水の中の愉快なヤツ
湖の中 |
ざぶんと入った湖の中。そこはまさしく別世界であった。
湖の上からはわからなかったが、中から見る水の中はきらきらと輝き、天候が曇りであるのも忘れるほど美しいものであった。
精霊力のないシーアン・アイシャ・ポムにも、水乙女の姿が見えているんじゃないか?と思うぐらいに要所要所で水が渦巻き、なかなか普通の水の中では味わえない体験が彼らを取り巻いていた。
渦巻く水。
バジルの目には、水乙女達が楽しげに彼らを取り巻いているように見えた。
先ほどから、敵意はまったく感じられない。
■バジル |
(精霊語) こんにちは。水の乙女さん達。 とっても綺麗なところだね。 僕達、赤い水草を探しているんだけど、どこに生えているか知らない? |
■水の精霊 To:バジル |
(精霊語) あら、こんにちは♪ ここは純粋に精霊達が休める場所ですもの♪綺麗で当然ですわ♪ 若様が必要とされてる赤い水草ですの? それでしたらば、ドライアード達に聞いたり、水草達に聞くのが一番ですわよ♪ |
と、水の乙女達はにこにこと泳いでいる。
湖の底には一面に水草が生えており、ゆらり、ゆらりと静かにゆらいでいる‥‥
■バジル To:ポム |
水草のことは水草に聞けってさ。ポム。 ちょっとそこにいる草君達に聞いてみてもらえないかな? |
■ポム To:バジル |
分かった、聞いてみるな |
そう言うと、ポムは傍らの水草に意識を同調させる。
■ポム To:水草 |
やぁ、水の中の友達 赤いお仲間が何処にいるか知ってるか? |
■水草 To:ポム |
めずらしぃ‥‥ 赤いの‥‥偉いの‥‥‥隠れてる‥‥ |
どうやら、赤い水草は隠れて生えているようです。
■ポム To:水草 |
どっちの方に隠れてる |
■水草 To:ポム |
あっち‥‥こっち‥‥そっち‥‥ 近く‥‥遠くぅ‥‥? |
たくさんの感覚の中で、ひときわ集中している方向にあると睨んだポムは、重点的にそちらのほうを探すことにした。
■ポム To:バジル&みんな |
大体あっちの方にあるみたいだ。 |
と、集中している先を示すが、心なしか指先は「ちょっと」開いているようだ(笑)。
湖のなかで、ゆらゆらと泳ぎながら冒険者達は手分けして赤い水草を捜す事にした。
最初に捜したときは‥‥一人はあまりの綺麗さにうっとりとし、一人は楽しげに踊る精霊に心奪われてたりもした。
‥‥
少し時間もたち、再度探しはじめた結果‥‥精霊達の導きのせいか、はたまた今日は凄く付いている日なのか。バジルが赤く輝く水草を見つけることができた。
赤い水草。
確かにまじまじと見れば他にない赤い輝きをもった水草なのではあるが、光の加減では緑色にもみえる、なんとも不思議な水草であった。
■バジル To:潜水組全員 |
あ〜っ!!あったよ〜!! ほら、これ。光の加減で緑っぽくも見えるからみつけにくかったんだね! |
と、にこやかに皆に伝えるバジル。
確かに、探しにくい水草である。
■シーアン バジル |
やったか! |
大急ぎでバジルの方に泳いでいくシーアン。
当のバジルは水草に手を添え、まじまじと見つめながら、
■バジル To:ポム |
ちっさな葉が寄り集まった感じの草だね。 なんだかこのはっぱ、赤ちゃんの手みたいに可愛いよ。 |
バジルに見せてもらったポム。
うに。なんだか紅葉の葉ににているぞ♪
■ポム To:バジル |
うに♪なかなか奇麗じゃないか? お日様に透けたらきっともっと奇麗だぞ♪ |
■赤い水草 To:バジル |
そいつぁ〜お褒め預かり光栄のこと♪ にぃさん、にぃさん、おいらを握って何かようかい? |
と、流暢な共通語で赤い水草が喋りだした。
‥‥一体、どこが発声機関なのだろうか?
‥‥‥いや、それ依然に植物が喋っている‥‥?
ここらへんの動植物は、喋るのがブームなのだろうか?
バジルの傍ら、きょとんとして水草を見るポム。
■バジル To:シーアン |
やだな、シーアン。なにふざけてるのさ。 今の腹話術?まるで水草から聞こえてくるみたいにリアルだったよ。 |
そうそう。植物が喋るわけないよね。きっとおちゃめなシーアンのいたずらに違いない♪
バジルは赤い水草を手に、シーアンに向かってそう言った。
しかし、シーアンはふるふると首を横にふっている・・・。
■ポム To:バジル |
……それ、なんか違うみたいだ(^^; |
■バジル To:水草 |
え?じゃぁ今のっていったい…まさか…? |
もう一度。まじまじと赤い水草を凝視する。
■赤い水草 To:バジル |
ひっどいな〜。今の発言をかの方(シーアン)のにするなんて。 にぃさん、耳大丈夫?ちゃぁんと掃除してるかい? |
どうやら、本当にこの植物からの発言らしいです。
驚きのあまり、水草をぎゅっと握り締めるバジル。
■アイシャ |
ひゃ〜。喋ったの〜(びっくり) |
■ポム |
こいつあ凄いぞ♪ |
水の中での呼吸も珍しいのに、今度は喋る植物とは!
なぁんてツいているんだろう♪
当分、歌のネタには困らないポムであった。
また、非現実的事象に直面したシーアンは、
■シーアン To: |
犬(ジュリー)がしゃべるんだから、俺は石っころがしゃべったってもう驚かねーぞ。 |
どうやら、感覚がマヒしたらしい(笑)。
■赤い水草 To:アイシャ&ポム |
よ〜〜ぉ、ねぇちゃん達。 そんなにわぃが珍しいかぃ?そいつぁ〜結構♪いいこったい♪ |
■バジル To:水草 |
えっ、えぇぇぇ〜っ?君、しゃべれるの〜っ!? あ、っと、えっと、その、君、ごめん。思わず僕、ぎゅってにぎっちゃったけど、大丈夫?… |
■赤い水草 To:バジル |
そんなんぐらいええよ。たいして傷ついてないしな。 で、あにさん達、こんな場所まで何かようかい? おいらに会いに来てくれたっちゃ、至極光栄にござるんだがね♪ |
なんとも陽気な(?)性格らしいです。
■ポム To:赤い水草 |
なぁ、なぁ♪ジリィは口があるから分かるけど どうやって喋ってんだ? 言葉って何処で覚えたんだ? |
あまりの珍しさに、おもわず質問するポム。
確かに、どうやって喋っているのだろう?
■赤い水草 To:ポム |
そりゃあんさん。痛いとこついてきますな〜。 言葉ってのは「波」でっしゃろ? ここは水の中ですからね。ふるふるって水震わせて「音」を伝えてるんですわ♪ |
見ると、手のような葉が細かに震えている。
どうやら、それで「音」を作り出しているようだ。
■赤い水草 To:ポム |
それと。言葉を何処で覚えたってぇねぇ。 うまれつき、周囲で話されてるのきぃてれば、自然と覚えるでっしゃろ?あんたさんが喋れるのと、きっと一緒じゃないですかぃ? |
親(?)から子へと、引き継がれて来た知識なのだろうか?
■ポム To:赤い水草 |
ふ〜ん、そう言うもんかな ところで他の水草達からが偉いって聞いたんだけど 水草の王様なのか? |
■赤い水草 To:ポム |
そう〜。わぃ偉い〜♪水草のおぅさま〜♪ |
心なしか、胸を張って答えます。
■赤い水草 To:ポム |
そこいらの水草とは、ちょとちがう〜♪ |
■アイシャ To:水草 |
すごいんだねぇ。 |
■赤い水草 To:アイシャ |
そそそ♪もちっと誉めてくれたって、いいんだぜぃ♪ |
‥‥どうやら、ちょいと天狗になりかけているようです。
そんな質問タイムの後、ポムはなにやら思い出し‥‥
■ポム To:シーアン&みんな |
あっ…。 喋れるなんて聞いてなかったからなぁ〜 どうしよう…やっぱり事情を話してお願いする方がいいよな ジリィ達と水草達では当たり前の事かもしれないし |
そうそう。赤い水草を持って帰らなきゃならないんだもの。
どうやって持っていこう?
■ポム To:赤い水草 |
なのなぁ、ちょっと聞きたい事あるんだけど に、握っても大丈夫みたいだけど…切ったらやっぱ痛いかな? 地面から離したら苦しかったりする? |
■赤い水草 To:ポム |
切られたら〜そら〜痛いっしょ。 あんたさんだって、手ぇとか切られたら痛いっしょ?それとも平気? 地面からは‥‥水の中でしたらある程度平気でしょね。 まぁ、ためした事ぁ〜ありませんがねぃ。 |
そう、ゆらゆらと揺れています。
■ポム To:赤い水草 |
そうだよなぁ〜痛いよな〜 |
と、しみじみと頷くポム。
■ポム To:赤い水草 |
そうだ、もう一つ聞きたいんだけどな 偉いって聞いた水草達から、隠れてるって事も聞いたんだけど 何で隠れたりしてるんだ? |
と、小首をかしげて質問追加。
■赤い水草 To:ポム |
それ、わぃ隠れんぼすっきゃも〜ん。 偉いから、どうどうとしてなきゃいけない、道理ない〜‥‥ |
どうやら、単なる趣味のようです。
■アイシャ To:水草 |
ねぇねぇ、隠れんぼって…自分で動けるの〜? |
■赤い水草 To:アイシャ |
そらぁ〜もち♪ 動けやしない隠れんぼなんて、楽しくないだろぉ〜? お望みとあらば、ちぃと動いてみせようか? |
なんか、わきゃわきゃしています。
■アイシャ To:水草 |
ジリィ…じゃなくって若様って知ってる? 精霊さん達は若様って呼んでて、アイシャ達はジリィって呼んでるのだけど…、 そのジリィがね、あなたに逢いたいがってるの〜。 |
■赤い水草 To:アイシャ |
若様‥‥? とんときかねぇ名前だなぁ‥‥でも、わぃに会いたいってぇヒトがいるんだったら、そいつにゃわぃも会いたいな♪ |
この水草は「若様」という単語には反応しませんでした。
■バジル To:赤い水草 |
自由に動けるならさ、ちょっと水面まで一緒に来てもらえないかな? 会いたいっていってる人がそこで待ってるんだ。 |
■赤い水草 To:バジル |
うぃ〜♪おやすい御用さ。 水面近くまでならいくで〜 |
あっさりと了承。
■バジル To:赤い水草 |
あ、でも水草君は水の中でしかおしゃべりできないよね。 ジリィ君の耳だけ水につけてもらえば聞こえるかな〜 |
■赤い水草 To:バジル |
じり〜だかうり〜だか知らないが、そいつぁ〜水の中にゃ入れないのかね? 流石のおいらも、水のお外じゃ喋れないぜ♪ |
陽気に答えると、辺りをわきゃわきゃと動き回ります。
周囲の水草に絡まることなく、だいぶ器用に動いています。
■シーアン To: |
俺は石っころがしゃべろうが、水草が歩こうが驚かないぜ・・・。 |
ぶつぶつと自分に言い聞かせるシーアン。
がんばれ!ここは人外魔境だと思えば大丈夫さ!
皆が水上へ行こうとした時、ふとポムがとある疑問を口にする。
■ポム To:バジル&みんな |
その前にジリィって確か共通語喋れないと思ったけどな |
■ポム To:赤い水草 |
なぁ、西方語か東方語は喋れるかな? |
■赤い水草 To:ポム |
せ〜ほ〜ごぉ?あ〜〜‥‥そっちは喋れないな〜。 でも、と〜ほ〜語なら喋れるぜい♪ (東方語) ええと、この言葉でよろしいのですよね? |
共通語と他言語での言葉使いのギャップ‥‥
まるで、某草小人のようである(笑)。
■ポム To:シーアン |
うにに〜(^^; 今の東方語? |
■シーアン To:ポム、バジル |
”ええと、この言葉でよろしいのですよね?” ・・・だとよ。 東方語だと丁寧になるんだな。 |
■ポム To:シーアン&バジル |
へ〜、変なの〜(ケタケタ) |
■ポム To:赤い水草&みんな |
じゃぁ、上にあがろうぜ♪ きっと上のみんなビックリするぞ(にやりん) |
■赤い水草 To:ALL |
なら、わぃも上いきましょか‥‥ |
水草が湖底づたいにいくのを見て、みな一緒に水面へ行くこととした。
‥‥‥
すこし潜る時よりも時間がかかったが、みな無事水面へと出る事ができた。