野営
野営地 |
第1班はバジルとアイシャ、そしてルツァー。
ジリィはアイシャのお膝をベットに、くぅくぅ‥‥と眠っている。
3人、周囲に気をつかいながらも、たのしいおしゃべりの時間を過ごした。
特に変‥‥という事もなく、次の見張りのシーアンとクロスと交代した。
夜中の見張りはマジックユーザーではない2人組。シーアンとクロス。
男同士の会話が、いかなるものであるかは‥‥当事者以外はわからない‥‥‥
■シーアン To:クロス |
ふぁぁ・・・。 真ん中が一番だりぃんだよな・・・。 |
■クロス To:シーアン |
…そうだね。 |
■シーアン To:クロス |
なぁ・・・俺がなんで見張りをこの組み合わせにしたかわかるか? |
■クロス To:シーアン |
………………何か特別な意味があるのかい? |
シーアンに話を振られ、ちょっと身体が固くなるクロス。
内心、心臓ばくばくものである。
■シーアン To:クロス |
・・・ずりーやつだな、テメーは。 俺にしゃべらすつもりかよ。 |
やれやれ、と苦笑する。自分から話を切り出すことを、ある程度予測していたようだ。
そして、すこし真面目な顔になり、
■シーアン To:クロス |
俺の事、避けてるだろ? 言いたい事があるならはっきり言えって。 |
■クロス To:シーアン |
言いたいこと?……言いたいことなんて特には。 それに、別にシーアンのこと避けてなんか… |
と、すこししどろもどろになるクロス。
その視線はシーアンには合わせられず、闇深い森を彷徨っている。
■シーアン To:クロス |
(と言いながら、俺と視線を合わせないんだな) |
ちょっとそんな事を思いながら、じっとクロスが口が開くのを待つ。
■クロス To:シーアン |
避けてる…かな。そうかな。 でも違う! シーアンを避けてるわけじゃないんだ。…と思う。 |
■シーアン To:クロス |
・・・オランでよぉ、俺の昼寝の邪魔しただろ。 あの時、逃げるようにして去ってったよな。 ・・・それからさっきの視線・・・ |
ふぅ‥‥と小さなため息をもらし、視線をクロスから焚き火へと移し、
■シーアン To:クロス |
惚れちまったか。 |
■クロス To:シーアン |
!! |
図星?なクロス。
シーアンから顔をそむけたまま、息を呑みます。
■クロス To:シーアン |
そんな…僕は…だってアイシャはシーアンのことを…シーアンだって…あ! |
勢いあまって自分の心を話すクロス。
言った瞬間、ハッとする。
一方のシーアンは、自分の言葉がここまでクロスを動揺させた事に、ちょっと驚いた。
口に人差し指をあててクロスに注意すると、アイシャの方を気遣う。
■シーアン To:クロス |
悪ぃ。責めてるつもりはねーんだよ。 その・・・落ちついて話そうぜ。 |
■クロス To:シーアン |
…き、気にしないでよ。どうせ僕は今回きりでこのパーティからは出てくんだしさ。 |
ぎこちない笑みを浮かべ、焚き火に木をくべるクロス。
何時にも増して、動きがギクシャクしている。
■シーアン To:クロス |
(拗ねんなよぉ) 一皮剥けた・・・なんて言っておいてよぉ、全然変わってねーじゃんか。 どうしてそう、人が良いんだよ、お前は・・・。 |
右手で顔を覆い、困ったように苦笑する。
そして、もう一度クロスの気持ちを確認する。まだ納得してないからだ。
■シーアン To:クロス |
黙って去る?それでいいのかよ? 俺は・・・譲るつもりはねーし、”頑張れよ”なんて言わねーけど、 ・・・本当にそれでいいのか? |
■クロス To:シーアン |
………だって、他にどうしようがあるっていうんだ! |
つい、強い口調になるクロス。
しかし、今は深夜。皆がすやすやと眠っているというので、はっと口を押さえる。
そうして、小声になり、つぶやく。
自分の心も押さえるように‥‥
■クロス To:シーアン |
…なんでそんなこと言うんだよ… アイシャの気持ちを、信じてないわけじゃないんでしょ? |
どうしてボクを応援するの?
そんな事言うと、ボク、どうなるかわからないよ‥‥?
そんな声が聞こえてきそうな表情である。
■シーアン To:クロス |
アイシャの気持ち――― |
その一言に、はっとするシーアン。
ようやく、クロスの気持ちに気が付いてきたのか?
■シーアン To:クロス |
・・・そうだな。 なんでこんな事言うんだろうな・・・。 |
■クロス To:シーアン |
…… |
しばらく、だまったまま‥‥焚き火を見つめる2人。
■シーアン To:クロス |
もしかすると、自分の姿に重ねてたのかもしれない。 |
■クロス To:シーアン |
…どういうこと? |
クロスの方をちらっと見て、
■シーアン To:クロス |
この話、まだ誰にも言った事ないんだ。 内緒な。 |
ちょっと怪訝そうな顔をしながらも、うなずくクロス。
頷く姿を見て、また視線を焚き火に戻すシーアン。
■シーアン To:クロス |
故郷に好きな娘がいたんだ。幼馴染で、優しくて、きれいで、しっかり者で・・・ 俺は兄貴が2人いるんだけど、よく4人で遊んだっけ・・・。 幼い頃から、多分、ちっとは好きだったんだろうけど、大人になってはっきり好きだと思ったんだ。 だけど、まぁ・・・結果から言えば、彼女は上の兄貴と結婚してしまった。 俺は何も言わなかった。俺の気持ちは、兄貴も、彼女も知ってた筈だったからだ。 この結婚をきっかけに、オランに出てきたんだ。表向きは”オランで名をあげる”だの、”こんな狭い家にいられねぇ”だの色々言ってたけど・・・ 本当は居場所がなかったんだよな・・・。 |
■クロス |
(……居場所……) |
再びクロスの方を見て、
■シーアン To:クロス |
言っても辛いだろうけど、言わないのも辛いんだよな・・・。 |
‥‥しばらく。静かな時間が流れる。
あたりに響くのは、ぱちぱちとはぜる薪の音か。
おや?クロスの肩が震えているようだ。
■クロス To:シーアン |
…………くく、くくく… |
その肩の震えは、いつしか笑い声へと変化していった。
■シーアン To:クロス |
なんだよ? |
一方のシーアンは、なんでクロスが笑いだしたのかわからないといった風。
■クロス To:シーアン |
ははは、いや、ごめん。…かなわないなぁと思って。 |
ふっと空を仰ぎ見る。
しっとりとした木々の枝が、目に優しい。
■クロス To:シーアン |
あ〜あ、やっぱまだまだ余裕ないんだなー、僕は。 |
口元には笑みを。その瞳は髪の毛に隠されて見えない。
しかし‥‥気のせいか、頬を伝わり落ちる一筋の光。
■シーアン To:クロス |
・・・余裕なんか俺もないって。 必死だよ、いつも。・・・みっともねーぐらいにな。 |
■クロス To:シーアン |
ふふ、そう? 居場所かぁ……シーアンは、居場所を見つけられたんだなー。 故郷で見つけられなかった居場所。ちゃんと自分で見つけだしたんだ… |
そのままの姿勢で、明るく言うクロス。
シーアンも同じく空を見上げて、
■シーアン To:クロス |
どうかねぇ・・・? 居心地はいいけどな。 冒険者ってのは・・・居場所なんか見つけたら続けられない気もするしな。 |
■クロス To:シーアン |
う〜ん、そうか、そんなものかもしれないな。 でもいいんじゃない? もしそうなったらそうなったで、それはひょっとしたら冒険者より素敵な生き方なのかも、知れないしね。 |
■シーアン To:クロス |
ほほーっ、言うねぇ。 ”素敵な生き方”と来たか。 |
夜空を見上げている2人。
気が付けば、最初の頃よりもだいぶ星達が移動している。
■クロス To:シーアン |
そろそろ、交替の頃合いじゃないかな。 |
■シーアン To:クロス |
そうだな。 明日もよろしく頼むぜ。 |
と、片手を差し出す。
その行動に、ちょっとだけびっくりした様な顔をするが、すぐ破顔し
■クロス To:シーアン |
ああ、もちろんさ。 |
と、握り返すクロス。
その瞳は、まっすぐにシーアンを見ている。
■クロス To:シーアン |
シーアンにも、しっかりがんばって貰わなきゃだからね! |
いろんな話しをした2人。
2人にとってだいぶ有意義な時間となったのであろうか?
野営の見張りとしては、特に変わったことはおこらなかったようです。
最後はポムとカヴァレス。
ポムにとっては、最初の仕事の時以来の仲間であるカヴァレスに、つきぬ話もあるだろう。
そんな、一生懸命なポムを後目に、なんで俺はグラスランナーにたたられているのか‥‥と一人思うカヴァレス。
■ポム To:カヴァレス |
レス♪レス♪そのカラスに名前つけてやろうか?(^^) |
ジュビリーの命名で、だいぶ自信をつけたらしい。
■カヴァレス To:ポム |
ほぉ?こいつぁあ光栄な事ったぜぇ。 もっともよぉ、こいつが気に入るかはわからねぇぜぇ? |
多くの経験が,カヴァレスにこう告げている。
『グラスランナーが喋りだしたら、適当にあわせておけ』と(^^;;;
■ポム To:カラス&カヴァレス |
う〜ん…となぁ…ベリーとかどうだ? |
闇夜のカラスとは言ったもので、そのそぶりはまるで見えない。
■ポム To:カラス&カヴァレス |
スュルターヌ!ギェール!ルフナ!(^^)h |
主人に似たのか、気だるげに翼のお手入れ。
■ポム To:カラス&カヴァレス |
ハヤチ…キャラとか… |
思いつくまま、名前を告げる。
はたして烏が気に入る名前はあったか?
そして,楽しげに名前を連呼するポムを尻目に,ちょっと苦笑いのカヴァレス。
しかし,眠気覚ましにはちょうど良い?
肝心の烏はどうやら眠りに落ちたようす。そりゃそうだ,鳥目だしね(^^;