- Diva the Soul Saver - 魂のディーヴァ

Chapter 3

砦の前

 領主邸の裏口から出ると、ちょうど領主邸を挟んで村の入り口と正反対の場所に砦はあった。村の中心からは離れているが、そう遠いというほどでもない。
 砦は見るからにあちこち痛んでいて、かなり古いものであることはすぐに分る。

 幅15mほどの堀には跳ね橋がかかっていて、レイザはそこをどかどかと進む。
 そして、両手に壺を抱えたまま門をげしげしと蹴り砦の中と何やらやりとりすると、門が開いた。
■レイザ To:ALL
 さあ、入った入った。

 そう言いながら、レイザは遠慮のカケラもなく砦に入っていく。
■アディ To:ALL
 あ、大丈夫よ。ボロいけど、いきなり壊れたりはしないから。
 めったに。

 などと言いつつ、アディもレイザに続いて砦に入っていった。
■バジル
 めったに…?(^^;

■ルタード
 これだけ痛みの激しい砦が放置されていたということは、いままではまったく平和な村だったということじゃな……。

 一行が砦の中に入ると、村人らしき人々が各々何やら作業しているのが見えてくる。ぱっと見たところでは20人弱ほどいる。
 そのうち数人がこちらに気付き、近づいてきた。
■村人 To:ALL
 レイザさん、アディさん、どうでしたか?

■レイザ To:村人
 ああ、大したものは無かったけど、イモ尽くしよりはマシだろうよ。後で厨房に運んどくからね。

■村人 To:レイザ
 いや、我々で運んでおきましょう。
 ………ところで、そちらの方々は、どちらで?

 村人が一行の方を見つつ言う。
■レイザ To:ALL
 ああ、ええっと………どちらだっけ?

■バジル To:レイザ
 レイザさん達が帰って来ないから、探して欲しいって頼まれたんだ。
 とにかく無事な姿を確認できて良かったよ。
 状況はあんまり無事って感じじゃないけどね。 でも、思ったより沢山人が居てよかった。
 あの沢山のゾンビを見た時には村が全滅してるかと思ったよ。

■ポム To:レイザ
 ほんとにな。
 紹介が遅れたけど、あたしの名前はポムだ。よろしく。

■アイシャ To:レイザ
 アイシャなの〜。

■村人 To:ALL
 はぁ、どうも。

 その自己紹介を聞いて、ふと思い出したようにレイザがこちらを向く。
■レイザ To:ALL
 ふーん、じゃあ村の状況を知って助けに来た…ってワケじゃないのかい。

■ミュン To:レイザ
 ええ。

 レイザの言葉を聞いて、村人達の表情に明らかな失望が映った。ちらりと村人の方を窺い、レイザが声を落とす。
■レイザ To:ALL
 ………まぁ見ての通り、全滅はしてないけど村人は半分方やられちまってる。化け物に殺されちまった奴らは、何故か知らないけど化け物の仲間になっちまうらしい。
 その辺はみんなかなりつらいみたいだから、村人の前ではあまり言わないでおいてやってくれるかい。
 それから…村の自警団の奴が二人オランまで助けを呼びに行ったはずなんだけど……その様子だと駄目だったみたいだね。

 ま、細かい話はメシ食ってからにするかい。あまり大したものはないけどね。

■ポム To:レイザ
メシか♪

■ルタード To:レイザ&みんな
 ……そうしましょうか。


 食事は質素を通り越して貧相なものだった。
 砦の中には井戸があり水は比較的不自由しなかったし、イモも飢えない程度にはある。
 ただ、問題は燃料となる薪が不足していることと調味料がほとんどないことで、イモを煮ただけのスープですら味は薄く所々生煮えになっていた。もっとも、村人たちはそれでも美味そうに食べているところを見ると、調味料の不足はさっき持ってきた分で以前よりマシになったのかもしれない。
 また、ラウルとレイザの壺に入っていた二種類のピクルスのおかげで───と言っても一食に一人二切れほどしか渡らなかったがそれでも───食事の貧相さは多少は和らいでいた。少なくとも、超短期的に見て一番感謝されたのがこれだったくらいだ。

 食事に現れた村人は老若男女合わせて60人ほどいた。そのうち半分ほどが老人か子供で、残りの半分のうち更に半分は女性だ。
 村人たちはさすがにこちらが気になる様子だったが、特に何も言ってくることはなかった。
■ルタード To:レイザ&アディ
 さて、そろそろ詳しいお話をうかがうことにしましょうか。
 どういう経緯で、村がこのようになったかということを中心にの。

■アディ To:ALL
 ………あたしが来た時には、もう墓場あたりではゾンビが現れてたみたいなの。来て一日目はもう時間が遅かったから宿に泊まって、二日目に領主に学院からの手紙を渡して…その場でゾンビ退治を頼まれた。あいつらを倒してきたらディーヴァを渡す、って。
 墓場のゾンビはすぐにやっつけたんだけど、それだけじゃ済まなかったの。死体があればあるだけゾンビが出てきて、きりがなくて………。

 それで、むかし領主邸として使われてたっていうこの砦に村人を避難させて、それからは何とか持ちこたえてるけど………

■ルタード To:アディ
 「死体があればあるだけ」ということは、亡者どもを退治するときに極力犠牲者を出さないようにしないと、らちが明かぬということですな。
 とはいえ、最初のうちならともかく、これだけ数が増えてしまった以上、退治するのに、犠牲者をまったく出さないのはもちろん、数を抑えることすらかなり難しいでしょうしな。

■アディ To:ALL
 砦の中ではまだ犠牲者は出てないの。それに砦に攻めて来るゾンビをやっつけてるから、少しは減ってると思う。でも多分…先にこっちの物資が尽きちゃうわ。

■バジル To:アディ
 最初から食べ物が少ないってわかってたら、もう少し何か持ってこれたかもしれないけど、僕達もそれ程保存食を持ってるわけじゃないしなぁ…

■アディ To:バジル
 ううん、気にしないで。それは自分のために取って置いて。

■ルタード To:アディ&レイザ
 ところで、領主どのはどこにおられるのでしょうな?

■レイザ To:ALL
 それの………

 そう言いながら、砦の中心に立つ塔のような建物を指さす。
■レイザ To:ALL
 一番上の部屋に鎮座してるよ。領主の部屋なんだとさ。いいご身分さね。

■ラウル
 一番上の、一番安全そうなところに……か。

■バジル To:レイザ
 領主ってどんな人?

■レイザ To:アディ
 デブだな?

■アディ To:レイザ
 デブね。

■レイザ To:バジル
 デブだ。

■ポム To:レイザ
デブか。

■アディ To:バジル
 ついでにケチよ。

■ポム To:アディ
そんでもってケチ。

■アイシャ
・・・・・^^;

■バジル To:レイザ&アディ
 素敵なおじさまって訳では無さそうだね。

■ポム To:バジル
ありがたくない代表のおじさまだな

■ルタード To:バジル&ポム
 二人とも、先入観は持たんほうがよいかも知れんぞ。
 ふとしたときに、態度に出てしまったりするからの。

■バジル To:アディ
 ねぇ、あなたが受け取りに来たディーヴァには、アンデッドの魂を浄化する力があるって聞いたんだけど、それを使って一気にゾンビをやっつけたり出来ないのかなぁ?

■アディ To:バジル
 わかんない…うまくいくかもしれないけど……でも、考えようによっては、ゾンビが現れ始めたのはディーヴァが発見されてからなの。
 何が起こるか分らないものは最後の手段にしたいわ。

 既に検討はしたらしい。
■ルタード To:アディ
 なるほど、もっともですな。

■アイシャ To:アディ&レイザ
 ディーヴァを使うのにはコマンドワードが必要って聞いたのだけど、
 あなたたちは知ってるの?

■アディ To:アイシャ
 うん。オランを出る前に、一応ってことで教えてもらってるよ。

■ミュン To:アディ&レイザ
 貴方がたは、領主からディーヴァについてなにか聞かれましたか?

■アディ To:ミュン
 うーん、すごい祭器だって話したら、急に「これは自分の領土にあったんだから、自分のものだ」の一点張りになっちゃって、あまり話は聞けてないの。

■アイシャ To:アディ
 危険かもしれないって話は忘れちゃったんだね。きっと^^;
 (困った人かもなの〜)

■ミュン To:ALL
  領主のところに、行ってみませんか?
  彼なら、なにか知っているかもしれませんし。

■ルタード To:ミュン
 ん〜、アディどのの話で初めて価値を知ったらしいところをみると、あるいは祭器については何も知らないかも知れんけどもな。
 とはいえ、領主どのに一度お会いしてみるのには、わしも賛成じゃ。

■バジル To:ミュン
 そうだね。事の発端について彼が何か情報を持っているかもしれないし。

■ルタード To:バジル
 祭器の扱いを誤ったことを隠しているとかの。

■アイシャ To:ルタード
 うひゃ〜なの^^;
 もしそうなら彼がディーヴァを持ってるままなのは恐いよ〜。

■ミュン To:ALL
 もしかしたら、この村がこのようになった原因をしっているかもしれませんし。

■ルタード To:みんな&アディ&レイザ
 では、参ろうかの。
 アディどのかレイザどのには、できれば案内をお願いしたいのですが、まあ、なにやら事情もありそうですし、無理にとは申しませんけども……。

■レイザ To:ルタード
 ごめん、あのデブ苦手なんだわ。跳ね橋を見てやらないといけないしさ。
 そこ入ってすぐの階段を一番上まで行ったらすぐ分るから。



ゆな<juna@juna.net>