「私も人間でありながら、
その人間が、私を人間嫌いにしてしまう」(ルナール)
劇場 舞台 |
公演初日まで一週間をきり、劇団のテンションも徐々に高まってきていた。
練習も終盤、細部に変更を加えつつ、より完全なエレックの公演になっていく。
■ ライストン To:エレック |
エレック! 何度言ったら分かるんだ! もう一度やり直せ! |
前回以来、何も事件が起こっていないことを、取り敢えずは冒険者を雇っているおかげと考えるライストンは、エレックへの指導に全神経を傾けているようだった。
エレックもそれに応え、そしてそれ以上の成果を見せた。
■クレフ To:その場のALL |
はぁ…すごいもんですねぇ…鬼気迫る演技って言うのは、こういうのを 言うんでしょうねぇ…(嘆息) |
■ ジーク |
はぁ・・・やっぱり才能のある人は違いますねぇ(^^; |
■ アシスト To:ジーク |
スゴイよねぇ。ついつい見入っちゃった(’’; |
■ ジーク To:アシスト |
確かに歌劇団の至宝なんでしょうねぇ・・・・。 |
■ リュセラ |
Zzz……。 |
しかし、興味がないのか、警備疲れのひと時の休憩なのか。
客席で居眠りをかます奴も。数時間に及ぶ厳しい稽古も、エレックの独唱で終わりを迎えた。
一息ついたエレックは、ゆっくりと冒険者達の方へ歩いてきた。
■ エレック To:おおる |
まったく、団長の口やかましさったらないだろう? |
■ ジーク To:エレック |
それだけ期待されてるってことなのでは?(^^ |
■ エレック To:ジーク |
当然だな。 なに、それ以上の物を見せてやるさ。 ……誰からも文句の付けようの無いほどのものをな。 |
なにやら真剣なまなざしでそうつぶやくエレック。
■クレフ |
………? |
そのつぶやきに気付いたクレフだったが、何も応えることは出来なかった。
■ リュセラ |
──ん、ふぁぁ。気持ち良かった。 |
周囲の会話で目を覚ます。
エレックの歌声は、環境音楽ですか?(笑)
寝ていた本人は、気づいたら長い稽古が終わっていたためか、満足げ。
■ アシスト To:リュセラ |
リュセラねーちゃん、頼むから本番の時は寝ないでね(^_^;) |
大丈夫。
場慣れしてるし、本番には強い、よね(汗)
■ 団員D To:エレック |
エレック、お疲れ。 はい、どうぞ。 |
■ エレック To:団員D |
ああ、ありがとう。 |
女性の団員が、エレックのネームの入ったカップを手渡した。
■ アップル To:エレック |
あ〜〜っ!、そのカップかわいいですねーっ(嬉 |
すこし、調子のくるった声でエレックに話しかける。
■ エレック To:アップル |
そうかな? 特に面白くもないカップだと思うが……。 |
■ リュセラ To:アップル、エレック |
……私は、そのカップの中身の方が気になるんだけど。 これ、何の香り? |
その劇団員の様子を注意深く観察していたジークとクレフは、その様子に不審な物を感じた。
■ ジーク |
・・・・・・おや?(-~-)−−−■ エレック To:リュセラ、アップルおや、この香りはお気に召さないかな? 確かに、独特の香りだな。 私も、お茶が好きでね。 |
そう言って、カップに口を付ける。
■ クレフ To:エレック |
いけないっ!! |
クレフは咄嗟にエレックのカップを弾きとばすと、劇団員に向き直り、腕をおさえる。
■ クレフ To:劇団員D |
あなた、誰です!? |
■ 団員D To:クレフ |
きゃあ! な、何をするんです!? |
そう言いながら、気付かれないほどの微かな動きで徐々にエレックに近づく。
が、それよりも早くその動きを察知したクレフとジークが飛びかかった。
しかし、団員Dはくるりとトンボをきるとその手をかわし、そのまま逃走した。
■ クレフ To:劇団員D |
待ちなさいッ! |
■ アシスト To:団員D |
そう簡単には逃がさないよ。 マナよ。我が意に従い、眠りをもたらす雲をここへ! |
アシストの詠唱を受け、刺客の周囲に眠りをもたらす雲が発生する。
しかし、その魔力を打ち破り、刺客は通路へ駆け込んだ。
■ アシスト To:ALL |
って、効いてない!? ねーちゃん達急いで! |
■ リュセラ To:団員D |
新手の刺客?! |
リュセラは、ようやく状況を飲み込むと、刺客の後を追って走り出した。
■ アップル |
やっぱり・・・・・! |
■ ジーク To:団員D |
?! 待ちなさい! |
リュセラに続いて、アップルとジークもそれを追いかけた。
■ イルミナ To:ALL |
みんな、そっちはお願い! |
言うや否や、エレックに駆け寄り辺りに注意を払う。
劇場 通路 |
もとより細い通路に、芝居の道具が散乱し走り難いことこの上ない。
そんな条件下、しかし刺客は、道具の山を崩して追っ手を撒こうとしながらすいすいと走り抜けていく。
しかし、その後を何とか追いかけたアップルはついに前に回りこみ、リュセラと二人、挟み込んで動きをけん制する。
そこへ、ジークまで追いついてきたことで、ついに観念したのか、刺客は手を挙げ、投降の意を表した。
■ 刺客 To:おおる |
分かったよ、あたしの負けだ。 |
■ アップル To:刺客 |
・・・やけにあきらめがいいのね・・・ |
■ 刺客 To:アップル |
無駄にあがいても、道が開けるわけじゃないでしょ? |
劇場 舞台 |
逃げられないように周りを固めながら、エレックの前まで引き連れてくる。
どうやら、エレックの目にも入る所で尋問するつもりらしい。
悪あがきを警戒してか、イルミナがしっかりとエレックをガード。
他のスタッフも集まってくる中、ジークが尋問を始める。
■ ジーク To:刺客 |
勝ち負けを争ってるわけではないですけどね。 なぜエレックさんを狙ったんです? |
周囲にも気を配りつつ、怪しい動きをしないようけん制するジーク。
■ 刺客 To:ジーク |
あんたたちは、なんであいつを守ってるんだい? あたしも同じ。仕事だよ。 |
■ ジーク To:刺客 |
依頼を受けて、ということに関しては同じですけどね。 貴方が化けた団員さんはどうしました? |
■ 刺客 To:ジーク |
殺しちゃいないよ。 倉庫の中に転がってるさ。 |
■ イルミナ To:エレック |
!! やはりこれはファンの逆恨みとかではないようね... エレックさん...本当に心当たりないですか? 仕事としてプロに依頼するなんて余程のことよ? |
■ エレック To:イルミナ |
そういわれても、無い物は無いな。 |
■ ジーク To:刺客 |
依頼主の名前は・・・・と聞いても無駄でしょうね。 |
■ 刺客 To:ジーク |
そうさねぇ。 あたしも依頼人についちゃ、死んでも口は割らない、と言いたいところなんだけど、実際に知らないんだわ。 下っ端には、そんなこと教えちゃ貰えないのよ。 ただ、こんな男一人殺すのに、あたしたちを使うなんて、どう考えても割に合わないと思うんだけどね。 |
■ ジーク To:刺客 |
あたし達? ということはまだ何人かいるということですね。 こないだセットを落としたのも・・・貴方の仲間なんですか? |
■ 刺客 To:ジーク |
組織には、ね。 今回の件に関わってるのは……まぁ、隠してもしょうがないしね。 あたしだけさ。 ねぇ、これだけしゃべってるんだ、見逃してくれないかな? |
■ イルミナ To:刺客 |
あなたが依頼されている内容はエレックさんの殺害だけですか? 他にもなにか依頼されてませんか? 例えば、何か盗んで来いというような... |
■ 刺客 To:イルミナ |
さてねぇ……あたしの質問への答えもききたいし。 |
■ リュセラ To:刺客 |
見逃すと、私達の仕事も失敗になるのよ。 |
■ 刺客 To:リュセラ |
護衛対象は護れたじゃない。 それに、あたしみたいな下っ端捕まえても、黒幕なんてわかんないわよ。 |
■ リュセラ To:刺客 |
わ、判るかも知れないじゃない。 |
■ エレック To:おおる |
こんな奴でも、プロはプロなんだろう? ならば、口を割るはずは無いだろう。 さっさと黙らせてくれ。不愉快だ。 |
不機嫌そうなエレックの言葉に、
■ 団員A To:エレック、おおる |
いいじゃねぇか。 話し聞いてると、どうやらわが身かわいさに話しそうじゃねぇかよ。 さあ、尋問を続けてくれよ。 |
■ ジーク |
続けてくれと言われてもこの状況では・・・・・(^^;;; |
そこへ、騒ぎを聞きつけたライストンもやってきた。
■ ライストン To:おおる、刺客 |
ありがとう! 君たちを雇って正解だったな。 おい、知ってることを全部話すんだ! |
■ エレック |
……くっ。 |
■ イルミナ To:エレック&ライストン |
エレックさん... すいません、ライストンさん 彼女の尋問を続けるにあたってちょっと人払いをお願いできませんか? これから得られるかもしれない情報が、知ってしまったが故に命を狙われると言うようなものですと非常に危険ですし...万が一を考えてライストンさんとエレックさん以外の方はご遠慮願いたいのですが... |
■ ライストン To:イルミナ |
なに? いや、それはかまわんが……。 ということは、わしも危険ということか? |
■ イルミナ To:ライストン |
あっ、一応責任者であるライストンさんは事情を知る権利があるかと思っただけですので、私達を信頼してくださるのでしたら、ライストンさんも外へ行かれてもいいんですが。 どうされます? |
■ ライストン To:イルミナ |
……うーむ。 分かった、君たちを信用しよう。 エレックを頼む。 しかし、こんな舞台の真ん中で話すのもなんだろう。 ここの後始末もあるし、君たちが別室へ移動してくれないか? |
■ イルミナ To:ライストン |
ん〜移動ですか... みすみす彼女に脱出の機会を与えると言うのはどうも...彼女もプロですから... できれば、このままここで行いたいのですが... |
■ ライストン To:イルミナ |
なるほど、それも道理だな。 分かった。その方が重要事項だ。 みんな、早くここから出るんだ。 |
ライストンに促され、団員たちはぞろぞろと出て行った。
■ アップル To:おおる |
・・・わたしは、倉庫に入れられてるっていう、団員さんを助けに
いきたいんだけど・・ 怪我でもしてると大変だしね。 だれか、一緒に行ってくれる人・・・いないかな? |
■ ライストン To:おおる |
なら、わしも行こう。 |