- Diva the Soul Saver - 魂のディーヴァ

Chapter 1

衛視詰め所

 次の日の朝。
 一行は、一部ややもたれぎみな胃袋を抱えつつ、依頼書に書いてあった衛視隊の詰め所まで来ていた。
 衛視だの官憲だのと、まぁどう呼んでもいいのだが、とどのつまりはオランの警察組織の末端である。ただ、お巡りさんという言葉で思いつくのと違う点は、根本的に軍の下部組織であるということくらいだろう。
 呼び名はどうでもよいので、とりあえず便宜上衛視と呼ぶことにする。

 で、目の前に件の詰め所。そこそこ大きい。受付というか見張りというか、詰め所の前には若い衛視が一人が立っている。
■若い衛視 To:ALL
 何だね君たちは。

■ミュン To:若い衛視
 僕たちは、銀の網亭からきたものです。ハンク=ラヘンストンという方はいらっしゃいますか?

■若い衛視 To:ミュン
 ああ、ハンクさんなら奥にいるぞ。呼んでこようか?

■ルタード To:若い衛視
 是非、よろしくお願いします。
 「銀の網」亭に張り出された御依頼の件で冒険者たちが来ている、とお伝え下されば、話が早いと思いまする。

■若い衛視 To:ルタード
 分った、少し待ってろ。

■バジル To:ポム
 (小声で)随分偉そうな口調の人だね。
 衛視さんってみんなそうなのかしら?

■ポム To:バジル
(小声で)そうじゃないヤツの方が珍しいんじゃないか
仕事でそうなるのか、そういうヤツが集まってるのか知らないけどさ
やっぱり居心地悪い場所だよな、全く

 そう言うと、衛視は詰め所に入っていった。
 しばらくして、別の男が出てくる。スポーツマンタイプの大男だ。彼は無愛想なままこちらを見回すと言った。
■ハンク To:ALL
 ハンクだ。君たちが頼んで置いた冒険者か?

■ルタード To:ハンク
 お初にお目にかかります。
 さよう、わしらがハンクどのの名前で張り出されていた依頼書をみてまいった冒険者でございます。

 そういうと、ルタードは懐から折り畳まれた依頼書を取り出す。
■ルタード To:ハンク&みんな
 わしが、一同のまとめ役をいたしております、ルタードと申します。
 で、こちらが……ああ、一人ずつ紹介するのも面倒じゃな。各々自己紹介してくれるかの?

■アイシャ To:ハンク
 はーい。えっと、アイシャです。
 詳しいお話を聞かせてもらいに来たです〜。

■ポム To:ハンク
…あたしはポムだ(^^)

■バジル To:ハンク
 バジルです。よろしく♪

■ラウル To:ハンク
 オレはラウル。よろしくな。

■ミュン To:ハンク
 ミュンと申します。僕を含めたこの6人で全員です

■ハンク To:ALL
 さて、立ち話もなんだ。どこから打ち合わせができる場所に移りたいんだが。

■アイシャ To:ハンク
 ここではダメなの?

■ルタード To:ハンク
 そうですな。
 詰め所の中ではちと具合が悪い……ですかな?
 ならば、わしらがふだん利用している「冒険者の店」ではいかがでしょう?
 いやむしろ、衛視の方がいらっしゃるには、そちらのほうが不都合……?

■バジル To:ルタード
 なんで不都合なの?
 あ、仕事中にお酒飲んでるって思われちゃうから?大丈夫、あの店でそんな野暮な事言う人なんて居やしないよ。どうしても気になるなら制服脱いできちぇばいいんじゃない?

■ラウル To:ルタード
まあ、店が店だし、仕事の話で来てるって思ってくれるんじゃねえかなあ?

■ハンク To:ALL
 ああ、気にしなくていい。それでは銀の網亭で話させてもらおう。

■ミュン To:ハンク
 じゃあ、早速移動しましょうか。いまの時間だとすいてそうですから。

銀の網亭

 一行はハンクを連れて、銀の網亭に戻る。道中、彼は終始必要最小限なこと以外言わず、会話を成り立たせるのもつらくなってきたあたりで到着した。
 ハンクはそのままテーブルに近づき椅子に腰掛けると、こちらが座るのも待たずに話を始めた。
■ハンク To:ALL
 さて、依頼の話をしたいのだが。

■アイシャ To:ハンク
 あ、今、座るからちょっと待ってなの〜
 んしょ。はい。もういいよ〜。

■バジル To:ハンク
 まず、事のあらましを教えて欲しいんですが…
 あ、その前に依頼について話すことがあったかな?

 バジルは、ちらとルタードの方を見る。
■ルタード To:バジル
 いや、まずはハンクどののお話をうかがおう。
 こちらからお伝えせねばならぬことがあれば、そのあとということで。

 ルタードはハンクと向かい合わせの席に腰を下ろすと、羊皮紙とペンを取り出した。
■ルタード To:ハンク
 それでは、よろしくお願いします。

■ハンク To:ルタード
 そうか。

 今度は全員が席に着くのを待ってから、ハンクが頷く。
■ハンク To:ALL
 まず、この依頼はあくまで俺個人からということになっている。報酬も俺が払う。公式には衛視隊は何ら関知しない。その点に留意してくれたまえ。

 さて、依頼の内容は、とある祭器を受け取りに行ってから連絡のない隊員の捜索だ。馬で行けば片道2日で行けるようなところだが、出発して2週間経ってもまだ帰ってきていない。出発して7日目に別の隊員を迎えに行かせたが、同じく帰ってきていない。
 何らかの事件に巻き込まれた可能性があるのだが、我々がこれ以上人員を派遣するとなると手続き的に考えてすぐにというわけに行かないのだ。そこで、あくまで俺が個人的に雇うという形で君たちに捜索を頼みたい。

 先に派遣されたのがアディ=ラヘンストン、迎えに行かせた方がレイザ=チョルキー、両名とも女だ。
 何か質問はあるか?

■アイシャ
(あぅ、オランでのお仕事じゃなかったんだ。)

■バジル
(あちゃ〜)

 思わずアイシャの方を見るバジル。
■ミュン To:ハンク
 祭器ですか?それはどういったモノなんですか?なにかユワレがるとか?

■ハンク To:ミュン
 なんでも、ディーヴァとかいうこのくらいの………

 と、ハンクは自分の拳を見せる。
■ハンク To:ミュン
 …このくらいのベルで、その音色はアンデッドの魂を浄化する力があるそうだ。
 学院によると、危険な祭器だという記録があるらしくてな、我々にお鉢が回ってきたのだがこのザマというわけだ。

■ルタード To:ハンク
 「お鉢が回ってきた」ということはつまり、学院から衛視隊に公式の依頼があったということなのでしょうか?
 とすると、わりと珍しいことのように思えるのですが……?

■ハンク To:ルタード
 そうでもないさ、特にオランが平和な時はな。

■ルタード To:ハンク
 そうなのですか。
 いや、勉強になります。

■アイシャ To:ミュン
 学院で、何かそのベルについて聞いた事ある〜?

■ミュン To:アイシャ
いえ、今初めて聞きました。

■バジル To:アイシャ
 僕も初めて聞く名前だなぁ。

■アイシャ To:ミュン&バジル
 そっか〜。

■ミュン To:ハンク
 受取りに行ったというところは、何処なんです?またその受取りの相手は?

■ハンク To:ミュン
 サスタークという村だ。さっきも言ったが馬で2日、歩いても4日あれば着く。
 先方はそこの領主の男爵だ。

 更にミュンは質問を続ける。
■ミュン To:ハンク
 巻き込まれたかもしれない事件には、心当たりとかありますか。? 例えば、受取りが難しいとか、そこに行くまでに何かがでるとか?

■ハンク To:ミュン
 いや、簡単な、それこそおつかい程度で済むはずだったんだ。だが、最近村の近くを通った商人がゾンビを見たとかいう話があってな。もちろん、ただ遅れているだけという可能性もあるが。

■バジル To:
 ぅげ…

■ルタード To:みんな
 ふむ、またも不死の怪物か。
 また墓荒らしとかいう話になったりしての、ほっほっほっ。

 目は笑っていない。
■バジル To:ルタード
 もしかしたらまた狼男とかもいたりして。なーんてさ、あはははは

 同じく目は笑っていない。
■アイシャ
 いや〜ん(;;)

■ポム
(;;)

■ミュン To:ハンク
 なぜ、貴方個人の依頼なんです?。時間がかかるという意外に理由とかありますか?

■ハンク To:ミュン
 時間がかかるという理由だけだが、これで結構深刻なのだよ。正式に派遣されるのを待っていると、最初から派遣する必要がなかった場合以外ならば、まず手遅れだろうからな。

■バジル To:ハンク
 なるほど。で、身軽に動ける僕達に頼もうって事になったんですね。

■アイシャ To:ハンク
 2人とも1人で馬に乗って行ったの?

■ハンク To:アイシャ
 ああ、そうだ。だが、悪いが君たちに馬を貸すというのは難しい。だから、君たちが馬なり馬車なりを持っているのでなければ徒歩で行ってもらうことになる。

■ルタード To:ハンク
 それはかまいません。
 丈夫な脚を持っているのですから、有効に使いませんとな。

■アイシャ To:ルタード
 でもその分着くのが遅くなっちゃうよ〜。

■バジル To:ルタード
 どこかで馬車さえ借りられれば、馬は僕のフェローを使えるよ。

■ルタード To:バジル
 いやいや、一頭立ての馬車に6人では、速度が出んじゃろう。
 それに何より、フェローがつらかろうて。

■バジル To:ルタード
 そうか…。馬車じゃ2日では着かないかな

■アイシャ To:バジル
 ん〜、困ったの〜。出来るだけ早く着きたいよねぇ。
 でも徒歩で行くしかないかなぁ?

■アイシャ To:ハンク
 出発する前に最後に会ったのは誰ですか〜?

■ハンク To:アイシャ
 二人とも俺が見送った。だから、最後に会ったのは俺だな。

■アイシャ To:ハンク
 えっと、おかしな様子とかなかったですか?

■ハンク To:アイシャ
 初仕事だからという程度にはおかしかったがな。蒸発するような「おかしさ」ではない。

 とそこで一息つくと、今度はポムが身を乗り出す。
■ポム To:ハンク
消息不明な二人について詳しく聞きたいんだけど…二人とも仕事はベテランだったのか?結構腕が立ったり、機転が利いたり、知識に深かったりするような人達?

■ハンク To:ポム
 レイザはかなり腕が立つ。剣の腕がな。頭の方はどうだかな。とりえあず、村まで行って帰ってくる程度が出来ないほど馬鹿ではない。
 アディは新米だ。だがマイリー神殿で修行していた間の成績はかなり良かったし、武術もそこいらの門番よりは上だ。

■ポム To:ハンク
性格とかの特徴とか二人が共通するところって思い当たる?自分の事より仕事が大事とか…いままで失敗した事がなかったとか…人とお話するのが好きとか…部屋にこもりがちとか…

■ハンク To:ポム
 いや……性格的には正反対だと思うがな。

■ルタード To:ハンク
 参考までに、どう正反対なのか、お聞かせいただけますか?

■ハンク To:ルタード
 どうと言われてもな。レイザは北の蛮族出身で、アディはオラン産まれのオラン育ちだ。そのせいか、レイザは少し腕力で物事を片づけようとするふしがあるな。

■ラウル To:ハンク
んーっと。衛視隊に入るくらいだから、正義感は強いんだろうが……。
二人とも、いや、最初の人の方は、任務の途中でも揉め事に首つっこむようなタイプか?
例えば、任務の途中で人の命に関わりそうな事件に出くわしたとき、そっちを優先してしまうとか……。

■ハンク To:ラウル
 分らん、もし何かあったとしても、誰かに言付けを頼むことくらいはできるだろう。

■ルタード To:ハンク
 え〜、少し立ち入ったことをうかがいますが、……アディどのはハンクどののご息女ですか?

■ハンク To:ルタード
 ………むぅ………

 ハンクが怪訝そうに呻いた。
■ハンク To:ルタード
 ………俺はそんなに老けて見えるか?
 アディは俺の妹だ。

■ルタード To:ハンク
 いや、これは失敬。
 人間の年齢はつかみ間違ってしまうことが、まだしばしばございまして。

■アイシャ To:ハンク
 (妹さん…それで個人的にお金を払ってでも探そうとしてるんだ。)

■ルタード To:みんな
 さて、ここまでお話をうかがっておいて、お断りするというはなしはないと思うが……。

 ルタードが、同意を求めるように仲間の顔を見回す。
■バジル To:ルタード
 もちろん、構わないんじゃないかな。

■ラウル To:ルタード
ああ。断るわけにゃいかねーだろ。理由も……ねぇしな。

■ポム To:ルタード
…あたしもいいぜ。

■アイシャ To:みんな
 うん。急いで探しに行かなくちゃ〜。
(銀の網亭のおやじさんに、シーアンが戻ってきたら事情を話してもらえるように頼んでおかなくちゃ。)

■ポム To:アイシャ
そうだな

■ミュン To:ルタード
いいですよ。

■ルタード To:ハンク
 ……ということで、このご依頼、お受けいたします。
 あらためて、よろしくお願いいたします。

 ルタードが右手を差し出すと、ハンクはそれを握り返した。
■ハンク To:ALL
 して………報酬なんだが、とりあえず前金で1200渡そう。
 その上で、二人と祭器を無事にオランまで運んでくれれば更に2000だ。
 事態によっては衛視隊から正式に報奨金が出るかもしれないが、そこまでは保証できない。

■ルタード To:ハンク
 前金については、その額で申し分ございません。

 依頼の内容に続き、報酬も羊皮紙にメモする。
■ルタード To:ハンク
 申し上げにくいことですが、仮に、あくまでも仮にですが、見つけたときにはすでにお二人や祭器が無事にオランまで届けられるような状態でなかった場合は、どうなるのでしょうか?
 例えば、壊れた祭器を持ち帰った場合などには……?

■ハンク To:ルタード
 ………。
 ………そうだな。もし既に無事届けられる状態でなかった時は、それが証明できるものを持ち帰ってくれ。それで依頼は成功として報酬を払おう。

■ルタード To:ハンク
 承知いたしました。
 わしらとしましても、「万一」のないことを祈る限りです。

■バジル To:ハンク
 僕達に出来る最大限の努力を約束するよ。



ゆな<juna@juna.net>