「時忘れの店」
　店の前にはそう書いてある。
　一般名詞で言うならば、道具屋、だ。もっとも、この呼び名では何を取り扱っているのかよく分からないのだが、つまるところ冒険に必要な雑貨を取り扱っている店だ。

　そう言って店主が出てくる。
　便宜上「おやじ」と呼んでいるが、銀の網亭のおやじとは別人だ(当然だ)
　こちらは初老の、どちらかというと「じいさん」の一歩手前といった感じである。

　そう言って店内を見回したクラウディアは、店の隅で埃をかぶっているガラクタの山を目ざとく見つけ、それに近づいた。

　さらにがらくた漁りを続行する。

　フィアルラが元気良く手を上げて訊ねている。
　あまりぶんぶん手を振り回すと埃が舞うのでよした方がいいと思います(手遅れ

　一方クラウディアは、埃が舞おうが何が起ころうが、ガラクタ探索に没頭している。

　女性陣は、がらくた漁りに忙しいようだ。

　遅れて店に入ってきたアルフレッドは、珍しそうに店内を見回している。

　クラウディアの方に───

　ひょうたん・鉄弦・金具・ガット・何かの生き物の爪・小さな木箱・赤と黄緑の塗料・柳の枝………などなどを次々にカウンターに積み上げる。

　───と、ちょうどその時、武器屋に行っていたアップルが、機嫌良さそうに店内に入ってきた。
　真新しいスプリントアーマーがその理由らしい。

　そう言うと、くるりと回ってみせる。
　………新しい服か何かと勘違いしている模様。

　ドワーフの理想体型がアップルに似合うかどうかは多少疑問を覚えないでもない………

　フィアルラが、自分の胸をちらりと見下ろしながらつぶやく。
　念のためだが、腹のことではない。