涙のブルーロータス

黒き森に抱かれし犬達の塒

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森の中

馬車から徒歩へと変えた冒険者とホーク一行は、慎重に街道を南へと移動した。
ちょうど地図に記された場所から森へと入り、ア・トールとホークを先頭にほとんど残されていない人の足跡を追う。

■ホーク To:ア・トール
ふむ・・・・・・足跡はこっちか?

森の中には猟犬達が設置したと思しき罠がいくつかあった。
だが熟達した盗賊であるア・トールの目をごまかせる物ではなかった。

■アトール To:ALL
ふむ、かなり巧妙に隠されているがなんとか見つけることができたな。
そことそこに、鳴子と足の罠があるから、皆、気をつけて通れよ。
特に、鳴子は相手に察知されるから、引っかけないようにな。

■チーゼル To:アトール
あ、はい。
……?
……えと、あの…変なこと聞くみたいですけど…森の中で「鳴子」って役に立つんですか?

■バーン To:チーゼル
(アトールに代わって口を出し) 異質な音だから耳に響くだろうな。それに紐が小屋に続いていたら、侵入している場所まで丸裸にされてしまうだろう。

■アトール To:バーン、チーゼル
いや、チーゼルが言ってるのはそういう意味じゃなくて、森の中じゃ人間だけじゃなくて動物がいるから鳴子が鳴りっぱなしになって、役に立たないんじゃないか?・・・って事だと思うが(^^;

この辺に暮らしているわけじゃないから詳しいことは判らないけど、さっきの駐在の話にも大型動物はいないような話だったし、ここに来るまでそれらしき気配も感じなかった事を考えると、そういう心配は少ないんじゃないか。
逆に言えば、「鳴子が鳴る」イコール「侵入者が来た」という鳴子としての機能をちゃんと果たしているって事だ。おそらくな。


■バーン To:アトール
 ああ、そっちの意味ですか。分かりました。
 取り敢えず、この辺の罠に引っ掛かってはしょうがないですね。注意して進むことにしましょう。

慎重にそれを避け、森の中を進む7人。
そして足の速い山の夕日がそろそろ沈もうという頃、ア・トールがそれとおぼしき小屋を見つけた。
その小屋は、そこにあると言われてもそうとは気がつかないほど、巧妙にカモフラージュされていた。
■アトール To:ALL
間違いない、あそこだな。
暗くなる前に発見できて良かった。

■ホルト To:ALL
ビンゴ。
お手柄アトール。大した腕前じゃないか。
謙遜しちゃって、本職の狩人だってこうはいかないぜ?
ほんと、今こうやって見ててもちょっと目を離すと見失いそうな位だな。
ここが狂犬共の巣か…
微かに明かりが漏れてるから誰か中にいるらしいし、流石にこれ以上接近すると気付かれそうだな。
これからどうする?
後一時間もせずに暗くなりそうだし、長く居ると気取られる危険も増える。
他に万が一にも既に発見されていた場合、連中に備える時間を与えることになる可能性もある。
もっとも今のところその気配はなさそうだがな。
…らしくもなく、全く我ながら何を焦ってるんだろうな?(苦笑)

■バーン To:ALL
 アトールさんのおかげで、選択肢が増えましたね。
 ひとつは相手に気取られる前に強襲すること、そしてもうひとつですが…

 これ(といってアトールが発見した鳴子を示す)を使わない手はないでしょう。これを鳴らして相手をこちらへおびき寄せます。
 その間に相手のアジトに乗り込みブルーロータスを奪還する。
 万が一侵入を気取られた場合、地理を利用して周囲から包囲して攻撃する。
 というところでしょうか…。

 いみじくもホルトさんが仰ったように時間もありません。
出来れば、この二択から決を採りたいのですが。
 いかがでしょうか?

■アトール To:ALL
ここまで、こんなに順調に来れるとは正直思っても見なかったからな。
アジトの中に奴らがいるのは確実で、しかも幸いなことに奴らには俺らの気配は感づかれていないときている。
鳴子を使えば、誘うことは出来ても相手に警戒をさせてしまうことになるから、ちょっと考えものだな。
俺は、準備を整えた後、相手に不意打ちをかける方が得策だと思う。

■ホルト To:ALL
全く、まさしくこれは天啓ってやつに違いないと思えてくるよ。
俺も‘空き巣狙い’ならぬ‘押し込み強盗’に一票。
ま、言葉は悪いがそういうこと。「言葉は正確に使いなさい」とか言われそうだけどな。

小屋の中は分からないし、地の利は向にあることになる。
罠の存在も否定できない。
が、うまく不意を打てた場合の利益は計り知れない。特に魔法戦においては。
連中はろくに武装してない可能性もあるしな。

逆に鳴子を使った場合、予想される利益、不利益は色々あるが、最大の不利益と思われるのは、連中がほぼ確実に戦う準備をしてくること、だと思う。
そうなれば正面から潰し合う他なくなる。

つまり、こっちの利点を最大限に生かしたい、ってことなんだ。


■ホーク To:ALL
鳴子を使っても全員が全員様子見に行くとは思えないからな。
むしろア・トール君の言う通り奴等にこちらの侵入を気づかせて、逆に警戒されてしまうことの方がまずいだろう。
私も不意打ちには賛成だ。

■バーン To:ホーク、ALL
 全員が見にこないから良いんじゃないですか。
 こちらのねらいは各個撃破です。
相手の実力が未確定なんだからリスクを分散するのは有効だと考えます…が。
 その代わり、強襲すればイニシアチブを取れます。これはかなり魅力的ですね。
前にも話した通り、相手の癒し手を無力化すれば有利に戦えるでしょう。

■アトール To:ALL
鳴子は全員が出てこない可能性が高いけど、全員が出てくる可能性もゼロじゃないと思うぞ。
全員が装備を調えて出てきてしまったら、それこそ各個撃破は難しいと思う。

■ホルト To:ALL
俺もアトールと同意見だ。
ましてさっき言ってた鳴子の意味がその通りなら、ますますこちらの思惑通りに事が進む確率は低くなる。
何より似た様な不確かな可能性に賭けるのなら、自ら動く方にしたい。
それでより大きな失敗を招くかもしれないが、運は自ら呼び込むものだと信じているからな。
まぁ、簡単に言うなら相手の失敗を待つ様なやり口は気にくわん、つーこった。

癒し手、ということなら俺たちはかなり恵まれてるよな。
それが強みであり、頼みだ。
ワリィがそうでもなきゃとてもじゃねーが、俺は連中と戦う気がしねーよ。


■チーゼル To:ホーク>ALL
ん…と…
突入でいいと思います。はい。

あ、突入するにしろそうでないにしろ、ですが…一応裏口側…というか、全景でどうなってるか見ておきます?
それが元で、見つかっちゃう可能性もありますから…まぁ、そのまま突入でもいいと思いますけど。一応、案として。

■バーン To:チーゼル
 ふむ、なるほど。そいつは盲点だったな…。
(しばらく考え込み)
 …う〜ん、やっぱり駄目だ。アジトの背面に出口がある場合、相手を逃がすおそれもあるけど、回り込む事によって強襲がばれる危険の方が高い。
 良いアイデアだけど、偵察に行った誰かだけが危険にさらされるのは駄目だ。

■ホルト To:ALL
まぁ偵察に行くかはともかく、まず裏口ないし抜け道があるだろうな。
連中としては当然の備えだ。
それにしても俺たちの目指すものは一体どこにあるんだろうな?
おそらく地下室か何かにまとめて盗品を保管してあると思うんだが…
ここで言っても仕様がないか。

■ホーク To:ホルト
確かに今はなんともいえないな。
まあ、連中なら確実に知っているだろう。

■ホルト To:ALL
これを言うべきか、随分迷ったんだが…今更の観もあるしな。
おそらく同じ様な事を考えてたのもいると思う。だが、言わせてくれ。

本意ではないが、俺は事ここに至ってはもはや戦いは避けられないと思う。
と言うか、むしろ戦わなければならない気がしている。
我々にとって何が最優先されるべきか、それは端から決まっている。
無論子供たちの命だ。
しかし、目の前の狂犬共を野放しにしておくことは断じて正義ではない。
俺が正義を語るなんてのは我ながら笑っちまうけどな。
別に何も俺たちがやらねばならん理由もないと言えばないし、実際俺たちでなくても良いと思わなくもない。
しかし俺たちでない誰かが連中を倒すまでに、また新たな犠牲者が出るかも知れないし、もしそうなったら己の無力を知りつつもきっと後悔するだろう。
多分遠慮してるんだろうから敢えて俺が言うが、連中を伐するのは己々の信仰、あるいは信義にとって少なからず意味があるのではないだろうか。
俺は正義のために己を捨てて命を賭けられる程高潔でも、勇敢でもない。
それと同様に無謀でもないつもりだ。
例えば賞金のためじゃないのか?と問われれば迷わずYESと答えるだろう。
もっとも命の危険に釣り合う額では到底有り得ないが。

俺が言いたいのは、花を奪い返すための戦うという消極的な動機でなく、もっと積極的な動機をもって戦いに望むべきではないか?と言う事だ。
言い方は押し付けがましいが、無論強制はしないし、元々出来るとも思ってない。
ただ、相手は負けて捕まればまず間違いなく死刑だ。
連中もそれは分かってるだろうから、俺たちを新手の賞金稼ぎと思って必死で戦うだろう。
子供たちを救うため、それを半端な動機とは言わないが、戦いに賭ける気迫の差が思わぬところで戦いの行方を左右するかも知れない。
連中に勝てなくても良い、倒さなくても良い、というのがな。
出来れば、余裕があれば倒すでは危うい。
ま、実際にやってみらんことには相手の力量もはかれんし、本来の目的が第一には変わりないがね。

例によって考え過ぎだと分かってはいるんだが、どうにも気になって言わずにいられなくてね。
どうにも小心で済まない。


■アトール To:ホルト
(マイリーの印に軽く手を当てながら)
俺は、花を奪い返すために戦うことが消極的な戦いだとは思わないがな。
ただ、我らがマイリーは、卑怯な振る舞いや臆病な行動は認めていない。
最優先するのはもちろん花の奪回だが、現状では戦いが避けられない以上、20人以上の人の命を奪い、さらにいたずらに花を奪って病気で苦しんでいる人々を出した悪党と戦うのは、正義の戦いである事は間違いないだろう。

■バーン To:ホルト、ALL
 いや。ホルトさんの言うことも御尤もです。
ですが俺にもパーティーの危険を最大限に減らす役割があるということを認知して下さい。
 臆病者でなければこの仕事は生き延びられませんからね。

 …さて、現実的には強襲をかける方向でまとまりそうですが、なにか異存のある方はいらっしゃいますか?
 無ければ最後にひとつ提案をさせて下さい。
 俺達は当然彼等を悪と信じて戦おうとしてますが、本当にそうなのか分かりませんよね?
状況的な証拠から判断すれば当然裁かれるべき相手だとは思いますが、それを立証してからでも良いとは思いませんか。
 そこでホークさんには俺達の突入と同時に”相手が何らかの邪まな行為”をおこなっていたら『センス・イービル』の奇跡を起こしていただきたいのですが、いかがでしょうか?

■ホーク To:バーン
分かった、君らが望むのであればそうしよう。

■バーン To:ホーク、ALL
 皆さんはどうですか?

■アトール To:バーン
個人的には、あまり意味無いような気もするが?
様々な状況証拠から奴らが悪であるのはほとんど確定的で、その魔法をかけて相手に余裕を与えるぐらいなら、ホークにも初っぱなから集中攻撃に参加して貰った方が得策だと思うが?
せっかくの奇襲にホークが参加できないことになるぞ。
奴らの技量はかなり高そうだし素早さもおそらく早いだろうから、俺達の圧倒的有利は最初だけだと思う。
この最初の1撃でどれだけ相手の戦力を落とせるかに、奇襲の正否がかかっていると思うけどどうだろう?

■バーン To:アトール、ALL
 ………。

 …前言を撤回してもよろしいですか?

 やはり俺達の持ちうる全力を持って相手を無力化しましょう。万が一間違って殺すことになっても止むを得ない気持ちで。
 どうやら些細な事にとらわれて大事なことに目をつぶってしまっていたようです。

 さて、目を覚まさせてもらったからには迅速に行動を起こすとしますか。


バーンはそう言うと、身振りを交え手順のプランを説明した。

1.バーン(もしくはドアのそばにいる誰か)にドアを開けてもらい、射線部にいる敵に向かい呪文、射撃武器による攻撃を集中させる。
2.呪文、射撃の集中照射が終了後、バーンとチーゼルで突入し強襲。
3.暗黒神の神官を優先的に無力化し、残敵を小屋の入り口に追い立てる。
4.前後から挟撃を行ない掃討する。

■バーン To:ALL
 という感じでいかがですか?

■アトール To:ALL
まあ、そんな感じだろうな。
後は、臨機応変に対処ということで(^^;;
それと、あえて確認するまでもないと思うが、突入前に防除魔法はかけておいてくれよ。

■ホルト To:アトール、ALL
それはもう。たが俺の腕じゃ行使できるのはせいぜい四回が限度だな。
その後は武器で援護することにするよ。
…悠長に弓なんか打ってないで一気に突入した方がよかないか?

■バーン To:ホルト、ALL
 射撃武器での援護は最初の一撃目だけでも構わないんですが。俺とチーゼルの突入後は嫌でも近接戦闘になるでしょう。
 もちろん突入隊に志願してくれるなら心強いですが…。

■ホーク To:ALL
あの扉だと飛び込むにしても一度に二人くらいが限度だな。
私もバーン君とチーゼル君に続いて飛び込むことにしようと思うが・・・・。

こうして戦いの方針はきまった。
あとは飛び込むだけである。果たして凶と出るか吉と出るか。
それは神のみぞ知ることであろう。

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