涙のブルーロータス

地下倉庫に財宝が眠る

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猟犬達の小屋

少女をエルシア達に預け、小屋の中の探索を続けるアトールとホルト。

初めに調べた部屋は物置兼少女の寝室といったところであろうか。
あまり清潔であるとは言えない感じであった。

そしてもう一つの部屋は盗賊達の寝室であろうか。ベッドが四つ並んでいる。
こちらもそれほど奇麗であるとは言えなかった。

途中バーンに連れられたゴルボフがちらりと中を覗いていくが、二人はそんなことを気にも留めなかった。
やがてアトールが地下へと通じる隠し扉を見つけた。

■アトール To:ALL
ふむ。
巧妙に隠されているけど、どうやらここに隠し扉があるな。
状況から考えると、ここが一番怪しいかな?

■ホルト To:アトール
おぉっ!?
いかにもって感じだな。
じゃ、一通りチェックしてさっさと終わらせようぜ。

アトールを急かし、作業を側で見守るホルト。
■アトール To:ホルト
はいはい、あわてるなって(^^;

地下室は上の部屋よりは一回り小さいくらいであった。
埃っぽく、また空気も湿気ってよどんでおり、この地下室には空気の取り入れ口すらないことを思わせた。
ホルトが照らすランタンの火に今まで商隊を襲って蓄えたのだろうか、幾多の品物が無造作に置かれていた。
■アトール To:ALL
おそらく、花があるとしたらここだろう。
手分けして探そうぜ。

■ホルト To:アトール
そうかぁ?こんなところに生物を…探してはみるけどさ。
しっかしまぁ良くもこれだけ…

■アトール To:ホルト
いや、どうせ花の価値なんてわからずに襲ってるだろうから、他の荷物と一緒にまとめて置いてあると思ってな。
まあ、ちょっとこんな状況下じゃ見つかっても枯れてしまってるかもしれないけど・・・

地下倉庫の中を埃にまみれながら探索するアトールとホルト。
だがなかなかお目当てのものは見つからなかった。
■ホルト To:アトール
(ややあって)駄目だ、やっぱり見付からない。
剣、鎧、壺、酒樽、食器、グラス、像、兜、高価そうな服に他、下らないもの沢山!!
…ん?この小箱、鍵がかかってんな。

ホルトは小箱を振ってみた。何やらがしゃがしゃと中身が詰まっている音がする。
シーフキットを使い鍵を開けてみると・・・・・・箱の中身は貴金属の類であった。
■ホルト
《…マナよ、輝きと変じてとこしえの闇を照らせ!》

ライトを杖の先にともすと、柔らかい布を別の箱の上に敷き、その上で小箱の中身を慎重な手付きで詳しく調べ始めた。

小箱の中身は、およそ装飾品と名のつくものがごっちゃになって入っていた。
価値の低そうなものから、割と高そうな立派なものまで。

■ホルト
これは連中の宝箱ってところか…
しかし、不思議と現金の類が一つもないな。
金貨はおろか、連中の懐にあったものの他はガメルの一枚も見当たらない。
宝石、貴石も装飾品に嵌ってるものを除けばそのまま通貨として使えそうなものは一つもないしな。
まぁほじくり出しゃ別だが、それはちょっとなぁ…
…まずんなこたないだろうけど、ま、念のため。

《…マナよ瞳に集い、常には映らざりしその理力を我の前に示せ!!》


ホルトはセンスマジックの魔法を用いて宝石を見てみる。
だが魔力のこもったものは一つも見当たらなかった。
しばらくすると、裏口からバーンが厨房へと戻ってくる。沈痛な面持ちで足取りも重く入ってきた。
厨房にはエルシア、チーゼルとホーク、マーズ、そしてレイリアがいた。
その場にいた4人が4人ともこの少女をどう扱って良いのか、きめあぐねているようで、沈黙だけがそこにあったようだ。
■バーン To:地下室への探索組を除くALL
 …皆さん申し訳ありません。
 あの大男の轡が外れ、舌を噛み切って死んでしまいました。蘇生は試みましたが、既に事切れていました。

■ホーク To:バーン
そうか・・・・・。

バーンはそこではじめて、アトールとホルトがいない事に気が付いた。ホーク達に彼らの居場所を確認すると、そちらの部屋まで入っていく。
■バーン To:地下室への探索組
 アトールさん、ホルトさん、何か見つかりましたか?

■ホルト To:バーン
(宝石をためつすがめつしつつ)うん?
まぁ、見ての通りってところか。
バーンの好きそうな剣や金属鎧なんかも結構な数があったよ。見てみたら?

…難しいとは思うけど、そっちは何か吐いたかい?


■バーン To:ホルト
 (ホルトの言葉に一瞬目を輝かせるも、再び改まって)
 …申し訳ありません。自力で轡を外し、舌を噛んで自害しました。
力が及ばず、こんなことになってしまって…。
 あまり関係が無いかもしれませんが、最期にあの少女への呪詛の言葉を吐いて事切れました。
『あお・・い・・・花・・のせい・・・か・・・・・。
あの娘・・・が・・・疫病神か・・・。』と、…。

■ホルト To:バーン
そうか、まぁ大人しく刑に服するつもりはないだろうと思っていたが…

何、バーンが気に病むことはことはない。
ヤツは元々死刑確定の極悪人だ。
今更最後くらいは人の役に立とう、何て言う殊勝な心がけなど持ち合わせてはいないだろうからと、大して期待もしちゃいなかったさ。
むしろ、こちらの手を汚さずに済んで良かったと考えるべきだろう。
バーンには損な役回りを押し付けて申し訳なく思っているよ。

さて、なら気は進まないが、やはりレイリアに協力して貰う他ない様だな。
一度、厨房でこれからのことも含めて話し合ってみてはどうだろうか。

…それと、バーン、アトール、この宝物のことは他の仲間にはひとまず秘密にしておいてくれないか。
別に自分の物にしようとか考えている訳じゃない。
ただ、不幸な女性への細やかな慰めくらいにはなるかもしれないと思って。
この中の2、3でも当座の生活費の足しにはなるだろうから。
…なぁ、俺は思い上がっている、と思うか?


■バーン To:ホルト
 いえ、そうは思いませんが…
 俺達はあの少女の事は何も知らないに等しいと言えます。この宝物に関しては、ここにいるメンツだけの一存では決めたくありません。 一度立ち戻って彼女に話を聞いた後、判断することにしましょう。

■アトール To:バーン、ホルト
 俺もその方が良いと思う。

■ホルト To:アトール、バーン
…しかし、仲間の信用を裏切ることになるが、俺がやろうとしていることは明らかに法に反する行為なんだぞ?
そして、エルシアとチーゼルはともかく、マーズとホークは曲がりなりにもファリスの信徒だ。
いずれにせよ、苦しい決断を強いる事になるだろう。

何より、俺は法を語る以前にこれが正義だとは思っていない。
ただこれが正しいと言う己の心の命に従っているだけだ。
アトールとバーンにムシの良いことを言っていると自分でも承知している。
俺の言っていることは二人の意思を無視して、一方的な押し付けをやっているのと同じことだからな。
いや、それ以前に俺はまだ彼女の意思すら確認していない。
たが、金さえあれば、彼女の心は治せなくとも、少なくとも体は…足は完治するんだ。
賛成してくれなくても良い、せめて見逃してくれ…全ての責は俺が負う。


■バーン To:ホルト、アトール
 ………。
 …それは、難しい問題です。
 情としては分かりますし、諸手を挙げて賛成したいぐらいです。
 でも聞いて下さい。俺達は目的を達成しようとする過程で、あの4人組と死ぬ危険性がありながら戦いました。残りの面子にもこの問題に関して正当に議論する機会をあげなければ公平ではありません。 話さないわけにはいきませんよ。

■アトール To:ホルト、バーン
あくまで個人的な意見だが、目的のために手段は正当化されない。
きれいごとと言われるかもしれないが、病気の友人を助けるために強盗を働いて良いわけではない。
ましてや、今回は仲間をも裏切る行為だ。
どうしてホルトがそこまで彼女にこだわるかはわからないが、もし本当に彼女を救いたいと思っているなら、今回の自分の全報酬や全財産を投じるとか、自分の出来ることで、まず彼女に尽くすべきじゃないか?

俺も今は、とある少女(ミシャルカ〜#17参照)の魂をもとに戻してあげるために冒険者を続けている。
たとえ彼女の魂が救える方法が見つかったとしても、それが法に触れるような事だったり、一緒に冒険をした仲間を裏切るような行為ならば、俺だったら、その方法を選べないな。
偽善者と言われるかもしれないが、俺はそういう性格だからしょうがない。


■ホルト To:アトール、バーン
それが出来るものならばっ!!
…いや…
何故かは自分でも良くは分からない。
理由は幾つか挙げられるが、どれも違う気がする…
ただ、何となくでなくてはならない様な感じがして…
賢者失格だな…
そう、別に今でなくとも良い筈なんだ…
なのに、今しかないと思ってしまう…今やらねばならないと…

詰まる所、これは彼女のためじゃない。
飽くまでも俺の自己満足のためにやろうとしているだけだ。
自己満足のためにパーティーに迷惑をかける訳には…いかない、んだろう、な…


■バーン To:ホルト、アトール

 さてと、…。
 彼女にはつらい問いになるかもしれませんが、今の俺達には貴重な時間です。理を説いていけば何かの手がかりを得られるかもしれません。
 先に行きますから、調べ終わったらあがって下さい。

バーンはそう言うと、ホルトに背を向け厨房の方へと進んでいった。
■ホルト To:バーン

バーン…
済まない…

厨房へとバーンが戻っても、先程と変わらず沈黙だけが支配していた。
■レイリア To:バーン
・・・・・・

少女はうつろな目を、再び厨房へと入ってきたバーンへと向けた。
その後にアトールとホルトが続いて入ってくる。
■ホルト To:レイリア
少しは落ち着いたか?到底無理だろうが…

…と、言う訳でヤツは死に、君が私たちの唯一の頼みの綱となった。
およそは聞いたと思うが、伝染性の恐ろしい熱病で、少なくとも16人の子供と1人のシスターが今まさに死に瀕している。
死への刻限は刻一刻と迫り、治療に役立つのは君が知っているかも知れない、ブルーロータスという蒼く美しい花だけだ。

君には関係ない事かも知れない。
しかし、酷に響くだろうが、その花がここにあるから、少なくともあるだろうと思ったからこそ、私たちは危険を省みずにここへ来た。
結果、連中を倒し、君と出会った訳だ。
それで、君が真に助かったのか、本当に救われたのかは私には分からない。
あるいは君は助けを求めてはいないし、救われることを望んでいないのかも知れない。
たが、余計なお世話かもしれないが、私は子供たちを助けたい、ということと同じくらいに、君を救いたい、と考えている。

君にわずかでも良い、まだ人を信じたいという気持が残っているのなら、私たちに君の知っている蒼い花のことを教えてくれないか。
何でも構わない、例えもう枯れてしまっているということでも…お願いだ、レイリア。


■レイリア To:ホルト
・・・・・私を助けたい?
・・・・・嘘です・・・・信じられません。
それに私は自分自身をも助けられないの。

バーンはホルトの口上を聞きながらレイリアの視線を受け止め、しばらくしてから意を決したように口を開いた。
■バーン To:レイリア
 …俺達の調べたところに青い花は無かったよ。

 あなたは…知っているのでしょう?

■レイリア To:バーン
青い花・・・・青い蓮の花なら知っています。
・・・・・ほらやっぱり貴方達も私を助けに来てくれたわけではないのですね。

少女は俯いて悲しげな、それでいて納得したような表情を見せる。
■バーン To:レイリア
 助け?助けが欲しいのなら、俺達に要求して下さい。
 助かりたい、という強い生命の欲求があるならそれを見せて下さい。
 生きる、生きぬく、生きていく、という行為は並大抵の力では済みません。俺達があなたを支えられるかどうかは、あなた自身の心ひとつで決まります。
 …そして、俺達は生きていきたいと考えている子供達の為に、あの青い蓮の花が必要なんです。…どうか教えて下さい。お願いします。

バーンは真摯に一礼すると、レイリアの反応を待った。
■レイリア To:バーン
そう・・・・ですね・・・・。
・・・もっと、もっと早く貴方達のような方に出会えていれば・・・。

でも・・・・彼らに最愛の父を奪われ・・・・・自由を奪われ・・・・いいように弄ばれて・・・・。
それでも生きる為には・・・・
自分の心を殺すしかしょうがなかったの。


彼女は最後は消え行くような声でそういうと、そのまま泣きはじめます。
バーンは無言でその少女の身体を柔らかく抱きとめる。あたかも父性を感じさせるように、そのままの姿勢で数瞬の時を待った。
■バーン To:レイリア
 …もう、心を閉ざして苦しむ必要はありませんよ。
太陽の光を浴び、自然の風に身を任せゆっくりと静養し、お父さんの菩提を弔ってあげなさい。
 あなたが生きていく事が、お父さんにとっての何よりの供養ですから…。

■レイリア To:バーン
・・・・・・・暖かい。

彼女は涙をぬぐってそうつぶやくと、バーンの胸を押し、その手を解いた。
■ホルト To:レイリア
(泣きやむのをしばし待って)
そう、確に私たちは君を助けるためにここに来た訳ではない。
しかし、君に会って、私たちは君を助けたいと思っている。
その救いの手にすがってみるか、そのまま振り払うかは君自身の選択次第だ。

かつて君は自由を奪われ、自ら心を閉ざさざるを得ず、選ぶことを忘れた。
だが、君は今また、再び自由を取り戻そうとしている。
自由、それは自ら選ぶことだ。
君が望むなら、私たちには出来得る限り、君の望みを叶えるために力を貸す用意がある。

さぁ、君はどうしたい?
君は本当はまだ忘れていない筈だ。自分が今、何をしたいか。
押し込めていた心の奥底にその答えはある。
決まったら言ってくれ、私たちはそれに応える。


■レイリア To:ホルト
本当に?本当に応えてくる?
私は・・・・生きていたいの。普通の人と同じように生きていたいの。

感情が高ぶったのか少女は再び2,3度せき込む。
■バーン To:レイリア
 (おだやかに微笑みながら)
 あなたの気持ちが本当なら。きっと大丈夫ですよ。

■ホルト To:レイリア
分かった。生きること、それが君の望みなのだな。
ならば、可能な限り君が心安く過ごせる様に取り計らおう。
非力なる我が身の限りを尽くして、な。たが、それまでだ。

それからは君自身で進まなければならない。
自由に生きるとは常に選び続けることだ。
君は生きることを選んだ。それで良い、そのことを忘れるな。
自ら動かずして助けは決してやってこないのだから…


■レイリア To:ALL
ここの裏手の岩陰に湧き水があります・・。そこの湧き水にその花は浸してあります・・・・。

■バーン To:レイリア、ALL
 ありがとう、レイリア。
 皆さん、外の岩陰です。確認をお願いします。

■アトール To:ALL
わかった。
見てこよう。

バーンに促されてアトールは少女の教えてくれた、外の岩陰に向かう。
■ホルト To:誰ともなく
本当は皆、ブルーロータスを見付けるには近くの水場を探せば良いことは分かっていたんだ。
そうでなくては蓮は長くは生きられないからね。
花が本当にないのなら非常に困っただろうが、君が蒼い花を知っていたことから、花がここにあるのはほぼ間違いないと踏んでいた。
それでも花が駄目になってしまっている可能性もなくはなかったが、私たちは君の眠れる心に花の無事を賭けてみたかったのさ…

ともあれ、君のお陰で子供たちの命は救われる。ありがとう、レイリア。

…もしかしたら君は花を救うことで、君自身をも救ったのかも知れないな。
花ゆえに私たちはここに来たし、花ゆえに君と心から話し合えた。
そして花ゆえに君は今、自らの心に救いを見い出そうとしている。
何のことはない、君は自分で自分を助けていたんだよ。(神よ…)


外に出たアトールは、少女の言った岩陰をすぐに見つけることが出来た。
そして彼女の言うとおりブルーロータスが3株、水面に揺れていた。
■アトール 
これだな。

アトールは近づいて花の色を確認する。
花の色はどれも綺麗な水色で、見ていると吸い込まれそうなほど綺麗なものだった。
■アトール 
ホルトの話じゃ蒼くないと効果が無いって言っていたはずだけど、ずいぶん水色だな?
本当に大丈夫なのか?

アトールは一つ首を傾げると、水の中からブルーロータスを取り、とりあえずみんなのもとに戻ることにした。

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