遺跡 |
■ オジイ To:ALL |
さあ、出発しましょう。 |
冒険者達は身支度を整えると、マーシィのもとへと向かった。
森 |
■ ヘルムンス To:ALL |
道中は気を付けないといけませね、山道ですし。 ここで逃げられたら、元も子もないですから。 |
ヘルムンスは、そっとエーギルの状況をうかがう。
■ オジイ To:ヘルムンス |
ええ。自分が右側で警戒しますから、左側お願いしますね。 |
途中、すこしぬかるんだ道に足を取られそうになりながらも、エーギルはおとなしく歩いている。
昨日の分岐の場所へいくと、昨日感じた暖かみ。
今度は喜びとも思える違和感となっている。
その感じをうけて、冒険者達は足をはやめた。
■ アトール To:ALL |
いよいよ、だな。 |
■ ノエル To:ALL |
マーシィさんにも状況がわかっているみたいね。 |
冒険者達は足を早めた。
マーシィのいる場所にたどり着くと‥‥辺りはほのかな暖かみでつつまれていた。
■ マーシィの声 |
おとうさん‥‥‥ |
■ オジイ To:エーギル |
エーギルさん、行ってあげてください。 |
オジイが、そっとエーギルの背中を押す。
その反動か、それとも自分の意思なのか。
エーギルの足は、マーシィの元へと進んでいる。
■ オジイ(心の声) |
マーシィさん、後はよろしくお願いしますよ……。 |
ふいに聞こえたマーシィの声にびっくりしたのだろうか‥‥
それまで生気がまったくといっていいほどなかった、エーギルの顔に、すこし、血の気が復活しつつある。
■ マーシィの声 |
おとうさん‥‥‥ |
■ エーギル |
ま‥‥‥わたしの‥‥まぁしぃ‥‥ |
■ マーシィの声 |
おとうさん‥‥‥ お願い。正気に戻って‥‥前の優しいお父さんに戻って‥‥ |
■ エーギル |
おまえ‥‥生贄に‥‥されたんじゃ‥‥‥ これは‥‥我が神の思し召しか‥‥? 愛しい愛しい娘の声が‥‥‥ |
一瞬、まともそうな理性のある瞳になりかけましたが、また邪悪なる光に目がそまりつつあります。
■ ソフィティア To:エーギル |
エーギルさん、ちゃんと娘さんの話を最後まで聞いてあげてくださいね。 10年前みたいに一方的に納得されちゃったら、それこそマーシィさんがかわいそう……。 |
■ エーギル To:ソフィティア |
10年前‥‥一方的に納得‥‥したのではない‥‥わたし‥私は‥‥神の声に導かれて、真実に気が付いたのだ‥‥ |
じろり、、、とソフィティアのほうを睨む。
■ ソフィティア To:エーギル |
えぇ、人々から邪神といわれている神の声に導かれてね(--#。それがどう言うことか、落ちついて考えればあなたにも分かるはずよ。 |
静かな声だが、エーギルの「聞く耳持たない」態度にかなりいらだっているようだ。
■ オジイ To:エーギル |
まあまあ、まずはマーシィさんの話を聞いてあげてくださいよ。 |
■ マーシィの声 |
まって‥‥おとうさん。 私、生贄になんかなってないのよ‥‥ 私、犠牲になんか、なってないのよ‥‥? おとうさん‥‥現実から‥‥逃げないで‥‥ |
■ エーギル |
そんな‥‥そんなことは!! おまえはあの村の為に犠牲になったんじゃないか!! 私は、それが絶えられなくて‥‥ |
■ マーシィの声 |
聞いておとうさん! 私、犠牲になんかなってないのよ! 私‥‥これで嬉しいんだから‥‥ 村を守れたってのもあるけど‥‥私、おとうさんの事を守れた事、すごく嬉しかったのに‥‥ |
■ エーギル |
わたしを‥‥まもる‥‥ |
エーギルは、すこし混乱しかけているらしい。
自分が思い描いていたことが。
自分が信じてきたことが、少しずつ、崩れて行く。
■ ノエル To:エーギル |
マーシィさんのこと信じて。これがほんとのことなの。 |
マーシィの邪魔をしないように‥‥と、気を使いながらエーギルに言うノエル。
その、ノエルの言葉に初めて反応を示すエーギル。
■ エーギル |
‥‥‥そういえば‥‥‥お前達は‥‥マーシィが選ばれた時とは違う冒険者‥‥だな。 ‥‥お前達はなぜ、ここにいるのだ? また、「たまたま」村に冒険者がいたのか? リュサーは「居ない」と言っていたが‥‥ |
思ったよりも、落ち着いた声で話すエーギル。
■ マーシィ |
おとうさん、この人達は‥‥ |
■ エーギル |
マーシィ。お前の話はすこし黙ってくれ。 私は、「この冒険者」に今聞いているのだ。 |
■ ヘルムンス To:エーギル |
たまたまではありませんよ。 あなたがマーシィさんを想うのと同じくらいシンディさんを想っている人から頼まれて村までやってきたものです。 |
■ エーギル To:ヘルムンス |
‥‥シンディ‥‥あぁ‥‥あの小娘か。 あの小娘を想う‥‥‥確かおなじぐらいの歳の坊主がいたな。あいつがか‥‥? ‥‥ 村人ではない娘だが‥‥そうか。村人には嫌われていないようだな‥‥ |
■ ヘルムンス To:エーギル |
時は流れましたからね・・・もう彼女や彼も、小娘や坊主といった年頃ではありませんよ。 シンディさんも、あの村で彼女なりに幸せに暮らしていたようですよ。 |
■ エーギル To:ヘルムンス |
‥‥はっ‥‥ぬるま湯の幸せに浸っていたんだな‥‥‥ 私のかわいいマーシィが‥‥苦しんでいるというのに‥‥ |
■ オジイ To:エーギル |
ええ、みなに愛されていますよ。 あなたも、みなに心配されているんですよ、エーギルさん。 |
■ エーギル To:オジイ |
私がだと‥‥? でたらめ言うんじゃない!!そんなの、そんなの嘘に決まってる! |
絞るような声で、そう、吐き出す。
■ アトール To:エーギル |
何故でたらめだと言うんですか?何故嘘だと決めつけるんですか? 村の人を、いや、あなたのマーシィを信じることが出来ないのですか? |
■ エーギル To:ア・トール |
はん!ならばお前には全てわかるというのか!? マーシィは私の娘だ。 娘の考えていることは、父親たる私がすべて知っているに違いないだろう!!父親たるものが、理解できなくてどうする!! |
一瞬失いかけたものを、再び取り返したような声で、そう言う。
目に狂気が‥‥すこし見える。
■ マーシィの声 |
おとう‥‥‥ |
マーシィの声は、とても悲しそうだ。
■ エーギル |
あと、お前達は「何故」今いる? 指定した日は新月の夜だったはずだが‥‥昨日はまだ新月ではなかったはずだが。 村長の、浅知恵か? |
■ エーギル |
‥‥神殿に来た時、村長の名もださず、ましてはシンディの名もださなかったのはどうしてだ? |
■ エーギル |
「どうして」お前達は、そう動くのだ‥‥ |
消え入りそうな声で、そうつぶやく。
■ オジイ To:エーギル |
どうして……って言われても……うーん困りましたねえ。 まず、ひとつ誤解を解いておきますが、私たちは、村長に言われてここへ来たわけではないんですよ。 だから村長の名前を出さなかったんですよ。 |
■ オジイ(心の声) |
あれ、シンディの名前は出したはずだけどなあ。 忘れたのかなあ。 |
■ エーギル To:オジイ |
!? 村長に頼まれたのではないというのか‥‥? ‥‥‥あの村長、こんなことではココロ痛まぬという事か‥‥‥ ‥そうか‥‥‥ならば意味がないではないか‥‥ |
と、憎々しげにつぶやくエーギル。
■ アフル To:エーギル |
そうそう、シンディさんを助けてってのはミトラに頼まれたからだし。 それで、こっちの方に来たらマーシィさんがいて、エーギルさんが生贄を要求してるのを止めてって頼まれたから遺跡の方に行ったって訳。 |
■ エーギル To:アフル |
ミトラ‥‥だれだそいつは? すくなくとも10年前はいなかったヤツだな‥‥そいつもよそ者か?? |
■ アフル To:エーギル |
ミトラはシンディさんの弟。 シンディさんを助けてって、一人でオランまで冒険者を捜しに来たんだ。 それでその依頼を受けたのが俺達なの。 |
■ エーギル To:アフル |
そして‥‥お前精霊使いらしいが‥‥ マーシィに頼まれた‥‥というが、本当にマーシィに頼まれたのか?? |
■ マーシィの声 |
そうよ‥‥おとうさん‥‥ それが、どうかしたの? |
■ エーギル To:マーシィ |
かわいそうに‥‥かわいそうなマーシィ‥‥ そんなにこの世に未練があるんだね。 そんなに村が憎いんだね。 父は分かるぞ、その恨み‥‥ だから、安心して眠りなさい‥‥父がすべてはらしてあげよう‥‥ |
エーギルは、少し興奮しかけているのか‥‥また、支離滅裂な口調になりかけている‥‥
■ アトール To:ALL |
興奮していて、話しがなかなかかみ合わないな。 |
■ オジイ To:エーギル |
エーギルさん、落ち着いて。ね。 今、マーシィさんが恨みを持っているって言ってましたよね。 恨みがあるかどうかをまずマーシィさんに聞いてみてください。 それに村が憎いかどうかもね。 娘さんの気持ちを聞くことが今のあなたに一番必要だと思いますよ。 |
■ マーシィの声 |
おとうさん‥‥ |
こころなしか、マーシィの声は泣きそうな声になっている。
■ エーギル To:オジイ |
なに!娘の心は私が一番知っている!! 私がそう思うのだから、娘がそう思うに違いない! そうだ、そうに違いないのだ!! なぁ、マーシィ!!そうだろう!! |
と、エーギルは架空をじろり‥‥と見る。
どうやら、エーギルは声は聞こえるがマーシィの気配にはまったく気が付いていないようだ。
■ マーシィの声 |
おとうさん‥‥違うの‥‥違うのよ‥‥ |
マーシィの声は、どんどんか細くなっていっている‥‥‥
■ ノエル To:エーギル |
このわからずやっ!!! |
堪忍袋の緒が切れたのか、ノエルはいきなりエーギルの手を取って強引に石像に触れさせようとする。
■ エーギル To:ノエル |
なっなにをするんだ! |
■ ノエル To:エーギル |
現実を見なさい。 マーシィさんはここにいる |
いきなりのノエルの行動に、びっくりするエーギル。
しかし、反応が遅かったために、その手は石像へと触れられた。
石像に触れた瞬間、エーギルとノエルの心に、つぎの情景が浮かんだ。
広く‥‥美しい山々。その一角に、美しい花々で飾られた遺跡のようなものがある。
遺跡の中には‥‥いかめしい鎧を着た戦士、軽装の盗賊、そしてローブを身にまとった魔術師風の男達がいる。
彼らに身を守られるように‥‥中央には二人の女性。
一人は、シンディにとても良くにた面影の女性。後ろで一つにまとめている髪の毛も美しい。
もう一人は、こざっぱりとした服に身を包んだ少女。女性‥‥という年齢ではなさそうだ。
周囲の男達は何も言わず、また、シンディの面影を残す女性も一言も言わない。
ただ一人。少女‥‥マーシィだけが口を開く。
■ マーシィ To:エーギル&ノエル |
見ておとうさん‥‥私‥‥全然不幸じゃないよ? 村で‥‥おとうさんに守ってもらった時みたいに、今はリヴェアさん達にこうして‥‥守ってもらっているでしょう? おとうさん‥‥わたしね、10年前‥‥ぜんぜん悲しくなんかなかったのよ? だって、今もそうだけど‥‥守られてばっかりだった私が、いま、ず〜っとず〜〜っと村を守っている事ができるんだもの。 私、凄くうれしいのよ‥‥ |
頭の中に響いてきた声とは違い、石像に触れると、マーシィの声ははっきりと聞こえた。
■ エーギル |
そんな‥‥これは‥‥‥ |
エーギルは、この現実を‥‥まだ信じることができないらしく、混乱している‥‥‥
その、混乱しているエーギルに‥‥今度は優しさを込めてノエルはサニティをかけた。
エーギルの、心のわだかまりが少しずつ、少しずつ溶けていく‥‥
■ エーギル |
わたしは‥‥‥いったい‥‥‥ |
エーギルの顔から、憑き物がとれた。