行っていもいいんじゃないかな?折角、皆無事で済んだのに、こんな所で命を掛けてもらいたくないな……。万が一ヴィクターが死んじゃったら嫌だし。

■アトール To:ヴィクトール
同感だな。ここでそんな危険を冒す必要は無いだろ?

■ヴィクトール To:ケニ&ソフィティア&アトール
みんな心配してくれてありがとね、オレも死んじゃうのはイヤだよ。
イヤだけど、でもやっぱりオレやってみたい。・・・確かめたいんだ。
自分勝手でゴメン。我が侭だけど、今はみんなにもオレのことを信じて欲しいんだ。

■アスタルテ
(おお!! ヴィクトールが珍しく平和共存論以外の自己主張してる!!いいんじゃない、男の子はそうでなくっちゃ。)

 手放しで拍手を送るアスタルテだった。
■カナル To:ヴィクター
我が儘だな。
……お前のことは信じても、それだからこんな場所で命を掛けさせようとは思わんぞ。

■ヴィクトール To:カナル
うん、ゴメン・・・。
でもオレ、命を懸けてるつもりなんかないよ。
上手く説明できないけど、オレなりに自信はあるんだ。
だからみんなにはホントに悪いと思うけど、やっぱりやりたいんだ。

■モロク To: ヴィクトール
ひゃっひゃっひゃ、勇気ある少年だのぅ。
自信があるとな?魂が破滅して二度と再生できんでも、後悔はせんか?

■ヴィクトール To:モロク
・・・う〜ん、きっと後悔はすると思うよ。
でもさ、きっとここで自分から逃げてもやっぱりいつか後悔はすると思う。
だから今やれる精一杯のことをオレはしたいんだ。
オレは自分の心を信じてるし、これからも信じていきたいから、だから挑戦したい。

 約 1 名を除いて、仲間だけでなく、村人までが反対する中で老人が静かに言う。
■モロク To: ヴィクトール
ま、やってみなさい。

■ヴィクトール To:モロク
うん、やってみる。許してくれてありがと。

■アスタルテ To:ヴィクトール
きゃあぁぁぁぁぁ!! ヴィクトールかっこいい!!おっとこのこ!!惚れ直しちゃう!!(注:一度も惚れたとも好きだとも言ったことも思ったこともございません)

■モロク To: ALL
あれだけ決意が固いのを挫くのもどうかと思うがのぅ……
この爺は、少年の正義を信じてみようと思うの。己の信義を貫くという正義をのぅ。

■カナル
まったく、頑固さだけなら誰にも負けないだろうよ。

 モロク老人に示されて、ヴィクトールは剣の前へ進み出る。
 途中でふと何かを思いだしたようにリッキーを地面に降ろして語りかける。
■ヴィクトール To:リッキー
・・・ゴメンなリッキー、これはオレの役目だからさ、お前もそっちでみんなと一緒に待っててよ。
万が一って事もあるしね。

 ヴィクトールの言いたいことを理解したのか、珍しくも大人しくリッキーはちょこちょこと後ろに下がっていった。
 鍾乳石に埋もれた刃の部分を慎重に掴んで、力を入れて引くと、剣は思ったより簡単に抜けた。
そのまま柄の部分を握るが……
 何も起こらない。ヴィクトールには、剣から彼に呼びかける神の声も魔の声も聞こえてこなかった。ただの、一振りの平凡な剣に過ぎない。
■アフル To: ヴィクトール
なんとも…ない?

 ヴィクトールはきょとんとしつつも自分で自分の身体が何ともないのを確認する。
それから満面の笑顔で、
■ヴィクトール To:アフル&ALL
・・・うん、大丈夫。
何ともない、何ともないよ!オレ、何かホッとしちゃった。

■カナル To:ヴィクター
どうやら、『正義』って言うのは、『頑固』の別名だったらしいな。
全く、ヴィクターらしいというか何というか。

 あははは〜っと照れ臭そうに笑うヴィクター。
 いや、多分きっと絶対褒めてないと思うぞ、ヴィクター君(笑)
■ケニ To: ヴィクターさん
ヴィクターさん……。ホントに、よかったです。何ともなくて、よかった。

■ヴィクトール To:ケニ
うん、全然なんともないよ。
剣なんて初めて持つから、ちょっとドキドキしてるけどね。

■バルク To: ALL
……剣は本当に伝説の通りの魔剣だったのか?元から、ただの剣だったんじゃないか?そういう事も有り得るんじゃ……

■モロク To: ALL
神のみぞ知る、というところじゃの。

 モロクは満足そうに頷いた。



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