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「引退−あなたのために……」 |
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オラン−死刑場にて |
オランの郊外にある死刑場……そこでは、本日二人の死刑囚の死刑が執行される。
そう、ゴロッキーとファーラである。
■ 看守 To: ゴロッキー |
おい、時間だ……。 |
看守がゴロッキーの独房へとやってきた。
ゴロッキーは促されて立ち上がった。
目隠しをされ、腕を縛られた状態で、歩んでいく。
その途中で、もう二つの足音が聞こえだした。
■ 看守 |
ついたぞ。 後は自分で階段を上がっていけ。 どうすればいいかは分かるな。 |
そこで、二人は始めて目隠しを外され、お互いの姿を見やった。
やせ細り、前の姿が想像できないくらいである。
互いに何も語らず、執行台へと歩みを進めた。
執行台の頂上で、ゴロッキーがファーラへ声をかけた。
■ ゴロッキー To: ファーラ |
すまんな……ファーラ……。 本来なら俺1人のはずだったのにな。 |
■ ファーラ To: ゴロッキー |
しょうがないですよ……兄さん……。 ワルツマンとアクーニョはとりあえず助かったんですし……。 信仰がばれたときから覚悟は出来ていました。 また、向こうで会いましょう……。 やっと自由になれた気がします。 |
そうささやきあった後、二人は首に縄をかけた。
それと同時に、看守の声が聞こえた。
■ 看守 |
それでは執行をする。 |
それと同時に、二人の足元が割れ、体重が全て首の一点へとかかる。
そして数分後、二人の呼吸は停止していた。
ゴロッキーとファーラ、別々の場所で生まれ、奴隷のようにして育てられた二人は、こうして同時に生涯を終えた。
オラン−強制労働所にて |
オランで懲役刑に服するものが入る強制労働所……ここでワルツマンは刑に服している。
ある日のことである。同じ房に入っている1人の男がワルツマンに話しかけてきた。
■ 男 To: ワルツマン |
ワルツマンの兄ちゃんよー。 兄ちゃん懲役刑結構長いんだろ? そういうときにはこっそり楽しめるものがなきゃなあ。 俺はもうすぐ出所だから、分けてやろうか? |
■ ワルツマン To: 男 |
本当ですか? それは嬉しいですよ。 よろしくお願いします。 |
■ 男 To: ワルツマン |
じゃあ、隠し場所を教えておくからついてきな! 他の連中には秘密だぜ。 |
そんな話をしながら、二人は、労働所の中でも人気のない裏手の方へとやってきた。
■ ワルツマン To: 男 |
で、どこにあるんですか? |
■ 男 To: ワルツマン |
ほら、そこそこ。 よくみてみなよ。 |
そういいながら、ワルツマンの背後に回り込む男。
そして、男の手の中からなにやら紐状のものが光った。
■ 男 To: ワルツマン |
ほら、これだよ。 |
同時に、紐状のものがワルツマンの首へとかかった。
数分後、何もなかったかのごとく、男は房へと戻っていった。
そこにワルツマンの死体を残して……。
ゴロッキー達が処刑されてから、3ヶ月後のことであった。
オラン−強制労働所前にて |
その数ヶ月後、アクーニョが出所の日がやってきた。
ゴロッキー達の尽力、そして、アクーニョが暴力沙汰を嫌っていたという証言もあり、誘拐としては異例の短期での出所である。
■ アクーニョ To: 看守達 |
どうもお世話になりました。 |
そういいながら、看守に深々と礼をするアクーニョ。
■ 看守 To: アクーニョ |
もう戻ってくるなよ。 まっとうに生きるんだぞ。 |
そう声をかけて貰った後、アクーニョはとりあえず、街の方へと足を進めていった。
しかし、間にある人気のない林道でアクーニョの足が止まった。
■ アクーニョ To: 隠れている男 |
だれだい。そこにいるのは。 隠れても無駄だよ。 |
その声に導かれるかのように、男が1人林の中から出てきた。
アクーニョは知らないがワルツマンを殺した男である。
■ 男 To: アクーニョ |
よく気付いたな……。 気付かなければ楽に仲間のところへ行かせてやろうと思ったのにな。 まあいい。どのみち同じことだ。 |
同時に男がダガーを抜き、アクーニョの方へ向かって投げ放った。
かろうじてよけたもののアクーニョの腕にはかすり傷が残った。
■ アクーニョ(精霊語) |
大地の精霊よ。 あの男の動きを止めて! |
地面が盛り上がり、男へと絡み付く。
男は完全に動きを止められた。
それと同時に、男の横をすり抜け、アクーニョは逃げ出した。
■ 男 |
まあいい……。 解毒剤がない限り、生き残れないしな……。 |
その日以降、アクーニョの姿を見たものはいない……。
ハルトマン家−厩にて |
ハルトマンの家……家というよりは屋敷といった方がいいだろうか。
ここでフェン親子が働きだしてからもう一年になる。
今日もフェンは馬の馴致、調教にと忙しい日々を送っている。
■ フェン To: リアン |
朝飼いの準備は出来ているか? |
■ リアン To: フェン |
うん。ばっちりだよ! |
そこへ、どこからともなく馬のいななきが聞こえる。
それを聞きながら、リアンはにっこりと笑みを浮かべながら、馬の方へ向かって叫んだ。
■ リアン To: テン・ハイ |
テン・ハイ! 焦らなくてもすぐに持って行くから! エスパーダも、カレンダーガールも待っててよー。 すぐ行くからね。 |
その言葉につられて、他の馬も一度いななき、その後すぐにおとなしくなった。
リアンの言葉が分かるかのように。
リアン・ウー……オランに住む全てのホースマンの目標となる彼のデビューまでには、あと5年の歳月を必要としていた。
<完>
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